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ロスト・ハート・マリオネット ~魔法学院の人形使い~  作者: 天空海濶
“魔専アステリア女学院”中等部一年生
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第六十六幕 慰労会

 ──“魔専アステリア女学院”。


「「「おかえりなさい! 皆様!」」」


「わ!?」

「ハハ、いきなりの熱烈歓迎だな」


 転移の魔道具で会場から学校に戻った私達を迎えたのは、他の生徒達だった。

 圧はスゴいけど皆が皆歓迎してくれている雰囲気で、ちょっと意外。一回戦敗退なのに。


「えーと……これは……?」

「我が校のダイバース部。祝勝会改め、慰労会ですわ!」

「慰労会って……」


 慰労会。つまり「お疲れ様」って感じの会。なのかな?

 本来の意味では成果とかを労う事なんだけど、私達には当てはまらないような……。

 それについてウラノちゃんが口を開く。


「私達負けて帰って来たんだけど……」


「そんな事ありません事よ! 聞いた話では僅差と言うではありませんか!」

「そうですわ! 昨年、人間の国代表として世界と戦った“神妖百鬼学園”相手にこの成果!」

「これを勝利と言わずして何と申しますの!?」


「敗北」

「もうそこまで広まってるんだ……」


 情報源はどこなのか、サササッと広まってしまった。

 私の影響で映像自体が乱れてたらしいから醜態は晒していないだろうけど、むしろそんな状態でこのレベルの歓迎。悪い気はしないけど一周回って引いちゃうよ……。


「という事で! パーティー会場は抑えていますわ!」

「皆様も是非ご参加あそばせ!」


「どういう事でなの……」

「分かんない……」

「ハハ……ま、いいんじゃねえの? 若干陰鬱な雰囲気も漂っていたし、折角の機会だしな!」

「そうですわね。では参加致しましょう」

「パーティだーッ!」

「楽しみですねぇ~」


 そんな感じで勢いに押されてパーティー会場へ。

 サンドイッチに多様のお肉料理に多種のお魚料理にフルーツジュースに多種多様のスープ等々、豪華なご馳走が並べられており、辺りは既に賑わいを見せていた。


「来ましたわ! 今日の主役様方!」

「「「きゃー♡」」」


「な、なんかスゴい歓声……」

「一大イベントではあるからな~」

「不本意な歓声ですわ……」


 敗北の後のパーティー。ルーチェちゃんの言うように何となく不本意な感じはあるけど、ここは素直に受け取っておこうかな。

 私達もパーティーに参加する……参……加……。


「パ……パーティー……そう言えばこう言うのって初めてかも……」

「あれ? そうだったか。確かに人混みは避けてたかもな。街には繰り出したりしてたけど。……んじゃ、初めてのパーティーを楽しもうぜ! 特に深く考えずワイワイやりゃ良いんだ。“アステリア学院”じゃこう言う機会も多いしな」

「多いんだ……」

「ああ。親睦を深める為とか、中世貴族が如く社交ダンスの舞踏会とか、結構色々あるんだ。今回はそんな堅苦しいやつじゃないけど、舞踏会とかの時はアタシがリードしてやるよ」

「うん……お願いね。ボルカちゃん」


 “魔専アステリア女学院”。この学院ではそう言った行事があるとの事。

 今時舞踏会とかダンスパーティーをする場所は限られているけど、何を隠そうこの学院がその限られている場所の一つなんだね。

 一先ず今は今のパーティーを楽しむ。パパとの繋がりで懇親会的な行事には参加した事もあるけど、基本的にはママやティナと一緒に居たからね。人付き合いは苦手かな。

 だからここで少しでも慣れておこう!


「取り敢えず飯だ。飯。腹減ったからなー!」

「ボルカちゃん。もう少し上品に……」

「ハハ、流石のアタシも堅苦しい場だったら堅苦しくするけど、今回はそう言うのじゃないから平気平気! てか、やっぱティーナも貴族の出って感じなんだな。なんかこう、品性を重んじる的な。気品ある立ち振舞いとか」

「そ、そうかな……確かに親の仕事で付き添ったりはあったけど……」

「あれ? パーティーは初めてなんじゃなかったのか?」

「えーと……なんて言うんだろう。こんな楽しい感じのパーティーじゃなくて“是非とも我が企業への投資を”……とか、“事業の程は如何様ですか?”……とか……ボルカちゃん風に言うと重苦しいものだったから……」

