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プロローグ

才能の塊で、これまで何一つ努力せずチャレンジせずに生きてきたレズビアンの女性があることがきっかけでこう願った――『中性顔美少女にしてください。』すると彼女は、“才能ゼロ”の中性顔美少女として異世界に転生してしまった――そんな話。

ここどこだ?


「あぅーうぁー」


え?ちょっと待って声出ないんですけど。いや怖い怖い!


 目を覚ますと見慣れない天井、嗅いだことのない匂いが私を動揺させた。

 そして何より私を恐怖させたのは声が出ないこと。

一瞬夢だと思ったが、あの地獄を鮮明に覚えているので、そうではないと直感的に分かった。


 夢ではないなら一体なんだ?てか私なんで生きてるの?だってさっきあれがあれしてたじゃん。

 てか今何時?どんくらい寝てたんだ?あいつはどうなった?私は今どんな状況?

 

ありとあらゆる疑問が頭を駆け巡った。



ーー

私は願った『女の子にモテるような中性顔美少女にしてください。』と。


私は才能の塊だった。

気分で始めた陸上でインターハイに行けたし、1日の自宅学習時間は1時間未満だったのにテストは毎回学年一位だったし、なんなら日本最高峰の大学にもいけた。

トントン拍子で大企業に就職できて、20代前半で結婚もできた。言うなればイージーモード人生だった。


 そしていきなりですが、告白します。私レズビアンでーす。

 きっかけは旦那のDVである。

 結婚後私を罵り殴り始めた。

 最初は確か旦那が帰って来た時にお風呂を沸かせてなかったとかの理由で殴る蹴るだったと思う。あいつの主張は「男が帰ってきた時はすぐに女がもてなすんだよ!」とかだったかな。

 共働きなんだから家事ができないこともあるって言ったら、「なんだ?お前が俺より優秀だから俺より忙しいって言いたいのか!」って返ってくる。

 そんなこと言いたいわけないのにね。

 きっとプライドが高い旦那は自分よりいい大学を出て、いいところに就職をした私のことが許せなかったんだろうね。

 でも結婚した理由は私のステータスなんだよ。

 ありえないでしょ。


 旦那は結局他に女を作って、いつかできる子供のためにと貯めていたお金と私が毎月家に入れてるお金を他の女と使い始めた。

 この件で大喧嘩した時、旦那はお前の顔はタイプじゃない。でも金を落としてくれるから結婚した。って教えてくれた。

 結局私の人生はこの男に才能を吸われただけ。

 きっと努力してたらこんなことにはならなかっただろうなって今考えると思う。

 まあ才能を上手く使っている人もこの世にはいっぱいいると思うよ。でも私には才能は向かない。

 戦国時代に剣の使い方がわからないやつが剣を与えられたみたいにね。

 才能がなかったらもっといい人生送れたのかな。

 はあー、もう才能なんて誰が欲しいって言った?神様がくれたんだったらそれはありがた迷惑ってやつよ。

 まあ才能を上手く使おうとしなかった私もバカだけどさ。才能なんてあったら努力なんて忘れちゃうって。

 

 


 私がレズビアンになった日は突然やってきた。

 それは大寒波がやってきて雪が降る日だった。

 私が夕飯を作っている時、酔ったあいつが帰ってくる。知らない女の香水を纏わせながら。

 目が一瞬あってしまいさっとそらすと、あいつはズカズカとこちらに近づいてくる。


「おい!テメェさっき俺のこと見てバカにしただろ!舐めてると殺してやるからな!」


 とお腹を殴ってきた。

 こっからはそれなりに地獄だった。その後拍車がついた旦那は殴る蹴る、罵倒する。最後には無理やり性行為をさせられた。

 私は逃げるように家を出た。

 防寒着、靴なんて履かずになんなら体はボロボロの状態で家を飛び出したので限界はすぐにやってくる。

 私は道端に寝るように倒れて、全身で雪を喰らった。天を仰いでこのまま死ぬのかななんて思っていたら目の前が黒色の高そうな傘で埋まる。傘の持ち主は高校時代の親友なっちゃんだった。

 なっちゃんは私を家に入れてくれて熱心に看病してくれたのもあり、体調はすぐに良くなった。まあ彼女医者だし。

 当たり前だけど何があったのか聞かれた。

 経緯をざっくり説明したら「離婚しちゃいなよ」って。

 それができたらとっくにしてるって。でもきっと離婚しようって言ったらころされる。

 親友といるのにしばらく気まずい沈黙が流れた。

 なっちゃんは「あのさ」と沈黙を破った。


「あのさ、旦那さんと別れて私と住まない?」

「いきなりどうした?」

「いや、あの、じ、実はさ、私高校時代からずっとあなたのことが好きだったんだよね。」

「え?今も?」

「うん。」

「そんな冗談いいって!(笑)」


 私がなっちゃんの顔を見るとなっちゃんは真剣だった。


「冗談じゃないよ。今から証明してあげる。」


 私はこの日なっちゃんと一線を超えた。

 なっちゃんの手はあいつと違って優しかった。全ての動きに優しさが滲み出ていて、彼女のキスは理性をぶっ飛ばすほど魅力があった。

 これは私がレズビアンになるのには十分すぎた。そしてあいつと離婚しようと決める理由としても十分すぎた。

 正直証拠なんて無限にあるし、この世には警察もいる。

 なんとかなるだろうと思っていた。


 家に戻ると無言であいつは椅子に座っていた。

 私はその机に離婚届を叩きつけると玄関に向かう。しかし私の腕は引っ張られた。


「おい、これどういうことだよ。」

「離婚しようってこと。」

「ふざけんな!」


 あいつは私を床に押し倒して馬乗りになるとボコボコと殴り始めた。



 多分内臓は潰れている。

 吐血が止まらない。

 目もチカチカする。

「やめ、、って、、くださ、、い!」

 まともに話せなかった。

 もう自分が死ぬと言うことがわかる。

 なっちゃんごめんね。私死ぬ。


 どうせ死ぬなら願いごとでもしておこうかな。

 そうなだな。


 『女の子にモテるような中性顔美少女にしてください。』

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