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ロスト・ハート・マリオネット ~魔法学院の人形使い~  作者: 天空海濶
“魔専アステリア女学院”中等部三年生
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第四百五十一幕 学校と雑貨屋・一日目の終了

 ──“魔専アステリア女学院”。


 お昼休憩が終わり、午後の授業に差し掛かる。教室には日差しが差し込み、和やかな雰囲気を感じ取れた。その中には眠気もあるわね。

 教師として生徒と接するのはそろそろ終わり。本来ならその後にも夜まで仕事はあるけれど、職場体験という今回の私にはあまり関係無い事。基本的には授業とかそっち中心だものね。資料を纏めたりするのは本業のお仕事。職場体験……言い換えるなら実習生のような立場である私はそう言った役割。

 なので昼食後の眠気を誘う穏やかな午後の教室にて行われる授業。これを終えたら一先ず今日は終わりね。初等部は中等部より短いから思ったより早いわ。


「このエレメントの組み合わせにより、この魔導が形成される訳です」


 五限目は魔導講習。実習とは違い理論で成されるもの。

 魔導を組み合わせる術を扱える子は中等部でも少ない。そもそも生まれ持った系統で得意不得意は決まるものね。体質によっては魔導が使えなかったり別の力である事もよくある。あくまで知識として取り入れているに過ぎないわ。一つの属性を極めるのが大半の在り方。

 でもまあ、同じ系統でも使い方次第で他の系統の再現とかも出来るけれど、それは初等部の範囲外でまだ早い。担任の教師もそれを教える様子は無いわ。

 けど、


「ウラノ先生! 系統の組み合わせというものは具体的にどの様な感じとなるのでしょうか?」


 生徒が挙手し、私にそのやり方を訊ねるように質問した。


「そうですね。ではウラノさん。魔力……魔導の組み合わせに置いて貴女の本魔法はお手本のような存在。この子達に見せて上げてください。集中力も切れ掛かっているみたいですからね」


「はい」


 そして今は眠くなる頃合い。教科書や言葉だけじゃ伝わらない事もあるし、実践を織り交えての講習は担任の教師も賛成しているわ。

 私としても色々と学んでおく必要があるから良いけど。


「とは言え、私の本魔法は不特定多数のそれとは違います。単純なエレメントの組み合わせではありません。しかしやり方は同じなので行うとするなら複数の物語の融合と言ったところでしょう。例えばこの物語を火属性とし、もう一つの物語を水属性とすると……物語ストーリー──“不可視ミステリー”&“環境的ガス工場”」


「「「…………!」」」


 二つの物語を合わせ、作中世界の主な舞台となる場所に出てくる霧を放出した。

 物語から生み出すのは登場人物だけじゃない。ドラゴンとかの生物も前から出してたから今更ね。

 そんな感じで二つの物語によって深い霧が現れる。炎と水のエレメントを組み合わせても霧になるから分かりやすくしたわ。

 因みに補足だけど、“不可視ミステリー”の正式名称は“不可視ミステリー~証拠無き霧の中の殺人事件”。初等部の子達の前ではあまり“殺”とか死を連想させないようにしているの。


「見えな~い」

「すごーい!」


「私の場合は二つの物語でより濃い霧を出しましたが、水と炎を組み合わせる事でも霧が発生します。とどのつまり、この様に私なら物語の。貴女達なら各種エレメントの性質を把握する事で全く別の力……もしくはより強い力を生み出せるのです。それがエレメントの組み合わせとなります」


「分かりやすい説明でしたね。そうです。この様な力を──」


 シームレスに授業へ話を戻す。この辺の手腕も流石は“魔専アステリア女学院”の教師ね。生徒達も先程の眠気が覚めて姿勢を正し集中し直す。

 私は教室の窓を開けて霧を外へ。永続的な魔導じゃないから何もしなくても自然と消えるけど、冷たい風に当てる事でより集中力を高めさせる為に開けたわ。

 そして五限目の授業も終了。次の六限目で終わりだなんて初等部は早いわね。

 次の授業は道徳と倫理。本質の勝手は違うけど、初等部では多くは語られないので一緒に教えられる。

 これについては私から言及する事はないわね。知識でしか知らないもの。



 ──“六限目”。


「世界の主な種族は四つ。人間、魔族、幻獣、魔物です。その中で“人間”に該当する私達ですが、他の種族には無い人間の特徴として──」


 魔族や魔物なら好戦的。幻獣なら温厚と、その種族の傾向がそうと言うだけで全員が必ずそうなる訳じゃないけど、そんな感じで特徴はある。

 その種族に人間を当て嵌め、そこから倫理や道徳を説く。

 たまに質問は振られるけど、定型文を返せば良いから問題は無いわね。

 そんな感じで六限目も終了。職場体験、私の日程は終わりを迎える。多分一番早いんじゃないかしら。他のみんなも後数時間で終わると思うけれどね。

 そんな感じで担当してくれた教員にも挨拶をし、確認を終えて寮へ戻る。こんなに早いとズル休みか早退でもした気分ね。一応今日の出来事を纏めたりやる事は色々あるけど、それも三十分も掛からない。


