表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ロスト・ハート・マリオネット ~魔法学院の人形使い~  作者: 天空海濶
“魔専アステリア女学院”中等部一年生
45/457

第四十五幕 二回戦決着!

「……! ありましたよ。リタル先輩! この先数百メートルの拓けた場所に旗付き棒が!」

「そうですかぁ~。やりましたねぇ~」

「……はい!」


 のんびりした口調で話すリタル先輩。思わず釣られちゃいそうになるけどなんとか返事をし、ティナを私の元に戻す。

 目を閉じていたり、ティナと感覚を共有している状態だと素早く動けないからね。急ぐ時は戻すの。

 魔力で身体能力を強化し、旗の場所へ。まだ誰も来ていないのを確認してそこを掘る。


「えーと……えい!」


 手で掘っていたら遅い。なのでママに魔力を込め、文字通り根刮ねこそぎ旗付き棒を大地ごと持ち上げて引き抜いた。

 出てきたのは一枚の模様が描かれた金貨。キレイ……。


「これ……かな?」

「その様ですねぇ~」

「わ! いつの間に……」


 ゆっくりと行動していたリタル先輩が隣に。

 気配を消すのが上手だね……。やっぱり実力者なんだなぁって思う。

 金貨を制服のポケットに仕舞い、私とリタル先輩の前には剣士さんと魔法使い……じゃないね。杖が無いから魔術師か……って、あれ?


「み、見つかっちゃった!?」

「フフ、当然ですよぉ~。だってこんなに大きな樹を生やしたんですもの~」

「あ、やっぱりそうですよね」


 私の背後にはママの植物魔法で生やした大木が。魔力出力が高いのは良いんだけど、こう言う隠密行動とかの時は大変かも。

 そう言った調整も出来るようにならなきゃいけないよね。まだまだ勉強しなきゃ!


「覚悟!」

「“ファイアボール”!」


「「…………!」」


 剣士さんが踏み込んで模擬刀を突き立て、火球が私達の前に迫り来る。

 放った二人は歓喜していた。


「やったぞ! 倒したぞ!」

「随分呆気なかったわね!」


 胸を張り、大きな喜びを表現している二人──手には石ころを持ちながら。


「これがリタル先輩の……匂い魔法……」

「鼻は目や脳みたいな中枢に近いからねぇ~。匂いによって生じる幻覚は効果的なんだよぉ~」


 リタル先輩の魔法、匂いを司るもの。

 魔力を匂いに変化させて幻覚や幻聴、その他にも様々な用途を見せる力。のんびりしていながらかなりスゴい……。


「去年も一昨年も使ってたから研究されてると思ったけどぉ~……この人達はそうじゃなかったみたいだねぇ~」


 分かっていても対処は難しいと思う……。発動したら終わりだもん。

 こんなスゴい魔法の使い手が味方で良かった~。


「それじゃあ離れよっかぁ~。一時的なものだから長時間は持たないし~」

「そうしましょう!」


 この状態なら勝てると思うけど、なんか可哀想だからこの場は立ち去る。

 洞窟の方はボルカちゃん達に任せているとして、他の場所も探さなくちゃ。

 またティナと感覚を共有して島へ解き放つ。

 この調子でやっていこう!



*****



「暗いな~」

「そうね」

「涼しいな~」

「そうね」

「声が反響する~」

「そうね」

「水滴がピチャピチャいってるよ」

「そうね……そしてよく話題が尽きないわね」

「お、やっと返答してくれた」

「かれこれ……と言うか分断してからずっと話していたもの……一定の言葉で返し続けると私の方がゲシュタルト崩壊するから返さざるを得ないわ」

「へへん。やりぃ~」

「なんで勝ち誇ってるのかしら……?」


 ティーナ達と分かれて数分。アタシ達は洞窟内を進んでいた。

 そこはThe洞窟! って感じの場所で、暗くてジメジメしていて海の近くだから潮風によるベタつきも若干ある所だった。

 居心地はあんまし良くないかもなぁ。早いところ見つけてトンズラこきたいぜ。


「普通に考えたら宝があんのは最奥だよな?」

「かもね。けど一つとは限らない。広さにも寄るけど、場所によっては二つ置いてあるかも」

「それならラッキーなんだけどな。あと、相手チームも多分洞窟には来るよな?」

「でしょうね。普通に考えたら探さない手は無いもの。洞窟に無いとか、二回戦がそんな複雑な訳がない」

「メタ的にも考えて行動するか。確かにそうだな」


 相変わらず色んな視点から考えてるぜ。ビブリーは。

 味方だとすげえ頼もしいな。と言うかティーナ達もみんな頼もしいぜ!


『……!』

「うおっ。スライムだ」

「放たれてる魔物ね。知能がほぼ無い魔物を扱う事で魔物の国陣営からの反感を買わないようにしているみたい」

「まっ、魔物ってもアタシ達人間や魔族みたいに一つの種族括りにしては一匹一匹、一人一人の存在が違い過ぎるからな。魔族の国や幻獣の国、なんなら魔物の国ですら害獣って呼べる魔物は討伐対象だし、問題無いみたいだ」

