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ロスト・ハート・マリオネット ~魔法学院の人形使い~  作者: 天空海濶
“魔専アステリア女学院”中等部三年生
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第四百三十八幕 中等部最後の体育祭

《さあ! やって参りました! “魔専アステリア女学院”体育祭! 此度も全校生徒が──》


 学院祭から数日後。今年も体育祭がやって来た。

 司会役の人も去年より声を張り上げており、全校生徒はやる気満々の様子だった。


《今年の競技は四つ。午前の部で三つを終わらせ、午後の部でクラス対抗のものを執り行います! それでは開会の──》


 挨拶が行われ、早速競技がスタートする。今年は中等部最後の体育祭。だからと言って特別な感じはしないけど、精一杯頑張るよ!

 “魔専アステリア女学院”対抗体育祭がスタートした。



 ──“第一種目・魔導玉入れ改”。


 最初の競技は魔導玉入れ改。つまりパワーアップしているという事。

 どの辺りがパワーアップしたのかと言うと、


『…………』


 籠に向かって投げた玉は魔力の壁によって阻まれ、弾き飛ばされた。

 パワーアップ要素は単純に入り難さの上昇。最初の競技なだけあって控え目にしているみたい。

 狙いを定めれば壁を抜けて入る。たまに向こうからちょっと痛い程度の魔力の塊で攻撃も来るけど、それを回避して順調に点数を稼いでいく。


《終了ー! 最もポイントが高かったのは、中等部のⅢ-Ⅰ(3-1)です!》


 そして私達が最高得点を記録した。まずは一歩前進だね。

 時点で高等部三年生のレヴィア先輩のクラス。その次が高等部一年生、メリア先輩のクラス。次に高等部二年生でリタル先輩のクラスが続く形。で、ディーネちゃん達のクラスにムツメちゃん達のクラス……とこの辺は想定通りだよ。順調に勝ち進んで行こう!



 ──“第二種目・障害物競争MK-2”。


 次は障害物競争……のMK-2。その名前の通りこれもパワーアップバージョン。

 単純に障害物のレベルが上がってる感じ。魔導や魔道具をフル活用した設備が更に強化されてるからただ進むだけでも大変だよ。


《スタート!》


 そして一斉にスタートした。

 今回の競技にレース系は無いからそれも兼用している障害物競争。クラスから代表を何人か選んで競争する。私達のクラスからは勿論私、ボルカちゃん、ウラノちゃん、ルーチェちゃんにカザミさんが選ばれた。

 第一走者は私から!


