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第35話 学校

「今日……泊ってもいい?」


 ラビーちゃんはベットに座って両足を交互にブラブラさせながら言った。

 さすがにこの時間に一人で帰らすのは危ない。


「うん。いいよ」

「……やった」


 寝る準備をしていたらラビーちゃんが例の紙を見つけて私に持ってきた。


「これって……」

「……」


 そんなに凝視しないで。励ましてくれるならいいけど。


「ルキちゃん、すごいね」


 え、馬鹿にされた?

 しかし、ラビーちゃんの目はふざけているようなものではなかった。馬鹿にしているようなものでもなかった。


「すごいって……何?不合格だよ」


 ラビーちゃんは呆れたような顔で私を見る。

 

「ちゃんと読んだ?」

「え?」


 『不』という文字の幻覚でも見ていたのだろうか。そんなことを思いつつ、私ははラビーちゃんから紙をもらう。

 ……いや、不合格じゃん。

 この『不』は私にしか見えないのか?

 

「不合格って書いてあるけど、これって私にだけこう見えてるの?」

「……何言ってるの?」


 ラビーちゃんは顔を変えずにため息をつく。


「ここ……少し小さいけど、」

「……しけんかんとくすいせん?」

「そう」


 どうやら私は試験監督推薦らしい。

 なんだこれ。

 てか、もっとでかい文字で書いてよ。


「何これ」

「知らないの?この制度」

「うん」

「……過去問解いた?」

「…………う、うん」

「うそつかないの」

「……本当は、解いていません」


 ラビーちゃんは吹き出した。


「んふっ……まあいいや教えてあげる。これはね、3次試験の成績を鑑みて試験監督が合格、不合格を問わず自分の研究室に配属させたい1人を推薦する制度って感じ。多分」

「そんなのあったのか」

「あ、でも単位一個落としただけで即退学するって噂聞いたことある」

「え」


 勉強しまくらないといけない生活確定した。

 受かったら久しぶりの学校生活謳歌しようと、心のどこかでひっそりと思っていたのに見事に打ち砕かれた。


 でもラビーちゃんを家に呼んでよかった。気づけてよかった。

 不合格よりはずっとマシに決まっているよね。


「でも、教えてくれてありがとう。危うく気づかず無断欠席するところだった。」

「うん!同じクラスになるといいね」

「同学年なの?」

「私、ここの学校の一年生だよ」


 どうやらラビーちゃんは編入とかではなく、最初からの子らしい。

 そしてラビーちゃん曰くクラスというのはランクで分けた同じレベルの子達の集まり。

 クラスによって履修できる授業が異なるようで、数字が少なくなるほどより魔法が使えて、勉強ができるということなのだという。

 ラビーちゃんは2組らしい。

 すごい。

 

 ラビーちゃんは少し悲しそうに、笑った。


「あ、でもルキちゃんは強いからもしかしたら1組かもね。同じクラスになれないかも……」


 ラビーちゃんはこう言うけど、今回の試験で私はまったく勉強ができないと知ったから流石に1組ではないと思う。

 現実的に考えて3組とかだろう。

 ――


 翌日。

 昨日の夜、ラビーちゃんがベタベタひっついてきたり、恋バナを迫ってきたり、深夜テンションで勢いだけでキスしようとしてきたりして、全く寝れなかった。


「やっと寝れたと思ったら、一瞬で朝じゃんか」


 パサつく髪をかきあげながら、私は体を起こす。

 寝不足のせいか顔が痒いというだけで無茶苦茶腹立つ。

 体にまとわりついているラビーちゃんを剥がし取ってベッドから出た。

 もし今ここで寝てしまうと昼夜逆転のよろしくない生活が始まってしまうと私は知っているので、利尿作用が高い紅茶をがぶ飲みした。

 前世で、仕事に追われてねちゃダメな時によくやっていたことだ。

 これで寝落ちしても尿意で即起きれる。


 しかし、気づけば私はベッドにいた。

 寝ていたのか?