「今日はゆっくり過ごせそうね」


 他のみんなが居ないのは通常の休日や長期休暇でもよくある事。出てくる感想はそれくらい。

 新しい本でも買いに行きましょうか。



*****



 ──“雑貨屋”。


 配達も終わり、私は雑貨屋さんに戻る途中、日が短くなったのもあるけど、すっかり暮れて星も見え始めていた。

 ほうきに乗って眺める夜空もまた綺麗。月も覗き、本来なら寂しげな夜を照らしてくれる。この季節のお月様はとても綺麗。ずっと眺めたくなるけど、余所見よそみ移動は危険だからすぐに視線を戻す。


「わあ……」


 下方を見下ろすと、立ち並ぶ建物の明かりがもう一つの星を彷彿とさせるように瞬く……ううん。暗くなってきたから明かりが灯されてるんだね。

 それもあり、まるで一つ一つが新たに生み出されているかの様。夜の空中散歩は目に優しいね。

 少し進んで降り立ち、雑貨屋に辿り着いた。


「ただいま戻りました!」

「やあ、ご苦労様。少し遅くなったみたいだけど、おそらく医務施設で子供達の相手をしていたんだろう」

「はい! 知り合いなんですか? あの子達と」

「ああ。昔馴染みの医務施設でね。お得意様なんだ」


 得意先なのもあり、当然だけど顔馴染みだったみたい。そんなに前からお届け物をしているんだねぇ。

 見た目はかなり若いけど、それなりに歳を重ねてるのかな?


「店主さんって、結構年齢が上なんですか?」

「真っ先に出た疑問がそれかい。まあ顔に出ていたから分かるけど、正直な子だ。……私はまだ二十代だよ。幼少期から色々とお手伝いをしていて結果的に二十年以上の付き合いも増えてると言うだけだ」

「成る程~。あれ? けれど此処は個人経営ですけど、親から受け継いだとかですか?」

「半分正解。此処を雑貨屋として開いたのは最近だけど、お店自体は昔からやってるんだ。それこそ祖父母の代からね。取り扱っている品物が増えたから雑貨屋としてリニューアルオープンしたという訳だな」

「そうだったんですねぇ」


 品物を並べながら雑談をする。このお店の成り立ちを少し理解したよ。今のところお客さんが来ていないからちょっとしたお話もしちゃう。

 しばらく並べ続け、店主さんは口を開いた。


「よし、これが終わったら上がっても良いぞ。ティーナ。今日はもう時間だ」

「え? けれどまだ営業時間じゃ……」

「そうか。君は知らないか。一応、雇用規約では時間が定められてるんだ。一日何時間ってな。まあ君はあくまで職場体験だし、個人経営だからその辺はどうとでも出来るけど、中等部。まだ学生の君に長時間の労働は大変だろう。職種によって定められている時間は違うけど、私の場所じゃ大体これくらいにしているんだ」

「そうだったんですか」


 ただ仕事をすれば良いだけじゃなく、ちゃんと従業員に社員、他の人の事を考えなくちゃ社会は回らない。

 だから少し早いけど中等部の私は上がる頃合いとの事。

 規則で決まってるなら仕方無いけど、部活をしていた時より早く終わっちゃったね。


「退勤の方法も店や職種で様々だ。私の店じゃこんな風に──」


 店主さんがささっと魔道具をもちいて詳細を入力し、いつでも帰れるような状態を作ってくれる。

 終わってすぐに帰れる場所もあれば、終わった後に五分も掛からないくらいのプチ行動をする所もある。社会の形も様々だね。


「まあ、悪徳業者にゃ退勤手続きをした後、賃金が発生しない状態にさせて働かせる場所もある。くれぐれもそう言った場所には引っ掛からないようにな。君なら心配無いと思うが」


「……はい」


 そんな事をする場所もあるんだ……。むしろパフォーマンスが落ちて逆効果な気がするけど、それに気付けないような人が経営しているならあり得るかも。

 将来的にどうなるか今はまだ分からないけど、選択は気を付けなきゃね。


「よし、終了。じゃあ気を付けて帰りなよ」

「はい。今日はありがとうございました!」


 店主さんと別れて帰路につく。私は結構早い方かもね。部活動をしていた頃より少し早いくらい。

 他の場所がどれくらい働くのかは分からないけど、ギルドや外交は長いと思うからねぇ。

 明日も……というより期間内はお世話になるからまた頑張ろう! 

 職場体験、私の一日目が終わりを迎えるのだった。


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