表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ロスト・ハート・マリオネット ~魔法学院の人形使い~  作者: 天空海濶
“魔専アステリア女学院”中等部一年生
84/457

第八十四幕 代表戦・開会式

《さあ! さあさあ!! さあさあさあ!!! さあさあさあさあ!!!! やって来ました! ついにやって参りました!! “多様の(ダイバース・)戦術による(タクティクス・)対抗戦(ゲーム)”!!! 各国の代表戦がいよいよ始まりまァァァす!!!》


「「「どわああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!」」」

「「「うわああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!」」」

『『『ほあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!』』』

「「「んあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!」」」

「「「ばああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!」」」

『『『んあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!』』』


 司会者さんの声と共に、もはやゲシュタルト崩壊しそうな程の悲鳴とも取れる大歓声が響き渡った。

 ダイバース大会。代表戦本番。いよいよそれが始まり、私達はなんと会場に応援に来る事ができた。

 だからこそスゴく耳がキンキンする……。


「ついに始まるんだね……代表戦」

「始まったなー。代表戦が……!」

「え? 何か言った?」

「ん? なんだって?」


 もはやボルカちゃんとの会話もままならない。お互いに声が聞こえないから。

 でもスゴく盛り上がっているのは確定で、司会者さんは音声拡張の魔道具にて更に言葉を続ける。


《さぁてさてさて!! ご託はもう要りません!! 沸き立つ会場!! 波立つ戦場!! そこに集いし世界の代表!! ご来場願いましょう!! 人間・魔族・幻獣・魔物!! 各代表の方々!! 人間の国、十五チーム!! 魔族の国、十一チーム!! 幻獣の国、十一チーム!! 魔物の国、十チーム!! 計四十七チーム!!! 今年も白熱した素晴らしい戦いを見せてくれる事でしょう!!!》


 発表される他のチーム。この言葉を大声で、よく噛まないで言えるなぁ。

 そんな事を思いながらされる紹介を見届ける。


《まずは! 去年惜しくも総合順位で最下位となってしまったが故に、リベンジを誓う高い智力と穏やかさ!! 強靭な肉体を持つ誇り高き者達の集い!! 純血の龍種の若頭、ラゴンさん率いる──幻獣の国の方々です!!》


『『『キュオオオオオオオオオオォォォォォォォォォォォンンンンンンンッッッッッ!!!!!』』』


 幻獣の国の紹介と共に会場に来ている幻獣の方々が遠吠えを上げる。種族が違くても盛り上がる様は同じなんだね。

 そして次の代表者達が入場してくる。


《さあ! 次に入って来るは四ヶ国中三位と振るわなかったが、その本能!! 闘争心!! 肉体!! 魔力!! 狂暴性!! いずれの分野にても上位へ君臨する最凶の軍団!! ご来場頂きます!! 魔物の王の血筋、ヴァンパイア族のブラドさん率いる魔物の国の強者達で御座います!!!》


『『『ガギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァッッッッッッッ!!!!!』』』


 獰猛な歓声が上がり、会場は大きく揺れる。

 改めて種族も何もかもが違う存在と一緒に試合をすると言う行為。数千年前じゃ考えられなかったんだろうね~。昔は魔物が現れたらすぐに倒していたとか言うし、かなり物騒で全ての種族がピリピリしていた世界だったみたい。

 続々と紹介が入る。


《そして! 昨年の記録は一位と僅差の二位!! 高い知力に身体能力!! 狡猾さに魔力総量!! 長寿でも知られており、あるか無いか存ぜぬ地獄とも交流があると言われるのはこの国!! 純血魔族の頂点!! シルヴァさん率いる魔族の国です!!!》


「「「ウオオオオオオオオオオオオォォォォォォォォォォッッッッッッッ!!!!!」」」


 魔族の国。説明だけ聞けば人間の完全なる上位互換だね。かつての英雄も魔族だった説があるし、とてつもない国。なのに絵物語だと悪役の事が多いんだよね。そしてそれ自体を魔族達本人が納得しているんだって。理由は好戦的なのは本人達が誇りに持ってるだとか。

