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ロスト・ハート・マリオネット ~魔法学院の人形使い~  作者: 天空海濶
“魔専アステリア女学院”中等部一年生
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第六十七幕 テストと打ち上げ未遂

「お、来たか。ティーナ」

「うん。朝ごはん一緒に食べたあと、準備するだけだったから」


 ──翌日、私はボルカちゃんの寮部屋に来ていた。

 朝ごはんを摂って勉強の為に来た感じ。そう言えば他の人の部屋に入るのは初めてかも。

 ボルカちゃんの部屋は思ったより綺麗に纏まっており、意外にも……って言うのは失礼だね。散らかったりもしていなかった。

 置かれているのは本棚に机と椅子やベッドと言った至ってシンプルな内装。

 他には置き鏡とかアクセサリースタンドとか、女の子らしい物があるね。お洒落とかお化粧とかは本人の性格上していないけど。


「そんなにマジマジ見ても何も無いぞ~? お菓子の食べかすとかはティーナが来る前に掃除したからな!」


「掃除する前はあったんだ……」

「さ、細部の問題だからな!」

「あ。動揺してる」


 どうやら綺麗なのは事前に掃除してたからみたい……そうなるとやっぱりあまり掃除しないタイプなんだね。

 よく見たらカーペットに雑誌か教科書か、本の跡も付いてる。ふふ、ボルカちゃんにも見栄を張りたいって気持ちがあったんだね。それもまた意外で親近感を覚えるよ。


「取り敢えず勉強だ勉強! それで、ティーナが苦手な部分はどこだ?」

「数学でも語学でも文章問題が少し苦手かなー。読み進めているうちに何言ってるんだろう……ってなったりするから」


 私が人付き合い苦手なのも影響しているのか、文章問題に当たるとじっくり読んじゃって時間は消費するし、その上で出題見るとよく分からなくなってまだ読み直して時間が経つ……の繰り返し。いつもギリギリになっちゃう。

 ボルカちゃんは教えてくれる。


「文章問題か~。ま、語学でも数学でも問題に出されるのは長ったるい文章の一部だけだから要点をまとめりゃおのずと解けてくるよ。パラーッと読んで出題見て、まとめた要点を記せばそんなに時間も食わないからな。そこまでやりゃティーナの成績なら簡単に解けると思う。何なら後回しにして一通り終わった後でゆっくりやれば余裕も生まれてより洗練されると思うぜ」


「成る程成る程……要点を纏めて……語学なら出題される動詞や名詞。間接文はいっその事無視して、数学なら出てくる数字とか記号とかに着目して……最後の方の○○の××を求めなさいの所に目を通して……あ、もう解けちゃった」


「そんなに早く解けるのはティーナが器用で冴えてるからだな。しかも語学と数学を同時にやってやがる。考えてみたら人形魔法で二つ同時に操ったりしてるから一遍に二回やるのは慣れてるのか。……取り敢えず、初等部でよくあった少年が時速十キロで進み~的なのも少年が秒速三百キロで進んでも成立するし、文章問題は基本的に簡単に考えりゃ大抵なんとかなる。中等部の三年にもなるともっと複雑になるし、高等部だと更に難解。中等部一年の問題なんかテキトーでもやれるってもんだ」


「それはボルカちゃんくらいだよ……。この学院はレベルが高いし、一年生の一学期でも相当だと思うよ」


「ティーナなら大丈夫だ。とにかく勉強は反復が大事。飽きたら一見別っぽい根本が同じ問題で気分転換。ドンドン進めてくぞー」


「うん……!」


 大雑把という意味合いでのテキトー。教え方にそれっぽさもあるけど、結構分かりやすい。本人の性格がカラッとしていて理屈っぽく無いからかな?

 お陰でスラスラ解けていく。そんなボルカちゃんにも苦手な教科はあったりするから、その辺は私が教える。

 教え教わりで数時間。お昼や十数分間の休憩を挟み、放送しているダイバースの試合経過を流したりしているうちに勉強会は終わりを迎えた。


「じゃ、このまま夕飯と風呂に行くか~。テスト自体はもうすぐだし、また明日もやろーな」

「うん。ボルカちゃんと勉強すると楽しくて覚えやすいよ!」

「お、嬉しい事言ってくれんな~。照れるぜ」


 雑談しながら夕飯とお風呂を。寝る前に一人で勉強し、明日もまた行う。

 そんなこんなで数日後の学期末テスト当日。苦手な文章問題もボルカちゃんに教わった通り要点のみを纏めて簡単に解く事が出来、無事に終わりを迎えるのだった。



*****



 ──“放課後”。


「テスト終わり~。やっぱりテストの日は早く帰れて良いな~」

「そうだね。後は数週間後に控えた長期休暇までのんびり過ごせそう~」

「長期じゃない休日ものんびり過ごすだろ~」

「アハハ、まあね~」

「にしても今日はみんなササッと教室から出ちまったな~」

「そうだね~」


 テストが終わって肩の荷が降りた私達は、誰も居なくなった放課後の教室で話していた。

 放課後と言ってもまだお昼過ぎ。午前中授業で部活動もないからゆっくり出来る。本番のテストが終わったから勉強もそこそこで良さそうだもんね。人によっては復習とかするんだろうけど、私は今回はのんびり過ごしたいかな。

