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ロスト・ハート・マリオネット ~魔法学院の人形使い~  作者: 天空海濶
“魔専アステリア女学院”中等部一年生
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第九十二幕 ダイバース代表戦・終結

「フム、やはりこのレベルになってくると手強いな。その身のこなし……部下のヴァンパイアもかなりの実力者だ」


「部下……まあ、立場的にはそうなるな。ダイバースのチームでの役職も国によって変わる。確かに我々の国ではそう言った呼び方だ」


「フッ、高貴なヴァンパイアらしいな」

「部下って呼び方は果たして高貴か? それに、私の上司はリーダーのブラドだけなのだがな」

「そうか。君の立ち位置は副リーダーのようだ」


 再現宇宙空間。そこにあるそれなりに大きめな星で私は魔物の国の者と相対していた。

 副部長の私と彼女。チーム内での立場は同じらしいな。相手にとって不足はない。


「では、やるとしよう」

「そうだな」


 踏み込んで加速。木刀を差し込み、彼女は持ち前の腕力で受け止める。

 あくまで魔力強化した木刀。普通に素手で止められるのは仕方無い。

 そして彼女と私。性格的に似ているかもしれないな。具体的には分からぬが、なんとなく、そんな気がする。


「ハァ!」

「魔力からなる剣……いや、斧か。大きな斧だな」


 片手に魔力を込め、顕現させた大斧を振り回す。

 それを木刀でいなすように受け止め、受け流して胸元へ突き刺した。

 常人なら深い傷を負うかもしれぬが、ヴァンパイアならば銀の剣でなければ平気だろう。


「……っ」


 そのまま吹き飛ばし、複数の岩を貫いて遠方へ。

 大したダメージは無くとも、意識を奪う切っ掛けはまた別。私達人間での在り方だが、脳への酸素不足でも意識は失うのだからな。

 魔力を保っている私に魔力切れはない。私の体力が持つ限り、仕掛け続ければ良いだけ。

 大地を蹴り、吹き飛ばした奴の元へと迫り行く。


「……! やぁ!」

「ハァ!」


 吹き飛ぶ途中で態勢を立て直し、大斧を振りかざしてけしかける。それを木刀で受け、また逸らして顎から上へとカチ上げた。

 奴は仰け反り、私は透かさず腹部へ打ち抜く。相手は口から空気が漏れ、追撃するように上から降ろして地面へと叩き付けた。

 この連撃でも大したダメージは負わぬのだろうが、気休めくらいにはなるだろう。


「人間離れした腕力だ」

「魔力で強化しているからな」

「その魔力も微々たるもの。素の身体能力がとてつもないだろう!」

「まあ、身体能力には少し自信があるな」


 叩き付けられた体勢そのまま、地面内へと潜り、移動して私の背後から斧が振り下ろされる。

 それを背面突きでいなし、そのまま振り向き様に木刀を薙いで奴の体を近くの岩へ叩き付ける。

 追撃するように飛び掛かり、岩ごと奴を打ち抜いて粉砕。距離を詰め、更に打ち込んだ。


「傷はすぐに癒えるが、容赦しないな」

「容赦している余裕なんぞ無いからな」


 飛び退くように離れ、その距離を縮める。斧と木刀がぶつかり合って衝撃が散り、星を揺らしてせめぎ合う。

 舞うような動きで斧を巧みに操り、それをいなしながら肉体を破壊していく。

 私にやれる事と言ったらそれくらいだからな。


「最高速でけしかける……!」

「……! 速っ……!」


 顎を打ち、脳を揺らす。しかし当然この程度では気絶までいかない。なので頬を叩き、おそらく急所であろう顔を重点的に狙っていく。

 同性として私も気持ちは分かるので相手が女性ならば傷を残さぬようあまり顔は狙わないようにしているが、相手がヴァンパイアの場合は別。積極的に狙わねば此方が押しやられてしまうからな。

