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ロスト・ハート・マリオネット ~魔法学院の人形使い~  作者: 天空海濶
“魔専アステリア女学院”中等部一年生
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第九十一幕 トップ対決

 本気になった私。全部私の自作自演とも言えるけれど、いつ以来かしら。

 あるとしたら各国のトップかイェラ相手くらい。ティーナさんの時もある意味では本気だったわね。彼女を傷付けないようにするやり方だったから今回とは趣旨が違うけれど。

 何はともあれ、久し振りの本気。最強の底を見せられるかどうかは分からないけれど、限り無く近い力は扱う予定よ。


「──“魔王の炎”」

「『「──!」』」


 魔力を込め、最大規模の炎魔術を放出。それによって周囲は焼き払われ、再現された太陽も逆に飲み込まれて焼失。

 幾つかの存在が転移の魔道具で光となって飛んでいったのが見えた。

 小手調べで何人かは倒したみたいね。トップ達は保っているけれど。


「呼び寄せてからの一網打尽……本当にこんなにあっさりと仲間が消えてしまうとはね」

「ブラドさんの所は元々一人。すぐに終わってしまったわね」

「まあ構わないさ。元よりヴァンパイア一族は孤高の存在なのだからね。俺自身の傷も即座に治る」


「チッ、俺ン所も一人か。情けねェ奴だぜ。転移したから傷は大丈夫だとは思うが……テメェは無事か?」

「なんとか……しかし意識が飛び飛びです……」

「リタイアしなけりゃ俺が治せる」

「ありがとうございます。シルヴァさん」


『此方も一匹やられちゃったみたいだね。君は大丈夫?』

『大丈夫であります。……しかし、その他の者達と同じく傷が深く、治癒まで少々時間が……』

『大変だね。下がっていても良いけど……』

『問題ありません! あれ程の存在を相手にするのですから! 頭数は多い方が良いでしょう!』

『それもそうだね……!』


 各陣営、一人と一匹ずつ倒せたみたいね。これで私のポイント。勝率が少し上がったわね。

 さて、まだ数は残っている。一番の問題であるトップの子が無事だもの。備え付けの再生力や生命力でダメージも癒えていく。まだまだやりましょうか。


「“魔王の水”」


「“破壊タドミール”!」

「水ならまだ火よりは抑えやすい……!」

『カァ!』


 空間全体を覆い尽くす大波を放ち、シルヴァさんはそれを破壊。ブラドさんは自身に魔力を込めて耐え、ラゴンさんは火球を吐き続け蒸発させていく。

 復活した星々は洗い流され、周囲は水浸しになった。ふふ、乾かさなくてはならないわね。


「“魔王の風”」


 全てを吹き飛ばし、星々を巻き込んだ大竜巻と化す。

 ただの風ではあの子達から距離が遠くなってしまうから引き寄せる形の竜巻を作ったの。渦に飲まれたら既に巻き込まれている星々に潰されて意識不明。ちゃんと風の一つ一つを操作しているから殺めはしないわ。


「仕掛けます……!」

「あァ……!」


「アナタ達が先ね」


 シルヴァさんとそのお仲間がけしかける。

 シルヴァさんは隕石や星を創造して私へ打ち付け、お仲間は──


「──“震動ハザオーリア”!」

「通常のエレメントとは違う“災害魔術”。魔族は魔法や魔術が人間以上だからこそ、上位互換とも言える力が使えるのよね」


 竜巻に直接震動を与え、内部から揺らして崩壊させる。

 風に揺れを与えるなんておかしな表現と現象だけれど、それを可能にするのが彼女達。末恐ろしいわね。


「“魔王の土”」

「……!」


 なので大地を生み出し、彼女の体を押し潰す。

 これで意識が無くなれば終わりね。また私達チームが有利になる。


「……っ。“アナ”」

「……あら、“地震”だけではなく“人”の災害魔術も使えるのね」


 直前、あの子は魔力から自分の分身を形成。その直後に転移の魔道具で消え去る。

 最後に置き土産として自分自身を創り出して消えたみたいね。分身の彼女を倒しても扱い的には魔力になるから私達の勝率にはならない。けれど同じく災害魔術を使える存在ではある。