『…………』

「最初の障害物は……立ちはだかるゴーレム……!」


 いつもは高い壁を越えるだけなんだけど、今回は魔導からなるゴーレムが相手。あくまで障害物だから必ず倒す必要は無い。あくまで先に進むのが目的。

 私は倒せるからその方が速いかもしれないけど、その間に突破されちゃう可能性もある。だとしたらどうするか……って、考えている暇はないよね。競争だもん。


「“樹拳”!」

『…………!』


 樹木の一撃でゴーレムを破壊。魔法発動の一手間で他の人達が抜けていくのを見た。

 移動にも魔法は使われるので早く行かなきゃかな。


「そーれぇ!」


 植物に乗り、魔法で移動する他の生徒達を抜いていく。

 当然、私達は私達でお互いに妨害もしていく。


「“樹木障壁”!」

「“火槍”!」

「“風鎌”!」

「“水矢”!」

「“土槌”!」


 植物の壁を張り巡らせ、新たな障害物を生成するも直ぐ様突破される。

 あくまで体育祭だからそこまで全力じゃないけど、それでもちょっとやそっとじゃ壊れない強度にしたんだけどね。流石は“魔専アステリア女学院”のみんなだよ。

 他にも色々と互いに仕掛けたけど、最後は純粋な競争。次の選手に委ねる。


「体育祭で全力出し過ぎよ」


 ウラノちゃんは本からお馬さんを出して走り抜ける。次の障害物は蜘蛛の糸。絡まったら動けなくなる。


物語ストーリー──“切り裂き魔”」

『ヒャハハァ━━ッ!!』


 ナイフを二本携えた人物を生成。蜘蛛の糸を切り裂いていく。

 勿論もちろん障害物はそれだけじゃない。蜘蛛の糸、もといクモの巣には主が居るから。


『………』

「あら、大きな蜘蛛。無理な人は見るのも大変そう」


 巨大な蜘蛛が姿を見せ、走者達に子蜘蛛と自分をけしかけた。

 確かに見てるとゾワゾワする……。蜘蛛の子を散らすって言うけど、まさにそれ。本体の大蜘蛛も含めてかなり生理的な嫌悪感を示す。

 当然のように本来のそれとは大きく違い、いつでも糸を放出しては曲芸のように縛り上げていく。

 機敏に動く種類も居るけど、良いところ取りの後に魔改造したような存在がこの障害物。

 ウラノちゃんの行動はと言うと、


「わざわざ相手にする必要は無いわね。物語ストーリー──“空飛ぶ魔獣”」

『ゴギャアアアァァァ!』


 今まで見た事の無いモンスターを召喚して馬から乗り移った。

 確かに大半の蜘蛛は空を飛べない。糸を使って空中移動する種も居るけど、それより遥かに速く抜けていく。

 龍より魔力の消費が少ない、飛行に特化したモンスターだから成せる技だね。

 そのまま突破したウラノちゃんは次の走者にパスした。


「行きますわよー!」


 ルーチェちゃん。

 今の彼女なら光のような速度で動けるけど、それをしたら盛り上がりに欠ける。体育祭はあくまでエンターテイメントのような物だもんね。それは実行せず単純な魔力強化で次の障害物に挑む。


「これなら容易いですわ!」


 次の障害物は“的当て”。光球を扱うルーチェちゃんなら得意の技。しかし当然通常よりパワーアップしており、的は分裂していた。


「どういう事ですの!?」


 簡単と踏んでいたルーチェちゃんだけど、流石に目の前で複数に分裂するのは想定外だったみたい。

 戸惑いを見せつつ、複数となった的に狙いを定めた。


「だったら私も増やしますわよ! ──“分裂光球”!」


 戸惑いは一瞬。即座に光球を分裂させて的にぶつけ、障害物を突破した。無論、それだけじゃ終わらないのが今回の体育祭。


『…………』

「親玉ですの……!」


 的当ての的が意思を持って動き出した。

 思ったけど今年の中等部一年生達は初の体育祭でこのステージってちょっと気の毒かも。

 的はルーチェちゃんの光球を反射し、選手達に攻撃を仕掛ける。みんなはそれぞれ相殺し、一斉に的を狙う。


『…………』


 その瞬間にまた反射されたけど、ルーチェちゃんを含めて何人かが気付きを見せる。


「成る程。こういう事ですの!」

『……』


 再び光球を放出。それと同時に反射され、ルーチェちゃんは死角に回り込んだ。


「反射する際は無防備になってしまうんですね!」

『……』


 そこから的に当て、倒して突破する。他のみんなもそれに合わせて行動に移り、私達のクラスではカザミさんが受け取って突き進む。


「今までの障害物に比べたら、随分と優しいものだね」


 カザミさんの直面する障害物は本人の得意分野である水。激流下り。

 当然のようにモンスターとなった障害物は配置されているしこの水に乗るだけで大変なんだけど、そんな素振りは見せずスイスイと潜り抜けた。

 水関連なら私達の中でも頭一つ抜けてるね~。


『シャッ!』

「海蛇ならぬ水蛇。けどこれくらいなら!」


 本来ならアンバランスな中で襲ってくる蛇は強敵。しかしカザミさんは完璧に姿勢を保ち、正面から水の力で水を得意とする蛇を吹き飛ばした。

 そのまま勢いに乗って着水から着地。アンカーのボルカちゃんへと渡される。


「アタシ達のクラスが断トツだぜ!」


 現在は私達がトップ。最後の障害物は様々なモンスターの大集合となっているけど、ボルカちゃんは難なく突破していく。

 このままの調子なら私達の一位は確実。そう思った矢先、背後から突風が追随していた。

 それは比喩ではなく、実際にその通りの事が起こっている。


「負けないよ! ボルカちゃーん!」

「メリア先輩! 流石、速いッス!」


 メリア先輩。二位は先輩達のクラスみたい。

 先輩の風魔法は学院でも一、二を争う強さ。文字通り風の噂で聞いたけど、高等部一年生ながらほうきレースでは代表決定戦まで行ったんだって。まだ始まってないから結果は分からないけど、世界大会も視野に入る実力とか。

 そんな先輩が背後から加速してくるのは気が引き締まるというもの。ボルカちