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ロスト・ハート・マリオネット ~魔法学院の人形使い~  作者: 天空海濶
“魔専アステリア女学院”中等部一年生
97/436

第九十七幕 個人戦

「よっと!」

「……っ。なんて……速度……!」


 ボルカちゃんが踏み込んで加速し、炎の剣で相手の意識を奪う。

 それにより、相手は控え室へ転移。司会者さんが声を上げる。


《勝者! ボルカ・フレムゥゥゥーッ!》

「「「わあああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっ!!!」」」


 お客さん達からも大きな歓声が上がり、ボルカちゃんは会場へ転移。

 流石のボルカちゃん。すぐに位置を特定して迅速に倒しちゃった。


物語ストーリー──“恋するお姫様”」


「……!?」

「はぁ……王子様……」

「……?」

「王子様ぁぁぁ~!」

「……ッ!!」


《勝者、ウラノ・ビブロスゥゥゥーッ!!》


 ウラノちゃんに召喚されたのはとても可愛いお姫様……だけど一変、的確に顎下をビンタして意識を奪い去った。

 恋ってそうなんだ……怖い。

 けどこれでウラノちゃんも無事一回戦を突破したね。後はルーチェちゃんにメリア先輩だけど、


「“光球”!」

「……!」

《勝者、ルーチェ・ゴルド・シルヴィアァァァーッ!!》


「“アップダウンウィンド”!」

「……!」

《勝者、メリア・ブリーズゥゥゥーッ!!》


 心配は無かったね。

 ルーチェちゃんは光魔法を相手にぶつけて勝利。メリア先輩は風魔法で浮かせて落下、意識を奪って勝利。

 私達“魔専アステリア女学院”は全員が無事一回戦を突破した!

 個人戦はサクサク進むから一日での試合数も増えるんだって。


 それから私達は順調に勝ち上がって行った。ルミエル先輩の指導もあってとても強くなったんだね。私達。

 新人戦は一週間に掛けて行われる。途中までは順調に進んでいたんだけど、勝ち上がり続けると必然的に起こる事もあるのは事実。基本的にバラけているとしても、必ず一人か二人はそう言う人が出てくる。

 それは準々決勝の出来事。


「……まさか……ここで貴女と当たるなんてね……ルーチェちゃん……!」

「ふふ、相手にとって不足無しですわ。ティーナさん。決勝で会いましょう!」

「いや、もう準々決勝で当たってるんだけど……」


 同じチームメイトによる試合。

 しかも決勝戦じゃなくて準々決勝だから今回負けたらどっちかがリタイアしなくちゃならない状態。

 これは少し大変だね……。決勝戦だったなら勝ち負け関係無く、一位と二位で予選ブロックは通過出来たのに。

 司会者さんが声を上げる。


《さあ! やって来ました個人戦の準々決勝! なんとなんとなんと! そこで出会ったのは“魔専アステリア女学院”の仲間同士であるティーナ・ロスト・ルミナス選手とルーチェ・ゴルド・シルヴィア選手だァーッ!!!》


