第42話 学校⑧
やっぱりラビーちゃんって可愛いな。
柔らかくて、あったかいし。
私は気付けばラビーちゃんの頬に手を当てていた。
ラビーちゃんは拒もうとしない。
私の理性は吹き飛びそうになる。
でも脳のかなり浅いところにさっちゃんがいる。私はさっちゃんとしたいと思っているんだってわかる。
でも欲がすごく昂っていて、目の前にラビーちゃんがいる。
私がラビーちゃんの右耳をいじっていると、ラビーちゃんが言った。
「ルキちゃん?」
ラビーちゃんの顔は真っ赤で、耳が熱い。
わずかに残る理性が脳内でよくないよ、と大声をあげている。
でも睡眠時のアラームみたいに聞こえるのに聞こえない。
私はこの時、今までで一番気合を出した。
気合いで、体を起こす。激ヤバの風邪の時のベッドから起きる動きよりも数倍きつかった。
もう限界なので、さっちゃんのところに行こう。
さっちゃんならきっと。
そう思い、出口の方に近づく。
「ごめんラビーちゃん。私、課題やろうかなって思ってて、あと着替えもしないといけないし。ごめんね。あとで絶対戻るから」
後ろから声が聞こえる。
「ラビー、嫌じゃないよ。じ、実はそういうことちょっと興味あったんだ。夜中、ママとパパがそういうことしてたのみたことあるし、調べたこともあるよ」
ラビーちゃんはそう言って、自分の服のボタンを外し始める。
彼女の手は震えて何度か外し損ねる。
それをみてどうしようもないような、気持ちの昂りと、申し訳なさを感じた。
「ラビーちゃんってしたことあるの?」
私が尋ねると彼女は首を横に振る。
私は精一杯微笑みを作る。
「じゃあ、余計良くない。私は大丈夫だから、ありがとうラビーちゃん。気持ちだけ――」
「――私、あの、一人ではしたことあって、それで、」
私の言葉をラビーちゃんが遮り、思わぬ告白をし始めた。きっと彼女自身も自分が何を言い始めているのか理解できていないだろう。
「すっごく痛くて、涙流しちゃって、でも」
ラビーちゃんの視線はあっちいったりこっちいったりする。
私の視線は4個目までのボタンが外れた服にしかいかない。
すっごくえっち。
「ルキちゃんがしてくれたら、多分痛くないだろうなって気がしてて」
ラビーちゃん、もうちょっとボタン外して、姿勢変えてくれたらおへそ見えるのに。
きっと可愛いんだろうな。
「ルキちゃん優しいから、きっとそうだろうって思っているの」
え?何?
何がそうだろうって?
私は服しか見てなくて、話が入ってこなかった。
私が数秒黙っていると、ラビーちゃんはもう、とため息を洩らし、私の前に立つ。
そして軽く唇が触れるくらいのキスをした。
「つまりこういうことなの」
え?つまりどういうこと?
まあそんなことよりもさっきのキスで私の中の私は爆発しかけた。
ラビーちゃんの唇を無理やりこじ開ける。
ラビーちゃんは最初離れそうなったけど、踏みとどまり私を受け入れた。
私が離れると、ラビーちゃんが一歩迫ってくる。
ラビーちゃんの身長は私より少し低いくらいだ。
「もっと……」
私は彼女の要望に応える。
蹂躙したのかされたのか、ひと段落すると、ラビちゃんが言った。
「なんかルキちゃん今、毒かかってる?」
「え?」
「私、最近勉強頑張ってて、回復魔法も勉強してるんだけど、ルキちゃんもしかしたら毒かかってるかもしれない。ちゅうしてなんか一瞬感じたの。私まだそこまで異常状態に敏感じゃないから間違いかもしれないけど」
ラビーちゃんは、彼女自身の口につく私のものか彼女のものかわからない唾液を指で拭う。
「解除できるか試してあげようか?」
私は頷いた。
でもそれよりももっと続きしたい。
私がすくうみたいにキスしようとすると、ラビーちゃんは受け入れてくれた。でもちょっとしたら離れてしまう。
「今待って、集中してるから」
集中してる彼女の顔がどうしても可愛い。
私はラビーちゃんのボタンに手をかける。
私はどうやら毒状態。ということはもしやっちゃっても私悪くないよね。
ラビーちゃんが、あ、ダメ。と私を叱るが、止まんない。
全部ボタンを外し終えた時、ぐんと冷静になるのを感じた。
「どう?」
ラビーちゃんがそう言いながら私の顔をのぞきこんだ。
「なんか頭がスッキリした感じっていうか……」
するとラビーちゃんが微笑む。
「よかった」
ちょっとドキリとすると。これは毒のせい?まだ残ってるの?