 割れんばかりの歓声の中、最後の紹介に司会者さんは声を張り上げた。


「いよいよやって来ました!! 次なる国は前回王者、及び大会三連覇!! 一個人を指数とし、中等部を含めれば代表戦を六連覇しているダイバース最強を謳われる彼女の居る国!!! 今年も堂々と国その物のリーダーとなり、他の人々を率いて行きます!!! かつての英雄や魔族と血の繋がりもありますが、既に数千年で薄まり切ってる血筋、血縁!! 我が実力のみで平伏させて行く!! 批判難癖全てを自身で黙らせた最強の女王、ルミエル・セイブ・アステリア率いるこの国は!!! 登場されたし!! 絶対王者、人間の国ィィィ!!!」


「「「わああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっっっっっっ!!!!!」」」


 仰々しい紹介。それを物ともせず、堂々とした足取りで人間の国の旗を持って会場に立つルミエル先輩。その姿はまるで百戦錬磨の軍師が様。まさに歴戦の王と言った風格。

 隣のイェラ先輩は前年度の優勝トロフィーを持っており、それを祭壇に返す。


《トロフィーの返却により!! 今!! この時!! この瞬間!! “多様の(ダイバース・)戦術による(タクティクス・)対抗戦(ゲーム)”!! 代表戦の開会が宣言されましたァァァ━━ッ!!!》


「「「やああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああァァァァァァァァァァッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!」」」

『『『タアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!』』』


 今一度爆発的な大歓声が巻き起こり、声量のみで会場が揺れ、鼓膜が破れそうになる。と言うか絶対喉痛めてたり耳が聞こえなくなる人が居るよね……。

 それくらいなら治癒魔法や魔術ですぐに治せるから大きな問題じゃないけど、それによって伴う痛みとかを考えるだけで大変だよ……。


 でもそれだけの価値がある大会なんだと思う。全ての種族が一堂に会するこの試合。予選とかはともかく、ダイバースの代表戦の時だけは他の部活動の大会は行わないで全員が集中出来るようになってるんだって。

 改めてこんな大規模大会を今まで知らなかったなんて、世間知らず際まれりだったんだね。私。


 司会者さんは音声拡張の魔道具を握り締め、スゥっと息を吸い、再び大きな声を出した。


《次に! 今大会のルール説明!! “多様の(ダイバース・)戦術による(タクティクス・)対抗戦(ゲーム)”代表戦のルールはその年によって変わり、総当たりだったりトーナメントであったり全員と戦うバトルロワイアルでしたりと様々!! それにつき、今大会の仕様を発表致しましょう!!!》


「「「………………………………………………………………………………………………………………………………」」」

『『『………………………………………………………………………………………………………………………………』』』


「き、急に静まり返った……」

「この声量の差で耳がイカれちまうな~」


 まるで鼓膜が破れてしまったかの如く会場全体がシーンと静まり返った。

 ううん。その程度じゃないね。他の人達が微動だにしない。私以外の時間が止まったかのように物音一つ出ない。お客さん達は文字通り息を飲み、司会者さんは口を開いた。


《今年のルールは──“四ヶ国統合総当たり”です!!》


「“四ヶ国統合総当たり”……?」


 出されたルール。それは総当たり……みたいなんだけど、四ヶ国を統合した物との事。

 イマイチ飲み込めないので司会者さんは更に詳しく説明した。


《通常の総当たりは一回につき二つの国が一試合を行い、それによる勝率や勝ち星を決める物となります。しかし! 今回はそうではありません!! 一試合に参加するのはそのブロックに居る四ヶ国全て!! その勝敗からまた四ヶ国を別ブロックに移し、人間、魔族、幻獣、魔物の国代表の方々が凌ぎを削ると言うもの!! その中で勝率が高かった各国の代表が最終的な決勝トーナメントに参加し、優勝を決めるのです!! バトルロワイアル形式にも近いですが、全ての国が一試合で戦わないと言う点が違いますね!》


