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第31話 誘拐⑨

 とある場所のギルドではある情報が話の話題になっていた。


 ―― なあ、あの噂知ってる?

 ―― 噂って?

 ―― お前知らねえの?魔王級冒険者のネイビが死んだって話。

 ―― あー。それね。それ、噂じゃねえよ。

 ―― え?

 ―― マジでネイビ死んだんだよ。同じ魔王級冒険者フレアに殺されたって話だ。

 ―― いや、フレアならあり得るわ。フレアクソ強いって話だもんな。



 *****************


 「いやールキちゃんには内緒にしておきたかったなー!」


 フレアさんがネイビを殺した日の夜、宿屋で狂戦変化(マッドシフト)について聞いたらフレアさんは私にそう言って笑った。


 フレアさんがネイビをぶっ飛ばした後、フレアさんはさっきまでの凶暴性が嘘だったかのように私に接してきた。

 フレアさんは無事でよかったと、私に抱き着いて号泣していた。赤子も引くほどの泣きようだったように思う。ギャーギャー、ピーピー、狂ったように泣くので疲れていた私の耳には効果抜群で、何度か気を失っていたかもしれない。記憶が断片的なのはきっとそのせいだろう。


 私とフレアさんが接しているのを見たアゲーラとハッチは、本当に知り合いだったんだ、という驚きより、フレアさんが本当はこんな人だったんだっていう驚きの方が上だった。


「ふ、フレアってこんな泣くんだ?なんか、ガキっぽいな……」


 ハッチは引き気味でボソッとつぶやいていた。

 アゲーラはフレアさんに少し憧れのような思いを持っていたらしく、ものすごく落胆して、最後には何も見ていないことにしていた。


 幸いなのか、そうでもないのか、フレアさんがすごい剣幕で泣きわめくので、私のことを『ルキちゃん』って呼んでいる事実が薄れて私が女だってことはアゲーラとハッチにはばれなかった。


 アゲーラは辛そうな顔をして「俺疲れたから、帰るわ。またどこかであったらよろしく」っていって帰っていった。帰り道も知らないだろうに。きっと、今すぐここから離れたくなるほど泣きわめくフレアさんは効いたらしい。


 ハッチは、本当に疲れていたようで気付いた頃には消えていた。


 また、あの3人とどこかで会いたいな。



 結局フレアさんは全く泣き止む感じがしなかったので、私が子供をどこかに連れていくみたいな感じで近くの宿屋に入った。こどおじならぬこどおね。子供部屋お姉さんではなくて、子供みたいに泣くお姉さん。


 宿屋に入って、私がミイさんからもらった紅茶をフレアさんに出してしばらくすると、フレアさんは落ち着いた。勘弁してくれよって感じ。

 しかし、あれだな。なんというか、この紅茶砂糖を大量に入れて味を誤魔化さないとほんとまずいな。


 落ち着いてしばらくした頃私は狂戦変化(マッドシフト)についてフレアさんに聞いた。でもフレアさんは、私には知ってほしくなかったと笑った後、深いことはずっと「この紅茶なんかあんまりおいしくないね」とか、「今日、天気やばかったね」とか、「目、だいじょうぶ?」いう風に必死で話をそらして誤魔化すので結局魔王級の自身強化系魔術ということしかわからなかった。

 

