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ロスト・ハート・マリオネット ~魔法学院の人形使い~  作者: 天空海濶
“魔専アステリア女学院”中等部一年生
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第八十二幕 明日の予定

「パ……お父さん!」

「ん? おお、ティーナか……それに……?」


 使用人さん達の隙間を抜け、私はパパの近くへ向かう。

 反応を示し、後ろのみんなが気になってるみたい。取り敢えずボルカちゃん達を紹介しよっか。


「こちら、私の友達のボルカちゃん! ルーチェちゃん! ウラノちゃんにエメちゃん! そしてレモンさん!」


「そうか。ティーナの……」


「ウーッス! 紹介にあったボルカ・フレムです!」

「同じく、ルーチェ・ゴルド・シルヴィアですわ。ティーナさんのお父様」

「ウラノ・ビブロス」

「エ、エメ・フェアリです……!」

「ルーナ=アマラール・麗衛門と申します」


 私に続き、ボルカちゃん達が各々(おのおの)で自己紹介をする。

 と言うか、エメちゃんの名前をフルネームで聞いたのは初めてかも。妖精さんみたいな名前だね。


「君達が。ティーナからの手紙で認知はしているよ。娘と仲良くしてくれてありがとう」


「お、知ってるんスか!」

「ちゃんとお手紙読んでくれたんだ!」


 お手紙でボルカちゃん達の報告はしてある。なのでパパは彼女達の事を知っていた。

 と言っても会うのは今回が初めてだから顔と名前の確認は必要だよね。


「そうだな。あの引っ込み思案だったティーナに友達が。リーナも喜んでいる筈だ」

「リーナ……さん?」

「ああ。妻の名前だ」

「ふふ、そうだよね~」

「……そっか(名前を出すくらいなら問題無いのか。リーナさんの“死”を連想させないような言い回しだからか)」


 ママもきっと喜んでくれている。どこで……? ううん。ここに居るよね。いつもみたいに一緒にお風呂に入ったもん。

 だけどパパの、ママはここに居ないような言い回し……あ、そっか。お人形さんの中に入っている事は知ってるから示唆だけして分かりにくくしてるんだね。


「君達。是非ともこれからも娘と仲良くしてくれ。たまに言動に違和感を覚えるかもしれないが、悪気はないんだ。どうか了承してくれ」


「もうパパ! そんな風に言うのはやめてよー!」


「ハハ、仲が良い親子ですね(言動……人形魔法関連だな。でもそんなに気にはしていないのか。いつかティーナのお父さんとも相談した方が良いかもな。知っている人が居るのは心強い筈だ)」


 私ってそんなに言動が変かな? 確かにたまに変な気持ちになるけど、それが出ちゃってるのかも。

 今度からは気を付けよう。

 パパは忙しいからそんなに長くは話せない。手間を取らせるのも悪いもんね。なのでもう時間が来てしまった。


「それでは私は自室に戻る。この屋敷の物は自由に使ってくれ。ティーナをよろしく頼むよ。君達」

「任せてくださいよ! お父さんよりアタシ達の方を好きにさせちゃいますって!」

「おっと、それは困る。私の愛娘なのだからね。もしそうなるなら受けて立つよ」

「お、やれる口ッスね!」


「ちょ、ちょっと二人とも!? なにを戦うの!?」


 なんか会話の流れが変になってきた!

 みんな大好きだからもしそうなったら選べないよ~!


「それじゃ、一番の座は揺るぎないが、後は頼んだよ」

「負けず嫌いですね~。アタシも負けませんよー」


 そんな感じでパパはお部屋に向かった。

 これからもお仕事なんだよね。ホントにお疲れ様。

 そして元々リビングに向かう予定だった私達もそちらに行き、ソファーに座って寛ぐ。


「レモンさん。別にカーペットじゃなくてもいいんだけど……」

「いや、私はこちらの方が落ち着く。横になるならソファーか布団だがな」

「そう言う問題かな……」


「にしても、ティーナのお父さんって案外愉快な人だったんだな。もっとこう、仕事人って感じで感情を表に出さない冷徹な人かと思ったよ」

「どんな偏見……」

「ハハ、ま。ティーナがこんな風に育ったんだから優しくて良い人ってのは分かってたけどな!」


 ソファーではなくカーペットに座るレモンさんや私のパパの性格を考えていたボルカちゃん。

 パパの話題で持ちっきりって訳でもないけど、結構話してる。内容の大半は忙しいよね~って感じだけどね。

 そこにエメちゃんが訊ねるように話す。


「そう言えば、ティーナさんのお父さんは居ましたけどお母さんは──」

「ストーップ! ちょっと訳ありなんだ。な!」


「……? ?? うん……?」


 何かを聞いて来ようとしたけど、ボルカちゃんが止めた。

 確かに訳ありだね。だってママは今お人形さんを依代よりしろにしているから、それについての説明が難しい。そもそもお人形さんのフリをしているから気付かれちゃダメだよね。ボルカちゃんは知ってたんだっけ……。でも、その方が良さそうな気がするから取り敢えず納得しておく。