 故に速く、鋭く、徹底的に打ち倒す。


「……っ。この速度、本当に人間なのか……!? ルミエル・セイブ・アステリアのように何かしらの種族との混血ハーフなのではないか……!?」


「そうだな。遠縁には魔族の親戚も居るが、それは祖母の兄妹。祖母の夫もその子の配偶者も人間であり、私自身は純正人間だ。確か、祖母のずっと前の世代にも魔族は居たらしいが……それとも別に繋がりはないからな」


「そう……か!」

「ああ」


 反撃もされるが、かわして打ち込む。

 私の予想ではそろそろな気もするが、ヴァンパイア族と戦う事はあまりないからな。種族その物が長寿であまり子を残さぬ為、この平和な世でも数自体は少ないのだ。


「トドメと行こう」

「行くか……!」


 大斧が振り下ろされ、地面が割れて亀裂が入る。しかしそれはかわしており、最後に連続した攻撃を叩き込んだ。

 切り上げ、切り下ろし、薙ぎ払い、打ち、叩き、突く。数なんぞ数えていないが百は優に越えている。

 トドメとして大振りでけしかけ、奴の体は複数の岩や山を打ち砕きながら吹き飛んだ。


「……くっ……この……程度で……」

「………」

「……!? な、なんだ……体が……揺れる……」


 傷を再生しながらフラフラと現れるが、その様子が少しおかしい。

 それは一番本人が理解しており、とうとうバランスが取れなくなって倒れてしまった。


「……まさか……私がやられるのか……」

「ああ。息つく間も無く仕掛け続け、ようやく此処まで辿り着いた」

「そう……か……」


 一言だけ言い、転移の光と共に控え室へ。

 気絶とは謂わば脳の強制終了。故に絶え間無く脳へダメージを与え続け、破壊と再生を繰り返した。

 それによって脳へは傷以外のダメージが蓄積していき、キャパオーバーとなった事でこの者は一瞬だけ意識を失った。それが今大会のルールでは勝利に繋がる。


(これで少しは勝率が上がったが……まだまだ強敵揃い。ルミはトップ達をまとめて倒したと思うが、先は長いな)


