表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

break;

作者: 木こる
掲載日:2025/04/04

話すと長いから端折(はしょ)るけど、あたしにはチート能力がある。

異世界から持ち帰った究極の便利能力、“時戻し”。

10分だろうが10年だろうが好きなだけ時間を戻せるし、

歴史改変がどうとか、タイムパラドックスがどうとか関係無い。

この素敵な能力に何度命を救われたかわかんない。

今からそれ使って殺人事件の犯人を炙り出そうと思います。


なんか雪山のホテルに泊まったら男の人が殺されたんで、

これはもうあたしの出番かなって。

死体なら向こうの世界で何度も見てきたけど、やっぱ違うな〜。

あっちは殺伐とした世界だったから住民に戦う覚悟があったけど、

この平和ボケした国じゃ誰かが殺されたらそりゃ大騒ぎにもなる。

みんなキャーキャー喚いて、吐いちゃった人までいるんだもん。




死んじゃったのはスキー客の高田さん。

43歳のサラリーマンで、包丁で心臓を刺されたのが死因っぽい。

仰向けに倒れてて、争った形跡は無いから知り合いの犯行かも。

でも1人で来たみたいだから、知り合いなんているのかな?


とりあえずあたしは容疑者を集めて推理を発表してみた。

ちなみに容疑者はあたし以外の客とホテルの従業員、全員ね。

よく推理モノだと見た目の怪しい人物は犯人じゃなくて、

実は全然怪しくない人が真犯人だったりするけど、

あたしは敢えて一番怪しい人物を指差してこう言ってやった。


「岡崎さん、犯人はあなたですね?」


彼は常にサングラスとマスクをしてて、屋内でもずっとコートを着たままで

なんかもう、すごく怪しさMAXだったから疑われてもしょうがないよねぇ。


「いや、僕は犯人じゃないよ

 包丁に血塗れの右手で握った跡が残ってるけど、

 僕は昔、交通事故で右腕を失ってるんだ

 サングラスのせいで怪しく思ったんだろうけど、

 酷い傷跡を見られるのが嫌だから隠してるだけだよ」


あちゃー。推理失敗。

右手が無いんじゃ犯行不可能だよねぇ。

やっぱセオリー通り、怪しくない人が犯人だったか。


「時間よ、戻れ!!」




←←←




容疑者を集めたとこからやり直し。

今度は怪しくない人を……といきたいけど、どうしても気になる人がいる。

雪山のホテルだってのに、パンツ一丁でうろついてる覆面のマッチョマン。

もしかしたら営業か何かで来たプロレスラーかお笑い芸人なのかもだけど、

念のため声を掛けておくのが礼儀かなって。


「村瀬さん、犯人はあなたですね?」


「えっ、いやいや!

 そりゃ怪しい格好してるけど、これは俺の仕事着なんだ!

 俺は現役の覆面レスラーでありながらお笑い芸人でもあって、

 ここへは営業のために来ただけなんだ!

 凶器を使うのはリングの上だけだよ!」


あちゃー。またもや推理失敗。

でも半分は当たってた。

営業に来たプロレスラー且つお笑い芸人。

そっちが合っててもしょうがないよねぇ。


「時間よ、戻れ!!」




←←←




続いて矛先を向けたのは、いかにも平凡な主婦って感じの佐山さん。

こういう人が一番怪しいんだ。あたしの目は誤魔化せない。

どうやら町内会長と一緒に来たみたいで、おそらく不倫旅行だろう。


「佐山さん、犯人はあなたですね?」


「え、何よ急に失礼ね……

 私が犯人なわけないでしょ

 犯行時刻には自分の部屋にいたし、

 どうせ殺すなら赤の他人じゃなくて夫を殺すわ」


あちゃー。3回連続で推理失敗。

これじゃ密室トリックじゃなくてハットトリックだよ。

しゃーない、切り替えていこう。


「時間よ、戻れ!!」




←←←




じゃあ町内会長ならどうだ。


「伊波さん、犯人はあなたですね?」


「なんて失礼な……

 この私に赤の他人を殺害する動機があると思うか?

 しかも包丁なんて物的証拠が残るやり方は馬鹿げてる

 もし私が殺人を犯すなら毒を使うね

 それも、誰でも容易に入手可能な成分のやつをね」


あちゃー。これもだめだったわ。

そっか、毒かあ。さすがは町のリーダー。計画的だなぁ。


「時間よ、戻れ!!」




←←←




その後も推理を披露してみたけど、なんと全員ハズレだった。

みんな犯人じゃないって言うし、被害者とは面識が無かった。

つまりこの場合、導き出される答えは1つ……


犯人はこの中にいない。


こりゃもうお手上げだわ。

外部による犯行じゃしょうがないよねぇ。

ま、あたしはやるべきことをやって、さっさと終わらせちゃいますか。


「皆さん、現場にある物に触れないでください!

 あとは警察の人たちに任せましょう!」


「あ、ああ警察……」

「そうだな、それがいい」

「包丁に指紋が残ってるし、きっとすぐに犯人が見つかるわ」

「まったく、証拠を残すなんて馬鹿な奴だね」


こうしてあたしは警察に丸投げしたのだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