02 君が契約することだよ
「ようやく追いついたぜ」
「あんたたちも、しつこいな」
「うるせーっ! さっさと指輪を渡せ!」
三人組の一人が、地面を蹴り向かってくる。
そして、勢いよくマサに拳を入れた。
「くっ!」
「オラオラ、どうした。攻撃してみろよ」
次々と拳や足蹴りを受け、マサは防戦一方である。
「どうしよう……このままじゃ、猫の人やられちゃう……」
「そうだな」
「なら、どうしてあなたは見ているだけなの?!」
ハルが問いかけると、レンは視線を外さず答えた。
「俺はアニマがちゃんと契約できるか、見届ける役目を担っているんだ」
「役目?」
首を傾げるハルに、レンは静かに頷く。
「彼もその一人なんだが、ちょっと問題があってな……」
「そんなのいいから、早く助けてあげてよ!」
「まぁ待て。君もさっきの指輪を見ただろ?」
「えっ……は、はい」
「その指輪は特別な物らしくてな、それを彼は研究所から持ち出してしまったんだ」
「えっと……それってまずいんじゃ……」
「そうだな。だが、解決する方法が一つある」
レンは、ハルに視線を移した。
「君が、彼と契約することだよ」
「わ、私が契約?!」
驚くハルだが、マサたちに視線を向ける。
同じくレンも、視線を向けた。
「契約できれば、指輪はその契約者の物となり、研究所も手出しはできなくなる」
「そんなこと言われても……」
戸惑うハルに、レンはマサたちを指さす。
その先では、マサが一方的に攻撃を受けていた。
「このままじゃ、猫の人が殺されちゃう……っ!」
ハルはすぐに立ち上がり、マサたちの元に走っていった。
「もう、やめなさーい!」
「げっ、人間?!」
マサたちの間に割って入ったハルは、両手を大きく広げた。
攻撃していた三人組は驚き、すぐに距離をとった。
「もうこの人を、傷つけないで!」
「あんた、なにしているんだ! さっさと逃げろ!」
「会った時もそう言っていたよね」
ハルはマサに振り向き、目線を合わせるためにしゃがんだ。
「そんな風に言って、私を巻きこまないようにしていたんでしょ? まぁ、もう巻きこまれちゃったけど」
微笑むハルに、マサは気まずくなり目線をそらす。
「でもね、あなたが傷ついているのに、無視なんてできないよ」
ハルは優しく、マサの手を包みこんだ。
「私が契約すれば、あなたは助かるんでしょ?」
「そんなことさせるか! うわぁっ!」
三人組が近づこうとすると、炎に遮られる。
「あっちぃ!」
「すまないが、契約の邪魔をしないでくれ」
レンに睨まれた三人組は動けずにいた。
そんな中、ハルはマサに優しく話しかける。
私はあなたを助けたい。もう傷つけさせたりはしないから「
「俺と契約すれば、またこんな戦いに巻きこまれるかもしれないぞ」
マサは不安な顔をして、ハルを見つめる。
「怖くはないのか?」
「怖いよ。でも、あなたが一緒にいてくれるのなら、大丈夫な気がする」
「ははっ! あんた変わった奴だな」
「あんたじゃなくてハル。私は神崎ハルよ!」
「あぁ、悪かったな」
そしてマサは、ポケットから指輪を取り出した。
すると、指輪が二人の想いに応えるように光りだす。
「あんたを、契約者として認めるぜ」
「だから、あんたじゃないって……」
マサはハルの手を取り、薬指に指輪をはめ、指輪にキスをした。
その行為に、ハルは赤面して固まる。
するとマサの体が光に包まれる。
「これで思う存分戦えるぜ!」
「やべぇ……あいつ、契約しちまった」
「ま、待て! 一旦俺たちの話を……」
急に慌てだした三人組を、マサは睨みつける。
「さっきはよくもやってくれたな。覚悟しろよ」
三人組は顔をひきつらせながら、後ずさりをする。
「敵をなぎはらえ! ライジングショット!」
マサの拳から放たれた電撃は、炎と混ざり爆発した。
「ぎゃぁぁぁー」
三人組は爆発とともに、遠くへ吹き飛ばされた。
「おぉーっ! またえらく飛んでいったな」
「す、すごーい。こんなことできるんだ」
「まぁ、今のはレンの炎があったからだけどな」
「それでもすごいよ!」
ハルは立ち上がり、拍手をして喜んだ。
「契約は成立だ。これで君も狙われることはないだろう」
「全部あんたの思い通りってことか?」
「まぁ、そう言うな。君の持ち出した指輪は特別な物なんだ」
レンはハルの手を取り、指輪を撫でる。
「だが、ちゃんと契約は出来たと研究所に報告しておくよ」
そう言ってレンは、二人に背を向け去っていった。
「まったく、油断ならない奴だ」
「でも、契約できてよかったね」
「あぁ、これからよろしくな、ハル」
「うん! よろしくね、マサ」
そして二人は、手をつなぎ微笑みあった。
しかし、そんな二人を、遠くから見ている者がいた。
その者は白いローブをまとい、フードで顔を隠している。
「見つけた……新たな契約者……」