そしていきなりラビーちゃんは真剣な表情をする。
「この毒、もしかしてさっちゃんなんじゃないの?」
私もそんな気がしていたので、多分と呟く。
「ねえルキちゃん。さっちゃんどうにかしよう?」
でもまだ犯人がさっちゃんって決まったわけじゃないだろうし。
そんな私の心中を察してか、それともたまたまか、ルビーちゃんははっきりと言う。
「とにかく行動しようよ。まださっちゃんが犯人だってわかんないけど、もし違ったら本気で謝ればいいじゃん」
私はうーんと呟く。
私はさっちゃんが私に攻撃していたことを認めたくなかった。
その日、そのまま学校へ行った。
さっちゃんに会いたくない。会わないでくれって願いながらトイレに行く。
一人で行ったのが良くなかったのかもしれない。
あいにくトイレにはさっちゃんがいた。
え、さっちゃん。
私はさりげなくトイレから出ようとしたら手を引かれる。
「ねえなんで朝いなかったの?」
「今日提出の課題、やってなかったから」
嘘をついた。
でもまあ有り得る話でしょ。
「嘘はいいから」
バレた。
「ねえなんでルキちゃん」
目を逸らしたくなるような眼光が私に向けられている。
「だから、課題――」
「そういうのいいって」
さっちゃんは私に近づき、私の太ももを撫でる。
「ねえ、朝変な気持ちにならなかった?」
「うん。でも自分でなんとかした」
また嘘。
「ふーん。でも何回しても満足しなかったでしょ?」
「うん。そうだね。だから10回くらい――」
「誰に毒消ししてもらったの?」
私の心臓は少しギアを上げた。
彼女の目が怖い。
私が黙っていると、さっちゃんは大きなため息をつく。
「あーもういいや。ルキちゃん無駄に精神力強くて、気合いも入ってるし、私の苦手なタイプ。私の魅了に耐えないでほしいよ。本当に。」
さっちゃんは、少し微笑み、続ける。
「ねえ、コンビニって知ってる?私よく行ってたの。あの時私すごく太ってて、引きこもりだった。パソコンに齧り付いて、腹が減ればカップ麺を食べて、なくなれば母に買ってくるようにお願いする。母がいない時は自分でコンビニ行くの。コンビニ飯に慣れていた私にとってこの世界の食事に順応するのはそれなりに難しかったよ」
あ、あ。
……さっちゃんもか。
「ルキちゃん。焦ってる?まあそうだよね。それに怖いでしょ?」
「なんで……」
「ルキちゃん、キモすわりすぎだよ。精神年齢高すぎる。そんなんじゃすぐ転生者ってばれちゃうよ。本当わかりやすい」
チャイムがなる。
このままだと授業に遅刻しちゃう。
さっちゃんは微笑みを崩さない。
「授業遅刻しちゃう。ルキちゃん今日放課後空いてるよね。私がカズくんとよくいる空き教室きてよ」
私は今すぐこの場をさりたくて、頷いてしまう。
さっちゃんは、ありがとうと言って、トイレから出ていく。
私はしばらくその場から動けなかった。
授業には確実に遅行だろうな。
先生に怒られちゃう。