 下半身に違和感を感じ、見ると、ラビーちゃんが私のズボンを脱がそうとしていた。

 いや、違和感は別にある。

 ズボンがめちゃくちゃ張り付いているような気がする。


「…………ラビーちゃん?」

「か、痒くなっちゃうから!」


 鼻息を荒げてよくわからないことを言うラビーちゃん。

 ズボンはパンツを巻き込んでどんどん下がっていく。

 私は咄嗟にズボンを掴んだ。


「え、濡れ、……まだあったかい」


 利尿作用、張り付く、痒くなる、濡れてる……。

 あー終わった。

 泣きそう。

 というか、こいつはなんでこんなに興奮気味に私のパンツ下げようとしているんだよ。


 とりあえず、私はラビーちゃんを押し倒して速攻で着替えた。

 なぜラビーちゃんは残念そうなのかわからないが、とにかくやってしまった。

 私中身は20超えてるのに。

 この年で、するとは。

 死ぬほど酔った訳でもないのに。

 恥ずかしい。


 ――


「今日のこと誰にも言わないでね」


 私は当たり前のように私の部屋でご飯を食べるラビーちゃんに言った。


「うん。言わない。ラビーとルキちゃんだけの秘密だね。ふふっ」


 なんでそんなに嬉しそうなのか。

 でも言わないでくれるのは本当に嬉しい。

 こんなのみんなにバレたら、一生笑い物だもんね。


 そんなことがあった日の翌日から、ラビーちゃんはありがたいことに泊まりがかりで私の入学手続きを手伝ってくれた。

 一番心配な工程をやってくれたのは本当にありがたかった。

 手続きを終えた私は来月から正式に学生だ。

 

「そういえば髪切った方がいいかな」

「ダメ」


 私の提案を本気で拒否するラビーちゃん。


「ラビー、今のルキちゃんの髪型が好き」

「ありがとう」

「ラビーに言わないで勝手に切ったら怒っちゃうから」

「わかった」


 そんなに今の髪型似合ってるのか。

 自分では気づけなかったので、そう言ってくれてありがたい。


 初登校日が近づいてきた。日に日に自分は学生なんだという実感が湧いてくる。

 ソワソワして、入学手続きを終えた人に送られてくる学校のパンフレットのようなものを見返した。

 すると入寮必須という文字に目が止まった。


「ねえ、寮にいなくていいの?というか、すっかり忘れていたけどラビーちゃん学校は?」

「今長期休みなの」


 本を読んでいたためこちらを向かずに答えるラビーちゃん。なんか同棲半年目見たいな雰囲気だ。


「ふーん」


 こんなしょっぱい反応をしているが、実は心が踊っていた。

 『長期休み』この言葉が嫌いな人間はいるのだろうか。いや、いない。

 長期休み、私はきっと毎日しっかり勉強して、筋トレして、自分磨き頑張りつつ、いっぱい遊ぶぞ。


 ――


 時間はあっという間に過ぎていき、今日はもう入学式だった。ラビーちゃんも今日から登校開始のようで、一緒に学校に向かった。ラビーちゃんの授業は昼かららしいけど。


 学校に着く。

 クラス表の張ってあるところに行くと見たことある金髪が目に入る。

 金髪プリン頭の2人組。

 あっちも気づいてくれて手を振ってくれた。


「ルキ君も受かったんだね!よかったー!」

「う、うん」

「これからよろしくね」

「よろしく」


 喋り始めたはいいもののどちらがマリンでどちらがマロンなのかわからない。

 まあとりあえずクラス見よ。

 想像していたけど、私の名は1組にはない。

 2、3、4と見ていってもない。

 もしかしてと思い、6を見ると私の名が書いてあった。


「6だ……」

「きっと大丈夫だよ。毎年クラス替えはあるんだしさ」


 まあ、そうか。

 これから必死に努力しよ。

2026/1/17

1時26分微改稿

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