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猫耳協奏曲  作者: 不機猫
3/13

保健の先生

 しばらくして、白衣を着た保健の先生がやってきた。

僕たちよりは、10歳ぐらい年上かもしれない、まだ、若い女性だった。

「起きた?」

「良かったわ。今日は、用事があって、もうすぐ帰らなければいけなかったのよね。」

「立てる?」

そう言うと、僕の靴をベッドの横に置いて、無理やり手を掴んで上体を起こすと、ベッドの窓際の方に座らせた。

「靴は、自分で履けるでしょ?」

「どこか、痛いとこある?」

「無いわね。」

「体温だけは計っておきましょう。」

そう言うと、体温計を渡された。

わきに挟んでしばらくすると、デジタル音が流れた。

体温計を取り出し、彼女に渡した。

「36.5℃、問題なしね。」

「あの、僕、3階から落ちたんですけど?」

「勇気あるわね。でも、今度からしちゃだめよ。」

「危ないから。」と、言ってウインクした。

「病院に、行かなくてもいいんですか?」

「特に、痛いところが無ければ大丈夫よ。」

「病院に行っても、一晩ベッドに寝かされるだけだよ。」

「自分で靴は、履けるわよね。」再び、そう僕に言った。

仕方なく、僕は靴を履いた。

「立ってみて。」

ふらつく頭で、何とか立ちあがった。

「頭が、ふらつくんですけど?」

「吐き気は、ないわよね?だったら大丈夫よ。」

「さあ、カバンを持って帰りましょう。お疲れさまでした。」

そう言うとカーテンを勢い良く空けて、僕のカバンを胸に押しつけ、保健室の扉に所に僕を押していった。

僕を廊下に出すと、

「本日の業務は、終了です。後、今晩の集会には参加してね。午後8時、貴方の家の近くの猫又寺。」と言った。

しかたなく、僕は、とぼとぼと学校の校舎から、外に出た。

家に帰る前に、僕が落ちた場所を見に行った。

校舎と校舎の間の中庭に、さつきが植わっていた。

そして、僕が落ちた辺りの茂みが人型に潰れていた。

「ごめんね。君のおかげで助かったよ。」と声を掛けた。

「やっぱり、現場に戻ってきたか?」急に、後ろから声がした。

それは、用務員のおじさんだった。

「わしが、大事にしていた、サツキを折ったのはお前だな。」

「そうですけど、これには、理由が?」

「友達とふざけて、プロレスごっこでもして倒れ込んだんだろう。」

「いえ、3階からこの上に落ちたんです。」

「なに、3階からプロレスごっこをして、ここに落ちて来たのか?」

「良く生きてたな。」

「プロレスはして無いけど、僕もよく生きてたと思います。」

「一つ聞いていいか?」と言って、用務員のおじさんは、不思議そうな目を僕の頭に向けた。

「どうぞ。」

「その頭の上の飾りは、最近のはやりか?」

「何のことでしょう?」といって、僕は、頭に手を回した。

僕の知らない何かが、僕の手に触れた。

もふもふの肌触り、それを頭から取って目の前に持ってきた。

それは、黒い毛の猫耳だった。

さっきから、頭に違和感が有ったのはこいつの所為か?

「猫耳?」不思議そうに、首をかしげる僕を見て、

その用務員のおじさんは、徐々に僕から距離を取った。

それから、「もうすぐ、校門を閉めるから早く帰れよ。」といって、そそくさと向こうに消えていった。

仕方なく、僕は、その猫耳をカバンに入れて、朝、子猫を拾った河川敷に向かった。

もしかしたら、そこに子猫が戻っていそうな気がした。


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