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第18話 人探し

 湯気がモワモワと上がっているコップを手に取り、口に持っていく。ここ数か月でかなりの紅茶好きになった私は紅茶の嗜み方を知り尽くしたと自負している。

 まずはにおいから。直接嗅ぐんじゃなくて手で仰ぎながらね。……うん、フルーティー。色はきれいな赤茶色。では一口。

 え!ウマッ!

 なんだこれうますぎでしょ。こんな紅茶がこの世に存在していたなんて。


「お口に合うといいんですけど、実はこれ安物のジャンク品なんですよ。それを砂糖でごまかしたものだから……。」


 家に招いてくれた女性はばつが悪そうに言った。


 え?嘘。


「ほんと、こんなのですみませんね。お客さん用はちょうど切らしてて。」

「いえ、全然かまいませんよ!私たちなんて紅茶の味わかりませんから!ね、ルキちゃん!」


 ぐぬぬ、何も言えないけど、悔しい。前世では私、ワインエキスパートの資格持ってて舌には自信あったのに……。所詮今の私は甘いものが一番うまいと感じるばか舌というわけね。

 私は無言で微笑むことしかできなかった。


 時間はこくこくと過ぎていく。

 それとともに女性は落ち着きがなくなっていって、家の中をそわそわと歩き回り始めた。

 私は落ち着かせるためにいろいろ尋ねてみることにした。


「そういえばお名前なんていうんですか?」

「私ですか?」

「も、そうですがお子さんの名前です。」

「私はミイって言います。息子はエンです。」

「エン君っていくつですか?」

「来月で10歳です。」


 私より年上じゃないか、10歳って、この世界なら親離れしててもおかしくないんじゃない?もしかしてこの母親過保護?脳裏にミアの顔がよぎった。

 過保護な親を持つと、大変だよな。わかるぜエン君。


「そういえばルキさんとエン歳近いかも。もしエンが戻ってきたら、よかったらエンの友達になってあげてください。あの子友達いないのよ。」


 んー友達か、この世界に来て初めての友達。過保護な親について夜遅くまで語り明かせるかもね。


「そうだ、聞きたいことがあるんだけどルキさんって男の子よね。」


 え?男?いや、心も体も女ですけど。

 

「いえ、女の子です。」


 突然フレアさんが会話に入ってきた。


「あらやだ!美形の男の子かと思っていたわ。ごめんなさい。」

「まったく間違えないでください。」


 フレアさんは少しむすっとした顔で言った。

 いや、まあ、顔がかなり完成するまでは男か、女か、わかりにくいことはあるけど!そんな男に見えます?私。

 いや、これは、ミイさんのこの子が男であってくれという願望があったな。あの少し残念そうな反応を見ればわかる。


「ねえ、ルキちゃん?」

「はい。」

「エンのお嫁さんにならない?」

「ゴッホゴッホ」


 会話を黙って聞いて紅茶を飲んでいたフレアさんはせきこんだ。


「お嫁さん、ですか?」


 私は少し動揺しながら聞き返した。

 

「そう!」

「だめです!ルキちゃんにはまだ早いと思います!」


 ここでフレアさんが参戦。


「えーでも、エン顔はそこそこだけどとっても優しいのよ。」

「そういう話じゃないです!」


 フレアさんはまったくもうと言わんばかりの顔をしている。


「うーん、ねえルキちゃんはどう思う?」


 ここで私に来るか。

 うーんお嫁さんね。うん。無理ですね。あいにく恋愛対象が男だった時代はとっくの8年前に終わっているので。


「私もまだそういうのは早いのかなって思います。」

「で、でも私はルキちゃんくらいの時には許嫁がいたわよ?」


 ミイさんはくいっと眉を上げて、左手のキラリと輝く指輪を見せつけている。

 ちょっとこの人頑固だな。


「ですから、ルキちゃんはまだそういうの早いので!」


 珍しくフレアさんが感情を出している気がする。

 今回に関してはそれはとても助かるけれど。


「じゃあ、エンが帰ってきたらエンにも聞いてみましょ!」


 なんだよこの人。ここまでくるとちょっと怖いって。

 私の横ではフレアさんが見るからにイライラしていて、貧乏ゆすりをしている。

 私はそっと上下に揺れている足をおさえると、フレアさんの顔を見て無言で顔を横に振った。



 ーーー


 なんだかんだあって気がつくと、外は暗くなっていた。

 ミイさんの不安は最高潮に達したらしく上の空だった。

 さすがのフレアさんも何かあったんじゃないかと思い始めているらしく、外に出る準備をしている。


「じゃあ、ちょっと外見てくるから待っててね。」


 んあ?!一人で行く気?ちょっと、ミイさんと二人きりなんて気まずいよ!


