80 俺たちを信じてくれ
「安心しな、ハル。俺たちにはまだ、希望がある」
「希望?」
言われている意味がわからず、ハルは首を傾げる。
「マサ、こんな絶望的な状況で、なにを言っているんだ!」
「絶望的じゃねぇぜ。なぁ、レン」
あかりに責められたマサは、腕を組んでレンに視線を向けた。
それに気づいたレンは、小さく頷く。
「マサの言う通りだ。手段はあると言っただろ?」
「それは、そうですけど……」
「レン、とか言ったな。もったいぶっていないで、さっさと話せ!」
なかなか答えを言わないレンに、あかりはイラついていた。
すると、レンは遠くにいるメイドたちを指さした。
「俺たちが大型アニマになって、あの攻撃をとめる、ということだよ」
「なっ、そんなことできるのか?!」
「まぁ、できたのは一度だけだが、やってみる価値はある」
★★★
ハルたちが話し合っているのを、遠くから見ていた柊とマイは、余裕を見せながらも警戒していた。
「彼女たちは、なにを話しているんでしょうか」
「知りませんわ。それより、まだ発射しないんですの?」
「まぁ、待ちなさい」
イラつくマイを、柊は優しく制した。
「彼女たちも負傷していて、充電に時間がかかるんですよ」
「充電完了まで三十……三十五……五十……」
標準を合わせたまま、メイドたちはカウントを続ける。
充電は半分まできていたが、マイはその時間さえも惜しかった。
「目の前に、復讐する相手がいるのに、こんなにもどかしいなんて……」
マイは憎しみをこめて、拳を握った。
★★★
「大型アニマになるって、本気ですか?」
「あぁ、彼女たちに対抗するには、それしかない」
「でも、またあの時のようになれるかどうか……」
ハルは不安になり、両手を胸の前で握った。
その震える手を、レンは優しく包んだ。
「不安になるのもわかる。だが、これには君の力が必要だ」
「私の力、ですか?」
首を傾げるハルに、レンは優しく微笑む。
「力、というより想いかな」
「ハルさんが、私たちを想ってくれれば、それだけで力になります!」
「桂木博士の時も、お嬢のおかげで、俺たちは戦えた」
「ハル殿、俺たちはずっと一緒ですぞ!」
「みんな……」
それぞれの想いに、ハルの目は潤んでいた。
そして、マサはハルに笑いかける。
「ハル、俺たちを信じてくれ!」
「わかった、やってみる!」
ハルの決意に、マサたちは頷いた。
そして、ハルたちを背にして、五人は平行に並ぶ。
「お願い……みんなに力を……」
ハルは目を閉じ、必死に祈りをこめる。
すると、指輪が仄かに光りだした。
「本能覚醒!」
マサたちのかけ声に指輪が応え、全員の体が光りだした。
やがて光の球になり、ひとつに集まっていく。
そして形を変え、桂木戦の時同様、大型アニマになった。
「これが……噂に聞いた大型アニマ?」
目の前の出来事に、あかりは驚いていた。
しかし、その光景を見ていたマイは、怒りに顔を歪める。
「あれが……大型アニマ……」
「八十五……九十二……百。充電完了しました」
メイドたちのカウントが終わり、マイはため息をついた。
「まったく、いつまで待たせますの。さぁ、撃ちなさい!」
「ターゲット、大型アニマ。レーザー砲、発射!」
「サンダーボルト!」
メイドたちは、一斉にレーザー砲を発射する。
それと同時に、大型アニマは電撃を放った。
そして、互いの力がぶつかり合う。
「よしっ、防いだぞ!」
「でも、向こうに届いていない……」
ハルは不安になったが、マサの言葉を思いだす。
『ハル、俺たちを信じてくれ!』
「大丈夫、私たちは負けない!」
すると、ハルの想いに応えるように、指輪が強く光りだした。
「ガアァーッ!」
指輪の光が増し、大型アニマの力も強力になった。
そして、徐々にレーザー砲を押し返していく。
「なっ、このままじゃ負けますわ!」
「うーん、もう少し調整が必要だったみたいだね」
「なに悠長なことを言っていますの?!」
意外と冷静な柊に、マイは焦りを見せる。
そして、柊のスマホを取り上げた。
「なにをしているんです、マイ!」
「出力が足りないなら、もっと上げればいいだけじゃない!」
「落ち着けよぉ、マイ」
焦って操作するマイに、コバットがよろけながら話しかける。
「このままじゃ、あのメイドたちがもたねぇぜ」
「コバット様……」
「今回は、オイラたちの負けだ……」
コバットの言葉に、マイは唇を噛みしめた。
★★★
「すごい、どんどん押し返しているぞ!」
「皆を傷つけて、味方だったあかりさんまで利用して……」
「あんた……」
「それに、マサにキスしたこと、ちゃんと償ってもらうんだからーっ!」
「おい、今はそれ関係ないだろ?!」
ハルの怒りで、さらに指輪の光が増した。
そのため、電撃がレーザー砲を上回った。
メイドたちはというと、電撃に巻きこまれ、完全に壊れてしまった。
そして、次々と倒れていく。
「やっ……やったのか?」
「でも、こんな終わり方、ないよ……」
「そうだ、マイたちはどうなった?」
あかりは駆けだし、周囲を見回した。
しかし、マイたちの姿は、どこにもなかった。