 そう考えていると遠方でまた転移の光が飛んでいった。

 激しい戦いは続いているようだな。レヴィアの姿は見えないが、魔力量の少ない私は魔力探知にけている訳でもない。一先ずやれる事は相手を見つけ次第倒していくだけだな。

 私はそれに乗り出した。

 その後、レヴィアは惜しくもリタイア。しかし私とルミが他の者達を複数人倒し、今回のゲームは終了となった。



*****



《試合終了ォォォ━━━ッ!!! これにより、全ての部での総合勝率が決まりましたァ━━ッ!》


「総合勝率?」

「今回の試合で、一位、二位、三位……って感じで同じ順位内でも各種ランク付けがされたでしょう? そのブロック毎での勝率によって最終結果が決まるの」

「そうなんだ」


 ルミエル先輩達の試合を観終え、聞き慣れないワードに疑問符を浮かべているとウラノちゃんが答えてくれた。

 この大会では一位だけじゃなく、二位決定戦や三位決定戦もある。その中でも勝率はあり、それが一番高い国がこの年の優勝って扱いになるみたい。

 そしてその計算が終わった。


《総合勝率!!! 結果発表ォォォォッッッッッ!!!!!!!!》

「「「ドワアアアアアアアアアアアアアアアアッッッッッッッッ!!!!!!」」」

「「「ウオオオオオオオオオオオオオオオオオオッッッッッッッ!!!!!!」」」

『『『キュオオオオオオオオオオオオォォォォォンンッッッッッ!!!!!!』』』

『『『グオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォッッッッッ!!!!!!』』』


 発表を前に一段と大きな歓声が巻き上がる。もうこの音にもすっかり慣れちゃった。

 いよいよ分かるんだ……! 因みに二位決定戦のブロックでは魔物の国が。三位決定戦のブロックでは魔族の国が勝率一位だったよ。

 それだけ聞くと既に幻獣の国は最下位みたいな感じになっちゃうけど、実はそれ以下の部ではいずれも幻獣の国が好成績を収めていたりする。

 上位陣営の方がポイントは高いんだろうけど、まだまだ勝負は分からないって感じかな。

 でもそれが今明らかになる。


《まずは総合三位から! 今大会の三位は前大会から躍進! 幻獣の国ィィィ!!! 三位以下のブロックによる成績が功を奏しましたァァァ!!!》

『『『キュオオオオオオオオオオオオオオオオォォォォォンンンンッッッ!!!!!!!!』』』


 総合三位、幻獣の国。

 前回の最下位から一つ上へ。それが国その物の指数にもなりうるからこれはかなり大きな進歩なんだね。

 続いて司会者さんは声を上げる。


《そして総合二位!! 前回と変わらず、魔族の国ィィィッッッ!!! 優勝決定戦では二位! 三位決定戦で勝率一位を会得し、その他にもバランス良く加点によってこの順位に立ちましたァァァッ!!!》

「「「ウオオオオオオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォォォッッッ!!!!!!!! もう少しだったァァァッ!!!」」」


 総合二位は魔族の国。

 これは……総合一位か最下位の二択……! しかも、ルミエル先輩達は勝率一位を獲得してそうな雰囲気だったけど、他のブロックではそんなに奮わなかったかも……。で、でも最下位は回避していたし……うぅ……ドキドキしてきた……。

 そのドキドキを数秒間楽しませた後、司会者さんは音声伝達の魔道具を握り締めて声を上げた。


《総合優勝ッ!!! 一位!!! 栄えある優勝チームはァァァッ!!! ─────────人間の国ィィィィィィィィィィィィィィッッッッ!!!!!!!!!!》

「「「ヨッシャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!」」」


 たっぷりと引き伸ばし、勝率一位を発表した。

 良かった……私達の国は無事に一位を取ったんだね!


「やった! やったよ! ボルカちゃん! みんな!」

「ああ! そうだな! やったな! ティーナ!」

「韻を踏んでますわ! でも一位! やりましたわ!!」

「やっぱり一位決定戦の影響が大きかったみたいね」


 各々(おのおの)で喜びを表す私達。

 ウラノちゃんと言う通り、司会者さんは言葉を続ける。


《一位決定戦の勝率一位! 及び、他の決定戦では二位や三位をキープしたのもあり、見事優勝に輝きました!! これによって人間の国は高等部大会三連覇!!! ルミエル・セイブ・アステリアに着目すれば六連覇となります!! そして魔物の国の皆様!! 前回大会からとても惜しい結果となってしまいました!! 二位決定戦では勝率一位でしたが、一位決定戦勝率最下位、二位決定戦以外では三位と四位が多くなってしまい、この結果となりましたァ………!!!》

『『『グオオオオオオオオオォォォォォォォォォォォッッッッッ……!!!!!』』』


 理由は以上の通り。特筆して活躍したのはルミエル先輩達だけみたいだけど、他の先輩達は何とか四位の回避に専念して漕ぎ着けたんだね。

 でもそれは実力あってこそ。だって全員私達より遥かに上の人達だもんね。本当にスゴい!! 何がスゴいのか説明出来ないけどとにかくスゴい!!


《では! これにて“多様の(ダイバース・)戦術による(タクティクス・)対抗戦(ゲーム)”の代表戦は終了となります!! この後に参加者達のインタビューが控えており──》


 当然インタビューも聞くよ! 尊敬する先輩達がするんだもんね!

 何はともあれ、これにて白熱の大会は終わりを迎える。ルミエル先輩達は見事に優勝を掴み取り、華を飾って高等部を卒業出来るね。……寂しくなるけど。

 そして代表戦は無事に終結するのだった。

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