「「「ワアアアァァァァァッ!!!」」」


 チームメイト同士の試合に対し、観客達は沸き立つ。

 お互いの手札は知り尽くしている仲。それに、私はルーチェちゃんとも仲良しだと思ってる。だからよりやり難いかも……。


《そして! 二人が行うゲームは此方! “見破れ! 正体隠匿ゲーム”ゥゥゥ!!!》


「「“正体隠匿ゲーム”……?」」


 準々決勝だから単純な戦闘じゃなくて、頭を使いそうなゲーム。

 私とルーチェちゃんは“正体隠匿ゲーム”に小首を傾げ、司会者さんはルール説明を執り行った。


《“正体隠匿ゲーム”とは! 至って簡単! 端的に言えば相手の正体を見破れば良いのです!》


「相手の……」

「正体?」


《個人戦は戦闘であろうと知恵比べだろうと、基本的には一対一のタイマン勝負! しかァし! ステージギミックとしてオブジェクトなどがあったりします! 今回のゲームではそのオブジェクトが肝! すなわち要ェ! 更に言えば、今回のゲームは時間制限ありのポイント制! 参加者のお二方には特殊な魔法を使い、オブジェクトとして配置される魔法人形マジックドールに扮して貰います! ステージに居るお二人以外の人達は全員魔力からなる動く人形! それに攻撃したらペナルティ! 減点! そして自分達の正体を見破られてもマイナス! 例えば“どうせ見つかるから良いや”と軽い考えで戦い続けていれば、相手に正体を知られ続ける事となって経過と共に点数が減って行くのです! 正体がバレているという事は両者の状態から探知し、魔力が自動的に判別します! それはお互いが一定距離を空けたら収まりますよ~! 当然、相手に攻撃を当てればそのダメージに置いてポイントが換算されます! 気絶したらもちろんリタイア! 自分達の言動で相手を欺き、かわし、正体を知られず相手より点を取る! そんなゲームとなっております! 因みに、合計ポイントは最後まで分からない仕様となっていますので気を付けてくださいねー!》


「成る程……直接対決はするけど、なるべく見つからないようにしなきゃダメなんだ」

「見破られたら減点。人の形をしたオブジェクトに仕掛けても減点。攻撃を食らったら減点。一方的に攻められる環境が無ければ大変そうですわ」


 今回のルール説明を聞き、大変そうだなぁと言うのが感想。

 色々と制約があるようにも思えるけど、切り詰めると見つからなければ良いというだけなんだね。攻撃を仕掛けたら十中八九見つかるとして、その時のリカバリーも重要になってきそう。

 取り敢えず聞くよりやってみた方が早い。私達は早速転移の魔道具にてステージへと移動した。



*****



 ──“村ステージ”。


「ここが今回の……」

「ステージ……」


 別々の場所で私達は口走る。何となくルーチェちゃんも同じような事を思った気がした。

 今回のステージは長閑のどかな村。既に魔法人形マジックドールは至るところに設置されており、本当に人々が普通に生活しているみたい。


「おやおや、お嬢さんや。今日も良い天気ですねぇ」

「え!? あ、はい!」

「ホッホッホ。元気そうですじゃ」


 ビ、ビックリした……。ルーチェちゃんかと思ったけど、本当に普通の人……でいいのかな。なんだね。

 私の姿もルーチェちゃんにはそう言う風に見えている筈。私から見てもそう。

 まずは色んな人に話し掛けて正体を暴くか、どこかに隠れてそれっぽい人を見つけるかだね。


(そう言えば、私はママ達を持ってるけど、それって傍から見たらどうなんだろう。他にそう言う人が居るのかな……)


 そう考え、チラリとあまり目立たないように視線を向ける。

 見ればお人形遊びをしている子供達とか空中にお人形さんを浮かせた人とかも居る。ちゃんと配慮されてるみたい。

 でも、ティナを浮かせて索敵したら流石に目立つから自分の足で探さなきゃだね。お話している人達は多いから、会話しても全然怪しまれない。


「こ、こんにちは」

「おやこんにちは。今日はお日柄も良く──」


 こんな感じで日常会話から探し出す。

 ちょっと緊張し過ぎてるかな。もっと自然な感じにしないと怪しまれるかも。

 今回は違ったけど、今度はもっと自然体でやろう。


「今日も良い天気ですね~」

「そうですね~。レイナさん」

「レ、レイナ……?」


 どうやら私の装いにも割り当てられた名前があるみたい。この村で私はレイナと言うお嬢さんなんだね。

 多分この人も違う。私の名前を教えてくれる為に近くに居たのかな。そうなるとルーチェちゃんとは結構距離があるのかもしれない。もう少し遠方を探してみなきゃ。


(本当にこのやり方で合ってるのかな……?)


