第四百六十六幕 ストリートダイバース
女の子と一緒に手続きをする為に受付へ行くと、周りはざわめき立つ。
「お、おい。あれ……」
「ティーナ・ロスト・ルミナスとボルカ・フレム……!?」
「なんで世界レベルの実力者が……」
「いや、ティーナお嬢様は近所のご令嬢だ。参加なさっても不思議じゃないが……」
私達の存在に。中等部のダイバース大会で人間の国代表として好成績を収めてるから当たり前だよね。
大人達も驚いているけど、何人かは私の事をダイバース選手としてじゃなく近所のお嬢様として認識しているね。
受付に行き、書類に書き記す。
「登録しました! それではダイバース大会をお楽しみください!」
「ありがとうございます!」
「サンキュー!」
「あ、ありがとうです……」
受付のお姉さんに話し掛けて登録。女の子も緊張しているけど、しっかりとその足で歩いている。
でもやっぱりガチガチだね。
「そんなに緊張しないで。怖くないよ、大会!」
「いえ……大会が怖いと言うより……」
チラッと周りを見る女の子。周りには普通に人が居るだけだけど……。
「ティーナお嬢様とボルカ・フレムと一緒に参加するあの子は……?」
「分からない……けれどあの二人と一緒という事は将来有望な金の卵……?」
「まず間違いなくそうだろう」
「ま、周りからすごい見られてる……」
「あ、視線が気になっちゃうんだ。確かに見られると緊張しちゃうもんね~」
「そういう次元じゃない……」
「慣れだよ! 慣れ!」
きっと見られちゃってるのが緊張の要因なんだね。私も最初はそんな感じだったな~。初々しくて新鮮な感じ。
今でも大会だと緊張したりするけど、あくまでも街の催しだから今回はそんなに緊張してないかな。
受付も終わり、試合が始まるまで待機。その間に周りからはサインとか求められるけど、それくらいなら快く受け入れる。
そんな感じで時間も過ぎていき、街のダイバース大会がスタートした。
──“1st.GAME・ビンゴ”。
「なんか新鮮な感じ~」
「トーナメント式じゃないからこんな風なのか~」
いつもと表記される文字が違い、ちょっと新鮮に感じる。
あくまで参加者が楽しめる在り方だから、一回戦とか第一ステージとかじゃなくて一回目のゲームって雰囲気。
ルールはビンゴ。多分普通のと同じで、どこかのマスを揃えたら上がり。仮に負けても敗退とかは無く、総合力を競って優勝を目指すものだから全部のゲームに参加出来るね。
《ルールは簡単! 今から数字が発表されるので、その数字の場所に箒や絨毯で向かうだけ! 年齢が足りない方もスタッフがサポートするので無問題! その速度を競います!》
魔導ビンゴ。ルールは言われた通り。箒移動とかが鍵だね。
それ以外にも普通に身体能力強化で走ったり、炎や風の加速で進むのもあり。この手の試合なら何度もやって来たからトップで行けるかもね。既に参加したから参加賞は確実に貰えるし、後は存分に楽しむだけ。
「よし、掴まってろよ!」
「う、うん……」
「私も道を作るよ!」
《出ました! 最初の数字は──“3”っ!》
箒に乗り、女の子と一緒に加速。その数字の場所に向かい行く。
あくまでも催しの一環だからなるべく出力は抑えようかなって思ったけど、ダイバース選手じゃなくても普段から魔導が当たり前だからみんな結構早いね。
今回は一掃するんじゃなくて、ボルカちゃんの操作する箒の空道を植物で囲って最高速で向かう感じだよ。
「しゃあっ! 一番乗り!」
「は、速い……」
指定された数字の元に行き、数字が書かれた数量に限りありの魔力球を受け取ってビンゴ用紙に魔力を写す。
これで一つ目だけど、必ずしも言われた数字を取れば良い訳じゃない。取るに越した事はないんだけど、移動式の数字集めなので当然その数字の位置に近い人が有利。だからか、敢えて行かずビンゴ用紙の真ん中部分や広範囲のリーチを狙えそうな数字がある場所に陣取っている人も居る。
最終的には運次第だけど、成功した時の高揚溢れるギャンブル感を楽しみたい人も居るみたい。全員が全部のゲームに参加出来るもんね。やりたい事をやるだけでも十分に楽しめるのが町内ダイバース。
《次の数字は──》
とは言え、結局は多くの人が取りに行くからギャンブラーは少しだけ。ボルカちゃんの扱う速度的に、私達は当然のトップクラスでビンゴを揃えた。
ビンゴになった瞬間に魔力が刻まれ、順位が表示されるから記録係はそれを記すだけ。
次のゲームへ進む。
──“2nd.GAME・町内大迷宮”。
次は商店側が用意していたステージに転移。さっきのビンゴの舞台と言い此処と言い、意外と色んなステージを保有しているね。
そしてゲーム内容は迷宮、つまり迷路だね。ステージ構造は街を模した物で、色々なお店がある。
街中自体が迷路になっているので、迷っても飽きない作り。何なら迷えば迷う程に宣伝効果がある看板が置かれてるという抜け目なさ。
「さてと、スタート地点はバラバラ。それでも何人かは居るけど、とにかくゴールを目指すか」
「ゴールはどこでしょう……」
「シンプルに考えたら出入口かな? どこが出入口かってなるけど。取り敢えず進むしかないね!」
