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ロスト・ハート・マリオネット ~魔法学院の人形使い~  作者: 天空海濶
“魔専アステリア女学院”中等部一年生
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第五十幕 都市大会

 ──地区大会決勝戦から数日後、都市予選大会の開会式が行われ、地区大会の時と同じように試合が開始される。

 相手チームは全てが地区大会を突破してきた猛者達。いずれも強敵揃いだ……!


「さて、今回も一回戦はチームバトルだ。ステージに散りばめられたメンバーでの総当たり。一回戦は大体こうなるんだな。だからまたティーナの範囲攻撃には頼るけど、流石に都市大会じゃそれで完封は難しいから上手く立ち回って行こう」


「うん! 任せて!」

「それで、具体的な作戦は? リーダー」


 一回戦の開始前、私達は会議室で今回の作戦について話し合っていた。

 地区大会の時もそうだったけど、都市大会でも一回戦は互いの力量をしっかりと見極める為、細かいルールが少ないチーム対抗戦。

 なのに戦略の幅とかチームの連携とかが鍵になるから力も頭脳も必要な、力量を分かりやすく計れる手段。

 上手くやって行こう!


「一先ずやる事は基本的に変わらない。ティーナが広範囲で相手の陣形を崩して各個撃破。既に相手の実力は映像伝達の魔道具で見てるから、早期撃破出来なかったら勝てそうな相手に割り当てよう」


「うん。そうだね」


「それと、控えメンバーで誰が出てくるかも考えないとね。前の試合の疲れとか私達対策の実力も考慮して選ばないと」


わたくし達は控えが一人のギリギリチームですものね。対策はされやすいですわ」


 私が広範囲の魔法で相手の動きを間接的に操作して立ち回るやり方は変わらないけど、私達の人数から対策自体はされやすい。

 それでも突破しなきゃ始まらないけどね! 今はそれについての話し合い、及び対策を制限時間まで練り、転移の魔道具でステージへと移動した。


「それじゃ、気張って行こうか!」

「うん!」「ええ」「ですわ」

「おー!」「やりましょう~」


 ボルカちゃんの掛け声と共に各々(おのおの)で散る。

 今回は街ステージ。と言っても誰も住んでいないレプリカの街。大会の運営が直々に用意して、そのまま活用している。

 建物も全部魔力で作られているから壊しても次の試合までには直せるし、場所によって戦略も変わる幅広さ。

 ある植物は街路樹とか花壇のお花だけだから前みたいにステージ全体を覆うゴーレムとかは作り出せないね。


「“ジャングルウェーブ”!」


 だからやるのは私とママの魔力からなるものだけ。

 開始と同時に植物を一気に伸ばし、木々によって街を飲み込み埋め尽くす。

 瓦礫ごと木々で埋め、見る見るうちに辺りは植物エリアとなった。


「映像で見たけど凄まじい魔力出力……!」

「だが、植物対策は取ってある!」


 すると、向こう側にて竜巻が発生した。

 それは木々を飲み込み、次の瞬間に発火して燃え盛る。

 これは……!


「自立型の竜巻と炎魔法か魔術の組み合わせね。でも大丈夫。既に準備はしているから。物語ストーリー──“水像”」

『プシャオーン!』


 側で待機していたウラノちゃんが本魔法で魔導書グリモワールから像さんを顕現。

 その像は鼻に魔力を込めて水を巻き上げ、燃え盛る木々を消火する。

 お陰で相手の居場所も特定出来たね。すぐに移動したとは思うけど、まだそんなに離れてはいない筈。

 空中からはメリア先輩がけしかける。


「発見!」

「メリア・ブリーズ……!」

「去年、一年生ながら場を引っ掻き回した実力者……!」


 既に上空からティナは移動させている。その場の状況は分からないけど、即座に感覚を共有すれば視認する事も可能。

 メリア先輩がダウンバーストのように暴風を上空から叩き付け、木々の灰を巻き上げる。

 そう、炎と風の使い手は既に認知していた。だから燃やされる事を前提の作戦は立てている。むしろ燃えやすい乾燥した木々を生み出したからね!

 灰で視界と嗅覚が鈍った所に仕掛けるのは……!


「ゆっくりとお休みなさ~い」

「……! 睡眠の……」

「香料……」


 リタル先輩。

 眠らせる粉末を散らし、メリア先輩まで届かない範囲。吹き荒れる風で瞬く間に街全体を覆い尽くした。

 意識を鈍らせた所で仕掛けるのは我らがリーダー!


「貰った!」

「「……!」」


 身体能力を強化し、炎の刀を持ったボルカちゃんが叩き伏せる。

 イェラ先輩の剣術に、ウラノちゃんが教えてくれた峰打ちって技。それに勢いを増した彼女が仕掛ければ一瞬で意識を奪える!

 周りに散っている睡眠の粉末は身に纏った火で無効化しているからこの空間ではボルカちゃんのみが自由に動けるって訳。

 残りは三人。その人達も既に追い込んであるよ!


「何なんだ……これは……!」

「明らかにティーナ・ロスト・ルミナスの魔法だ……!」

「植物を自立させるなんて芸当まで出来るの……!?」

「いや、元々彼女は人形使い……得意分野だろう……」


 あの大きさのゴーレムは造れないけど、細かいサイズなら可能。大体三、四メートルくらいかな?

