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第11話 試練③

(剣を用いてサンドスコーピオンを討伐せよ)


 頭の中で声が響いた。

 と、同時に私は戦闘体制に入る。

 サソリ(サンドスコーピオン)はそれを察知したのか毒針がついているであろう尻尾を高らかに持ち上げた。

 私がぴくりと動くとサソリ(サンドスコーピオン)は大きく動いた。

 大きさとは見合わない速度で砂を(えぐ)りながら突進してくる。

 私は尻尾に警戒しつつ構える。

 もう目の前ほどの近さになった時尻尾ではなく視界の端が大きく動く。

 視線をずらすと(ハサミ)が大きく開いていた。

 完全にやられた。あまりに尻尾の主張が大きかったために気が付かなかった。

 ものすごいスピードでこちらに(ハサミ)が向かってくる。

 私は全神経を魔法に集中させる。自分とサソリ(サンドスコーピオン)の間に風を発生させ、自分が吹っ飛ぶ形で間一髪で後ろに回避。

 直後に私がいたはずの地面から砂煙が爆発した。

 砂煙が落ち着く前に砂煙の中からサソリ(サンドスコーピオン)が飛び出して来る。

 私が風魔法の力を借りて全力疾走する速度よりサソリ(サンドスコーピオン)の突進の方が速い。

 もう追いつかれると思った時、尾が横なぎに胴めがけて飛んでくる。

 それを確認するとすぐに剣を盾にした。が…ガードも虚しく尾がしっかり胴に入って私は吹っ飛んだ。地面に落ちると人形のように転がる。

 

 死んだかと思ったがまだ生きている。なんとか立ち上がり体を確認。

 擦り傷、打撲はあるが体は動く。

 

「うっ….!」

 

 しかし、横腹にすごい激痛が走った。

 と同時にお腹から何かがせり上がってくる。

 そしてゴフッという音とともに鮮血が口から出た。


「は?吐血?」


 やばいやばい。ポーションなんて持ってきてないのに。

 恐怖が頭の中を支配する。

 そんな私のことは気にせずサソリ(サンドスコーピオン)はこっちに近づいてきている。

 やらなきゃ。怖い。動け。怖い。死ぬかも。頭の中で考えがぐるぐる回る。

 何かやらなきゃ!何かやらなきゃ!何かやらなきゃ!

 何かやらなきゃ!何かやらなきゃ!何かやらなきゃ!


「戦えルキ!」


 私が選んだのは自分で自分を鼓舞すること。自分でもなんでこんなことしたのかわからない。

 でも一つ言えることは、勝利のためにしたのではない。私には今できることはこれしかできなかっただけということ。


 私の声に反応してサソリ(サンドスコーピオン)は走り出す。

 勢いをつけながら(ハサミ)を広げた。

 そして(ハサミ)は私を狙って鋭く突き出された。

 次は横に回避。

 また砂煙が爆発した。

 その煙にまぎれて、回避した足のまま、大きな岩の影に身を隠す。


「………….」


 手で口を押さえて、鼻で呼吸を深くゆっくり吸って静かに吐く。できるだけ体から出る音をなくした。


 ガサガサという音が岩の反対側から聞こえる。

 私を探している。

 全身に力を入れて震えるのを止めた。


 次は地面をドンドンと叩くような音が聞こえて来る。

 岩から少し顔を出して覗いてみると、音はサソリ(サンドスコーピオン)が出していた。

 最初は何をしているのかわからなかったが、ずっと観察していると、ゾッとすることが頭に浮かんだ。


 “地面を叩いて振動で探している”


 考えたくもない仮説だ。でもそれ以外考えられない。

 しばらくすると音が止まった。

 またチラリと岩陰から覗くとこちらを見ているではないか。

 振動からこちらにいると判断したのだろう。

 私はすぐに頭を引っ込めた。


 ガサガサという足音がこちらに近づいて来る。


 足音は岩の真後ろで止まった。

 つまり私の背後にいる。

 見つかりませんように…….と心の中で唱えた。

 私の戦闘意思は、もはやゼロに近い。


 ものすごい轟音がなり、上から粉々になった岩がぼろぼろ落ちてくる。上を向くと上にはサソリのしっぽがあった。

 尻尾は岩を貫き破壊していたのだ。

 もう少し頭が上にあったら頭ごと撃ち抜かれていた。


「うわぁぁぁぁぁぁ!!」


 もう叫んで背を向けて走って逃げることしかできない。

 しかし戦闘は終わらない。

 後ろからサソリ(サンドスコーピオン)の足音が近づいて来る。

 私はもう何もできず最後の悪あがきとして大量の水を撒き散らしながら逃げた。

 すると、追って来る足音がほんの少し遅くなった気がした。

 後ろを振り返ってみると、砂に水が染み込み、硬くなった地面に足が取られているようだった。

 

