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ロスト・ハート・マリオネット ~魔法学院の人形使い~  作者: 天空海濶
“魔専アステリア女学院”中等部一年生
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第七十一幕 代表決定戦・終了

「ハァッ!」


 トライデントを突き、衝撃波が水を押し出すように迸る。それによってまた海が割れた。

 相変わらずの威力。レプリカと言えど直撃したら一堪りも無いわね。


「けど、私も似たような事が出来るわよ♪」

「……!」


 張り合うように魔力を撃ち出し、水を押し退けて大渦を巻き起こす。

 海底都市は更に大きく崩壊し、海底の白い砂が舞い上がった。

 一瞬だけ周りの海水が全て無くなり、少し経て元の位置へと戻る。


「まさか海の水が除ける程の魔力出力とは……素でそれとは恐ろしいものよ」

「貴女もそうじゃない。突き出すだけで海が割れるんだもの」


 トライデントならこの威力も納得だけれど、これはあくまで再現した槍。即ちポイセルさんの力が大部分を占めているという事。

 この破壊力も彼女の力なのは変わらないものね。


「まだまだ仕掛けるぞ……!」

「ええ。お互いに楽しみましょう♪」


 踏み込み、トライデントが穿たれ海がまた割れる。それはかわし、彼女の眼前に魔力の塊を打ち付けた。


「……っ」

「威力は高いけれど、一撃毎の隙が大きいわね。イェラとの戦闘で少しの疲労がその隙を更に大きくしているわ」

「体力は付けている……問題無い!」


 今までの子達ならこの一撃で満身創痍になっていたけど、流石のポイセルさんは耐えるわね。

 そのまま追撃を仕掛けようとしたけれどトライデントを地面に叩き付けて水流を作り、私の動きを鈍くさせる。


「魔力による補正があったとしても、水の中での戦いには私に分がある」

「そうね。とても泳ぎが上手だわ」


 流れるように背後へと回り込み、トライデントが振るわれる。

 避けようと思えば避けられるけれど、此処はレヴィアさんに任せてみましょうか。


「はあ!」

「……! 蓮の葉の防御……!? そんな物にトライデントが止められた……!?」

「魔力で弾力性を高め、刃部分には当てていないので……!」

「成る程。隙を突こうと先を急ぐばかりに私の腕力が足りなくなったか」


 トライデントは蓮の葉で防御。此処は海の中だけど、細かい事は抜きにしましょう♪

 その横からイェラが飛び出し、回し蹴りを打ち付けてその体を吹き飛ばす。

 海の浮力で踏ん張りは利かないけれど浮力の影響で速度も比較的緩やか。そこへ追撃するよう、私は魔弾を撃ち込んでけしかける。それはトライデントを振り回す事で掻き消され、イェラが眼前へと迫り拳を突き出していた。


「……ッ!」

「……ッ!」


 ポイセルさんは咄嗟にトライデントで防ぎ、イェラの手に槍が貫通。流れ出た血が海に漂い霧散するように消え去る。

 けれどイェラのパンチも当たって頬を打ち抜き、二人は頬と手を抑えて睨みを利かせていた。

 ポイセルさんは頬から手を離して口を開く。


「人数から考えても時間を掛けると此方が消耗するばかり……故に、この一撃で完全に終わらせる!」

「ほう……そう豪語するだけの力はあるようだな」

「無論だ……!」


 頭上が巨大な影に覆われ、見上げると氷の子の氷山よりも巨大な山が海の中へと降下されたところだった。

 成る程ね。文字通り纏めて押し潰すつもりみたい。この山もポイセルさんの力からなるもの。そして変わらずトライデントも打ち出され、衝撃波と圧力が一気に押し寄せて来た。


「私も無事では済まないが、己の力が為に多少の心得はある。よって、残る可能性は高い!」

「フフ、お見事な力ね。確かに直撃したら大変かも」


 範囲外に逃れる事が出来ない訳でもないけど、背を向けたらトライデントで射抜かれるのが関の山。そもそもこの落下速度からして私とイェラはともかく、レヴィアさんは少し大変かもしれない。

