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ロスト・ハート・マリオネット ~魔法学院の人形使い~  作者: 天空海濶
“魔専アステリア女学院”中等部一年生
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第九十幕 応酬

「“ファイア”」


 魔力を込め、炎魔術を放出。

 周囲を伸びるような火炎が飲み込み、辺りの星々にある水分を蒸発させた。

 ホントに宇宙空間の再現性が高いわね。魔導をもちいたプラネタリウムとかあるけれど、一度は行ってみたいわ。


「単なる初級魔術がこの空間ではさながらプロミネンスが様。末恐ろしい力だ」


「そういう貴方の黒い魔力は何かしら。影魔法や影魔術。槍魔法でも槍魔術でもない。本当に単純な黒く鋭い魔力のようね」


「その判断通り。単純な黒い魔力だ。君と同じだ。君も魔力その物を自由自在に操るだろう? そう言う力なのさ」


「そうだったの。教えてくれてありがとう♪」


 魔力には魔力。炎魔術をかわして即座に仕掛けてきたのはブラドさん。流石のヴァンパイア。速度もかなり早い。

 そんな彼の鋭利な魔力には私の魔力をぶつけて相殺。横から火球が飛び込み、隕石のような岩も降り注ぐ。


「ラゴンさんの炎にシルヴァさんが造った隕石。少しずつ力を上げて行ってるわね」

「あの挑発をされりゃあな。俺ァそんなに甘くないぜ?」

「他人の身を案じて破壊魔術を多用しないだけ立派よ。創造魔術だけで十分と言われたらそうなんだけれどね」


 複数の技はそれぞれで掻き消され、私は再び魔力を込めた。


「けれど、まだまだ力は上げなくちゃね。“大放出”」


 魔力を大量に放出し、辺りを衝撃波で吹き飛ばす。

 ちょっとフワフワして大変ね。けれどこの世界での地上は少し脆いから結局再現された宇宙空間で漂うしかないのよね。


「妙だな。本気にさせる為とは言え、魔力消費の多い魔術を使い過ぎている。何がしたい?」

「深い意味なんてないわよ。勘繰り過ぎ。さあ、本気になっちゃって」

「……!」


 魔弾の無数放出。一つ一つは小さいけれど、沢山あれば範囲技と大差無いわよ。

 それらは縦横無尽に飛び交って辺りに散り、星の光のように点灯して破裂。魔力の衝撃波を散らす。

 一応衝撃波と形容したけれど、具体的には少し違うわね。熱とエネルギーの集合体……もしかしたら少し重力も入っているかもしれないわね。考えてみたら魔法や魔術。魔導の研究は日夜進められているけれど、“魔力”の正体はあまり明かされてないわね。それ関連を研究する機関に入るのも良いかも。フフ、結局は魔導研究の一環ね。


「無茶苦茶する」

『『『………』』』


「貴方こそ。シルヴァさん。様々な存在を創造して魔弾を防ぐなんてとんでも技を見せているじゃない」


 一つ一つの威力は控え目。要するに魔力の単純放出だもの。作られた星々は破壊出来ても決勝にまで勝ち上がれる程の子達を倒す事は出来ない。

 ブラドさんは黒い魔力で消し去り、ラゴンさんは……あら。


『カッ──』

「近くまで来ていたのね。あの弾幕を抜けて」


 眼前におり、可愛い八重歯も見えるお口を開いて火球が放たれた。

 けれど既に周りには私の魔力が漂っている。打ち消す事は可能。


「“ファイア”」

『チィ……体外に放出された魔力の変化……おかしな事をしている……!』


 炎は炎で掻き消し、ラゴンさんの体へ触れる。先に倒すのは誰にしようかしら。


「“衝撃インパクト”」

『……ッ!』


 魔力が彼女の体を貫き、大きく吹き飛ばした。

 また生成されていた星々を砕いて一際大きな場所に着弾。

 そう言えば、この再現された宇宙が本来の宇宙だったら私達の大きさは月並みはあるかもしれないわね……と、関係無い思考をする。

 月よりはもう少し大きい可能性もあるけれど、小宇宙だからそんな妄想をしてしまう。


「“暗黒貫通衝”!」

「あら、素敵なネーミング」

「煽っているのか?」

「俺ァ好きだぜ。特に“暗黒”って単語がな!」

「煽っているな。君達」


 ラゴンさんを吹き飛ばした直後にブラドさんからなる黒い魔力。“†暗黒貫通衝ダークネスペントレートインパクト†”が放たれた。


 ──無数の漆黒の槍は邪神(ただし現在は封印されており、力は全盛期の半分にも満たない)の槍が如く突き抜け、無数の星々を貫いて敵である魔王と魔神を撃ち抜いた(魔王と魔神は仲間と謂う訳では決して無く、敵対関係であり、邪神とは利害の一致で協力しているに過ぎない。しかし闇夜に生きるヴァンパイア族である夜の血王(ブラド・ナイト)はそれを自らの左手を封印する事で使役している)。


