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第28話 誘拐⑥

 剣を構えるドンバと私の目はしっかりあっていた。だから相手が動けば少しは反応できる。はずだった。


 気がつくと目の前からドンバの姿が消えていて、左手から激痛を感じた。

 私の左手はさらに短くなっている。

 私は少しの声を漏らした後、かなり火力の高い火属性魔法で左腕を止血した。


「おお!すごく手際がいいじゃないか。何千回も腕を切り落とされた経験でもあるのか?あと痛かったら声出してもいいんだよ」


 後ろから声が聞こえるので振り向くと、目の前にいたはずのドンバがいた。

 ドンバの剣には血がついている。きっと私の血だ。


 見えなかった、ドンバの攻撃が。

 速いなんてもんじゃない。あれは生物が出せるスピードなのか?

 私は体勢を整えるとまた剣を構える。

 さっきよりも目を凝らす。


「――うっ!」

「いい声じゃん」


 私の頬に切り込み一本入る。

 そしてやはりドンバは後ろにいる。


 本当に見えない。これは魔法かもしれない。

 私はあまりの異常な速さの攻撃からそう推測した。


 私の視界に血飛沫が飛ぶ。もちろん私の血。

 相手の魔法がどんなものなのか、痛みに耐えて攻撃を食い続けているけど全くわからない。まず本当に魔法なのかという疑問さえ湧いて来た。第一魔法特有の匂いが全くしないのだ。そして音もしない。

 一体どうなってるんだよ!


 私はバックステップを踏みドンバから離れた。

 コツコツと歩いて近づいてくる。

 私はその行為にものすごい違和感を感じた。


 あんなに速く攻撃できるのにわざわざ近づく必要はあるのか?

 ドンバはある程度近づいてくるとまた高速で私を切りつける。殺さないように薄く、かつ痛みと血が出るように。


 攻撃が落ち着くとまた距離をとった。

 絶対に距離があいつの魔法には関係している。それを見つけてやる。

 またコツコツ歩いて近づいてくる。その様子をジャッジするかのように見た。

 ふと足元に目がいく。綺麗に黒光した革靴を履いていてすごく重そう。


 あれ?私を切り付けている時、足音してるか?


 次の攻撃は耳を凝らしてわざと喰らう。

 今まで意味のわからなさと痛みと恐怖でわからなかったけど、私の体を切る直前だけ足音がして、ドンバがつけているであろう、香水?の匂いがする。制汗剤に似た匂いで正直いい匂いではない。

 ここから考えるに、切る瞬間だけ実態があるとかなのか?

 

 これに気がついたことで一度だけ相手の剣を防ぐことができた。消えた足音が復活した瞬間剣を無茶苦茶振り回してたらたまたま剣に剣が当たって防げていただけだけど。

 でもわかった。ドンバはいきなり後ろから来たり、横から来たりはしない。必ず一直線だ。


「よく防げたな」

「………..」


 流石に血がやばい。このままだと出血死する。

 私は剣を熱し、斬り込みに押し当てた。

 肉の焼けるような匂いとキュゥゥゥーーーという音が耳を突く。


「君、ほんとすごいね。俺ちょっと興奮しちゃう」


 黙れ。


「反応してくれても良くなくなくなくない?」

「黙れ」

「効くぅぅぅぅぅぅ!女の子の罵声最高、だよ」「叫びの方が好きだけどね!」


 ドンバは消え、血が舞う。


「っっ!」


 もうこれどうしたらいいわけ?!ズルじゃん!!

 ドンバは攻撃の手を休めて、気味の悪い不気味な笑みをして見せた。


「君、才能ないでしょ」

「え?」

「才能なくて、自分の身を守る魔法が使えないんでしょ!」


 ドンバは笑った。声を出して。


「あはははははは!ゴホッゴホッ!あー面白い。もしかして気にしてた?」

「は?」

「いやー俺が才能ないでしょって聞いた時すごい顔してたから、笑っちゃたよ!君、芸人なれるよ!デビューしたらサインちょうだいね」

「……….」


 ムカつく。でも怒りで覚醒とか私はしない。きっと怒りのまま突っ込んだら醜く肉の塊になるのがオチ。

 

