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40 忍び寄る影

「おや、なんだか楽しそうだねぇ」

 ハルが戯れていると、薫がやってきた。

「薫さん、マサたちが動物になってしまったんですけど」

「あぁ、今日は新月だったね」

 薫は言いながら、窓から外を見上げる。

 そして、ハルに振り返った。

「驚くのも、無理はないか」

「薫さん、なにか知っているんですか?」

「私も、レンから聞いただけだけどね」

 頷くレンに、薫は微笑む。

「とりあえず、場所を変えようか」

 ハルたちは談話室に移動し、薫の話を聞くことにした。

「アニマは新月になると、動物の姿になってしまうらしいんだ」

「はい、目の前で見ました」

「それも、契約しているアニマに限るんだよね」

「もしかして、月の影響とかあるんでしょうか」

「わからない……だけど、動物になっている間、アニマの力は使えないようだよ」

「それは、不便ですね」

「一応、彼らの思考はあるみたいだから、そうやって、君に懐いているんだね」

「えっ?」

 薫は、ハルの肩にとまっているインコを指さす。

 ハルは、連れてきていたことに驚いた。

「あれ、ついてきちゃったの?」

 インコは、ハルの頬にキスをした。

 だが、くちばしのため、つつく形になってしまう。

「いたっ、いたたっ!」

 痛みに耐え、インコの頭を撫でながら、ハルは考えだす。

「じゃぁ、猫がマサで、インコがユミちゃん。虎がユキで、鷲がイグさんってことですね」

「あぁ、その通りだよ」

「お姉ちゃん、すごい!」

「しかし、人数が多いと、大変だねぇ」

 薫が苦笑いを浮かべていると、ハルは隣にいる猿渡に視線を移す。

「あれ、さぁちゃんはなんともないね」

「彼は、ベースが人間だから、関係ないのかもしれないね」

「へぇ、そうなんですね」

 そう言って、ハルは猿渡の頭を撫でた。

「あと、私たちはこの現象を、『アニマルモード』と言っているよ」

「あぁ、アニマだから!」

 ハルは、笑いながらインコを撫でていた。

「あっ、マサたち、あの部屋に残したままだった!」

「じゃぁ、もう一度戻るかい?」

「うーん……イグさんは檻の中にいるとしても、ちょっと怖いな」

「なら、俺が一緒に……」

「私が、一緒に行きましょうか?」

 レンの言葉を遮って、アキナが現れた。

「あの……あなたは?」

「私は、桂木アキナと申します」

「えっ、桂木?!」

 ハルが驚いていると、レンが隣にやってくる。

「驚いただろう。彼女は、桂木博士の娘らしいんだ」

「あの人に、娘がいたんだ……」

「俺も、最初聞いた時は、驚いたよ」

「ふふっ、よく驚かれる方が多いんですよね。さぁ、行きましょうか」

「あっ、はい!」

 ハルは、急いでアキナについていく。

「じゃぁ、ちょっといってきます!」

「あぁ、気をつけるんだよ」

「お姉ちゃん、いってらっしゃーい!」

 猿渡に見送られ、二人は部屋を出ていった。

 残された薫は、難しい顔をしていた。

 それにレンが気づき、顔を覗きこむ。

「薫、どうしたんだい?」

「いや、なんでもないよ……」

 薫は苦笑いを浮かべて、部屋を出ていく。

「薫……君の考えていることが、わからないよ……」

 薫が去った方を、レンは切なげに見つめていた。

★★★

「アキナさんは、ここの人なんですか?」

「はい。少しの間だけ、働かせてもらっています」

 ハルとアキナが話していると、突然インコのユミが飛んでいった。

「えっ、ユミちゃんどこ行くの!」

 慌てたハルは、後を追いかけようとする。

「すみません、先に行っててもらえますか?」

「わかりました」

 そしてハルは、インコのユミを呼びながら、廊下を走っていった。

 残ったアキナの顔からは、笑顔がなくなっていた。

 再び歩きだすと、桂木との会話を思いだす。

「くくく……さぁ、そろそろですよ!」

 とある研究所に、桂木たちはいた。

 そして、桂木の目の前には、人が横になれるくらいのカプセルがあった。

「私の実験の成果を、奴らに認めさせるチャンスです」

 桂木は、不敵な笑みを浮かべながら、カプセルを覗きこむ。

 そこに横たわっていたのは、アキナだった。

「アキナ、そろそろ起きなさい」

 カプセルを開け、桂木はアキナに呼びかける。

 すると、アキナはゆっくりと目を開け起き上がった。

「この者たちに近づいて、始末する。それが、あなたの仕事ですよ」

 アキナに、レオはマサたちの写真を見せた。

「お父さん、もうこんなことやめようよ?」

 アキナは写真を受け取り、桂木を切なげに見つめる。

「なにを言っているんですか?」

 パソコンの画面を見ながら、桂木は淡々と答える。

「私はただ、研究をしているだけです」

「でも……」

「お前に、とやかく言われる筋合いはありません」

「お父さん……」

 桂木は言い終わると、画面を操作し始めた。

 それを、アキナとアニマのネイ、レオは静かに見つめていた。

「なぁ、博士よ。俺が行ってこようか?」

「いいえ。これは、アキナの初めての仕事です」

 桂木は、キーボードを打つ手を止め、アキナたちに振り返る。

「アキナ、うまくやってくださいよ?」

 そして、桂木はアキナに、ペンダントを渡した。

「これは?」

「私からのプレゼントですよ。お前を守ってくれるからね」

「……わかりました」

 頷いたアキナは、研究所を出ていった。

「お父さん、これでよかったのよね……」

 アキナは、ペンダントを強く握りしめる。

 やがて、マサたちのいる部屋に着いた。

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― 新着の感想 ―
桂木アキナ……やっぱり桂木と関わりがあったんですね……みんな大丈夫かな…??
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