表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15/44

第14話 昇級

 サンドスコーピオンとの戦闘から1ヶ月後

 私は最近毎日のようにサンドスコーピオンを狩っている。

 私はサンドスコーピオンと戦うことでもっと実力を上げようと考えた。

 その魂胆は面白いほど上手くいって、今では作業のように狩れるまでに成長した。

 そのせいなのかフレアさんは前ほど過保護ではなくなった。

 前は1人で討伐に行ってくると言うと、血相を変えて、「1人は危険!あたしも行く!」なんて言っていたのに、

 今は「あたしも行こうか?え?大丈夫?そっか。じゃあ気をつけるんだよ!」くらいに落ち着いている。


 

 今日もいつものようにサンドスコーピオンの死体を持ってギルドに行き、支部マスターに渡した。

 いつもはこれで終わりなのだが、今日は支部マスターに引き止められた。

 どうやら冒険者カードに更新があったとのこと。


 支部マスターは新しい冒険者カードを私にくれた。

 もらったカードを見ると、当たり前だがその中身は登録した当時と違っていた。

 私が登録した時は10級冒険者と書いてあったのが、更新後の今は4級冒険者となっていたのだ。


「ルキ様。おめでとうございます。等級が10級から4級への昇格になります。」


 めちゃくちゃ飛び級ではないか。

 この世界に私の努力が認められている気がして心が躍った。


「早くフレアさんに見せてはいかがですか?きっと喜びますよ。」

 支部マスターは優しい顔と声で言ってきた。


「そうですね。見せてきます!」

 

 私は支部マスターに挨拶をしてギルドをあとにすると、走ってフレアさんのいる宿に行った。

 部屋に入るとフレアさんは足の爪をナイフで切っていた。

 そんなフレアさんに私は冒険者カードを突き出す。


「私、等級上がってました!」


 私はこの時少し早口で大きい声だったと思う。

 そのくらい早く正確にフレアさんには知って欲しかった。


「え!!ルキちゃんすごっ!!」


 フレアさんは左足の親指の爪半分だけが長い中途半端な状態で手を止めて私に言った。


 フレアさんはちょっと待ってと言うと、手を洗いに行き、戻ってくるなり私にハグをした。

 顔に柔らかい圧力がかかり甘美な香りが肺いっぱいになった。


 そしてフレアさんが「ルキちゃんは頑張ってるね。」

 と耳元で囁いた。


「うん…。」


 私は少し泣きそうになった。

 思い返して見ると、才能をなくしてほしいと頼んだ理由は、

「頑張ってるね」と言われて認めて欲しかったからだ。

 私はこの一言のためにここ(異世界)に才能なしできたと言っても過言ではない。


 フレアさんは私の顔を見ると人差し指で目に溜まって溢れそうな涙をとってくれた。


「でも頑張りすぎて壊れないでね。」


 私はコクリと頷いた。


「でも、もうルキちゃんはある程度1人で戦えちゃうのかー…。なんか寂しいな。」


 さっきまで笑顔だったフレアさんの顔がしょぼんとした。


 フレアさんはこう言うが

  私はまだたかが4級だ。

 以前ギルドで冒険者、魔物ともに3級からグググッとレベルが上がると耳にしたことがある。

 だから冒険者の本番はこっからなのだろう。


「でもまだたかが4級ですから。まだまだフレアさんには助けてほしいな…。」


 ルキはこの時とびっきりの上目遣いをした。それはフレアの胸をズッキュン!!させるには十分すぎるもので、フレアの母性本能を覚醒させた。

 

「ふぇ?….。そ、そっか…。じゃあまだあたしが助けてあげるね….。」


 ん?なんだ?フレアさんいつもこんな感じだっけ?

 私は何かよくないことをしちゃったのか?


 私はフレアさんの反応に困惑しつつも


 「よろしくお願いします。」


 と返した。


 



ーーー


 この日の夜は、フレアさんが私の昇級祝いをしてくれることになった。


 ギルドに夕食を食べに行くといつもより人で賑わっていた。


「主役のお出ましだ…」

「あの歳で4級なんだぜ….」「すげえよな、」


フレアさんが座っている机に向かっている途中コソコソと話し声が聞こえてくる。


 フレアさんのところに着くと、


「おっ!いいタイミングできたね!」


 と言われた。

 その瞬間

 巨大な骨付き肉、キラキラと輝くスープ、プルプルと揺れているゼリーが机に運ばれてくる。


 この品揃えは、ここのギルドでネタ枠メニューと言われている超高級特盛定食セットではないか!


