表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14/44

第13話 行商人界の期待の新星

 翌日

 私は体を揺さぶられて起きた。


「サソリ!!」


 起きると同時にそう叫んだ。

 揺さぶっていたフレアさんは体をビックッ!と大きく揺らし、体を丸めた。


「びっくりしたー!ちょっとルキちゃん!いきなり叫ばないでよ!私を心停止させて殺す気!?」


 私はあたりを見渡す。

 サソリなんてもちろんいない。

 夢か…。そっか。

 私はいろいろなことがあってループ夢のことを忘れてしまっていた。

 


「叫ぶといい、この状況といい。どういうこと?!」


 胸がズキズキと痛む。体はいつもより寒い。

 そういえば昨日…。


「ちょっと?!ルキちゃん?!返事してよ!」


 私は昨日の夜のことを思い出し始めた。


 ーー


 私たちはあの後すぐに宿に戻った。

 フレアさんが私の体と心を気遣ってくれたからだ。

 フレアさんがいうにはポーションでは体と心の傷は完全に治るけど疲れは完全にはとれないといらしい。


 食事は支部マスターに無理を言って宿に届けてもらった。

 支部マスターは嫌な顔ひとつせず、まああんなことがありましたからねー、と言って承諾してくれた。


 宿で私はフレアさんと談笑した。


「あの、フレアさんはあんなふうに人が死んじゃうところに遭遇するのは初めてじゃないですよね?」

「当たり前じゃない」


 フレアさんのテンションはいつもよりわかりやすく低かった。

 やっぱり人の死には慣れることはできないということだろう。

 これ以上この話を深掘ることはしなかった。

 その代わり褒めてもらおうことにした。


 私はフレアさんはにサソリに遭遇して倒したかことを報告した。


「サソリってサンドスコーピオン?!」


 フレアさんのテンションがいつものに戻る。


「そうです」

「ルキちゃんすごいねー!!」


 フレアさんは私の頭に魔王級の冒険者であることを思い出させる様なごつごつしているかつ綺麗な手を優しくのせると、わしゃわしゃとした。

 嬉しい。

 私の髪がボサボサになる。

 


「ルキちゃんが倒したサソリは確か4級の魔物だったかな、10級冒険者が4級の魔物倒すって簡単なことじゃないよ!!」

「そうですか?」


 ニヤニヤしてしまう。


「あ、ルキちゃん、あたしに褒められてうれしいんでしょ!口上がってるよ」


 おっと…。バレちゃった。

 でもそう言っているフレアさんの方がニヤニヤしていた。


 まだ日は沈みきっていないけどフレアさんが今日はもう寝ようと言った。

 私も疲れていたので賛成した。


 フレアさんはベッドにダイブするなり即寝た。

 青い猫型ロボットを飼い慣らしている丸メガネの男の子を彷彿とさせる。


 私も布団に入り目をつぶった。

 少しすると授業中の睡眠みたいな、意識はぼんやりしているのに周囲の音だけはなんとなく耳に入ってくる、そんな浅い睡眠に入った。

 その時心拍数が一気に跳ね上がる。

 平常から長距離走を本気で走った直後くらいまでガァーっと。

 めまいがして胸に圧迫感を感じて熱い。

 鼻の中に粘土の低い液体があるのがわかる。

 手足が震えて、視野が狭くなり、全身から汗が出てくる。特に脇と手のひらと足の裏。

 アドレナリンがドバドバ出ているのだとわかった。

 心臓の痛みはない。


 


 そこからの記憶はなく、次の記憶はサソリとの戦闘シーンを繰り返したこと。


 ーーー


 昨日のことが鮮明に蘇ってきた。


 なんで心臓のやつが戦闘直後ではなくて寝る前なんだ?という疑問はあったが、

 成長するにつれて筋肉痛が遅れてくるのと一緒か、と思うことにした。


 

「ルキちゃん…。酷いよ….。まあルキちゃんも、もう思春期に入っていてもおかしく無いし、そういうことに興味を持つのは変なことじゃ無いけどさ。でもそれがバレたからって、無視は…フレアさん悲しんじゃうよ…。」


 ぼんやりしていた頭が冴え始める。

 すると私はフレアさんのことを無視していたことに気がついた。

 フレアさんに返事しようと思ったが、

 フレアさんの言っていることがわからない。


 私はふと自分の体を見る。

 私は服を着ていなくて下着のみだった。

 そして私が寝ていたところのシーツと着ている下着はウェッティ。


 へ?


