07 ショッピングへレッツゴー!
「うーん……」
ユミたちをかくまってから次の日、ハルはパソコンとにらめっこをしていた。
「ハルさん、どうかされましたか?」
「あっ、ユミちゃんおはよう」
「おはようございます。難しい顔をして、悩み事ですか?」
ユミは部屋に入り、パソコンを覗きこむ。
「研究所……?」
一瞬ユミが辛い顔をしたので、ハルは慌てて画面を隠す。
「ち、違うの! レンさんも研究所の人と関わりがあるみたいだったから、気になって……」
「レンさん? どんな方なんですか?」
「その人は、犬のアニマなんだよ。よく協力してくれるし、頼りになるんだ」
「そうなんですか……」
「それにしても、研究所ってたくさんあるんだね」
パソコンを操作しようとするハルを、ユミは腕を掴んで止める。
「ユミちゃん?」
「そんなことより、ちょっと出かけませんか?」
「えっ、今から?」
首を傾げるハルを見て、ユミは頷く。
「食料の調達とか、他にも必要な物があると思うんです」
「まぁ、人数も増えたから、買い物しなきゃとは思っていたけど……」
「じゃぁ、決まりですね!」
ユミは、ハルの腕を強く引っ張った。
「ちょっ、ちょっと待って! パソコンきらないとーっ!」
★★★
昼食をとり、ハルたち四人は、ショッピングモールに来ていた。
「さて、じゃぁ行きますか!」
「あの、買い物は俺たち男子がするので、ハルさんたちはゆっくりしててください」
「えっ、でも……」
「お金のことなら心配ありません。アニマと契約したら、契約金がもらえるんですよ」
「そ、そうなんですか?!」
「ハルさん、知らなかったんですか?」
「し、知らない……誰も教えてくれなかったし……」
「一応、ニュースでもやってましたけど?」
「そっ、そうなんですか……」
「仕方ねぇよ。ハルは、この世界の人間じゃないんだからな」
「「えっ!?」」
マサの言葉に、ユミと高木は驚いた。
「そんな驚かなくても……」
ハルは苦笑いを浮かべながら、はめている指輪を撫でた。
「まぁ、そんな私でも契約できたんだし、他にも色々教えてくださいね」
「もちろんです!」
ユミは、ハルに腕を絡ませ微笑む。
「では、一旦別行動ということで」
「じゃぁ、買い物お願いしまーす!」
そしてハルとユミ、高木とマサはそれぞれのフロアに向かった。
★★★
ハルとユミは、三階にあるフードコートにやってきた。
「あっ、ハルさんクレープありますよ」
「本当! じゃぁ、食べようか」
支払いを済ませ、近くのベンチに座る。
「うーん、おいしい!」
「ふふっ、ハルさんクリームついていますよ」
「えっ、うそ!」
「ほら、拭きますから動かないでください」
ユミに拭いてもらい、ハルは少し照れてしまう。
「あ、ありがとう。マサたち、ちゃんと買えてるかな」
「二人ともしっかりしているので、それは大丈夫だと思います」
「でも、なんで男女わかれたんだろう」
「それは、私が高木さんに頼んだんです」
「えっ?」
すると、ユミは真剣な眼差しで、ハルを見つめてきた。
その圧に押され、ハルはゴクリとつばを飲む。
「ハルさん、私たちをかくまっていただき、本当にありがとうございます」
「そんな、改まってお礼を言わなくても……」
「いいえ、私たちと関わったばかりに、ハルさんたちも研究所から狙われるかもしれないんです」
「そ、それは困ったなぁ……」
「でも、お互い協力して、守りあいましょうね!」
「そ、そうだねー……」
目を輝かせているユミに、ハルは苦笑いを浮かべる。
仲間ができて、本当うれしいんだなぁ……と、ハルは思ったのだった。
★★★
高木とマサは、大体の物を買って三階に向かっていた。
「ふぅ、やっぱり二人だと荷物が楽でいいね」
「そうだな」
「マサ君は、けっこう力持ちだね」
「さぁ……あまり気にしたことないが」
か、会話が続かない……と、高木は思って肩を落とした。
二人の間に、気まずい空気が流れていく。
少しして、マサが口を開いた。
「なぜ、俺とハルを引き離した?」
「えっ、引き離すつもりはないよ」
高木は首を傾げたが、ふとユミの言葉を思いだす。
「あぁ、それはユミから、ハルさんと話したいって頼まれたからだよ」
「なんだ、そういうことか」
疑問が解消したマサは、また黙って歩きだす。
「本当、ハルさんが大事なんだね……」
高木が呟いたのを、マサは知らずにいた。
「おーい、マサー、高木さーん!」
「ハル、そんな大声で呼ばなくてもいいだろ」
「まぁまぁ。じゃぁ、帰りましょうか」
帰る途中、ハルはある店が目にとまった。
そこには、『アニマと契約すると、特製キーホルダーをプレゼント』と書かれていた。
「マサ、あれ欲しい!」
「高木さん、私も欲しいです!」
ハルとユミは、二人そろってお願いポーズをする。
高木とマサは苦笑いを浮かべ、顔を見合わせた。
三十分後、目当てのキーホルダーを手に入れたハルは、満面の笑みを浮かべていた。
「わぁーっ、可愛い!」
「ハルさんのが猫で、私は小鳥ですね」
「落とさないように、中に入れとこう」
ハルは、なくさないようにカバンにしまった。
それから四人は休憩のため、近くの公園に入っていく。
「ユミ、ちゃんと話はできたかい?」
「はい。高木さんはどうでした?」
「とても気まずかったよ……」
「うちのマサがすみません……」
「おい、俺が悪いのかよ」
四人が談笑していると、公園に入ってくる者たちがいた。