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第26話 誘拐④

 フレアさんが依頼した?どうして。

 正直ハッチ君が来るよりフレアさんが来てくれた方がいいと思うんだけど。お金かからないし、フレアさん強いし。……何か来られない事情でもあるのかな。


「フレアだと?おい、ルキ!フレアとお前はどういう関係なんだ?」


 今まであまり顔に感情を出さなかったアゲーラが驚いた!という顔をした。


「え、フレアさん知ってるの?」

「知ってるも何もフレアは魔王級ハンターTOP10の一人だぞ」


 え?何それ。フレアさんそんなこと一言も言ってくれなかったかったんだけど。なんか隠し事されてたみたいでショックなんですけど。


「で、どんな関係なんだよ」


 これ、叔母って言ったら大変なことになりそう。と思ったのでとりあえず今日のところは誤魔化す。

 

「うーん。一緒に冒険する仲間って感じかな」

「は?え、あのフレアと一緒に冒険できるってもしかしてルキってめっちゃ強い?」

「いや、そんなことない、変なカブトムシで苦戦するくらいだもん」

「いや、カブトムシって。カブトムシ型の魔物なんていないだろ」


 は?え、あれカブトムシじゃないの?じゃあもしかしてゴキ……いやちがうな。うん。あれはカブトムシだ。


「もういいからいいから!俺の話を聞いてくれ!」


 ハッチは私たちの話を強引に止めると、ポケットから何かを取り出した。

 その何かはここの施設のマップだった。ハッチはそのマップに記されていたばつ印を指さした。


「ここには俺が侵入してきた穴がある。そっから出るぞ。」

「わかった。、この二人も一緒に脱出してもいい?」


 私はアゲーラとセルジオを指差す。


「ああ、かまわねえよ。それくらい」

「で、協力って何?」

「何があっても足だけは引っ張るなよ」

「あ、はい」

「じゃあこの扉壊したらすぐ俺についてこい」


 ハッチはそう言ったのち扉を破壊し、大穴ができる。驚いたことにほぼ無音だった。どうやっているのか、と尋ねると、「企業秘密」と隠された。


「じゃあついてこい」


 ハッチが最初に穴を通った。その次に、私、アゲーラの順で穴を通る。あとはセルビアだけだ。


「セルジオおいで」

「俺は逃げたくねえ」


 私の催促にセルジオは抵抗した。

 

「は?お前何言ってんの?」


 そう言うハッチの声は明らかイライラしている。

 

「俺は行かねえからな」

「あっそ、じゃあおいてくわ、俺の仕事はルキの救出だけだから」


 ハッチはそう言い捨てると私の手を取りそそくさと歩き始めた。

 心がモヤモヤする。せっかくみんなで協力しよみたいな感じだったのに。ハッチも黙って歩いていないでセルジオを説得してよ。あーなんでこうなっちゃうかな。


 私たちが歩き始めて少し経った頃、ハッチの肩を誰かの手が掴んだ。

 手の持ち主はアゲーラ。


「おい、ちょっと待て」

「んだよ!俺の仕事の邪魔すんな」

「お前に仕事を依頼したい」

「あ?」


 アゲーラの顔はふざけているようには見えない。

 ハッチはアゲーラの手を「バカなこと言うな」と引き剥がした。


「まず俺は仕事の掛け持ちはしない主義だ」

「……..」

「わかったら黙ってついてこい」

「…..報酬を2倍出すと言ったら?」


 このアゲーラの言葉で始めてハッチがアゲーラの方を向いた。


「……依頼内容は?」

「やっぱり金かよ。依頼内容はこの施設の破壊だ。」

「金に決まってるだろ。……本気か?」

 

 ハッチは依頼内容を聞くと黙り込んでしまった。

 施設の破壊?ハッチがどれだけすごい仕事人でもいくらなんでも厳しいんじゃ。


 私はアゲーラに尋ねた。


「どうしていきなり?」


 アゲーラは「セルジオに….」と話し始めた。

「セルジオになんで行きたくないのか、と尋ねたら負けたままで帰られるか!、って言われたんだよ。

 なんとなくセルジオはそういうやつだってわかってたからじゃあここを破壊したら帰るか?と続けて尋ねると、あいつ頷いたんだよ。

 俺も正直ここ破壊したいって気持ちはあったから」

「で、依頼したと」

「まあそう言うこと」


 なるほど、そうだったのか。てか、アゲーラって金持ちなのか?2倍払うって。


 ずっと黙っていたハッチは「もし払わなかったら、お前のことぶっ殺すからな」と顔を上げてアゲーラを見た。


「殺せるものならな」

「殺せるさ」


 ハッチは条件として私たち全員に協力を求めてきた。

 アゲーラは「協力ってのは邪魔すんなってことだろ?」と少し笑う。

 ハッチは舌打ちした後、悔しそうに「俺一人じゃやり遂げられねえんだよ」と漏らした。

 ハッチは説明した、どんな協力をしてほしいのかを。

 私は説明内容をほとんど覚えていない。

 

