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第24話 誘拐②

 無言で作業をしていたらカンカンと鐘が鳴り響いた。そして監視していた巨漢が叫ぶ。


「集合!!」


 私たちはその声に従った。


「今のは終業の鐘だ!覚えておけよ!じゃあ明日は早朝からここに集合!では解散!!」


 巨漢が話を終えると、私たちはその辺にいた5人組に分けられて独房のような部屋に入れられた。私と一緒になったのはアイゴとアゲーラと少し目つきの悪い男の子と坊主の男の子だった。


「あぁぁぁ疲れた!」


 部屋に入るなりアイゴは声を漏らし、倒れこむように床に座った。

 アイゴはずっと何やらブツブツ言っているが部屋の中には気まずい空気が流れている。そらそうだ、私とアイゴとアゲーラは作業中少し話していたが、それ以外は知らない人なのだから。

 

「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」


 私がおなかすいたな、なんて考えながら部屋を観察していたら、坊主の男の子が奇声をあげながら泣き始めた。そして頭を地面に打ち付けている。

 ちょ、ねえやめな、頭われちゃうよ、と言いたかったが、言えるような空気じゃなくて、「ちょ、」まで声が出て止まってしまった。いきなりこんなところに来たらこうなってしまうのは無理もない、しばらくやらせてやろう。と心の中で言い訳をした。


「ちっ!」「てめえ!うるせえんだよ!」


 目つきの悪いやんちゃしてそうな男の子は舌打ちをした後、坊主の男の子の胸ぐらにつかみかかった。それにともない坊主の男の子の奇声は大きくなる。そろそろ耳をふさぎたい。


 目つきが悪い方はそのまま坊主の背中を壁に押し付けた。あの感じ坊主の首は締まっている。

 

「やめろ」


 私がそろそろ止めたほうがいいかなと思うと同時に私の後ろから声が聞こえる。

 振り返ると声の主はアゲーラだった。目つきの視線がギラリとこちらを刺した。


「なんだよ、俺が悪者って言いたいのか!」


 典型的なヤンキーじゃねえか。あーやだやだ。

 目つきは、腰を低くく顔を突き出してアゲーラに近づいていく。アゲーラと目つきの直線状に私がいたため、目つきは「どけ!」、と私の肩を掴んでどかした。


 アゲーラと目つきは黙ってにらみ合った。

 私は目つきの顔を観察した。よく見るときれいな顔だ……。無理やり眉間にしわを寄せて目つきを悪くしているだけでもとはあんな顔じゃないだろう。どうも色っぽく見える。きっとあのぷりぷりな発色のいい赤ピンクな唇のせいだろう。ヤンキーのくせに。


 今にも二人は殴り合いそうという雰囲気が部屋に漂う。


「ちょっとやめなよ二人とも」


 私はそう声をかけた。こんな狭い空間で殴り合われたら溜まったもんじゃない、ストレスではげるわ。

 目つきは私の声を聞くと舌打ちをしながらもといた場所に戻っていった。意外とものわかりがよくて助かった。


「ねえ、あの自己紹介しない?まずボクはルキって言います、よろしく」


 とりあえずこの空気をどうにかしようと私はアクションを起こした。それにアゲーラは乗ってくれる。


「俺はアゲーラです」

「……」


 はい気まずい。なんで続かねえんだよ!せめてアイゴは続け!

 しばらくの間をおいて次に自己紹介をしたのは意外な人物だった。


「セルジオ……」


 え!目つきがしゃべった!

 そう、次に自己紹介したのは目つきが悪い男の子ことセルジオだった。

 私がアゲーラの方をチラ見した。きっと私もあんな顔をしていたのだろう。

 セルジオは自分の名前を名乗ると坊主の方をにらみつけた。坊主はギュッと体を縮こませ、泣き止んだ。


「お、俺は、セルボっていいます」


 坊主の奴ことセルボはまだ泣いていた名残を残した声で言った。

 相変わらずアイゴはしゃべらない。

 アゲーラは立ち上がるとアイゴのそばに行き、アイゴの頭をはたいた。


「いって!」

「おい、いい加減に正気をもどせ」

「きもいやつを演じていたんだよ」

「は?」

「あのヤンキーに絡まれないようにするにはやばいやつを演じたほうがいいかなって」


 なんだこいつ。マジで。演じなくても、もともと十分変な奴ではあるだろ、自覚してないのか?


 とりあえず全員の名前は知れた。さてこっからどうするか。


「あ、あの、いったん自分たちの知っていること共有しま、せんか……」


 そうアイデアを出したのは坊主のセルボだった。

 ナイスセルボ!でももっと早くしゃべってほしかったかな。


「……」


 おい、だれか反応してやれよ。

 ああ、ため息が出そう。結局私か。


「俺は冒険者で、野宿していたらここに連れてこられた」


 おい!アゲーラ!ワンテンポ話始めるのが遅いんだよ!

 私がいこうと思ってたところだろうが!