 超高級特盛定食セットは銀貨一枚というありえない価格の高さで、ありえない量が出てくるという定食コースメニューだ。


 私が驚いていると、

 フレアさんが


「4級昇格おめでとう!!!」


 そう叫んだ。

 すると周りの冒険者たちもそれに続いて

 『おめでとう!!!!!!』

 と言った。


 私はさらに驚く。

 そんな私を差し置いて周りの冒険者がわらわらと私たちの近くに近づいてきた。


「ルキちゃん!おめでとう!」

「ルキちゃん!これからも頑張れよ!」

「ルキちゃん!今度俺に剣教えてくれ!!」


 など声をかけられる。


 私は声をかけてきた冒険者のことは顔を知っている程度だったが、向こうは私の名前を知っていた。

 フレアさんのおかげもあるだろうが、私は少々人気者なのかもしれない。

 私はこの際だと思い、みんなの名前を聞いた。

 それをしっかりメモした。


 そんなことをしているとフレアさんは私に顔を近づけてきて、聞いてきた。


「この超高級特盛定食セットあたしとルキちゃんの2人だと絶対食べられないから他のみんなにもあげてもいい?」


 私はその意見は大賛成。


「そうしましょう!」


 その私の返答を聞くなり息を大きく吸って、


「今日はあたしの奢り!!この超高級特盛定食セットジャンジャン食っていっていいよ!!追加注文も全然いいよ!!飲んで食べてルキちゃんを祝ってあげてくれ!!」


 とフレアさんがギルド中の冒険者に言った。

 

 『うぇぇぇぇぇぇぇい!!!!!』


 ギルド中の冒険者は嬉しそうに反応した。


 そこからはどんちゃん騒ぎだった。

 途中酔っ払ったおじさんが私にセクハラしようとしてきた時は、フレアさんがブチギレて大変だった。みんなでフレアさんをなだめたのはいい思い出。


 酔っ払い女性冒険者とフレアさんに私の取り合いをされた時もあった。あれは夢見心地だった。

 あの男性冒険者たちからの羨ましそうな視線は忘れられない。


 時間を忘れて楽しんで、しばらくすると


「お待たせしました!!」


 と聞き覚えのある声がギルド中に響く。


 入り口から聞こえたので入り口を見ると、そこにはガボンと行商人A、B、Cの姿があった。


「俺たちが崇拝するフレアさんの連れは崇拝対象です!!」


 何を言っているのかわからないが、つまり私を崇拝するということだろうか。


 ガボンたちはそう言うと大量のお金を持ってきて

 

「この金でもっと盛り上げろお前たち!!」

 

 とお金をギルド中の冒険者に配った。

 

 


「この金は俺たちが今月行商人として稼いだ金だ!!遠慮なく使ってくれ!!」


 ガボンたちはお金を配ると帰ろうとした。

 それをフレアさんと私が止めた。


「なんで止めるんですか?俺たちはあんたらにとって目障りでしょう?」

「目障りなんかじゃないよ!もう私たち友達でいいでしょ!一緒に楽しもうよ!」


 私がフレアさんの言葉にうんうんと頷いた。


 それを聞いたガボンたちはわんわん泣いた。

 そしてガブガブ酒を飲んだ。

 そして酔ったガボンたちは死んでいったバルさんがどんな人だったか教えてくれた。


「あいつはよぉー!いいやつだった!俺が風邪引いた時は隣の都市まで回復術師呼びにいってくれるようなやつだった!」

「んであいつはーーー」


 私たちは無言で頷いていた。

 ガボンが、聞いてくれてありがとよ、と言って話がひと段落した時私は周りを見た。

 いつもピシッとしている支部マスターもウェイトレスと肩を組んで羽目を外している。あの人、あんないい顔するんだな。いつもは仕事仕事といったピシッとした顔をしているイメージしかなかったので、あの顔は新鮮だった。

 

 私はこのギルドにそれなりに出入りしているので、新人冒険者以外は皆顔見知りだった。

 しかしちゃんと話したことはなかった。

 でも今回でみんなと仲良くなれた。

 ここがそこまで大きなギルドではなかったというのもあると思うが、やはりフレアさんの明るさとコミュ力のおかげだと思う。


 ーーー


 もうそろそろ夜が明けるといった時間になった。

 冒険者たちは、やばい二日酔い….。とか言いながら帰っていく。

 もちろんフレアさんはしっかりつぶれている。

 私は飲んでいないので元気だった。

 不思議なことに大量の酒を飲んだはずのガボンたちも元気だった。

 そんなガボンたちはもう次の街に行くつもりらしい。

 そして去り際に

 

「俺たちはルキちゃんたちの仲間だ。なんかあった時はどんなことでも力になってやる。

 死ねと言われれば死ぬさ。別にあんたたちのためなら死ねる。死んでもどうせバルに会えるだけだしな。」


 と小声で言った。

 フレアさんを起こさないように気を使っているのだろう。


 私は


「私たちも何かあれば力になりますよ。」


 と返した。

 その返事にニコリと笑い歯を見せると静かにギルドを出ていった。


 私も、もう帰ろうと思ったが

 フレアさんがどれだけ刺激しても起きない。


「起きないとこの大きな胸を好きなようにしちゃいますよ。」


 と言って胸をツンツンしても脇腹をこちょこちょしても起きない。

 いつもなら少しは反応するのに。



 私は小さくため息をついてフレアさんを運ぶために浮かせた。


「ありがとう。フレアさん。」


 宿に帰っている最中私はそう呟いた。

 実はフレアさんが起きているというのを知っていたから。

 

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