 ボルカちゃんは席から降り、言葉を発する。


「そんじゃ、今回はダイバースの大会とテスト終了を記念してパーッと打ち上げにでも行こうぜ!」


「打ち上げかぁ~。あれ? でも大会終了後すぐにパーティーしなかったっけ……」


「あれはあれ。これはこれだ。あの時のと今回のは結構違うぞ~。そうだな……先輩方とビブリー達を誘ってみよっか。多分する事も無さそうだし! アタシ達と同じでな!」


「うーん……打ち上げは賛成だけど、ホントに大丈夫かな。ウラノちゃん辺りはまた嫌な顔されるかも……」


「ヘーキヘーキ。何だかんだビブリーは来てくれると思うぜ~? 一番の問題はルーチェだな。ほら、よく用事で都合が合わない事も多いだろ?」


「……確かに……」


 ウラノちゃんは大丈夫と告げ、ルーチェちゃんの方を気に掛ける。

 思えば彼女は色々と用事を入れて部活動を休んだりもしているもんね。

 何はともあれ本人確認。基本的には寮に居ると思うから連絡は付きやすい。と言うか情報伝達の小型魔道具でも出来るね。


「ルーチェに連絡して……よし、ビブリーには直談判だ」

「ウラノちゃんにはそんな感じなんだ……」

「アイツは直接会えば基本的に断れないからな。ルーチェはマジで忙しかったりするし、あんまり迷惑は掛けられないぜ」

「ウラノちゃんには掛けていいんだ……」


 ルーチェちゃん相手に雑かと思いきや、実はウラノちゃんに対しての扱いの方が乱雑なのかもしれない。

 そんな感じでルーチェちゃんには魔道具で連絡。私達はウラノちゃんの寮部屋に来た。


「ビブリー! 遊ぼうぜー!」

「ウーラノちゃん! 遊びましょ!」

「貴女達……まるで初等部の子達のような言い種ね……」

「三ヶ月前くらいまで初等部だったからあながち間違ってないぜ!」

「それはそうね。……それで、何か用?」


 部屋の前で彼女を呼び、半開きにして怪訝そうな表情で話すウラノちゃん。

 片手に本を持っているし、帰ってすぐに読書をしようとしてたみたい。

 ボルカちゃんは嬉々として口を開く。


「だから遊ぼうって話だ。ダイバースもテストも終わったし、パーッとはっちゃけようぜ!」


「はっちゃけたくはないんだけど……それに、まだダイバースの大会自体は終わってないわよ」


「ん? あ、そっか!」

「……?」


 意外と嫌そうな表情にはなってないけど、大会が終わってないってどういう事だろう。大会はずっと勉強中に聞いてたけど……。

 疑問の表情を浮かべる私に対し、ボルカちゃんは小型魔道具の端末を見せた。


「ほら、これだよ。これ」

「えーと……『“魔専アステリア女学院”。最強のダイバースプレイヤー、ルミエル・セイブ・アステリア最後の夏。幕開け。六年連続人間の国の代表に選ばれるのか!?』……って、ダイバースの高等部代表決定戦……!」


 見せて貰った物はダイバースの大会記事。そっか……ルミエル先輩は高等部の三年生だから今年で終わりになっちゃうんだ。

 ボルカちゃんは言葉を続ける。


「高等部の代表戦は来月からの長期休暇後半に行われるんだけど、代表決定戦の決勝戦は今日なんだ。だから今日はみんなが異様に早く教室から出たんだな」


「そうね。私も読書しながら音声だけでも聞こうって思ってたところ。先輩の晴れ舞台ではあるから」


 なんと代表決定戦の決勝は今日に行われるとの事。確かにそれなら他の人達が早く帰ったのも頷けるかも。

 中等部ではテスト期間だけど、高等部は少し遅れて始まったから来週からがテスト期間で今日までは各部活動の決勝大会があるんだね。

 ボルカちゃんは更に話す。


「だったらこうしちゃ居られないな。打ち上げはまた後日として、先輩達の試合を見に行こーぜ!」

「え!? でもあと一時間後くらいには始まっちゃうよ!?」

「一時間もあるんだ! 転移の魔道具なら会場までチャッチャと行けるぜ!」

「でも同じ考えの人が多いから混んでるんじゃ……」

「あ、それもそうだな……。あれ? まだ学院内には参加メンバーというか、会場まで行く関係者は居るっけ?」

「流石に一時間前は居ないんじゃないかな……」


 なんとかして会場へ行きたい様子のボルカちゃん。けれどそう上手く行く筈も無く、うーん……と悩む。

 そこへウラノちゃんが発言した。


「居るわよ。ルミエル先輩のお父さんが」

「居るの!?」

「ええ。毎回時間がある時……と言うか多忙の中時間を作ってダイバースや他の部活動の観戦に行ってるの」


 関係者が残っていないかを探るボルカちゃんへ発せられた言葉。私も驚いちゃった。

 けどそうなんだ。ルミエル先輩のパパって忙しいのに学院の子達を想ってくれてるんだね。

 それにつき、ボルカちゃんは私の手を引いた。


「それなら善は急げだ! 迷惑承知で頼んでみるぞ!」

「迷惑な時点で善じゃないよ!?」

「大丈夫。何もアタシが行く訳じゃない。行くのはティーナ。お前だ!」

「わ、私!?」


 私が行ける訳も無いと思うけど何やら自信満々なボルカちゃんは制止を聞かず駆け抜ける。廊下は走っちゃダメなのにぃぃぃ!


「レッツゴー!」

「ホントにどういう事~!?」


 訳が分からないまま引かれ、結局付き添う形になっちゃった。

 あ、後ルーチェちゃんに打ち上げの話は後日になったよって連絡しなきゃ。

 周りに張り切る人が居ると人って冷静になるんだね。そんな事を考えててしまう。

 何はともあれ、私が観戦する方法とやら。私達は理事長室へと入った。

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