第37話 学校③
「ルキってほんと賢いよね」
期末テストが終わって成績表を見せ合っていた時マリンちゃんにいわれた。
私はもうマリンちゃんとマロンちゃんの区別がつくようになっていた。マリンちゃんは左目尻のほくろが特徴でマロンちゃんはほくろがない。これで覚えた。
「ただ必死に勉強してるだけだよ」
これは謙遜などではなく本当の事実。みんなが先輩からの過去問をもらってこれはノー勉でもいけるわ。って言ってるやつも私は数週間前から準備している。
そのおかげもあって今回私は学年2位だった。きっと1位は例のリーダーの子。名前はウェロウさん。
この子は本当に賢い。というか優秀。
私が図書館に勉強に行った時絶対に先に勉強していた。しかも私よりずっと難しい参考書を使って。
だからきっとというか絶対1位はあの子
「でも、2位だよ。すごいよ」
みんなからの褒め言葉に愛想笑いをしつつ素直にありがとう。と言う。
謙遜しまくるのはちょっと良くないと思う。
「私は27位だった」
マロンちゃんはそう言って成績表を見せてくれる。
前回が59だったからすごい成長。私がマリンちゃんのも見ようとしたらバンッと叩くように順位のところを隠した。
「ま、マリンのは面白くないからいいよ」
そうやって隠すとみんなが一瞬ニヤリと笑い、どうにかしてみようとする。
「ちょ、まじやめろって!」
マリンちゃんは笑いながら言うのでまじではないのだと思う。
「早く見せろよー!」
そう言うのは最近グループに入った一軍女子。さっちゃん。本名はサラちゃん。みんながさっちゃんと言うので一応私も。
「そう言うあんたはどうなのよ」
あ、マリンちゃん話逸らした。
「えー。私〜?」
嬉しそう。きっといい順位なのだ。
その時、「なあ、お前らどうだった?」と聞こえる。
そう声をかけてきたのは一軍男子のカズくんだった。
私はこの子が嫌いだ。なぜかこの人は私にだけあたりが強い。
カズくんが声をかけるとさっちゃんは急にもじもじしだす。
さっちゃんはカズくんのことが好き。これは私たちグループが全員知っていることだ。
本人からそう聞いたわけではないけど行動を見ていたら誰でもわかる。多分カズくん自身も気づいている。
「カズはどうなのよ」
さっちゃんは髪を触りながら言った。
「俺、134位」
「えーひっく!」
「うるせえ」
さっちゃん楽しそう。
「なあルキは何位?」
「え……っと」
「2位だよ」
私の言葉が詰まっているとマロンちゃんが代わりに言ってくれた。
「へーお前やっぱ頭だけはいいよな」
やっぱ私この人嫌いだ。
「お前このグループなかったらガリ勉だし絶対ぼっちだよ」
そんなことわざわざいわなくていいでしょと思う。
「なんか、もう戻るわ」
こいつはなんか一言も二言も多い。
本当に同じクラスじゃなくて良かった。
カズくんが自分のグループに戻ってしばらくした時、マリンちゃんが、「なんでさっちゃんはあんなやつが好きなの?!」
「ちょっと声……」
私がそう言う。
「私、カズくんが好きだなんて一言も……」
「もうそういうのいいよ、バレバレだよ」
そうそう。マリンちゃんはイラつくと止まらなくなるんだった。
「うーん。でも私、ほんとにそういうのじゃない……」
「ほんとに?」
「うん」
結局マリンちゃんの順位はわからないまま私たちは解散した。
その足で補習クラスに行く。
クラスの前にある椅子に座って待っていると、クタクタになったラビーちゃんがくる。
「ルキちゃん……。いつもありがとね」
「いいよ。その代わりちゃんと勉強してね」
ルキちゃんは今回も補習だった。
この子は全然勉強しない。ほんとに。
最近はもう私の部屋にラビーちゃんがいるのが当たり前に感じてきた。
部屋に入ると、手を洗い、つまむ程度のお菓子とお茶を出す。
そして、補習の宿題を手伝う。
いつものラビーちゃんは宿題なんてしないが、補習の先生はクソ怖いらしいので、やっている。
「これってこう?」
「うん」
最近補習のかいもあって少し賢くなってきている気がする。
以前のこの子ならこの応用問題は手もつけられなかったはずなのに。
4時間ほどかけて宿題を終わらすと、「あ゛ー!」とラビーちゃんは背中から倒れ込んで、寝てしまった。
翌日は魔法の実習があった。
魔法の実習は本当に苦手。
みんなは人よりも高い炎を出すのに私は料理するにはちょうどいいくらい。
料理するにはちょうどいいというのはカズくんにいわれた言葉だけど。
座学はそれなりに簡単に伸びたのに魔法実技はまじで伸びない。魔法理論はそれなりに高得点なんだけどな。
先生は今は魔力量が少ないからこれから伸びるよって言ってくれたけど私は今すぐ伸ばしたい。
「お前、炎青じゃん!」
またあいつがきた。カズくん。
わざと空気多くしてんだよ。
炎の火力をどうにかしてあげようとしてるって気づけよ。
「わざとしてんの」
「言い訳いいから」
くそ。
「お前ほんと魔法ダメダメなんだから、炎青くするとか小さな努力意味ねえよ」
「……」
傷つく。
「ちょっと!!」
ラビーちゃんが割り込んできてくれた。
すると、嫌そうな顔をして舌打ちをしてカズくんは黙ってどこかに行ってしまう。
「もう……あいつなんなの?ルキちゃん?あんなの気にしなくていいからね」
「うん」
この日はこれが最後の授業だったので、放課後自主練をした。マリンちゃんたちは相変わらず私の周りに集まってきてだべっている。
私がデコに汗をかき湿気で前髪が変わってくると、さっちゃんがハンカチを「使う?」って渡してくれた。善意を無碍にしたくなかったので借りた。
「洗って返すね」
「いや、いいよ」
「え?」
「いや、でも汗が……」
「いや、いいよ。大丈夫」
「ならいいけど。でも臭いかもよ」
「いや、いい匂いだよ」
「?、そんなにいうなら……」
吐く息が白くなってきた時期。
今は冬休み期間で外で水魔法の練習してたら暴発して全身から水を被った。
凍えてこのままだと死にそうだったので、大浴場にすぐに向かった。いつもなら洗濯のリズムが変わってしまうからこういうことはしないのだけど、今は仕方ない。
震える体で大浴場の扉を開けると、昇天するかと思った。
あったかすぎ。
かけ湯をしようとすると、悲鳴。
「なんでルキ、いるの?!」
「え?」
悲鳴の正体はさっちゃん。
さっちゃんは私のちっぽけな面白みのない体を下から上まで見て、「うそ……女の子……だったの?」と。
「……え?」




