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ロスト・ハート・マリオネット ~魔法学院の人形使い~  作者: 天空海濶
“魔専アステリア女学院”中等部一年生
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第九十三幕 打ち上げ

「「「──ルミエル先輩! イェラ先輩にレヴィア先輩! おめでとうございます!」」」

「おめでとうですわ!」

「おめでとう」

「おめでとうございま~すぅ~」


「ふふ、ありがとうね。みんな」

「面と向かって言われると恥ずかしいな」

「私はあまり良いところ無しだったけど」


 優勝インタビューや取材など諸々を終え、“魔専アステリア女学院”に戻ったルミエル先輩達をみんなで出迎えた。

 本当にスゴい試合だった! そして見事に先輩達は勝利を収めたんだね!

 ルミエル先輩は言葉を続ける。


「けれどこれで私とイェラ最後の大会は終わったわ。次の高等部部長は貴女よ。レヴィアさん」

「ルミエル先輩……負担と重圧が大きいんですけど」

「そこなの?」


 そう、そしてこれがルミエル先輩達最後の試合。

 卒業まではまだしばらくあるけれど、もう部活動は終わり。特訓は大変だったけど、居なくなると悲しい。でもそれは仕方無い事なんだよね……。

 居なくなるのは仕方無い……居なく……なるのは……──そこまで考え、思考を止めた。


「ふふ、とは言え送別会とかは来月にやるとして、部活から私達が居なくなるまでの数日間はみっちり鍛え上げるわよ! 新人戦も来月に行われるんですもの!」


「うへぇ……やっぱりキツいですよね……」

「大丈夫。今までの倍程度に収めておくから!」

「倍……」


 ルミエル先輩達ももう暫くは居るみたいだけど、その分詰め込んで特訓するとの事。

 “倍”……単純に考えたら二倍の練習量って事になるけど、ルミエル先輩の事だから倍とだけ言って三倍とか四倍とかもあり得るのが怖い……。

 最後の最後まで面倒見てくれるって言うのはありがたいんだけどね……。


「とにかく、これで試合は終わり。インタビューとかでもう夕方だし、今日のところは解散しましょうか?」

「あ、それについて話があるんですけど」

「お話?」


 終わりの直前に声を掛けて呼び止める。これは前から話し合っていた事。私は口を開いて説明した。


「はい。実は中等部大会の分と高等部大会の分で、ルミエル先輩達とも打ち上げをしたいんです。ボルカちゃん達や先輩達と話し合いました!」


「打ち上げね……面白そう! 良いわ。貴女達の案に乗りましょう。イェラとレヴィアさんも行くでしょう?」


「ま、最後の時間だからな。本来はその時間も後輩達の鍛練に費やしたいが、良いだろう」


「もちろん私も行くわ。ティーナちゃん。ルミエル先輩達ともこれっきりなんですもの」


「やった! 既にお店はセッティングしてあります! ルーチェちゃんが!」

「私やりましたわ!」


 会場は既に抑えてある。こういう時は迅速だからね! と言ってもほとんどは数多のお店を知るルーチェちゃんのお陰。私達がした事はそんなに多くない。

 そんなこんなで私達は打ち上げの為、ルーチェちゃんが予約したお店に向かった。

 実は私達もルーチェちゃんがどんなお店を用意したのかは分からないけど、彼女の事だからきっと素敵な場所を選んだんだよね!



*****



 ──“ルーチェが予約したお店”。


「「「いらっしゃいませ。ルーチェ・ゴルド・シルヴィア様御一考。及び今回の主役であらせられるルミエル・セイブ・アステリア様」」」


「ごきげんよう。スタッフの皆様方」


 お店に入るや否や、一糸乱れぬ店員さん達の挨拶が響き渡った。

 内装は老舗の高級レストランと言った感じで、ところどころに歴史を感じさせるアンティークな装飾が施されている。

 予約は任せたけど、まさかこんなに豪華なお店なんて……。ルーチェちゃんらしいと言えばらしいんだけどね。


「良い所じゃない。私達の為にこんな場所を用意してくれるなんて、本当に先輩想いの後輩達だわ♪」

「奮発しましたわよ! ルミエル先輩達の為ですもの! もちろんお店は貸し切りですわ!」


 こんなお店を貸し切りにするなんて、シルヴィア家の財力はどうなってるんだろう……と言うより、ご令嬢のルーチェちゃんがそれを可能にしているって事は、それだけの信頼が彼女にもあるって事だもんね。

