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第43話 学校⑨

 今日の授業は何も頭に入らなかった。ずっとさっちゃんのことを考えてるとかではなくて、何も考えられないという感じだった。ただずっとぼーっとしているような感じだった。

 クラスメイトにたくさん話しかけてもらっていたはずだけど、何を聞かれたのか全く覚えていなくて、なんて返事をしたのか覚えていない。なんでみんなに私が変だと言われなかったのか不思議なくらいだ。


 気づけば授業が終わっていた。いつも授業終わりいつもどうやって過ごしていたっけな。

 誰もいない教室をなんとなく見渡す。なんとなくそうするべきだと思った。教室の端には、さっちゃんが立っていた。驚きはなかった。


「やっと気が付いてくれた」


 さっちゃんはそう言って近づいてくる。私は思わず後ずさる。


「私さ、ルキちゃんと大事なお話がしたいんだ」

「……何?」


 壁に追いやられる。


「嘘はつかないでね。ルキちゃんって転生者だよね。」


 ここでは絶対嘘はつかない方がいいような気がした。たとえさっちゃんが嘘をついていたとしても。


「うん。そうだよ。」


 さっちゃんは私の顎を掴み、そして上げる。


「ねえなんで空き教室来てくれなかったの?ビビっちゃった?」


 そういえばそういう話だったっけ。適当にうなずいたせいでこうなった。やっぱりよくなかったな。


「ごめん。なんか今日ずっとぼーっとしてて、忘れちゃってた。でもきっと後で行くつもりだったよ」

「何それ。変な言い方だね」

「ごめん。でも嘘はついてないよ」

「ふーん。まあいいや。それで本題に入ろうと思うんだけど、私たちと一緒に来ない?」

「ん?」

「この世界に転生者ってかなりいるらしいんだよね。ちゃんとした数は分からないんだけどさ」

 

 この世界には転生者が5人いるっていうやつか。私はまだ老婆の言葉を覚えている。


「あと転生者って生まれた瞬間から大小違いはあるけれど、障害を持っているらしいんだよね。」


 私の魔力量が少なかったのって障害だったのかな。

 さっちゃんは私に手のひらを見せつけ、閉じたり開いたりを繰り返す。


「私はさ、生まれてから数年全身麻痺もあったんだ。すごくリハビリ頑張ったから今となってはかなり普通になれたんだけどね。でもさ、死んだのにこんなに苦労しなければならいのってありえなくないかな。アニメや漫画みたいにすごい力が生まれながらにあるとかならよかったけどさ、別にそういうわけじゃないしさ。他の知り合いの転生者の子なんかはさ、生まれつ筋力がなくて、うまく歩く事すらできないんだよ。だから漫画の魔法使いみたいにずっと浮いているんだ」


 さっちゃんは微笑みながら、話しかけてくる。私はそれを黙って聞いていた。

 私は前世が悲惨だったから、思ったことなんてなかったけど、転生が辛い人もいるのか。


「でもさ、前世の記憶ってこの世界ではすごい武器なんだよね。だからさ、私たちはこの世界ではトップに立てるんだよ。ルキちゃんもそう思わない?」

「え、うーん。どうだろうね。てか、それって世界征服的な話?」

「言い方悪いよそれは。私たちならもっとより良くできるってだけだよ」

「……じゃあなんで私に攻撃してきたの?ちょっとひどいと思うんだけど」


 さっちゃんは今までより大げさに微笑んだ。


「ごめんごめん。それはほんとにごめん。でもルキちゃん頑固そうだし、ああしないと私たち側に来てくれないかもなって思っちゃっただけ」


 私は何か嫌な感じがした。こんな人の世界をよりよくしたいという考えは危ない気がする。

 私は当たり障りない声色を意識して言った。


「そっか。でも世界をよりよくしたいとかちょっと興味ないな」


 さっちゃんは黙ってしまった。できるだけ怒りを買わないような言い方をしたはずなんだけどな。私はさっちゃんから目をそらす。

 さっちゃんは、小さくため息をつく。


「そっか、わかった。攻撃しちゃってごめんね」

「うん」


 私はそのあと逃げるように自分の部屋へ帰った。当たり前のようにラビーちゃんが部屋にいたけど、気にせず大きなため息をつく。ラビーちゃんに困っているということを気づいてほしかったというのもあった。

