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猫耳協奏曲  作者: 不機猫
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学校2

 お昼休み、ぼくは、子猫のことが気になって、誰にも見られないように学校の中庭に猫耳とお弁当を持って周りをきょろきょろしながら、教室を出た。

別に周りを気にしなくても、誰も僕を気にしていないんだけど。

それは、わかっているけど、でも、なんとなくきょろきょろしてしまう。

誰とも、目が合わなかった。

でも、目が合ったらどうすればいいんだろう。

そんなことを、気にするなら下を向いてそそくさと教室を出ればいいだけじゃん。いつものように。

そう思いながら、中庭に着いた。

猫耳を頭に着けて、子猫のことを思いながら耳を澄ませた。

何も聞こえない。

しばらく、猫耳を付けたまま、お弁当を食べていた。

半分ぐらい食べたけど、何も聞こえなかった。

「たま?」子猫の名前を呼んだ。

昨日、あれから、子猫の名前を色々考えた。

結局、『たま』にした。

ごくありふれた名前だけど、なんだかあの子猫に似合っている気がした。

朝も、『たま』って呼んだら嬉しそうに「ニャア」って鳴いてくれた。

猫耳を着けて無かったから、なんて言ったかわからなかったけど、なんだかうれしそうだったような気がした。

でも、今は、猫耳を使っても何も聞こえなかった。

ぼくは、段々不安になってきた。

お弁当の残りを掻きこむと、弁当箱にふたをして、明日香の所に急いだ。

教室に戻ると、明日香は、友達と楽しそうに会話しながら、お弁当を食べていた。

『どうしよう。』以前の自分なら、その時点で何もできずに紋々とした時間を過ごしていたかもしれない。

でも、今は、たまのことが心配で、いてもたってもいられなかった。

勇気を出して、明日香の所にゆっくり机に脚を時々ぶつけながら、明日香の所に行った。

うわずった声で、

「明日香さん、ちょっと教えてほしいことが有るんだけど、後で、ちょっといい?」

「何、正?私に告白でもするの?」

「百年、早いぞ。まあ、いいや、後でいくから待ってろ。」

「うん。」そう言って、僕は、自分の机の所に戻った。

途中で、明日香たちの大声で笑う声が聞こえた。

しょうがないから、カバンから出した単行本を読んで時間を潰すようにした。

でも、たまのことが気になって、文字が入ってこない。

「正、どうした?」

突然、目の前から声がした。

単行本から、目を上げると明日香が目の前にいた。

僕の手に、猫耳が握られてるの見て、明日香は、

「ちょっと、そこまでいっしょに来な。」

と大きな声で言った。

僕は、頷いて、先に教室を出ていく明日香の後を付いて行った。

屋上に向かう階段の踊り場で、明日香は振り向いた。

「どうした?」

「それが、猫耳をしてもたまの声が聞こえないんだ。」

「たまって、言うのか?あの子猫。」

「昨日僕が付けた。」

「そうか?」そう言って、明日香は僕の猫耳を取り上げて頭にかぶせた。

しばらくして、僕に猫耳を返しながら

「大丈夫だよ。」といった。

「付けてみな。」

言われるまま、僕は、猫耳を着けた。

「寝てるんだよ。寝息が聞こえるだろう。」

「子猫だから、一日中寝てるんだよ。」

「お前の家が、気に入ったんだな。良かったよ。」

僕は、耳を澄ませた。確かに、明日香の言う通りかすかに寝息が聞こえて来た。

猫耳を外して、

「明日香さん、ありがとう。」と、涙をにじませながら言った。

「お前、気持ち悪いんだよ。そんなことで、いちいち泣くなよ。」

「猫耳を隠して、教室に戻るぞ。」

「この学校にも、いぬ派の人間がいるからな、猫耳を見つけられると色々ややこしいんだ。」

「今のところ、教頭が、犬派だって噂があるから、気を付けな。」

再び、明日香の後ろを付いて教室に戻ると、午後の始業ベルが鳴った。








 



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