夜の集会3
「紳士、淑女の皆様、そして、愛しい猫族の皆さん、今日は、お忙しい中、この猫又寺にお集まりいただきありがとうございます。」
「本日は、私たちの仲間を自分の命を懸けて、助けようとしてくれた高校生、鈴木正さんを我々の仲間に迎え入れ、そして、今日、そのお披露目と言うことで集会を開かせて頂きました。」
「正、早く長老の前に行って。」そう、耳元で、子猫の声がした。
深呼吸をして、僕は、その老人の所に歩き出した。
周りからは、拍手が起こった。
保健の先生も、そして、クラスの自称美女の明日香も、拍手をしていた。
そして、彼らや彼女らの肩に乗っている猫たちからも、歓声が上がった。
僕が、やっと長老の隣に立って振り向くと、再び拍手が沸き起こった。
そして、それを老人が手のひらを下にして、抑えるようなしぐさをした。
みんな一斉に騒ぐのを止めた。
「ここに居る鈴木正くんは、今、彼の肩に乗っている子猫を段ボールの箱から救って、牛乳を上げてくれた。そして、屋上から落ちていくカバンに子猫がいると思い、自分の命を懸けて助けようとしてくれました。」
「まさに、彼は、我ら、猫族の英雄であります。」
「よって、彼に、この子猫の猫耳を贈呈いたします。」
また、一斉に拍手が沸き起こった。
「正くん、一言お願いします。」
周りから、正コールが起こった。
「皆さん、ありがとうございます。でも、今、自分に何が起こっているのかわかりません。ただ、僕は、今、僕の肩に乗っている子猫を助けたかっただけです。そして、今日から、彼女?を僕の家族として迎え入れたいと思います。」
「皆さんにこれを。」そう言って、ポケットのカツオ節のパックをその老人に渡した。
僕は、その子猫を肩に載せたまま、再び明日香の所に戻ってきた。
「すごいじゃないかお前。カツオ節を持ってくるなんて。」
「母親が、持って行けって。」
「いいお母さんだな。みんな喜んでいる。」
次の日、いつの間にか、僕は、自分のベッド眠っていた。
「あれ、昨日の集会は夢だったのかな?」
確か、集会が終わって、家に帰ってきたけど、玄関の鍵が閉められていた。
どこか、家に入れるとこが無いか探したけど、駄目だった。その時、2階の自分の部屋の窓の鍵が壊れて、閉められられないのを思い出した。
そこからの記憶が、失くなっている。
そして、昨日のことが夢でなかった証拠に、僕の布団の上では、黒い子猫が静かに寝息を立てていた。