「取り敢えず、明日についての話し合いだな~。何処行く~?」

「街の案内だもんね~。遊園地……は今の時期混み過ぎてて大変そう」

「一つのアトラクションにつき三時間とか五時間とか当たり前だもんな。明後日にはレモンとエメが帰っちゃうから一日で回れるようにしたいところだ」


 当初は遊園地にも行く予定だったけど、改めて考えると待ち時間とかで現実的じゃなくなっちゃうので結局は保留になった。

 今の時期が時期だもんね。どこか行くにしても全体的に混み合って大変なのが現実。それでも行きたいのが……本能? 人のさがみたいなもの。

 何はともあれ、観光地っぽい所はあるからその中でどこか考えてみよう。


「まずは観光スポットの定義から当たってみるか」

「そこから入ってくの……?」

「まーまー、取り敢えず行くとしたら景色とか食べ物とかそう言うのが多いな」

「観光地か。私の国“日の下(ヒノモト)”では城とかだが……」

「ここは私の住んでいる国でもありますけど、観光スポットとかに遊びに行くという事は案外無いですね」


 観光地の定義は景色とかそう言った事柄が多い。確かにそれはそう。ヒノモト出身のレモンさんなら新鮮だけど、都市大会で当たったエメちゃんは私と同じ国出身だからあんまり観光地には行かないよね。

 まあ国と言っても大小様々。あくまで近所の名スポットには行かないだけで、国内でも旅行には行くもん。

 だとすると何があるかな。景色……食べ物……その他諸々。


「この辺で有名なのは何かあるか? 私もエメ殿も、この街の出身ではないからな。何かあればそこに行くのはありだと思う」


「何か……。確かにこの国じゃなくて、この街の特徴から割り出すのはアリか」


 範囲をこの国にしたら途方も無いけど、あくまでこの街。及び近隣の街ならと言う考えに至る。

 それはそうだね。何かしらの所縁ゆかりがある場所なら良いかもしれない。

 すると、ボルカちゃんは思い付いたように話す。


「そうだ。確かこの街はかつての英雄と接点がある。レモンとエメがそう言うのに興味があるなら行ってみるか?」


「かつての英雄……数千年前に世界に平和をもたらした方々ですね」

「偉人と所縁のある地でお参りか。悪くないんじゃないか?」


 この辺にある英雄達の……聖地? 的な場所。そこなら世界的に有名なスポットとなっており、レモンさんやエメちゃんも存在は知っている筈。

 多分この世界でかつての英雄を知らない人達は居ないし、行列に並ぶような場所でもないから丁度良いかも!


「ルーチェやビブリーはどうだ?」

「構いま」「構わないわ」「わたくしの言葉を遮らないでくださいまし! 私も良くてよ!」


 食い気味に了承するウラノちゃん。やっぱり歴史系好きなんだね~。ルーチェちゃんも快諾してくれた。

 これで明日行くスポットは一つ決定。と言うかそこに行くだけで一日が過ぎる可能性もあるから、出来ても後一つくらいだね。


「それじゃ英雄所縁の地巡礼は良いとして、他に行く場所とかある?」

「どうせならその近場にするか、転移の魔道具に人が並んでなければ遠出もできるな」

「たらればを語っていてもしょうがないわね。時間に余裕があるかも分からないし、その時考えましょう」

「こういう時のウラノさんは案外計画性無いですわね……」

「何事も計画していたらそれが崩れた時一気に崩壊するもの。何十何百通りの策をあらかじめ練っておくか、いっその事思考放棄するのも手よ」

「フッ、色々と考えているのだな。ウラノ殿」


 他の場所は、その時考えるという方向にまとまった。

 流れに身を任せて進めるのもまた一興。もしかしたら計画を立てない方が良い事もあるかもしれないから……と言うよりは、計画を立てて上手くいかない可能性の方が高いから臨機応変に対応しようって感じかな。


「んじゃ、これで明日の予定はバッチリだ。後はのんびりくつろごうぜ~」

「もう最初から寛いでるよ~」

「ハハ、だな」


 これで話し合いは終わり。話し合いって程真面目な空気でもなかったけどね~。

 使用人さん達がお風呂上がりの飲み物を持ってきてくれて、私達はしばらくリビングでのんびり過ごす。

 話に疲れ、眠くなってきた頃合い。空いてる部屋へみんなを案内し、就寝態勢に入る。

 私も久し振りの自分の部屋で横になり、ママ達と話していた。


「ふふ、久々のお家だね。ママ」

『エエ、ソウネ。ティーナ』

『何ダカ懐カシイヨ~』

「うん。ティナ」


 お家と言うのも久し振りだけど、この数日間はみんなと一緒に過ごしていたからママやティナともあまり話せていなかった。だからかな。何だか話し方が変な感じ。

 でもちゃんと二人はここに居る。私の前で、お人形さんをかたどって……ちゃんと居る。


「ふふ……少し振りだけど……もう眠くなってきちゃった。おやすみ。二人とも」

『エエ、オヤスミナサイ。ティーナ』

『オヤスミ~』


 微睡まどろみへと沈み、意識が遠退く。

 明日もみんなと一緒にお出かけ。楽しみだな~。……あ、ママとパパの事も話した方が良かったかな。久し振りに帰って来たんだもんね……私と……パパとママの家に。

 そんな事を考えながら暗闇に消え、私は眠りに就いた。

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