表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

break;

作者: 木こる

話すと長いから端折(はしょ)るけど、あたしにはチート能力がある。

異世界から持ち帰った究極の便利能力、“時戻し”。

10分だろうが10年だろうが好きなだけ時間を戻せるし、

歴史改変がどうとか、タイムパラドックスがどうとか関係無い。

この素敵な能力に何度命を救われたかわかんない。

今からそれ使って殺人事件の犯人を炙り出そうと思います。


なんか雪山のホテルに泊まったら男の人が殺されたんで、

これはもうあたしの出番かなって。

死体なら向こうの世界で何度も見てきたけど、やっぱ違うな〜。

あっちは殺伐とした世界だったから住民に戦う覚悟があったけど、

この平和ボケした国じゃ誰かが殺されたらそりゃ大騒ぎにもなる。

みんなキャーキャー喚いて、吐いちゃった人までいるんだもん。




死んじゃったのはスキー客の高田さん。

43歳のサラリーマンで、包丁で心臓を刺されたのが死因っぽい。

仰向けに倒れてて、争った形跡は無いから知り合いの犯行かも。

でも1人で来たみたいだから、知り合いなんているのかな?


とりあえずあたしは容疑者を集めて推理を発表してみた。

ちなみに容疑者はあたし以外の客とホテルの従業員、全員ね。

よく推理モノだと見た目の怪しい人物は犯人じゃなくて、

実は全然怪しくない人が真犯人だったりするけど、

あたしは敢えて一番怪しい人物を指差してこう言ってやった。


「岡崎さん、犯人はあなたですね?」


彼は常にサングラスとマスクをしてて、屋内でもずっとコートを着たままで

なんかもう、すごく怪しさMAXだったから疑われてもしょうがないよねぇ。


「いや、僕は犯人じゃないよ

 包丁に血塗れの右手で握った跡が残ってるけど、

 僕は昔、交通事故で右腕を失ってるんだ

 サングラスのせいで怪しく思ったんだろうけど、

 酷い傷跡を見られるのが嫌だから隠してるだけだよ」


あちゃー。推理失敗。

右手が無いんじゃ犯行不可能だよねぇ。

やっぱセオリー通り、怪しくない人が犯人だったか。


「時間よ、戻れ!!」




←←←




容疑者を集めたとこからやり直し。

今度は怪しくない人を……といきたいけど、どうしても気になる人がいる。

雪山のホテルだってのに、パンツ一丁でうろついてる覆面のマッチョマン。

もしかしたら営業か何かで来たプロレスラーかお笑い芸人なのかもだけど、

念のため声を掛けておくのが礼儀かなって。


「村瀬さん、犯人はあなたですね?」


「えっ、いやいや!

 そりゃ怪しい格好してるけど、これは俺の仕事着なんだ!

 俺は現役の覆面レスラーでありながらお笑い芸人でもあって、

 ここへは営業のために来ただけなんだ!

 凶器を使うのはリングの上だけだよ!」


あちゃー。またもや推理失敗。

でも半分は当たってた。

営業に来たプロレスラー且つお笑い芸人。

そっちが合っててもしょうがないよねぇ。


「時間よ、戻れ!!」




←←←




続いて矛先を向けたのは、いかにも平凡な主婦って感じの佐山さん。

こういう人が一番怪しいんだ。あたしの目は誤魔化せない。

どうやら町内会長と一緒に来たみたいで、おそらく不倫旅行だろう。


「佐山さん、犯人はあなたですね?」


「え、何よ急に失礼ね……

 私が犯人なわけないでしょ

 犯行時刻には自分の部屋にいたし、

 どうせ殺すなら赤の他人じゃなくて夫を殺すわ」


あちゃー。3回連続で推理失敗。

これじゃ密室トリックじゃなくてハットトリックだよ。

しゃーない、切り替えていこう。


「時間よ、戻れ!!」




←←←




じゃあ町内会長ならどうだ。


「伊波さん、犯人はあなたですね?」


「なんて失礼な……

 この私に赤の他人を殺害する動機があると思うか?

 しかも包丁なんて物的証拠が残るやり方は馬鹿げてる

 もし私が殺人を犯すなら毒を使うね

 それも、誰でも容易に入手可能な成分のやつをね」


あちゃー。これもだめだったわ。

そっか、毒かあ。さすがは町のリーダー。計画的だなぁ。


「時間よ、戻れ!!」




←←←




その後も推理を披露してみたけど、なんと全員ハズレだった。

みんな犯人じゃないって言うし、被害者とは面識が無かった。

つまりこの場合、導き出される答えは1つ……


犯人はこの中にいない。


こりゃもうお手上げだわ。

外部による犯行じゃしょうがないよねぇ。

ま、あたしはやるべきことをやって、さっさと終わらせちゃいますか。


「皆さん、現場にある物に触れないでください!

 あとは警察の人たちに任せましょう!」


「あ、ああ警察……」

「そうだな、それがいい」

「包丁に指紋が残ってるし、きっとすぐに犯人が見つかるわ」

「まったく、証拠を残すなんて馬鹿な奴だね」


こうしてあたしは警察に丸投げしたのだ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