 フフ、ただではやられないのが此処まで勝ち残った強者らしいわね。


「テメェの置き土産は有効活用させて貰うぜ……!」

「好きに使ってください。シルヴァさん。耐久性は本体より脆いですが、能力はそのままです」

「そうさせて貰う」


 ふふ、信頼しているのね。

 私が勝つと信頼してくれているからイェラ達は来ないけれど、仲間と協力する方も当然一つの信頼の形。

 面白くなってきたわ。


「“魔王の波動”」

「“震動ハザオーリア”!」


 波動に震動の衝撃波をぶつけ、少し拮抗。揺れのみで周りが崩壊していく。

 背後にはシルヴァさんが来ており、既に創造した武器が握られていた。

 どちらかと言えば私狙いの方が多いけれど、これは乱戦。既に私達が狙われていた。


「“漆黒の槍”」

『ハッ!』

『たぁ!』


 黒い魔力からなる槍が迫り、火球と雷撃が放たれ来る。

 私の攻撃は止められているから無防備を晒しているような状態。……じゃあ、別の力に変化させましょうか。


「“魔王の衝撃”」

「『「……!」』」

「『……!』」


 戦闘の余波で散っていた魔力の欠片をその場で変化。衝撃波となり、災害魔術の子の分身は消え去り、幻獣の子も吹き飛ばした。

 トップ三人はまだ残っているけれど、これで私が呼んだ相手の仲間は全滅。あくまで此処に来た子達は。

 即座に力を込め直し、衝撃波で怯んでいるうちに最大級の攻撃を仕掛ける。今度は向こうに無防備を晒させてね。


「“引力グラビティ”」

「……!」

「まさか……!」

『これは……!』


 重力魔術とはまた別。前述したように周りには私の……相手のお仲間達を呼んだ時の魔力の欠片の余波が残っている。少しややこしいわね。

 ともかく、だからそれを縄のようにして全員の体を縛り付け、擬似的な金縛りを作り出したという事。防御がままならなければ彼らでも耐えられる筈がない。

 その上での確実な一撃。


「──“魔王の”──」

「『「………!」』」


 魔力を込め、放出。そんな単純なやり方。

 けれど今使ったこれはその破壊力が桁違い。あ、ちゃんと意識不明に留まる程度には抑えているから総合的には今までより高い攻撃という感じかしら。


 ふふ、これはあくまで試合だもの。シルヴァさんが破壊魔術を抑えているように、ラゴンさんが火球くらいしか使っていないように、ブラドさんが黒い魔力を中心に放っているように、技を絞ったり威力を下げたりして全員が全員、真の意味での本気は出していない。相手を殺める為の戦いは数千年前に終了したの。


 私の放った魔力は宇宙空間を駆け抜けて迸り、拘束したこの子達の意識を刈り取る。

 あら?


「“創造カラク”……!」

『──カッ!』


 シルヴァさんとラゴンさんが私とは別方向に創造した魔術と轟炎を吐き付けた。

 そして向こうに感じる別の気配……イェラ達ではないけれど、成る程ね。最後の足掻きとして相手を倒し、勝率を上げようと言う魂胆みたい。

 少しでも次に繋げようと言う気概。見事な散り様ね。それはちゃんと的中し、魔族の国と幻獣の国の勝率が上がった。

 それにより、ブラドさんを除いて転移の光と共に消え去った。

 フム、ブラドさんが残っている……そして彼だけ攻撃をしていなかった。……つまり、


「……なんとか……再生が間に合った」

「全ての神経を己の再生に費やしていたのね。最後までやろうと言う気概。それもまた称賛に値するわ」

「上から目線だな。相変わらず」

「そうでもないわよ。別に私は全てに置いてブッチ切りの最強と言う訳ではない。ちょっとした切っ掛けがあれば、アナタ達には越えられる可能性もある未完の最強。……だからまだまだ上に行ける」


 ヴァンパイアの再生力を最大限に高めていた。その為に反撃も何もなかった。

 やるじゃない。本来ならあれで終わっていた。なのに耐え切ったとはね。

 フフ、まだまだ楽しめるかもしれない。弱点の十字架とか使うのは野暮。折角だから一対一でお相手しましょうか。


「“黒魔剣”」

「“魔王の剣”」


 黒い魔力の剣と私の魔力の剣が衝突して星々を切り裂き、黒い魔力を突き抜けてブラドさんの体を刻む。

 彼の再生力ならこの程度では気絶もしない。だからこそある意味存分にやれる。


「これでは当たらないか。“漆黒の矢”!」

「相変わらずネーミングセンスが素敵ね“魔王の矢”」

「また煽っているのかい?」

「そんな事無いのに」


 本当にカッコいいと思ってるんだけれどな~。

 無数の矢同士がぶつかり合い、弾けて辺りの星々をまた射抜いていく。

 これでは埒が明かないわね。今度こそ終わらせていこうかしら。


「決着としましょう。魔物の王様」

「俺もそろそろそう思っていた頃だ。最強よ……!」


 互いに魔力を高める。再生力が難所なら、再生力関係無い方法で気絶させれば良い。

 込めた魔力を私達は放出した。


「──“魔王の霆”」

「──“暗黒鋭槍”」


 宇宙全体を感電させ、ブラドさんを痺れさせる。再生するよりも前に細胞の機能を一時停止すれば良いだけ。

 無数の黒い槍が私の方に迫り、私の肩を貫いた。


「……ッ! フフ……痛いわね……けれど──」

「──」


 久し振りにまともなダメージを負ってしまったけれど、既に彼の意識は無くなっている。

 再生力と雷による気絶の関連性。それは分からなかったから一か八かの賭けだったわね。おそらく雷撃によるダメージと言うよりは私の魔力の影響が大きいのかも。魔力が直接彼の何かに作用して意識を奪う事が出来た。

 まだまだ魔法も魔術も未知数。何はともあれ、私によるトップ達との戦いには決着が付いた。

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