 だったらどうするか。答えは簡単よ♪


「──“魔王の炎”」

「……!?」


 山もステージの海も、全てを焼き尽くせば良いだけ。

 当然、範囲や出力は調整してポイセルさんへの許容ダメージとイェラ達への影響は無く。

 魔力の色が車窓から覗く情景のように赤から白い火へと映り変わる。それによって周りの水は消え去り、全ての水分を持っていかれた山は乾燥して砂のように消え去った。

 三人は私の魔力で覆ったから温度変化や酸欠とかの影響は無し。でもポイセルさんには少し弱めたから十分なダメージが行ったかしら。


「……まさか……全てを焼き尽くすとは……! 相変わらず規格外だな……」

「フフ、本選では人間の国の仲間同士。一緒に頑張りましょう♪ 頼りにしてるんだから。貴女の力!」

「……フッ……そう……だな……」


 軽い脱水症状と熱中症で意識を失い、控え室へと転移する。

 瞬時にステージ設定の水は戻り、辺りは温度差で少し揺らめいていた。

 その数秒後、私達は転移の魔道具にて自動的に会場へと戻る。



*****



《勝者……! “魔専アステリア女学院”ンンンンッッッ!!!》

「「「わあああああああああああっっっっっっっっっ!!!」」」

「「「ヒューッ!!!」」」

「「「ピーッ!!!」」」

「「「ああああああああああああっっっっっっっっっ!!!」」」


 映像が一瞬だけ止まり、映し出された次の瞬間にはルミエル先輩達の勝利が確定していた。

 弾けるような歓声。観客達は何らかの機材を使っている訳じゃないのに音が割れている。


「……はっ。そうだ。勝ったんだ……ルミエル先輩……!」

「スッゲェな! 終始圧倒してたぞ!」

「流石の実力ですわ……」

「ホント。とてつもない」

「流石だねー!」

「スゴいですねぇ~」


 ティナ越しに見る映像と部屋で見る映像。あまりの出来事過ぎて呆気に取られてしまい、気付いたら終わっていたような感覚に包まれる。

 本当にスゴい……ルミエル先輩。

 画面の向こうでは司会者さんが叫ぶように言葉を続けた。


《これにより!! “魔専アステリア女学院”は三年連続優勝での代表戦へ進出が決定しましたァーッ!!! ルミエル・セイブ・アステリアさんで言えば中等部の一年生から六年連続での人間の国優勝!!! 今もなお、会場では溢れんばかりの歓声がァァァァ──》


 説明や終了の宣告等々。流れ的にはいつもと同じ。

 ティナとの感覚は共有したり一時的に遮断してこっちでボルカちゃん達と話したり。分かってた事だけど結構忙しいね。


「これでルミエル先輩は連覇……私達も負けてられないかも……!」

「ああ、そうだな。あの人みたいになれなくても、追い付きそうなくらいには成長してやるぜ! なんてたってアタシと同じ炎魔術でこの破壊力だからな!」


 闘志に火が付いた感覚があった。

 あんな先輩みたいになりたい憧れと、越えてみたいチャレンジ精神。

 今はもう負けちゃったからやれないけど、新人戦では更に上位に入り込みたいね……!

 するとボルカちゃんは切り出した。


「……そんじゃ、打ち上げどうする? 門限はまだあるけど、表彰式とかでルミエル先輩達はまだしばらく戻って来なさそうだ」


「唐突に切り替えたね……うーん……じゃあ、来月の代表戦が終わった後、全部纏めて打ち上げしたら良いんじゃないかな。ほら、もうルミエル先輩達は部活動から離れちゃうし……」


「そうだなー。っし、そうすっか。打ち上げは本当に全部が終わってから。アタシ達は今まで通り練習とか勉強とか頑張ろう! もうそろそろ長期休暇に入るしな!」


 打ち上げの為に集まって貰ったけど、今回は保留と言う形になった。

 まだ都合が合わないのと、全てが終了していないのに打ち上げをするってのも変な話だからね。

 他のみんなも続く。


「良いですわね。来月なら私も基本的に暇がありますし、都合が合いそうですわ!」

「私は元々どっちでも良い派だから」

「お楽しみは来月だね!」

「そうですねぇ~」


 みんなも賛成……してくれたのかな。ウラノちゃんはこう言っても参加してくれるだろうから、来月ならみんな空いてるみたい。ボルカちゃんが言うように、丁度長期休暇に入るし、ホントにピッタリ!

 映像を見ながらボルカちゃんは話す。


「よーし、これで決まりなんだな! 残りは表彰式だけ見て解散するか」

「そうだね。考えてみたらテスト明けで疲れてるし」

「そう言えばそうでしたわ。ルミエル先輩達の試合に興奮して一時的に疲れを忘れてましたわ」

「じゃ、後は自由だね! 元々自由の鑑賞会だけど!」

「それではまた会いましょう~」

「リタル先輩……それは少し違うような……」


 果たして主旨を理解しているのかどうなのか。基本的に地頭が良い先輩達だから心配は無さそうだね。

 何はともあれ、今日の試合も終わり、この場は解散となる。

 最終的な結果を見てみればルミエル先輩が全て一人で終わらせちゃったけど、イェラ先輩とレヴィア先輩もスゴく強かった!

 人間の国、ダイバース大会代表決定戦決勝、見事勝利に輝いたルミエル先輩達。来月からの代表戦、先輩達は更なる連覇達成出来るのか。まだまだ楽しみだね。


 その後、完全に解散とし、みんなで夕御飯だけ食べて後はお風呂に行ったり、自室で自由に過ごす。テストにダイバース大会の決勝、濃い一日だった~。

 人間の国の代表決定戦は、これにて無事終わりを迎えるのだった。


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