 動きに単純な思考ルーティンしか組めなくても追い込むくらいなら十分だね。


『メリア先輩! 方角は南西です!』

「お、良し来たァ!」


 ティナを通じて私の声を届ける事も可能になったんだ! やり方は魔力の糸にそのまま声を乗せて振動で……要するに糸電話だね。

 ゴーレム達とは感覚共有が出来なくて私の魔力の気配を辿るしかないけど、魔力の動きから戦闘が始まったのは分かる。

 その気配の方角をティナからメリア先輩に告げれば迅速に行動出来るって事!


「“ウィンドブレス”!」


 風魔法にて睡眠の香料を南西側へ運び、街全体を覆う。

 体に纏った炎の揺らめきからボルカちゃんも方向を理解し、ビルからビルに跳び移って距離を詰める。


「……っ。風に乗って何かが……!」

「差し詰めリタル・セラピーの匂い魔法だろ……!」

「此方も大変なのに……!」


 ゴーレムを炎で燃やし、剣で斬る。その側から再生し、動きが鈍りつつある人達を打ち抜く。

 鼻を塞いでも口から鼻腔に入ってくるので息を止め、最小限に抑えながら戦うけど、無呼吸運動は負担が大きくてスゴくツラいからね。ゴーレムに匂い魔法は通じないから一方的に仕掛けられる。

 どう転んでも動きは悪くなり、


「トドメだぜ! 先輩方!」

「「「…………!」」」


 体を強化したボルカちゃんが辻斬りのように打ち倒す。

 それにより、都市大会の一回戦は私達“魔専アステリア女学院”が勝利した。


《勝者、“魔専アステリア女学院”! 五人の連携と相手の作戦まで利用した立ち回りで見事彼女達が勝利しましたァァァ!!》


「「「わああああああ!!!」」」

「「「どわあああああ!!!」」」


 勝利宣告がされ、会場は一気に盛り上がる。

 流石都市大会の盛り上がり。地区大会よりも更に激しく感じるよ……。単純に数が増えたのもあるかも。


「っしゃあ。無事都市大会も一回戦突破したな。ティーナ!」

「うん! ボルカちゃん!」


 一頻り喜んだ後、私達は控え室へ。

 都市大会でもチーム数は多いから一日二試合くらいが普通なんだって。

 今回もルミエル先輩達は来ていないけど、休憩中にってお茶とお菓子を貰ったからそれを食べる。

 ドーピングとかの検査もあるけど、当然何の問題も無く通過出来たから美味しい一時を過ごせるよ。


「いや~、それにしても流石は都市大会。地区大会じゃティーナが植物を広げるだけで勝てたけど、植物自体は対策されちゃったもんな~」


「炎の使い手が明らかに多かったもんね~」


「ま、貴女の植物魔法を警戒するのは当たり前だからそれを見越した作戦も立てられたけどね」


「ウラノちゃんの推測も流石だったよ! 流石はアステリア学院の参謀!」


「一回戦に私が出れないのは不満ですわ。確かに出番がありそうなルールではありませんけど」


「けど次とかその次とか、色々あるから安心しなさーい!」

「私は疲れるので基本的に控えておきたいですねぇ~」


 一回戦を突破し、美味しいお菓子と紅茶を嗜む事が出来て和やかなムードが続く。

 負けた時は悔しいんだろうけど、勝った時は余韻に浸れるね。

 けどちゃんと情報収集はしている。モニターに映される試合の様子から他の人達の実力を確認。流石にレベルが高いけど……本選や代表戦とか更に上があるんだもんね。末恐ろしいよ。


「お、トーナメント的には次に当たる可能性があるのはこの両チームだな」

「あ、そうだね」


 モニターを見ていると、今から始まる一回戦のチームが次に私達と対戦する事になるかもしれない人達。

 その試合を見やり、相手がどんな行動に出るか対策を練る。

 都市大会まで来ると一点に特化しているようなチームでも他の分野のバランスが取れているね。


「次のゲームのルール次第ではあるけど、得意魔法とかも大体分かったな。隠し球がある可能性は0じゃないけど、それについても考えながら行動して行こう」


「そうだね。ボルカちゃん!」


 ある程度の対策は考えた。後はどう出てくるか。

 一回戦を突破した私達は二回戦へ。

 さあ、次も勝つよ!


───

──


《──勝者、“魔専アステリア女学院”!!》

「「「わっはああああああ!!!」」」

「「「ひゃっはあああああ!!!」」」


 そして二回戦は、一回戦勝利の勢いそのまま随分とあっさり勝利した。

 もしかして私達って強いのかも……!

 ボルカちゃん達みんなが強いのはそうだけど、まさか都市大会でも此処まで通用するレベルなんてスゴい!


「勝っちまったなー」

「うん! 私達って自分が思うより強いのかも!」

「貴女のイカれた魔力出力も影響の一つだと思うけどね」

「なんにしても今大会もこんなに進みましたわ!」

「やったー!」

「やりましたねぇ~」


 控え室で勝利に浸る。

 都市大会の二回戦も順調に勝ち進み、私達は思ったより強いかもしれない事が分かった。

 もしかしたら都市大会も良い所まで行けるのかも……!

 だとしたら良いな~。思い出になるもん!


「よーし、そんじゃこのままやれるとこまで勝ち進んで行こうぜ!」

「うん!」

「そうですわね! 一年目にして優勝する快挙を成し遂げてしまいましょう!」

「ま、大会の結果は将来的に役立つものね」

「ルミエル先輩は一年生の時に世界一になったらしーよー!」

「そうらしいですわねぇ~」


 そ、そうなんだ……! そう考えると私達なんてまだまだだね。

 だったらより奮起して頑張らなきゃ!

 そのまま私達は順調に勝ち進み、なんと流れるように決勝戦まで上り詰めてしまった!

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