「別に1人でって、変じゃないから気にしなくてもいいのに….。私もたまにするし…。」


 ??!!


 フレアさんは超絶勘違いをしている。

 私の今の体はまだ潔白だ。私の指はまだ中を知らない。

 きっと体が熱くなりすぎて寝てるうちに服を脱いでしまっただけだろう。

 湿り気の正体は多分汗だ。だって頭の方のシーツも湿っているし。


「すみません、フレアさん。無視したのではなく、ぼーっとしてました。あと私1人で何もしてません。1人でするってなんですか?」

「あれ?!そうなの?!よ、よかった!!でもなんで下着なの?」

「わかりません。」

「そっか、でもほんとによかった!いろんな意味で。」


 フレアさんは続けて、

 気まずくなって今の関係が壊れたらどうしようって思っちゃった、とボソボソと言った。


「てか、フレアさん。1人でするんですね。ふーん…。」

「ちょっとルキちゃん?!あなた意味知ってるじゃない!!」


 フレアさんは顔を真っ赤にした。


 ーーー

 

 私とフレアさんは朝食のためにギルドに行くと、

 荒くれ男たちが頭を削るかのように土下座をして謝ってきた。

 男たちは怪我が完治しておりメンタルも安定していた。ポーションを飲んだのだろう。


「フレアさん!!昨日は本当にすみませんでした!」

「あーいや、全然気にしてないですから!」


 フレアさんは苦笑いをして返した。


「いえ!今回は自害しても足らないほどの謝罪事案です!!」


 リーダー的な男がそう言うと、後ろにいた3人が

「そうですよ!」と次々と野次?を飛ばす。


「本当に気にしてないですから!」

「俺たちが気にします!!バルの死体の恩人になる人にあんな口きいて胸ぐらまで掴んでしまったんですから!!」


 バルというのは体が半分なくなってしまっていた男の人のことだ。


「でも死なせてしまった原因は私にもありますし…!顔を上げてください!」

「いえ!そういうわけにはいきません!」


 荒くれのリーダーは何かを考えて、残りの荒くれ3人を集めて円を作って相談をし始めた。


 数分後

 フレアさんは暇そうに服のほつれた糸をいじっていた。


「それだ!!」


 円の中でリーダーが叫んだ。


 ものすごい勢いで向きを変えて私たちを見る。


「決めましたよ!!償いの方法!!フレアさんのお願いなんでもききます!!」


 フレアさんは一瞬驚き戸惑うと、少し考え始めた。


「じゃあ荒くれっぽいことやめて真面目に生きよう!」

「了解です!!」


 荒くれたちは冒険者即答すると装備を全て外し始める。

 外し終わるとそれをギルドの受付に持っていって、


「これ!売ります!!」


 フレアさんはポカンとしている。


「フレアさん!!俺たち冒険者やめて真面目に行商人して生きていきます!!」


 荒くれたちは真面目に生きるということの意味を勘違いしているようだ。

 冒険者が真面目じゃないって言いたいのか?

 失礼な奴らだ。私たちも冒険者だっていうのに。


「ではきっと目障りだと思うのでもうここを出ていきます!!」


 荒くれたちはせっせとギルドから出ていこうとした。


「ちょっと待って!」


 フレアさんがそれを引き止める。


「あなたたちの名前は?」

「俺の名前はガボンです!!」


 リーダー的な奴は自分のことをガボンと言った。


「他の奴らは行商人A、行商人B、行商人Cでいいですよ!」


 ガボンは周りのとりまきをそう紹介した。

 それでいいのか?と思ったが、後ろで行商人A、B、Cが笑顔で頷いていたのでこれでいいのだろう。


「そう!じゃあガボンと行商人A、B、C!またどっかで会おうね!!」


 そう言ってフレアさんが手を振った。


「ぜひ!」


 ガボンたちはそう言い捨て、手を振りかえしてギルドを出ていった。


 朝食をとっていると、支部マスターが布袋を持ってきた。

 中からはお金の音がする。


「これお二人の昨日の報酬です!」


 私が受け取る。いつもよりずっしりとしていた。

 食事を終えて布袋の中を確認すると、銀貨が6枚入っていた。

 いつもの報酬の20倍もある。

 流石に一級の魔物の討伐は報酬が大きい。

 フレアさんにも見せると、やったね、と喜んだ。そして


「このお金で今日はちょっと贅沢しない?」


 と続けた。


 それに対する私の返事は満面の笑みでの


「それ最高です!」


 だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