「かわいそっ!」

「ーーっっ!」


 私が黙っていると、その間にドンバはまた私の体に一本傷を作った。相変わらず見えない。なんならさっきまでより速い気もする。

 今回の斬撃とは少し違う。傷が深い。骨までいっているかもしれない。

 相手はまだ全然本気じゃなかったんだ。


 こいつには勝てない、逃げろ!と脳が司令を出している気がする。

 なぜかいきなり、気持ちが下がっていく。なぜだろう、バカにされたから?それとも単に敵が強いから?正直勝てるビジョンが浮かばないというのもあるかも。

 もう気持ちは諦めモードだ。

 試練って失敗したらどうなるんだろう。いままで無敗だったのに、悔しいなー…..。


「あれ?おーい。もしかして戦意喪失しちゃった?」

「…………」

「ごめんじゃん」


 いちいち癪に触れるような抑揚で話しかけてきて、腹が立つ。でも正解。戦意喪失しちゃった。


「ねーもっと戦おうぜ!」

「……」


 でもせめて……。

 私は戦意喪失したままトボトボとドンバの方へ歩く。

 私がドンバの目の前に立った時、ドンバは私の目線に顔を合わせた。


「ねえ君さ、女の子でしょ」

「……」

「俺そういうのわかっちゃうのよねー」


 ドンバの手がシャツの上から私のお腹に触れる。そしてシャツを引っ張ると、中に手を入れられた。

 ドンバの手は私の胸を直接乱している。

 ゴツゴツした大きな剣士の手。


「どう?気持ちいでしょ。俺うまいんだよね。 君が望むなら俺の性奴隷にしてあげる」

「……」

「気持ちいい時も鳴いていいんだよ」

「んっあっ!……これでいい?」


 私は殺意、敵意を無にして持っている剣を油断しきっているドンバの目にズブっと突き刺した。


「ぎゃああああぁぁあぁあぁぁぁ!!」


 ドンバの目のからは赤黒い汚い液体が溢れる。

 きっとポーションで回復されるけど、この一瞬だけでも苦痛を与えられたならいいや。


「このクソガキィィィィ!!」


 ドンバが怒りのまま剣を降ると、斬撃は私の右目を見えなくして、身体は吹き飛んだ。手から剣が離れる。


「そんなに死にてえなら殺してやるよ!」


 コツコツと足音が近づいてくる。


 あーやってしまった。完全に怒らせた。あのまま胸を触らせていたらきっと、次は服を全部脱がされて、犯されたけど、生きてはいられたのかな。

 謎の後悔が頭をよぎる。


 ここは漫画とかアニメみたいな世界だけど、私はその漫画、アニメで活躍する人ではない。噛ませ犬とかになるんだ、きっと。

 ここで私が死んで、主人公が「貴様!!」とか言ってやって来て一瞬でドンバを殺す。で、主人公の強さの再認識って流れでしょこれ。


 ドンバは私に馬乗りになり、首を両手で押さえつけた。空気を求め、口を開くたびにヒゥ、と情けない音がする。

 ドンバはさらに押さえつける力を強める。完全に息が詰まりガ、ガ、ガ、っと壊れた機械のような音が私の口からした。

 

目からは自然と涙がこぼれてくる。真上にあるドンバの顔からは血がポタポタと垂れてきていて、それが異常に熱い。


 死ぬ。

 そう無意識のうちに考えた瞬間今までの記憶が映画を100倍速で見ているかのように高速で蘇る。映画なら早すぎて何が起きてるかわからないだろうが、この記憶はすべて理解できた。

 ……ただなんだか違和感がある。

 なんだろうこの既視感。


 そうだ。いつもの夢。

 あの夢みたいに高速でループしている。情報過多で頭が先に死んでしまいそうになるあの感じ。

 そう気が付いたとき、記憶の再生が止まる。そして、さっきまでのドンバとの戦闘場面だけがループし始めた。

 そのループは再生されればされるほど短くなっていき、ついにはたまたま攻撃を防げたと数秒間だけが繰り返される。たった、数秒のことなので、ループ数が異常だ。3コマで終わるパラパラ漫画を、延々と繰り返しているみたい。


 私はこのループの中で、相手の攻撃を理解した。理解したというより理解させられたというのがただしいのかもしれないが。


 ドンバは自分の顔の向き一直線上の一定の距離だけ瞬時に移動し、一瞬で私との距離を詰めている。詰められる距離は大体5メートル以内くらい。わざわざ歩いて近づいて来ていた理由はこれだろう。

 足音や匂いを感じるのが攻撃の直前だけなのは距離を詰めたあとの攻撃は、ドンバ自身の剣さばきだけで行われているからだ。多分。

 

 そして全体を通してこいつの攻撃には重要な鍵となるポイントが存在していた。攻撃には呼び動作があり、そこから攻撃までは一定のリズムがあるということ。

 つまり極端に言うとこいつの攻撃を捌くのはリズムゲーだ。


 私は勝利の希望の光を見つけた。生きられるかもと思った人間は強い。

 戦闘意思が復活する。


「ぁぁぁぁぁ!」


 出ない声を出して、気合だけで腕を動かす。

 手をドンバの顔に持っていくと、顔に触れて、親指を潰れている右目に突っ込んだ。


「ああああぁぁぁ!」


 ドンバは私の首から手を放し、馬乗りになっていたその体は少し浮いた。

 その間にドンバを退かし、逃げるように走る。剣を拾うと、ガクガクと地震のように震える足に力をいれて、剣をドンバに向ける。


 あいにく、リズムものは私の得意分野だ。

中学時代、近所のボロいゲーセンで、誰もクリアできなかった鬼畜難易度の機体をフルスコアで叩き出したことがある。

……いける。反撃できる!

昨日中にこの話を投稿するつもりだったのですが、気がつくと日付変わっていました。本当にごめんなさい

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