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42 彼女には気をつけろ

 頬にキスをされたハルは、突然のことに驚いた。

 だが、みるみるハルの顔は、赤く染まっていく。

「なっ、なななっ!」

「どうしたんだい、ハル。まるで、金魚みたいだぞ?」

 口をパクパクさせているハルを見て、レンは微笑む。

 すると、勢いよくレンにぶつかるものがあった。

「おっと?」

 ぶつかった衝撃で、レンはハルから離れる。

 レンにぶつかったものは一回転して、ハルの前に着地した。

「えっ、マサ?!」

 それは猫のマサであり、レンに対して威嚇をしていた。

「フシャー!」

 猫のマサは、全身の毛を逆立てているため、怒っているのは明らかだった。

「はははっ、どうやらまた、マサに嫌われてしまったらしいな」

「笑い事じゃないですよ、レンさん……」

「やっ……やっと追いついた……」

 ハルが振り向くと、アキナが息を切らしながら入ってきた。

「アキナさん、どうしたんですか?」

「ねっ、猫ちゃんが急に走りだして、捕まえなきゃと思ったので……」

「うちのマサが、すみません……」

「いえ、大丈夫です。それよりも……」

 アキナは一度深呼吸して、辺りを確認する。

「これは一体、どういう状況ですか?」

 アキナの問いに、ハルは苦笑いを浮かべる。

 なぜなら、レンが猫のマサと、インコのユミに攻撃を受けていたからである。

 猫のマサは猫パンチ、インコのユミは体をつついていた。

「いっ、痛いぞ君たち!」

「いやぁ、どこから説明したらいいのやら……」

「おや、皆ここにいたのかい」

 声のする方を向くと、薫が入ってきた。

「なかなか戻ってこないから、探したんだよ?」

「すっ、すみません。ちょっと、いろいろありまして……」

「まぁ、いいさ。それより、ハルさんちょっといいかい?」

「はっ、はい……」

 薫に呼ばれて、ハルは首を傾げながらだがそばに行く。

 すると、突然手を引かれ、アキナたちから離れた所に連れていかれる。

「あっ、あの、薫さん!」

「しっ、大きな声を出さないで」

 薫は口に人さし指を当て、静かにするよう指示をした。

 そのため、ハルは慌てて口を押さえる。

「実はアキナ君のことなんだが……」

「桂木博士の娘さんですよね」

「あぁ、突然ここにやってきて、働かせてほしいと言われたんだ」

「それなら、人が増えていいのでは?」

「あの桂木君の娘だぞ。なにか企んでいるに違いない」

「そうでしょうか……とてもいい人に見えますけど」

 ハルは、遠くにいるアキナを見つめる。

 そこには、虎のユキと戯れているアキナの姿があった。

「まぁ、気をつけるにこしたことはないよ」

「わっ、わかりました……」

 それからハルたちは、レンたちの所に戻ってきた。

「さぁ、夜も遅いから、部屋に戻って休みなさい」

「あっ、なら、イグさんのいる部屋で休みます」

「おや、他にも部屋はあるんだよ?」

「だって、イグさんだけ残してはいけませんから」

「君は優しいねぇ」

 薫はそれだけ言うと、展望室を出ていった。

「私たちも行きましょうか」

「じゃぁ私は、談話室に置いてある荷物を取ってきますね!」

「ハル、俺も行こう」

  ハルとレンが出ていくと、アキナは苦しい表情をする。

 それを、虎のユキは心配そうに見つめていた。

★★★

 談話室に行く途中、ハルの腕をレンが引っ張った。

「うわっ、どうしたんですか?」

「ハル、彼女は桂木博士の娘だ」

「はい、そう聞きました」

「なら、桂木博士のことを、なにか知っているかもしれない」

「あっ、ということは!」

「そう、奴の居場所もわかるかもしれないな」

「わかりました、聞いてみます!」

「まぁ、俺もついていくから心配しなくていい」

 レンが微笑むと、ハルは赤くなって俯いてしまう。

 そうしているうちに、談話室へと着いた。

 中に入ると、猿渡が絵を描いていた。

「さぁちゃん、ずっと絵を描いていたの?」

「うん……だって、皆出ていっちゃうんだもん」

「それは、悪かったな」

 レンが申し訳なさそうにしていると、猿渡は首を横に振る。

「いいよ、別に。また戻ってきてくれたし」

「あぁ、そのことなんだけど……」

 今度は、ハルが申し訳なさそうにする。

「私たちこれから、さっき行った部屋に泊まることにしたの」

「じゃぁ、僕も一緒に行く!」

「さぁちゃん?」

「お姉ちゃんと離れるのは嫌!」

 猿渡は、椅子から飛び降り、ハルに抱きついた。

「わかった。じゃぁ、一緒に行こうか」

 猿渡の頭を撫でながら、ハルは荷物を持った。

 三人が、鷲のイグの待つ部屋に行くと、もうアキナが待っていた。

 ハルたちは部屋に入り、荷物の整理をする。

「じゃぁ俺は、布団などを持ってくるから、くつろいでいてくれ」

「わかりました。お願いします!」

 すると、ハルのお腹が盛大に鳴った。

 恥ずかしくなったハルの顔は、だんだん赤くなっていく。

 それを見て、レンとアキナは笑いをこらえていた。

「そういえば、夕飯がまだだったな」

「うぅ……すみません……」

「気にしなくていいさ。まずは食堂に行ってくるといい」

「はい、そうします……」

「じゃぁ、私が案内しますね」

 そして、ハルとアキナは部屋を出ていった。

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