「……ややこしい」

「ハハ、確かにな」


 言いたい事は何となく分かるけど、通常の総当たりやバトルロワイアルとの差が少し分かりにくい。

 それについて近くのウラノちゃんが説明してくれた。


「つまり、通常の場合──

『Aブロック、人間・魔族・幻獣・魔物』

って感じに分かれるでしょ? BブロックとかCブロックも同様。普通の総当たりなら、


最初に『人間vs魔族。幻獣vs魔物』

その後に『人間vs幻獣。魔族vs魔物』

最後に『人間vs魔物。魔族vs幻獣』


みたいな感じで一つの試合をこなしていくでしょ? でも“四ヶ国統合総当たり”は一つのブロックで最初から


『人間vs魔族vs幻獣vs魔物』


の構図になる訳。当然、一つのブロックに選ばれているのは代表1チーム。チーム数にも差はあるけど、その辺は上手い具合に回していく。それで最終的に各ブロックで勝率の高い人間・魔族・幻獣・魔物のチームが選ばれるという訳よ。通常の総当たりと違うのは混戦になる事。バトルロワイアルと違うのは勝ち残った1チームだけじゃなく、総合的な勝率から選出されるという事。仮にだけど、極端な話各ブロックで全部人間の国が勝率一位だった場合、決勝に選ばれるのは一つを除いて魔族か幻獣か魔物の国になる。後でゲームとかで勝率の高い同国で決勝参加国を決めるの。これにより、数の有利はほぼ無くなるわね。むしろ一番チーム数が多い人間の国は試合数が増えて不利になるかも」


「そうなんだ……」


 勝率の高いチームが選出されるのは分かった。けど、それはそれで色々と不備があるかもしれない。


「せっかく自分のブロックで勝率一位になっても、味方同士で戦ってリタイアしちゃう可能性があるんだ……」


「ちゃんとその辺も考えてあるわよ。勝率が高いのに自国同士の争いで敗れてしまったチームは決勝とは別ブロックで戦うわ。別ブロックの勝率二位や同じく勝率一位のチームとね」


「そうなんだ……でも結局優勝は出来なくなるし、本末転倒なんじゃ……」


「それに至っては同国のチームに勝てなかった方が悪いとなってしまうわね。四ヶ国統合総当たりはトーナメント要素も入っているから、時の運も味方に付けた上で完全勝利を収めなきゃならないもの。同年代の自国のチームが弱いならそれはそれでラッキーって事ね」


「かなりシビアだね……」


「どのチームにもチャンスが回ってくる分通常のトーナメントより温情よ。結局の所、全ての試合に勝てば良いのだから」


「スゴく難しいね……」

「世界最強を決める試合だもの。仕方ないわ」


 かなり熾烈な戦いになりそうなルール。と言っても、トーナメントも総当たりもバトルロワイアルも全部がそうなんだよね。

 私が将来的にこの舞台に立てるかは分からないけど、その時は苦しい戦いになるかも。


「でも結局のところ、普通に総当たりするのとあんま変わらねえよな~」


「そうね。勝利は第一優先事項だけど、一番の目的は各国代表のチーム。様々な試合を見ると言うのが目的。通常のトーナメントや総当たり、バトルロワイアルよりも多くの試合を見る事が出来ると言うのが一番の理由なのかもしれないわね」


「あー、確かになー。このルールだと二位決定戦とか三位決定戦とか、どの決定戦でも四チームの試合を見る事が出来る。魔法の応用とか立ち回りとか知略とか、プロのダイバースでもそれ以外の職業でも多くの試合を見て、欲しい逸材を見つけるのが目的でもあるのか」


 ボルカちゃんとウラノちゃん曰く、このルールが選ばれた理由はより多くの試合を見る為。

 確かにその場で終わる物よりも沢山観戦する事は出来る。結果は体調とかにもよるし、本領発揮出来ずに試合を終える事も少なくない。だからこそわざと試合数を多く、かつサクサクと見る事が出来るルールになった。

 運営さんもちゃんと考えてるんだね~。


「ま、そんなところね。全試合の勝率が五分五分だった時とか、他の場合の詳細もあるけど、説明だけだと興が削がれてしまうわ。今は取り敢えず先輩達の試合に集中しましょうか」

「そうだね。いよいよ始まるんだもん……!」

「勝って欲しいですわね。ルミエル先輩方。最低限、自国の代表様方」

「ルミエル先輩なら心配ねえって言いたいけど、相手が相手だもんな。楽しみだぜ!」


 ダイバースの代表戦。ルミエル先輩達は何処まで勝ち上がれるのか。どんな相手なのか。見所は多い。

 そんな一大イベントは今、大歓声と共に開催された。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