「私も行きます!」

「ん。」


 フレアさんはそう来ると思ってたよというような返事をした。

 


「では、ミイさん。ちょっとエン君を探してきますね。」

「あ、はい。よろしくお願いします。」


 ミイさんは絶望したような顔で私たちを送り出した。


 しかし、どうやって見つけるんだ?

 迷子ってこの世界じゃ探すの不可能でしょ。

 私がどうやってエン君を探すのか尋ねようとフレアさんをみると、フレアさんは白目だった。

 「うっ!」

 え、こわ!私は声にならない悲鳴を出した。

 暗闇のなか、弱い明りに照らされた顔が白目だったら驚くに決まっているでしょうが。


「えーと、10歳だっけ?ってことは魔力量は大体こんくらいだから……」


 フレアさんはなにやら一人でぶつぶつ言っている。

 そういえば、あの私たちに才能なし宣言した医者もこんな感じで魔力量はかっていたっけ。


「ちょっとやばいかも!」


 フレアさんはかなりの速度で走り始めた。


「ちょっと、フレアさん……いき..なり...どうしました?」


 ある場所でフレアさんは止まったので、息を荒げながらこう尋ねると、フレアさんは無言で目の前を指さした。

 指が示した先には子供一人入るのがやっとだというような穴が自然の壁にあった。洞窟の小さい入口といった感じだろうか。


「ここの先に多分エン君がいるよ。」


 この穴なら私が入れそうだ。しょうがないなーまったく私がちょちょいっと助けてあげますか。

 私が穴に入るために軽くかがもうとしたとき、それと同時にフレアさんは手のひらを壁に向けた。

 フレアさんの手のひらにはぼわぼわと火の玉が生成され始めている。


「何してるんですか?」

「この壁壊す!」


 ちょっとまって。

 私は顔を上げて壁の上をみると、そこには建物が点々としている。つまりこの壁を破壊したらあの建物たちは崩れ落ちてくる。


「ちょっとストップ!」

「どうして。」

「もう、ちゃんと周りみてくださいよ!」

「ああ、あの家ね!」


 あの家ね、じゃないよ、その火の玉消してもらえます?


「もう!私が行くんで壁壊さないでください!」

「私なら、家を崩さず壁破壊できるのに。」

「はいはい。」


 私は半ば呆れながら小さな穴にもぐった。

 壁の反対に着いた頃穴からフレアさんの声が聞こえてくる。


「なんかあったらさけぶんだよ!」

「はーい!」


 中は真っ暗だと思っていたけど実際は暗闇に慣れていない目でも物をしっかり識別できるくらい明るかった。その明かりの光源は壁から出ている。壁に近づくと、大きな岩が紫色に光っていた。

 岩は天井、壁にたくさんあって、それらがここの明るさを保っている。岩からは薬のようなにおいがするので、多分魔法や魔力が絡んでいるのだろう。


「しかし広いなー。」

 

 そうここは入口からは想像できないほど広かった。私のしかし広いなー。という声が反響して何重にも聞こえる。


「あ!い!う!え!お!」


 まあやっちゃいますよね。こういうこと。

 童心をぶり返しちまうぜ。


 私がのんきに歩いていると、前から私くらいの身長の何かを持っている人?が歩いてきた。

 もしかして、あれがエン君かな?


 相手との距離が近づき、相手の姿が見えるようになる。

 相手は小さな兜をかぶっていて、鎧をつけている。手には剣。

 見た目はカブトムシの擬人化って表現がしっくりくる。


「すみませんあの―」


 私が声をかけると相手は強く地面を踏み込んで、こちらに飛んできた。

 私は剣を抜き相手の振りかざしてきた物を止める。

 その物というのは剣だった。

 私とカブトムシが持っている剣が岩の明りを反射している。

 

 あいつは魔物だ。剣を交えてなんとなくわかった。

 いや交えなくともわかってたけど。


 魔物はくるりと体の向きをかえると、私に後ろ蹴りをくらわす。


「ぐへっ!」


 私はだらしない声をだして吹き飛んだ。

 みぞおち狙いやがったなあのバカカブトムシ!!

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