 ラビーちゃんはすぐに私の方を見る。


「え、何かあったの?」

「今日さ、さっちゃんと話したんだけどさ、なんか悪いことに誘われたって言うか、それでなんか疲れちゃってさ」

「え、さっちゃんと話したの?何かされたの?大丈夫?また今朝みたいに変な感じにされちゃったとか?見てあげようか?さ、こっちおいで」


 ああ、なんかめんどくさい。

 私はラビーちゃんの横に腰を下ろす。そして、脱力しきった。

 服着替えないとなとか思いつつも体が動かない。

 気が付けば、あたりは真っ暗で横ではラビーちゃんが寝息をたてて寝ていた。私は寝てしまっていたようだ。

 結局服を着替えていないし、お風呂も行ってない。


 私はやってしまったと思いつつ、服を着替える。この時間でもまだお風呂はやっているんだろうか。とりあえずお風呂で使う諸々をもって外へ出る。

 そういえば私とさっちゃんが仲良くしだしたのもこんな感じで変な時間にお風呂に行ったことがきっかけだったっけ。


「うう、さっむ」


 さすがにこの時間の外は凍えるくらいに寒かった。だけど外が暗すぎるせいで自分の息の白さは確認できない。

 体を縮こませながら、この世界にもともと存在する明りだけを頼りに、道を歩いていく。自分の足音だけがあたりに響く。そう思っていたら、人の声が聞こえて思わず息をひそめた。


 ――ルキちゃんはだめだった。

 ――そっか。


 それだけ聞こえた。今日はもう帰ろう、そう思ってきた道を引き返そうとした時、私に声がかかる。


「おい、誰かいんのか」

「ん、誰かいるの?」

「誰かわかんないけど、盗み聞きされてるかもしれない」

「え?」


 私の手はその話している人に引っ張られた。

 声からして誰が話していたのかはわかっていた。

 カズ君とさっちゃん。


 二人の間には、小さな光の玉が光っていた。そこだけが異様に眩しい。


「え、ルキちゃんじゃん」

「ごめんさっちゃん。盗み聞きするつもりなんて無かったんだけど、なんかたまたまっていうか」


 カズ君は私の手を引く力を強める。


「お前何してんの?てかそういうことする子だったんだ、なんか意外かもしんない」

「え、カズしらないの?この子意外とやる子何だよ。」

「知るかそんなこと。もともとそんなに仲良くもねぇし」


 カズ君が私を突き放していたからだよと思いつつ、私はとりあえず悪いことをしてしまったと反省するような顔をしておいた。


「んふ、わざとらしくそういう顔をするとことか、ほんと転生者だってわかりやすいよ」


 さっちゃんが私の顔を見つめている。この子がカズ君の前でこんなことを言うなんて、カズ君も転生者なのか。

 カズ君の足元を見ると、少し浮いていた。漫画の魔法使いみたいな浮き方には見えない。でもとても真似できるような技術ではないことは一目瞭然だった。

 腕の力はそれなりにあるようだったけど、それも何かの魔法を応用しているのだろう。彼は本来立っていられないほど筋力がない子らしいから。

 しかし、私は反省する顔をやめなかった。


「あの、私、お風呂に入ろうって思ってただけで」

「この時間に風呂って嘘だろ」


 カズ君ににらまれる。カズ君は本当にさっちゃんとどういう関係なのか。対等なのか、私みたいにさっちゃんに何かかけられているのか。いつ頃二人は出会ったのかとか、学校入学前から二人は知り合いだったのかとか。私に突っかかってくるのも何か理由があるのだろうか。

 さっちゃんは不気味に笑って私の手を握った。


「お風呂って。本当の事を言ってよルキちゃん」

「いや、嘘じゃなくて、ちょっと昼寝しちゃってお風呂入りそびれちゃっただけなんだよ」

「ふーん。まあいいや。でも盗み聞きはよくないよね」


 こんなところで話し合っている時点で、盗み聞きのリスクは絶対にあるだろうに、なんでこんなに私は詰められているんだろうか。大事な話し合いくらい部屋でやれよ。私悪くなくないですか。


「ねえ、ルキちゃん。やっぱり私たちと来てくれないの?私たちと来た方が絶対安全だしさ、楽しいと思うんだけど」


 また誘われた。


「でも私、そんなに強くないですし、足手まといになると、思うよ」

「やっぱりだめか。」

「もうこいつは無理だろ。あきらめろサラ、時間の無駄だ。」

「じゃあさ、最後に質問いい?ある転生者を探しているんだけどさ。ルキちゃんってルリって子知ってる?」


 私は心臓が飛び跳ねるのを感じた。なんでこの人たちルリの事知ってるの。


「え、うーん聞いたことないな。そのルリ?って子がどうしたの?」


 私は嘘をつく。

 

「ルリは私たちの敵なんだ」


 は?え、なんで。

 カズ君がグッとにらみを利かせた顔で、笑う。


「あいつマジで殺す」


 さっちゃんが私の顔に明りを近づけた。私、動揺を隠せているだろうか。


「ルキちゃんって、ルリに顔似ているよね。もしかして双子だったりして」

「え、いや、そんなこと」

「なーんてね」


 さっちゃんはケラケラと笑って、冗談冗談と言った。

 私はこの世界に生まれた新しいこの人生で一番動揺していた。

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