 違う違う。落ち着け。


「へーアゲーラ君って冒険者なんだ」

「一応ね、あとアゲーラでいいよ」

「あ、うん」

「ルキは何か知っていることある?」

「それが、何も覚えてないんだよね」


 私は自分の素性を隠すため覚えていないと言った。


「なあ、セルボは何か知らないの?」


 そうだ、セルボにも聞かないと。セルボがこの話の言い出しっぺなんだから。


「俺、全部知っちゃってる」

「え?」


 私とアゲーラの声がかぶった。アイゴとセルジオもセルボの方を見ている。


「ここはきっと魔王級冒険者のネイビが保有している地下作業場だよ!」

「ネイビ?」

「ルキ知らないのか?この辺じゃ有名だよ」


 そう教えてくれたのはアゲーラ。

 アゲーラが言うにはネイビは悪徳な金稼ぎをしている冒険者らしい。実力は魔王級に恥じないとも言っていた。


「で、その悪徳なのがこの地下作業場ってこと?」

「セルボの言うことが本当ならそういうことになるな」


 なるほどそういうことね。なんとなくわかってきた。


「ね、ねえセルジオ君は何か知らない?」


 私は恐る恐るセルジオにも問うた。セルジオは一瞬嫌な顔をすると「何も知らない」とだけ返ってきた。

 次はアイゴだけど….。アイゴはいいか。なんか聞くのめんどい。

 私がアイゴに何も聞かないでいると


「ちょい!俺にもきーけ!」


 アイゴはそう鳴いた。


「えー、ちょっと君めんどくさそうだったから」


 冗談っぽくそう言うとセルジオ以外が笑ってくれた。

 結局アイゴにも聞いたが、案の定何も知らなかった。


 そんな会話をした後、廊下から複数人の足音が聞こえてくる。そして私たちの部屋の横で止まった。横にも部屋があるらしく横から「早く寝ろ!」と大人の男の声が聞こえてくる。

 修学旅行のガチ怖い版じゃん。

 次に私たちの部屋の前で足音が止まり、すごい勢いで扉が開く。


「早く寝ろ!」



 すごい声量。もし寝てたら起きちまうだろ。

 

 男たちが部屋から出て行った後、私たちはすぐに寝た。



 

 早朝、私はアゲーラに揺すられて起きた。


「おい、起きろ!」「多分遅刻だぞ!」


 私は飛び起きて急いで準備をした。この時少し意外だったことがある。私のせいで遅刻しているのに、私以外のアゲーラ、アイゴ、セルジオ、セルボは私のことを待ってくれていたのだ。なんと優しい。

 まあ、あとから知ったことだけど5人そろって行かないといけなかっただけらしかった。なんかちょっとガッカリ。


 走って作業場に行くと作業はすでに始まっていて、巨漢に怒鳴られた、遅刻だぞ、と。

 そしてお仕置きをするとも言った。

 私は申し訳なさでいっぱいだった。私のせいでみんなが傷つく。


「ボクのせいです」「ボクが寝坊したから同部屋のこの子たちも遅れました、お仕置きはボクだけにしてください」

「へえ、いいなお前」「じゃあ望みどうりお前に5人分のお仕置きをしてやるよ!」


 私の頬にものすごい衝撃が走る。そして吹き飛び、宙を舞った。

 床にたたきつけられ、起き上がると鼻から生暖かい液体が垂れてきた。


「おお、立ち上がるか」「じゃあ二人目の分だ!」


 おなかに巨漢のこぶしがめり込んだ。「グホッ!」っと声が漏れ、体が浮く。腹には何も入っていないはずなのにゲロが出た。

 昨日と、今日の朝何も食べさせてもらえなくてよかった。食べてたらもっとみっともなく吐いていただろう。


「三人目の分だ!」


 もう一度腹にこぶしが来る。

 腹から鈍い音がして、地面にうずくまった。腹から血の味が上がってくる。


「じゃあ次4人目!」

 

 巨漢がうずくまる私の襟元を掴むと腕を振り上げた。


「俺も寝坊しました!」


 今まさに巨漢のこぶしが私の顔に振り下ろされる、というタイミングでアゲーラの声が聞こえた。


「あ?」


 巨漢はアゲーラの方を向く。

 アゲーラは巨漢に近づきもう一度「俺も寝坊しました」とはっきり言い放った。


「で、なんだ?」

「4人目のお仕置きは俺にしてください」

「ほぉ!いいなお前も!」


 巨漢の手から私の襟元が離れた。私は地面に倒れる。

 アゲーラだめだ。あいつの力は強すぎる!と言いたいが声が出ない。

 私はあと二発くらい耐えれるのに、変な正義感で君は死んでしまうぞ!

 しかし私が思っているよりアゲーラは強かった。


 アゲーラの顎に巨漢のこぶしがクリーンヒットし、宙を1回転して地面に落ちた。

 アゲーラは何もなかったかのように立ち上がる。

 

「もう一発も俺が受けます!」

「やっぱりお前いいじゃねえか」「そういうの嫌いじゃねえぜ!」


「おい、俺は殴らないのか、俺も寝坊したんだぜ」


 そう言うのはセルジオ。


「おおお!泣かせるじゃねえか!一日でこの絆!」


 巨漢はセルジオに近づく。

 巨漢はセルジオの体に抱き着くと持ち上げた。そして体をそらして頭から落ちていく。

 セルジオの頭と首は大きな音を立てて地面にたたきつけられた。


「へへ、お仕置き終わりだ!」「とっと作業に入れ!」


 巨漢はやるだけやって見張り場に戻っていった。


 アゲーラは私に走って近づいてきた。


「おい!大丈夫か!」

「私よりセルジオ!」

「俺は、い゛い゛!!」


 絶対に大丈夫ではない返事じゃねえかよ。


「大丈夫だそうだよ」


 どこがだよ。


 アゲーラは手を差し出してくれた。私はそれを掴み立ち上がる。アゲーラはピンピンしている。

 私はすぐにセルジオに近づいた。セルジオの鼻からは血が噴き出していた。


「大丈夫じゃないじゃん」


 私はセルジオの鼻血を拭こうとしたら拒まれた。

 

「てめえも鼻血出てるだろうが、」

「ごめん」

「謝んなよ……」


 まあまあ、とアゲーラが私たちに言い聞かせる。

 私たち全員が立ち上がると泣いているアイゴとセルボが近づいてきた。ごめんよ~と言いながら。

 謝る必要なんてないのに。


 私たちは「さっさと作業しろ!」と男に怒鳴られたので、作業にはいった。

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