学校3
午後の授業は、数学と英語だった。
どうして、食後の眠い時間に数学なんてやるんだろう。クラスの半分以上が睡魔と必死に戦っていた。
たぶん、授業の内容なんて、入ってこないんじゃないかな。
その後の英語も似たようなものだった。
そして、やっと解放のベルが鳴った。
僕は、教科書をカバンに放り込むと、急いで教室の出口に向かった。
後ろの扉から、出ようとしたときに教室に入ってこようとした女の子とまともにぶつかってしまった。
慌てて立ちあがり、廊下に座り込んでいる女の子に
「ごめんなさい。」といって、深々と頭を下げた。
「こちらこそ。」彼女はそう言って、僕の目の前に手を差し伸べた。
キョトンとしている自分に
「手を引っ張って起こしてよ。」
「ああ。」といって、慌てて僕は彼女の手を掴んで起こしてあげた。
立ちあがった彼女に、再び頭を下げた。
「ねえ、このクラスに明日香要る?」
彼女は、僕の目を見つめてそう聞いてきた。
「いるけど、ちょっと待って。」
そういって、明日香の席に視線を向けた。
『あれ?』明日香がいない。
ぼくは、再び彼女の方をみて、
「さっきまで、いたけどもう、どっか行ったみたい。」
「そう。」
「じゃ、鈴木正っている?」ちょっと、間が開いたが
「鈴木正に何か用ですか?」と言った。なんとなく、危ない気がした。僕が、そうですと言ったとたんボディーに一発入れられそうだった。こんなときの僕の感は、鋭い。
「この手紙を渡そうと思って。」
「そうですか?よかったら、渡しておきますよ。」
「いや、いい。本人に直接渡したいんだ。」
「果たし状か、何かですか?」
「まあ、そんなところかな?」
「じゃ、また出直してくるわ。引き留めてごめんね。」
「いえ。」ぼくは、そのまま、その長い髪の女の子の横を通りすぎて一階の下駄箱に向かった。
多分、明日香に、縄張り争いの果たし状を渡しに来たに違いない。
でも、なんで僕のなまえを知っていたんだろう?
でも今は、そんなことを気にしている場合ではなかった。
急いで、靴に履き替えて、帰路についた。
「たま、大丈夫かな?」
そう思うと知らない間に、小走りになっていた。
土手を早足で帰ると、30分ぐらいで家に着いた。
『よかった。家の近くの高校にして。』まあ、ここしか入れなかったんだけど。
家の鍵を開けて中に入った。
「ただいま。」と大声で叫んだ。
そうすると2階の僕の部屋から、
「お帰り、お帰り、お帰り・・・。」と言う声と一緒に子猫が走ってきた。
僕は、その子猫を捕まえると抱き上げて頬ずりをした。
「寂しかった?」と聞くと、寂しかったの声が聞こえて来た。
「猫耳って、すごいな。本当に、猫の声が聞こえるんだ。」
それから僕は、水を取り替えて、子猫にご飯を上げた。
そして、その食べる姿をじっと見ていた。
しばらくして、今日の宿題を机の上に広げて、夕飯の支度にとりかかる前にそれをかたづけることにした。
宿題をしていると、食事を終えた子猫が足元に着て僕の足を登り出した。
僕は、たまを捕まえると机の上に置いた。
「邪魔しないでね。今、宿題してるから。」
しばらく、机の上に寝そべっていたが、突然
「おしっこ。」と言った。
慌てて、ぼくは、たまをトイレに連れて行った。
トイレが終ると再び、机の上に載せてあげた。
そして、うつらうつらと頭が揺れ出したので僕のベッドの上に載せてあげた。