 私の胸に、少し希望が灯った。

 水魔法に運命を託す決意をした。

 もちろんサソリ(サンドスコーピオン)の足が劇的に遅くなったわけではない。

 ほんの少し。だが、その少しが私には大きかった。

 相手の勢いが落ちると何故か行動一つ一つの速度は変わらなくても見やすくなる。

 確実に(ハサミ)は避けられるようになったし、尻尾にも警戒できる。

 そして、攻撃を避けながら水を撒き続けた。

 しばらく避けてるとまた尻尾が横に薙ぎ払われた。しかし今度は足と剣と胴でガード。

 水平方向に滑るように吹き飛ばされたが、最初より確実に防げた。

 

 次の薙ぎ払い攻撃を待ちながら回避し続ける。

 しばらくすると尻尾が少し動く。

 来た!この変な動きは尻尾攻撃の前兆。

 薙ぎ払われても良いように重心を下げてずっしりと構える。


 違和感。

 不意にそう思った。何が違和感なのかわからなかったが、何かがおかしい。

 体制を戻し、動きやすい姿勢に。

 その瞬間サソリ(サンドスコーピオン)はものすごい勢いで尻尾の針を突き出した。

 あれは岩を破壊した攻撃に違いない。

 剣でめいいっぱい力を入れ軌道を変えて受け流す。

 尻尾の硬い甲殻と剣が触れた時耳をつくよな金属音と火花が出た。

 

 その後も(ハサミ)攻撃を避けながら横に薙ぎ払う攻撃を待つ。

 また尻尾が動く。

 突きか薙ぎ払いかを見極める。

 これは…..薙ぎ払い!

 重心を移動させてドっしり構える。

 そして薙ぎ払いに合わせて上に飛んだ。そして浮遊。

 薙ぎ払いの威力は相当高く、砂が舞い、遠心力と反動で尻尾はわずかに止まった。

 その隙に自由落下の勢いも借りて甲殻のない尻尾の間接部に剣を突き刺した。

 直後、サソリ(サンドスコーピオン)は尻尾をブンブン振り回す。

 私は意地でもしがみつきながらすこしずつ深く刺していく。

 ある程度刺さったらギコギコしていく。

 すると尻尾が落ちた。


 サソリ(サンドスコーピオン)はすぐに体勢を直したが尻尾をいきなり失ったことによりうまくバランスを取れないといった様子だった。

 ここしかないと思った私はサソリ(サンドスコーピオン)に風魔法で加速しながら近づく。

 その勢いと全体重を乗せて目元に剣を突き刺した。

 しっかりと深く差し込むと、全身を震わせて転がり、動かなくなった。


 (試練の攻略達成。)


 そう脳に響く。胸の痛みはこなかったが、疑問に思っていられるほど私は冷静ではなかった。


「やった….」


 自分でも信じられない。

 だんだん落ち着きを取り戻していくと体に痛みが戻ってきた。

 体をみると至る所から出血していて、打撲も酷かった。

 お腹もジンジンして熱い。

 早急に帰って回復しないと。


 私はサソリ(サンドスコーピオン)を浮遊魔法で少し浮かせると尻尾を担いで歩き出した。


 ーーーー


 行きの3倍ほどの時間をかけてギルドに戻った。

 中に入ると、フレアさんはいなくて、フレアさんに絡んでいた男たち4人がボロボロになって座り込んでいた。

 一人は血だらけ。

 一人は腕がない。

 一人は足がない。

 一人はずっと震えて何かボソボソ言っている。


 そして私に大勢の視線が向けられていたことに気がついた。

 すると支部マスターが私に近づいてきた。


 

「あの、ルキ様?このサンドスコーピオンはお一人で?」

「はい」

「なんと……まだ10級なのに…。」


 すると横にいた女性の冒険者がポーションを手渡して、


「おつかれさん。」


 と声をかけてくれた。

 私は礼をいってポーションをもらった。

 そしてすぐに飲んだ。

 飲み終わると全身の痛みが引いていく。

 いい気持ちだ。


「あの、このサソリの依頼私受けてないんですけどお金ってもらえるんですか?」


 支部マスターに聞いた。


「ええ。もちろんです。」


 大丈夫でよかった。頑張って運んできたのが無駄にならない。


 私はサソリを支部マスターに任せて、その辺の席に座り食事をとった。


 ーーー


 もう食事を終わるという時、勢いよくギルドの扉が開いた。

 すると


 「ちょっと手伝ってください!!」


 というフレアさんの声が聞こえてきた。

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