「成る程な。楽しいパーティーが初めてって意味か。なら、ますます楽しまないとな!」

「う、うん!」


 ボルカちゃんに手を引かれ、並んだ料理の方へと行く。

 お腹がペコペコなのは事実。お皿に取りやすいサンドイッチとかを乗せ、席の方へ。


「結構立ちながら話してる人も居るんだね」

「立食パーティー的な感じだからなー。あんな風に雑談している人も多いさ」


 私とボルカちゃんは食事を摂りながら話す。

 立食パーティー。移動が自由で親睦を深める雑談とかをするもの。こう言う感じで眺めているだけでも楽しいね。

 そんな私達の所に他の子達が集まってきた。


「ねえねえ、ティーナさん! ボルカさん!」

「お話お聞かせ下さいませんか!?」

「試合経過や対戦中の心情など!」

「是非是非!」


「うわわ……!」

「すっかり人気者だな~」


 試合について聞きたいという子達が多い。全員好意から聞きたがっているのは分かるけど、こんなに集まられると食事も儘ならないよ~。


「ティーナさん!」

「ボルカさん!」

「「「お話を……!」」」


 そんな感じで友達……なのかは分からないけど、色んな人に囲まれてパーティーの時間は過ぎていく。

 今日は残念な結果に終わっちゃったけど、新人戦とかもあるみたいだから切り替えて行こっか。

 パーティーで美味しいご飯を食べ、他の人達とお話をして幕を下ろした。



*****



「はあ……今日は試合もだけど、試合後のパーティーでも疲れた~」

「ま、大活躍だったからな~」

「そんなに活躍してないよ~」


 ザパァ……とお湯が溢れ、私達はお風呂で一息吐く。

 この流れ落ちるお湯のように疲れも取れていく感覚……癖になるなぁ~。


「あ、そう言や。ダイバースは一段落付いたけど、そろそろ期末試験もあるな。ティーナは勉強とかしてるのか?」


「うーん……あんまりしてないかな。一回戦で負けちゃったし、明日から休みだからその数日で纏めてみるつもり」


「そっかー。んじゃ、この休日では遊びには行けないな~」


「アハハ……私も行きたいけど、仕方無いね。流石に一回のテストが悪いから即刻退学! とはならないと思うけど、積み重ねだからね~。まだそんなに難しくない範囲のテストは落とせないよ」


「そんなに難しくないからある程度終わらせれば自由時間も増えるしな。アタシも試合の傷心を癒す為にも息抜きに勉強すっか~」


「ボルカちゃんにとっては勉強が息抜きレベルに収まるんだ……確かに授業中居眠りとかしてるのにテストの成績が良いから見逃されてる部分もあるかもね」


「数学とか以外は答えが全部教科書に書いてるしな。ある程度予習したら自動的に覚えるってもんだ」


「それだけで覚えられちゃうんだ……」


「好きな本の内容とか覚えるのと同じだよ。特に歴史とか登場人物が出てくるのは物語のキャラクター風にしたら覚えやすいし楽しいぜ! 政治のそれによって生じる問題は~とか、語学の作者の心情を~的な教科書には直接書かれてないのもあるけど、ぶっちゃけそれは結び付く関連の事柄に教師が納得するような屁理屈を書けば良いだけだから簡単だ」


「それがスゴいんだよ。テスト範囲の答えが乗ってない数学も成績上位だし」


「習った箇所の数字が違うだけだからな~。基礎や根本的にはそんな変わらないし。後はほとんど同じだ……たまに性格悪い教師は引っ掻けとか出しやがるけど」


 ボルカちゃんのスゴい所は私達が苦労して暗記したり計算したりする箇所をトコトン単純化して分かりやすくしている事。

 話を聞くだけで参考になるし、勉強方面でも手伝って貰おうかな……。


「じ、じゃあさボルカちゃん。明日からの休日、一緒に勉強しない? この学校はレベルが高いし、分からない箇所とか教えて貰いたいんだ」


「ん? 良いぜ~。けど、ティーナも普通に成績上位の分類じゃなかったか? 今回のテスト範囲はぶっちゃけ楽勝だろ?」


「それはそうだけど、やっぱり一緒に勉強する人が居ると覚えやすいし……」


「そうか? アタシは大体一人で勉強してるしな~。ま、一緒にやるのは楽しそうだから全然構わないぜ」


「やった!」


 明日はボルカちゃんと一緒に勉強会。

 一緒にやる事で参考に出来る事も増えると思うから嬉しい!

 パーティーの時にダイバース大会について散々話した私達は、お風呂では今後のテストとかそんな感じの話し合いをおこなった。

 その後お風呂から上がり、夜も遅くなってきたのでそれぞれの部屋に戻る。



*****



「はぁ……今日は本当に色々あったな~……」

『そうね。ティーナ。お疲れ様』

『お疲れー!』

「うん。ありがとう。ママ。ティナ」


 何となく無機質な、私にとてもそっくりな声で二人は話す。ティナは私だから変じゃないし、ママも親子だから変じゃない。

 でもなんだか今回は二人とあまりお話をする気になれない。二人もそう思っているのか、口数が少なくなっていた。

 二人も頑張ったもんね。疲れちゃうよ。私も疲れた。


「でも今はそんなにクタクタじゃないし、少し勉強しておこうかな」


 気を紛らわせる為、ベッドから立ち上がって机に向かう。……あれ? なんで気を紛らわせる必要があるんだろう。

 ダメダメダメ。集中しなきゃ。今日はなんだか要らない思考で集中出来ない事が多いな~。やっぱり疲れてるのかも。

 そんな事を考えながら取り敢えずの勉強を──


「って、ここ、今回のテスト範囲から外に出ちゃってる。今後に役立つとは思うけど、やり直さなきゃ……」


 慌てて教科書とノートを捲り、ちゃんと範囲内へ。

 ホントに変な私。どうしちゃったんだろう。

 そんな疑問を浮かべつつ、計算式を解いたり暗記したり……って、バラバラに勉強してて纏まりが無い……。

 何故か√25が(x-y)の2乗と協力して世界の平和を取り戻した物語になってる……。そもそも√とかこれとかまだ習ってない……。

 ホントにダメだ今日私。思考でも意味の無い倒置法を使ってる……。


「……やっぱり明日、ボルカちゃんと一緒に勉強しよ……頭が回らないや」


 一通り教科書だけを読み、今日の勉強は終了。大丈夫な範囲だけど、ボルカちゃんと一緒に勉強した方が捗ると思う。

 勉強道具だけを纏め、再びベッドの方へ。あまり眠くなかったけど次第にうつらうつらと眠気がやって来、私は微睡みに沈んでいく。


 初めてのダイバース大会。結果は代表決定戦の一回戦敗退。初めてにしては上々の好成績を収めたんじゃないかな?

 そしてパーティーがあってお風呂で話して明日は勉強……やる事が色々あるね。

 それでも充実しているであろう私の学院生活。また一日が幕を下ろすのだった。


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