「そうね」

「とりまこう言う妨害はちゃんと対処しておこう」

『──』


 火球をぶつけ、スライムを蒸発させた。

 仮想世界の方のゲームみたいに【テッテレー♪ モンスターを倒した!】的な音楽が流れてくれてもいいのに。

 時折現れる魔物を倒し、ぬかるんだ道を歩み行く。

 こうも暗くちゃ何処にあるかも分からないな。目印くらいはあるとして、それでも光の範囲は限られるからちゃんと観察しなきゃならない。


「なあビブリー。宝探しに持ってこいの人材は本魔法に居ないか?」

「“海廻探船”の船長とか“幻影怪盗日記”の主人公かな。宝探しが題材の作品だし」

「それじゃ召喚してくれ。リーダー命令だー!」

「それ言いたいだけでしょ。ま、良いわ。従いますよ。リーダー。実際それが最適解。……物語ストーリー──“怪盗”」


 魔導書グリモワールをパラパラと開き、そこから怪盗を召喚する。

 ファンファーレと共に紙吹雪が散り、黒いマントと燕尾服に身を包んだ存在がバサッと翻して現れた。


「シュバッと参上(つかまつ)る。お嬢様方のご依頼は?」

「この洞窟内にあるかもしれないお宝」

「かしこまりました。ではでは!」


 ビブリーの言葉を聞いて素早く動き、よく分からない魔道具を取り出した。

 それによって道が光を放ち、アタシ達を旗付き棒の所に案内する。


「おお、すげぇな。なんの魔法だ?」

「魔法じゃなくて欲しい物を見つけ出す魔道具よ。物語の中に出てくるの。色々と制約はあるけど、便利な道具」

「いや、便利どころじゃないでしょ。これって警察に捕まらないんじゃないの?」

「そうもいかないわ。あくまで場所を教えてくれるだけ。セオリー通り盗む前に予告するから相応の警備は張られるの。加えて様々なトラップ。それを試行錯誤して突破する怪盗と、同じく試行錯誤してあらゆる手段をもちいて動く警察達との駆け引きが見物よ! 上巻と下巻で読みやすいから是非貴女も──」

「お、おお……分かった……」


 聞いての通り、ビブリーは本の話になると興奮する。本を読むのは良い事なんだけど、この勢いには押されちまうな。

 何にせよ宝は貰っとくか!


「っても、アタシの炎魔法や炎魔術じゃ宝が何かによるけど燃やしちまう可能性があんな。普通に身体能力強化で掘っか!」

「身体能力を強化しても大変だと思うけど……まあボルカさんなら簡単にやれるものね」


 棒の下を掘り、宝を発見。けど手が泥だらけだ。

 金貨みたいな物を取り出し、少し観察した後で懐に仕舞った。


「っし、じゃあ自陣へ持ってくか」

「そうね。もうすぐ来るかも」


「ちょっと待った! その宝、譲って貰う!」


「訂正。もう来たわね」

「ハハ、だな」


 帰ろうとした時、相手チームの二人が現れた。

 両方とも魔法使い。狭い洞窟内じゃ互いに利は得られないな。

 ……ま、アタシは別だけど。


「覚悟……!」

「悪いけどセンパイ。さっさと勝ちたいから終わらせるよ!」

「……! 魔法使いじゃなくて魔術師……!?」

「じゃあその杖は……!」

「アタシは両刀使いなんだ。それについての立ち回りも先輩達から教わってる!」

「「……!」」


 魔術にて炎の剣を作り出し、身体能力を強化。足から炎を放出して片手で炎を出しながらバランス調整しつつ加速し、意識を奪う想定で斬り伏せた。


「一丁上がりィ!」

「瞬殺ね」

「時間は掛けてらんないしな……と言うか、もういっその事他の宝も探さないか?」

「……アリかナシで言えばアリ……かな。戦力を二人削ったから、かなり楽になったし」

「っしゃあ、そんじゃ残りの宝も見つけて行くか!」


 このまま戻るつもりだったけど予定変更。もう一つの宝も見つける事にした。

 その方が確実。後にティーナ達と合流し、宝を捜索。結果、


《勝者、“魔専アステリア女学院”! 終わってみたら呆気ない試合と──》


 アタシ達は二回戦も余裕を持って突破出来た!

 因みにもう一つの宝は浜辺にあって、既に空中戦で勝っていたメリア先輩が散歩中に拾ったらしいぜ。

 残りの宝は海中と別の森の中にあったらしく、遅かれ早かれって事が分かった。



*****



「二回戦も突破、おめでとう。みんな」

「おめでとうですわ! 次は私も出ます!」


「ありがとうございます! ルミエル先輩! 三回戦はルーチェちゃんにも向いてるルールだと良いね!」

「ですわね!」


 二回戦を突破した私達は控え室に戻り、ルミエル先輩に迎えられていた。

 と言っても来てくれているのはルミエル先輩だけで、イェラ先輩とレヴィア先輩は学校で待機。高等部の方の大会も近いから最後の仕上げをしているんだって。

 ルミエル先輩も練習する必要はあるけど、合間を縫って初日だけは見に来てくれたって訳!

 今日の試合は無事終了。後は明後日の三回戦と、それ以降の試合だね!


「それで、貴女達はこの後どうするの? 三回戦や、それ以降に戦う可能性のあるライバル達を観戦するのか、寮に帰って身を休めるか。今日の日程は終わったから自由よ」


「私は他の人達の応用も見たいから残ります!」

「アタシもティーナと一緒に観戦するぜ! 帰っても暇だしな!」

「私はこの後に用事があるので、見たい気持ちは山々ですけど帰るしかありませんわ」

「私は読みたい本があるからパス。読書はそのまま私自身の強化にも繋がるからね」

「私は後輩達を案内するよーっ!」

「良いですねぇ~。けど、私は少し疲れたので帰って休みますぅ~」


 結果、私とボルカちゃん、メリア先輩が会場に残って試合観戦。

 ルーチェちゃんとウラノちゃんとルミエル先輩とリタル先輩が会場を後にする事となった。

 まだまだダイバースは初心者もいいところ。沢山勉強して三回戦に繋げなきゃ!

 学校から出された課題は試合も休みの明日のうちに終わらせれば良いもんね! 時間は十分にあるよ!

 二回戦を終わらせた私達は、一旦ここで解散とし、各々(おのおの)の行動に移るのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