 私もお嬢様的な立場ではあるけど、ルーチェちゃんには遠く及ばないなぁ。


「それでは、此方になります。ルーチェ様」

「苦しゅうないですわ」


 その後、店員さんにお店を案内される。

 歩くだけでここの豪華さがよく分かるね。美術品に骨董品。珍品名品多種多様。バラバラでも互いに邪魔をしておらず、整っている様がよく分かった。

 辿り着いた場所はまるでホテルの一室のように大きな場所。まるでお店じゃないみたい。……あれ? ホテルってお店の一つだっけ。ま、いっか。

 席に着き、メニューを見て料理を注文。フルコース的な物が主体みたいだけど、そこは羽目を外してきっかりするんじゃなくて好きな物を好きなだけ頼む方向にした。


「当店では気品を主体としておりますが、ワイワイと皆様で楽しむスタイルもあります。ではごゆるりとお楽しみください」


「あ、ありがとうございます!」


 品格を大事にしているお店であっても、ちゃんと宴会とか用のセッティングはされてるみたい。

 みんなでも騒げるようにルーチェちゃんはここを選んでくれたんだね。

 その後料理が運ばれ、みんなで乾杯(※ジュース)。

 早速ご飯を食べながらお話などをして過ごす。

 メニューは前述したみたいにフルコースとかのような豪華な物じゃなく、フライドポテトとかみんなで食べられるジャンクな物を中心的に頼んだよ!


「ジャンクフードも美味しいわね。流石は一流店。良い素材を使っているわ」

「そう言って貰えて幸いですわ! 私のお店ではございませんけれど、選んだお店で喜んで貰えると私も嬉しいんですの!」


「本当に美味しいね。このフライドポテト。ホクホクのサクサクだよ~」

「ティーナさんにも喜んで貰えて何よりですわ!」


 ポテトを食べたりお肉を自分で焼いたり、完成している物が運ばれてきたり、アイスクリームとかドリンクとか楽しみ方は様々。ここはそう言うお店。

 打ち上げだけどちゃんと真面目な会話とかもするよ。


「ルミエル先輩。ダイバースでの……と言うより魔法を扱う上でのコツなんですけど……実は──」

「そうね。それなら此処は──」


 ダイバース。及び私やママの魔法について。

 ママの植物魔法は範囲や出力にけているけど、イマイチ上手く扱えている気がしない。なのでそれについて聞いてみたの。

 的確なアドバイスが返り、とても参考になった。


「それと前に“日の下(ヒノモト)”に居る友達のレモンさんから言われたんですけど、私の魔法には別の物があるみたいで──」

「……へえ?」


 最後にレモンさんから聞いた事をルミエル先輩に訊ねてみる。

 私が自覚していないだけで、ママとティナ以外にもあると言う魔法。ママとティナは物じゃないから根本的な人形魔法とは違うんだけど、それを濁しながら。前に炎魔法を使えた事も含めて聞いてみた。

 一瞬だけ訝しげな表情をしたルミエル先輩は質問に返す。


「そうねぇ、様々な人種や種族との混血ハーフが多い今の時代。四つのエレメントを扱える人は珍しくないけれど、ティーナさんの場合は人形魔法として確立しているから不思議に思われたのね。最も単純な答えはティーナさん自身の成長によって身に付いたという事……だけれど、そう言う感じではないのかしら? 貴女自身が無自覚なら本当に偶然放てたという事になるけれど」


「はい。私自身も何とな~く……そんな気がするってだけでよくは分からないんですけど、確かに試合の映像を見返すと炎を使っているんですよね」


「潜在能力的に元々使えるのかもしれないわよ。魔法はイメージが一番大事。炎や何かしらの存在をイメージする事で、やれないと思っていた事を可能にするのは魔法や魔術でよくあるもの。その年でレヴィアさん以上に植物魔法を操れる貴女ならばちょっとした切っ掛けで使いこなせるかもよ」


「ちょっとした切っ掛け……」


 ルミエル先輩の見解は、元々私にも火の系統が宿っている。素質があるというもの。

 可能性が0じゃないなら先輩の言うように何かをイメージすればやれるのかな……。私の想像する火はボルカちゃんになるけど、今度確かめてみようかな。


「ありがとうございます。私、炎魔法も練習してみます!」

「良い心掛けね。基礎となるエレメントはいずれ習うけれど、中等部の一年生から全種類を使える子はそうそういないわ。元々貴女の植物魔法は水、風、土の混合魔法だから火を使えれば全てを身に付けた事になるわね」

「はい! やってみます!」


 多分ルミエル先輩は昔から使えたんだろうけど、もしかしたら私も使えるようになるかもしれない。そしたらもっとみんなの力になれる。

 そのうち習うみたいだからちょっと早まるだけだけど、新人戦までにいくつか覚えれば役に立てるかも!


「ティーナはスゲェな~。けど、炎って分野ならアタシが負ける気は無いぜ!」

「私もボルカちゃんに勝つ気はないよ!」

「そっか! って、それを堂々と言うな! それを!」

「フフフ」「ハハハ」


 打ち上げのつもりだったけど、結局ダイバースの話とかで盛り上がっちゃったね。

 でも楽しい一時を過ごせたよ。本当に良い一日だった!

 長期休暇もそろそろ終わり。出された課題は終わらせたし、明日からはまた部活動も再開だからまた忙しくなりそう。

 そして楽しかった打ち上げは数時間で解散となる。


 その後、残りのお休みをゆっくりと過ごしているうちに日は流れ、ついに新学期へ突入。学校が再開するのだった。


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