商店街なので不気味な雰囲気も無く、本当にちょっとした近所の冒険って感じ。
私達も周りに倣って散策。優勝は狙ってないけど、普段と違うステージを見て回るのも楽しいよね。思えば普段のステージも戦いに夢中でよく見てなかったし、改めるとかなり手の込んだ場所。
見て回るだけで少し楽しいよね。
「けどまあ、何もなく行けるって訳は無いよな」
「そうみたいだねぇ~」
「わ、わわ……!」
八百屋さんの野菜が動き出し、私達や他の参加者にも襲い掛かってきた。
対する私達は魔力を込め、無詠唱で野菜を切り裂き、ボルカちゃんが焼く。あっという間に野菜炒めの完成。
「うん、美味い」
「普通に食べるんだ……」
それをパクパク食べるボルカちゃん。だけど案外これが狙いなのかもね。廃棄になりそうな野菜を魔力で操ってギミックにして、食べられるようにする。食材を無駄にしない意思を感じるよ。
そんな感じでお魚屋さんでは魚が襲い、お肉屋さんではお肉に潰され掛け、紆余曲折あってゴールに到着した。
全部を調理しながら進んでいたから順位は真ん中くらいだね。楽しかったからOK。
次の試合に進む。
──“3rd.GAME・クイズ大会”。
次のゲームはクイズ。
幼い子供の参加者も居るからそんなに難しい問題は出ないね。
全員参加であり、一番正答数の多い人が勝ち。とは言っても大人達や中等部以上にとって子供向けの問題は簡単なので、少し工夫がされている。具体的には何秒が待った後で答えつつ、子供は一つの正解につき五点、中等部くらいは三点、大人は一点とバランス調整もされているの。
その上で勝つよ!
《それでは! 一般的に言われる四大エレメントですが、火、水、風とあと一つはなに!?》
答えは“土”で簡単な問題。
だけどハンデの分が作用し、こんな感じの問題が続いても大人と子供に点差は開かなかった。
悪くない位置で進み、いよいよラストゲーム。
──“FINAL.GAME・四竦み四大エレメント”。
ルールは単純。それぞれのエレメントに相性を振り分けて、代表者の出すエレメントに有利な手を出したら勝ち。魔力が使えない人も居るので、属性の宿った魔道具をその人達にも配られるよ。
関係性は火は水に弱くて、水は土に弱い。土は風に弱くて、風は火に弱い。
弱点の理由を述べるなら──
・火→水で消える。
・水→土で塞き止められる。
・土→風によって分解され、侵食や風化する。
・風→火は逆に燃え上がる。
──とまあそんな感じ。
実際は炎が水を蒸発させたり、風が炎を消したりとか色々あるけど、あくまでも分かりやすくルールに落とし込んだ感じだね。
そんな風に始まり、かけ声と共にエレメントを出すんだけど……。
「くそー! 火は水を蒸発させるだろ! 土と火は混ざり合って溶岩になるからあいこ!? そんなの納得出来るかー! 火は土も焼き尽くすんだぜ! アタシの炎は火をも焼き尽くし溶岩も蒸発させるからな!」
「ボルカちゃん……」
炎絶対主義になってるボルカちゃんが文句を言いながら負けたり引き分けたり。
本人の性質が、感情移入し易かったりで熱くなるタイプだもんね。普段は明るい性格に頭も良いしセンスもあるし完璧なんだけど、そう言った部分もある。その辺も可愛いんだけど。
そして植物と火以外の属性を使えない私は魔道具で参加してるけど、結構難しいね。1/4でしか勝てないから大変。動体視力を凝らせば代表者の出す手が分かるけど、集中し過ぎて自分が出す前に終わっちゃったら意味がないや。
「や、やった……また勝った……」
「すごいね! 相性を見る天才!」
私とボルカちゃんが苦戦する中、女の子は順調に勝ちを重ねている。
観察と判断。相手の心理を読む。そこまで深く考えての一手なのかは分からないけど、勝っているのは事実。そう言った才能があるのかも。
そんな感じで全ゲームを終え、私達は女の子のお陰で悪くない順位となった。
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《それでは! 優勝したチームには旅行券を! 二位には高級家具、三位は高級食材、四位にはお菓子の詰め合わせセット、五位には商品券がプロのダイバース選手から直々に授与されます!》
全程を終え、プロ選手による賞品の授与。参加賞のマジックドームもゲットしたよ!
四位だった私達はお菓子の詰め合わせセット。高級品には劣るかもしれないけど、この量を貰えたらしばらくお菓子には困らないし、値段的にも比毛を取らないかもね~。
何よりマジックドームに加えてお菓子も持っていけるんだから、お見舞いには最適だよ!
「良かったね! お菓子沢山貰ったよ!」
「うん! ありがとう! お姉ちゃんたち! これも貰ったし、おかしも貰えたからよかった!」
「ハハ、早く病気のお友達に渡してやりな」
「うん!」
「バイバーイ」と手を振る女の子とはそこで分かれ、私達は次の行動を考える。良いイベントだったね。楽しめたし、女の子が笑ってくれて何よりだよ!
ストリートダイバースを終え、程好くお腹も空いてきたかな。全行程は二時間も掛からなかったけど、一旦賞品のお菓子を置く為、私達は一度戻るのだった。