 ハッチは「お前らには人を殺してもらう」と説明を始める。

 その瞬間私は彼の言葉に明らかに動揺した。周りから見たらすぐに動揺していると分かってしまう行動や顔をしてしまっていたかもしれない。

 今まで、魔物という生物は殺してきた。でも人はない。  

 機会がなかったというのもあるけどあってもしなかっただろう。生物は生物でも魔物と人の間には超えてはいけない一線があると私は考えていたから。

 この後ハッチは色々説明を続けていたが、私の中では、人を殺してもらうという言葉から先に進めていなかった。


「以上だ」と説明が終わる時、私は説明内容をほとんど覚えていなかった。

 私の喉が鳴る。

 私はこれからやろうとしていることの大きさを認識した。生半可な気持ちではできない。


 アゲーラは顔色ひとつ変えずに「了解」と一言。

 なんでそんなに淡々としていられるの?

 軽く動悸がする。

 そんな私のことを時間は待ってくれない。

 

 アゲーラはセルジオを呼びに行く、と言って来た道を戻って行った。

 ああ、時間よ進まないで、と思う。私に心の準備をさせて、と思う。

 

 アゲーラとセルジオが私たちに合流した。

 セルビアは合流したと同時に「俺があのデブを殺す!」

 と怒鳴った。

 ハッチは「はい、はい」と流すと殺さないといけない幹部の説明を始めた。

 巨漢のシック。

 セルボのことを殺した細身のスィン。

 幹部の中で最もまともなディーセント。

 狂剣士のドンバ。


 こいつらを殺せばここの施設は統率を失い、勝手に壊れていくらしい。

 最後にハッチは私たちに「やれるか?」と聞いて来た。

 アゲーラとセルジオは堂々と頷く。

 そしてみんなの視線が私に集中した。

 私は覚悟を決める。そして同時にこれは仕方がないことだ、と健全でいることを諦めた。


 私が頷くとハッチは「じゃあついてこい」と私たちを武器庫に連れて行ってくれた。


「お前ら今手ぶらだろ?なんか使いたいものがあればこっから選べ、できるだけ早くしろよ。」


 私は武器庫に入ると剣がたくさん置いてるところに行った。いつも使っているような軽くて細い剣がないか探す。

 なかなかいいのがない。ほとんどが両手剣だ。

 ん?これは?

 私は剣を一本取った。それは剣身が細くてきれいな短剣。まだあまり使われていないように思う。つかは赤と緑のクリスマスカラーでかなりダサいけど。まあこれにするか。そう決めた時よく聞くあの声が聞こえた。


 (我を宿しものに試練を与える。剣を用いてドンバを討ち取れ)


 ドンバというのは狂剣士ってハッチが紹介していたやつだ。きっと剣士同士はぶつかり合う定めなんだろう。


 私は選んだ剣を持ってみんなのもとに近づいた。

 アゲーラはいわゆるメイスを選んでいて、ハッチは鎖をそのものを武器に選んでいた。セルジオは素手だった。


 ハッチは私たちの顔と武器を見渡す。

「準備よさそうだな、じゃあ作戦を教える」


 作戦は私が狂剣士のドンバ、セルジオが巨漢のシック、アゲーラが細身のスィン、ハッチがディーセント、をそれぞれ討伐する。終わったらここに集合。ただそれだけだった。



 「じゃあまた後で会おう!」


 アゲーラのその言葉を合図に私たちは走りだした。

 セルジオとアゲーラは武器庫出て左、私とハッチは右。

 

 今のこの状況になんだか興奮している自分がいる。手に汗が滲むし、心拍数がいつもより少し多い。


「そういえばフレアさんは今何をしているの?」


 そんな自分が気持ち悪くて、この状況に関係ない質問をした。

 

「今、ネイビと戦う準備をしていると思う」

「え?」

「フレアはルキを誘拐した連中の親玉ネイビと戦わないといけないからルキの救出を俺に依頼したんだよ」

「そういうことだったのね」


 話しているうちに幹部がいるであろう部屋の扉が2個見えてきた。


「じゃあ俺こっちいくわ。負けんなよ」

「ハッチこそ」


 私たちは軽く手を振って別れた。そして扉に手をかける。

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