08 困っていたからだよ
公園に入ってきたのは三人で、うち二人は羽や動物のしっぽがあったため、アニマだとハルは気づいた。
「……あいつだ」
「タカト様、賞金のアニマを見つけましたわ」
「ユリア、イグ、よくやった」
ユリアは猫のアニマで、茶髪でボブカットの、ナイスバディな女性だった。
もう一人のイグは鷲のアニマであり、鋭い眼光で茶色の羽が生えた大柄の男性だ。
イグは腕を組み、ずっとマサたちを見つめている。
「なんだろう、なんかわからないけど……」
「えぇ、なんか負けた気がします……」
ハルとユミは、ユリアの胸部を見てうなだれた。
「ハル、大丈夫か?」
「ユミ?」
理由がわからず、男子たちは首を傾げた。
しかし、ハルはすぐ頭を振り、ユリアたちに問いかけた。
「それよりも、賞金のアニマってなんのことなの?」
「そこの白い羽の生えたアニマのことだよ」
それに答えたのは、先ほどタカトと呼ばれた青年だった。
タカトは、ニヤニヤしながらスマホを操作する。
「ある裏サイトで、あんたたちのことが書かれていたんだよ」
「裏サイト?」
「あぁ。でも、捕まえるだけで金がもらえるんなら、やらない手はないな」
「そんな理由で、ユミちゃんを狙っているの?」
「他人事みたいに言っているが、あんたたちも賞金がかかっているぜ」
「うそっ?!」
「さぁ、話はここまでだ。ユリア、イグ、あいつらを捕まえろ!」
「お任せください!」
ユリアは頷き、地面を蹴りマサに向かっていった。
「先手必勝!」
ユリアの拳を、マサはすんでのところで避けた。
「ちっ……おい、危ねぇじゃねぇか!」
ユリアが放った拳は、地面をえぐり穴をあけていた。
「あら、避けられちゃった」
「まったく、ユリアは血の気が多いな」
ため息をついたイグは、羽根で作った弓矢を構え、ユミを見つめる。
「じゃぁ、こちらも始めようか」
「絶対、捕まるわけにはいきません!」
いくつもの矢が、ユミに向かって放たれる。
ユミはすかさず羽ばたき、空へと逃げた。
「逃がすか!」
それを追うように、イグも空へと羽ばたく。
「かまいたち!」
ユミは風の刃を放つが、イグは方向を変え避けた。
「ライジングショット!」
「ギアーショット!」
別の場所では、マサとユリアが激突していた。
お互い退かず、打撃を繰り返している。
戦いを見ていたタカトは、視線をハルに移し話しかけた。
「おい、そこの女。なんでアニマの契約者になったんだよ」
「えっ……」
「俺は、面白そうだから契約したんだ。あんたはどうなんだ?」
問われたハルは、戸惑いながらも考えた。
「そ、それは……マサたちが困っていたからだよ」
「困っていた?」
すると、タカトは盛大に笑いだした。
「なにがおかしいの!」
「いいや。ならあんたは、アニマの奴らが困っていたら、すぐ手を差し伸べるのか?」
「そ、それは……」
反論できず俯くハルを、高木は心配そうに見つめる。
それでもタカトは、ハルを責めるように話し続ける。
「無責任にも、程があるな。助けられるのには、限りがあるんだぜ?」
「無責任……」
言われたハルは、言葉に詰まってしまう。
「ハルさんの優しさを、バカにするな!」
「あぁん? 優男は引っこんでろよ」
高木は、ハルを庇うように前に出る。
それを見て、タカトは持っていた派手なカバンから、ナイフを取り出した。
「アニマは人間を攻撃できないっていうし、俺が始末してやるよ!」
ナイフを構え、全速力で突進してきた。
「高木さん、危ない!」
「うわっ!」
ハルはとっさに高木を押しのけた。
気づくと、ナイフの刃がすぐそこまできていた。
「ひっ!」
「ハル! しまった、間に合わない!」
「ハルさん!」
マサとユミが駆けつけようとしたが、ユリアとイグに阻まれる。
あと寸前のところで、ハルの周りに炎が広がった。
「あぶねっ!」
「タカト様!」
ユリアがタカトに近づき、辺りを警戒する。
「ハル殿を傷つけることは、許さぬぞーっ!」
全員が声のする方を向くと、ユキが全速力で走ってきていた。
「なにあれ?! 赤い男が突進してきていますわ!」
「ユキ!」
「ちっ、もう一人契約していたのか。お前ら、早く逃げるぞ!」
「えーっ、せっかく楽しいところでしたのに」
「無駄口叩いてないで、早く行くぞ」
イグはユリアとタカトを抱え、遠くへ飛んでいった。
ユキはそれを見届け、ハルの周りの炎を消した。
「ありがとう、ユキ」
「間に合ってよかったでござる」
マサとユミも、慌てて駆けつけてきた。
「ハル、大丈夫か!」
「うん、平気だよ。ユキが守ってくれたから」
「ハルさん、無事でよかったです。契約者が死ねば、契約したアニマも死んでしまいますから」
「えっ、そうなの?!」
また、私のしらないことが増えた……と、ハルは肩を落とした。
「それより、彼も契約したアニマなのかい?」
「あっ、はい。虎のアニマのユキです」
紹介されたユキは、軽く会釈をする。
「はじめまして。高木とユミです」
挨拶を終えた五人は、荷物をとるため、ベンチに向かった。
「なんか大変な買い物になっちゃったね」
「でも、危険は過ぎましたから大丈夫ですよ」
「そうだね。じゃぁ、帰ろっか」
そして、ハルたちは公園を出ていった。




