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猫耳協奏曲  作者: 不機猫
2/13

夕日

 顔が焼けるように熱くて目を覚ます。

確か、学校の3階から落ちたはず。

パイプベッドに白いカーテン。そして、そのカーテンを西日が白く染める。

アルコールの匂いがかすかに漂う。

『ここは病院かな?』まだ、生きていることては、なんとなくわかる。

残念ながら、異世界には、飛ばされなかったようだ。

そして、胸のあたりに何かが乗っているのを感じた。

頭だけを上げて、目で、それが何かを期待をこめて見た。

『よかった。』ぼくが、河川敷で拾った真っ黒な子猫が、僕の胸の上で小さな寝息を立てていた。

でも、ここはどこだろう?病院なんかに、猫は入れないだろうし。

とりあえず、僕は、しばらく、その子猫の安眠を妨げないようにじっとしていた。

そうしながら、体にどこか異常が無いか、確認することにした。

まずは、右手。指を一本づつ動くことを確認した。次に、左手。これも、問題なく動いた。

次は、足を動かしてみることにした。

右足。

『えっ、動かない。』何か重いものを乗せられているようにびくともしない。もしかしたら、神経が切れたのかも。慌てて、左足を動かしてみる。

こっちも動かない。

『えっ?』やっぱり、落ちたときに背中に何かが刺さったという感覚は、夢じゃなかったんだ。でも、背中は全然痛くない。

おもわず、自分の足の状態を確認しようと上半身を起こした。

『しまった!』胸の上の子猫を起こしてしまった。

安眠から、たたき起こされたにもかかわらずその子猫は、

「みゃあ。」といって、嬉しそうに僕に近づいてきた。

「おはよう。もう、夕方だけど。」

子猫のむこうから、

「おはよう。」と女の子の声がした。

「えっ?」と思った瞬間、その子猫が僕の顔の前に、持ち上がった。そして、僕の足もさっきのことがうそのように動くようになった。

「ごめん。重かった?」

「思わず、君の足にもたれかかって、眠ってしまった。」

その子猫の向こうに、僕のカバンを盗んだ犯人が、顔を出した。

「きみ、猫となら話できるんだ?」

僕は、しゃべるの止めた。そして、天井を見つめた。

彼女の言う通りになんかならない。

「きみ、3階から落ちて無傷ってすごいね。」

「ここ、学校の保険室だよ。」

「学校も、自殺かもしれないと思ったから、救急車も呼ばずにここに一目散に運びこんだんだよ。」

「ひどいね、まあ、生きてたからよかったけど。」

『原因は、貴方でしょ?』と言いかけたが、押し黙った。

「無視しないでよ。」

「悪気は、無かったのよ。」

「ちょっと、貴方を試しただけ。」

「子猫は、かばんを投げる前に私が、取り出したから大丈夫よ。」

そう言うと、彼女は、僕の股間をぎゅうと掴んでから、

「ちょっと、先生呼んでくるね。」と言って、僕からその子猫を奪って、保健室から出て行った。











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