「何か勝手に呼び方変えたり頭の中で設定作ったりしてないか?」

「ソンナコトナイワヨー」


 あら、思考が読まれたのかしら。やっぱりヴァンパイアと言い、黒い魔力と言い、そそられる部分があるのよね~。

 場所が宇宙なだけあってインスピレーションが湧くわ。


「その表情を見れば分かる。“黒槍”!」

「ふふ、“黒槍ブラックランス”。良い名前じゃない」

「誰もその表記はしていないんだけどね」


 一直線に黒い槍のような魔力が迫り、私とシルヴァさんを掠る。中々の速度ね。掠り傷はすぐに癒えるけれどとても速いわ。


「なんだその再生力は……!」

「ァあ? 魔族の特性だよ。より長く戦えるように進化したからな。ちょっとした傷くらいならすぐに治るんだ」

「私はほとんど魔族の血が残っていないから人間の再生力に毛が生えた程度だけれどね。……でも、再生力と言うのならアナタの方が圧倒的じゃない。ブラドさん」

「まあ、それはそうだけどね」


 私達の回復力に驚くブラドさんだけれど、何を隠そうヴァンパイア族である彼に至っては欠損すら即座に再生する程の回復力の持ち主。

 私達の治癒力に驚くにしては少し説得力が弱いわ。


『──カァ!』

「フフ、貴女も生命力はとてつもなかったわね。幻獣の王様だもの」


 大きな星の中心から直線上の火炎が放射され、複数の星を貫いて私達の前へ。

 私達は防御の姿勢に入り、その隙を見逃さず私は魔力を込めた。


「チャンスね」

「考える事は同じか……!」

「その様だ」


 互いに魔力を放ち、火炎と三つの力に四人は包まれる。

 即座に宇宙空間は爆発し、各々(おのおの)はまた距離を置いて留まった。


『まだ終わってないよ! ルミエル・セイブ・アステリア!』

「ええ、そうね。女の子同士で楽しみましょう?」


「んじゃ、必然的に俺達は俺達でり合う事になンのか」

「そうなるかな。まあでも──」


「『「「流れ弾が当たる可能性は高めだけど()」」』」


 1vs1vs1vs1。それが現在作られている状況。自身の対戦相手が決まっていたとして、何かの間違いで流れ弾が当たる可能性はある。

 なので警戒は最大限にしなくてはならないわね。


「“ファイア”」

『──カッ!』


 炎魔術と火炎がぶつかり、宇宙空間に凄まじい熱が広がる。

 場所が場所だからさながら一つの太陽が如し。けれどこの宇宙にもちゃんと太陽はある。大きさ的にも私達の四〇〇倍くらいだからぶつかり合いで生じた炎とどちらが大きいかは分からないわ。

 そんな炎の近くで彼らも衝突する。


「“怪物ワハシュ”」

『『『………!』』』


「“漆黒連槍”!」


 取り敢えずモンスターという感じの見た目のモノを生み出し、ブラドさんは†漆黒の槍†で消し去っていく。

 そして流れ弾として槍とモンスターの一部が私達の方に向かい、片手で火球を作り出し、ラゴンさんも口を開いて流れ弾を返す。


「流れ弾が多いわね♪」

『そうだね』


「流れ弾が多いな」

「お互いにな」


 相手は決まっているけれど、結局乱戦になってしまったわね。

 魔力に火炎に黒い魔力に創り出されたモノ。取り敢えず半数以上は魔力ね。魔力関係無くこの戦いに付いて行けるラゴンさん。龍という種族は幻獣の王を謳われるだけの存在だわ。

 既にいくつの超空洞ボイドが作られたかしら。再現宇宙だから即座に復活するけれど、余波が大きいわね~。

 ……ま、それも狙い通りなんだけれど。私は調弄はぐらかしたけど、さっきのシルヴァさんの予想通りよ。


「そろそろかしら」

『何が?』

「フフ、大混戦の幕開けが……ね」

『……?』


 次の瞬間、此処に居る子達とは違う魔法や魔術が過ぎ去り、幾つかの星を粉砕した。

 山河破壊はリーダー格以外も容易く可能。魔法や魔術のレベルもインフレしてるわねぇ~。けれどそれはあくまで戦闘特化。より便利な魔導を研究したいのが私。

 その為にも世界的に有名な競技、ダイバースの大会で六連覇する事が足掛かりになる。

 そう、この場に居る全員を倒して……ね。


「フフ、他の主力は他の子達と戦っているでしょうけれど、此処にも結構な数がやって来たわね」

「ハッ、やっぱこれが狙いだったんじゃねェか。ルミエル・セイブ・アステリア……!」

「そうよ。さっきは誤魔化してごめんなさいね」


 やって来た子達。今戦っていた子を除いて数を言えば、魔族の子達が二人。幻獣の子達が二匹、魔物の子が一人。計三人と二匹。当然、イェラ達は来ていない。私の狙いを理解してくれているから。

 この全員を倒せれば、“魔専アステリア女学院”の勝率は一気に上がる。引き付けて一網打尽にする為に私は魔力の大量放出をおこなっていたの。


「他のチームは五人。もしくは五匹。その数をちゃんと揃えているでしょうものね。三人しかいない私達は少し大変なの。だから此処で一気にケリを付けさせて貰うわ」


「凄まじい荒業だな。だが、一人で全員をやるなんてナメられたモノだ」


「ナメてなんかいないわ。ナメる訳がないじゃない。物理的にも強さ的にも。アナタ達は全員が自国で最も強い存在。有象無象なら束になっても私には敵わないけれど、同格クラスの存在が相手ならまた別。数の多い方が勝つわ。……そして、それを打ち倒してこそ真の最強を名乗れるというもの。……さあ──」


 ──全力でやろうかしら?


「『「………!」』」


 魔力を高め、全身全霊を込める。

 フフ、このザワ……! って感じ。ゾクゾクするわ。遠縁だけれど、魔族の血が入っているのが理由の一つかしら。私もそれなりに好戦的みたい。

 私とあの子達の試合。それは最終局面へと差し掛かった……ではなく、私が無理矢理移行させた。

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