 私には隠し事しないでってフレアさんは言うくせに、自分は隠し事するんだもん……なんか心がモヤモヤする。

 なんか私、重い彼女みたいでなんかやだ。


 フレアさんは、かなり私の目を心配してくれた。


「あたし、ルキちゃんの目めっちゃ気にいっていたのに」って私の目の傷を人差し指で撫でた。

 まあ、最初は見えないし、感覚があんまなかったから、撫でられてるって気が付かなかったんだけどね。

 フレアさんは自分の持っている黒っぽい服を切って、私の眼帯を作ってくれた。


「ルキちゃんの体の中は誰にも見せたくない」ってよくわからないことを言いながら。



「ね、疲れたでしょ?もう寝よ」


 フレアさんはシングルベットに寝転がって、自分の横をポンポン叩いて、ここにおいで、とジェスチャーしている。

 いつもの私なら、フレアさんのぬくもりとにおいを感じながら寝られるって少し興奮するのだろうけど、今回に至っては話が別。マジで寝たくない。


 私がフレアさんのことをフル無視して魔導書を読み始めたらとても悲しそうな顔をしだしてなんだか耐えられなかったので、結局フレアさんの横にもぐるように入った。

 暖かくて、いい匂いで、柔らかい。なんだかドキドキするんだよな。


 しばらくすると私の耳の横でフレアさんの寝息が鳴りだした。私の体に当たっているフレアさんの胸が一定のリズムで上がったり下がったりして少し気持ちい。てかフレアさん寝るとき肌着着ないんだな。薄い服の下のフレアさんの体の感触が分かる気がする。


 私はまだ寝ていない。

 私はネットで見たことがあるのだ、ショートスリーパーの人の話を!あの人は一日で寝る時間は1時間もない。ということは1週間で7時間寝ればいいということ……んなわけないか。あの人はそういう才能があっただけ。


 ベットに入って1時間ほど経った頃、私はあきらめて寝た。なんかテスト期間の真夜中に仮眠するかしないか葛藤していた時を思い出した。まあ私はすぐ寝るって判断をするタイプでしたけど。



 ――――


 私が起きた時、ベッドの私の頭があった部分はびしょびしょだった。

 よく、失恋の時とかに枕から涙しぼれるくらい泣いたって表現するけど、今回の私の場合に限っては表現じゃなくてガチ。

 まあ、汗って可能性はなくはないけど、目のあたりがカピカピだったので涙の可能性が高い。


 まあ泣いた理由はわかっている。あんなクソみたいにしんどい夢見たらそら泣きますよ。

 医者になれるぞってくらい肺を焼いたんだから。



 フレアさんが起きてきたとき、ベットの湿り気というか濡れ感が私の涙だとすぐに分かったらしく、もしかして私が強く抱きしめすぎて痛かった?とか心配してくれた。

 私は原因が悪夢ってことにしておいた。まあ、嘘じゃないし。


 フレアさんは私が誘拐されてしまった理由が自分にあるって本気で思っているらしく、よく罪滅ぼしをしようとしてくる。

 最初は料理を作ってくれたんだけど、料理の腕はお察しの通りって感じで、余計罪を重ねてない?って感じだし、マッサージをしてくれた時は、なぜかマッサージする側のフレアさんが喘ぐからちょっとそういう気分になったし、あ、ちなみにマッサージはマジで気持ちよくなかった。途中おしりを大きくするためのマッサージをしてあげるってやってくれたんだけどこれがマジで痛くて、なんかちょっときわどいとこ触るからくすぐったかったしで、あんまりよくなかった。あと、私、自分のおしりは小さいほうがいいって思っている人です。


 フレアさんは私があんまり喜んでいないと気づいたらしく、何かやってほしいことある?って聞いてきたので、狂戦変化(マッドシフト)について教えてくれって言ったら壊れた。

 挙句の果てには、深いキスのやり方を教えてあげる、って言ってベロについて語りだしてきたのでもう狂戦変化(マッドシフト)について教えてもらうことはあきらめた。


 ――――



 ――すみません。ルキって人ですか?


 どういう声のかけ方だよっていうのはおいておいて、最近はこうやって声をかけられることが増えた。これで4回目だ。


 私が声をかけてきた女性の方に、私のことなんで知っているのですか?って尋ねたことがある。

 その女性は「最近、知っている人は知っている、マイナーな有名な人になっているんですよ」って教えてくれた。

 どうやら私があの施設で活躍したってことを言いふらしている人がいるらしい。

 心当たりはない、きっとフレアさんではないだろうし、一体誰がなんのために言いふらしているのだろうか。

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