 手当たり次第話し掛けると言う作戦。正直なところ効率はスゴく悪い。時間制限もある訳だもんね。

 もうちょっと楽な方法があるかもしれない。それを考えながら村を行く。

 見つける方法……方法……。ルーチェちゃんであると分かれば良いんだよね。ルーチェちゃんが居れば……あ!


(そっか、ここにルーチェちゃんを呼び寄せれば良いんだ。本当に見つかっちゃうリスクもあるけど、物は試し……!)


 思い付いた方法を実践に移す。別に難しい事は無く、単純な方法。

 私はママに魔力を込めた。


(なるべく人が多い所……私は村人に成り切って、しれっと使う。──“ツリー”)


「ん? なんだ」

「こんな所に樹なんて生えてたかしら」


 ママの植物魔法で樹を生やした。

 村人さん達には何の危害も加えず、ただ生やしただけ。

 これなら必ずルーチェちゃんはやって来る。だって向こうも私を見つけたい筈だから。

 集まったギャラリーに紛れ、自分で生やした樹を興味深そうに眺める……フリをする。その間にティナへ魔力を込めて感覚共有。バレないようにゆっくりと目を閉じ、懐にティナを忍ばせて周りの様子を窺う。

 唐突に生えた樹にはオブジェクトの村人さん達も気になっており、ちゃんと近くに来ていた。そしてまだ仕掛けられてない事からするに、一番の懸念材料だった魔法使用の瞬間は見られていない。見られても大丈夫なようになるべく人混みに紛れたけど、上手くいったみたい。


(確認……観察……周りの人達はあくまでオブジェクト。ルーチェちゃんがここに居るとしたら動きには微かな違いがある筈。それは私にも言える事だから早く相手を見つけた方が圧倒的に有利。確証があれば村人役に徹して確実な隙を突ける……!)


 観察ポイントは小さな点。周りの人達が植物に気を取られるのも少しの間だから、早くしないとね。

 ルーチェちゃんの特徴。特徴。生まれと育ち、出生が一流だからその立ち振舞いが素面に出ている筈。生まれついたそれはオブジェクトには再現出来ない。


「……!」

「……」


 そして、一人の女性が目についた。勿論見た目が変わっているから男性に見えている可能性もあるんだけど、その素振りに違和感を覚えた。

 むしろ、平凡な見た目なのにどこか気品ある感じ。……って、見た目。私の見た目は私じゃ分からない。それは自分も相手も同じ。だから同じく違和感を覚えている可能性も──


「……」

「……!」


 ──そして、ティナとその女性の目が合った気がした。

 そう、私の見た目。お人形を持っているのが幼い女の子や私くらいの子ならそんなに違和感はない。けれど、もしも男性とか大人の女性だったとしたら? あ、でも一応お嬢さんとは呼ばれてたね。けど、どっちにせよかな。

 多少の減点は仕方無いよね。もし違っていても疑問に突っ込まなければ始まらない。勘もまたダイバースで勝ち残る為の秘訣。

 ママに魔力を込め、足元から狙いを定めてけしかけた。


(“樹木壁”!)

「……!」


 一応声には出さず、ルーチェちゃんと思しき存在の足元から樹の壁を張り巡らせて包み込んだ。

 次の瞬間には隙間から光が零れ、その樹の壁が焼き消されるように焼失。つまり、私の狙いは間違っておらず、ルーチェちゃんも既に魔力を込めていた事が判明。村人さん達には影響が及んでいないから、まだ発見による減点だけかな。

 そして私はすぐに姿を消した。向こうも探していると思うけど、ルーチェちゃんの存在を認知している分、相手の方がポイントは減っている筈。


「……やりますわね。けど……!」

「……!」


 私の位置では聞こえないくらいの声量で魔法を使い、発光。目が眩み、その間に彼女の姿を見失った。

 流石のルーチェちゃん。即座の立て直しも一流だね。

 何はともあれ、お互いにお互いの姿は認識した。さて、ここからがゲームスタートかな!

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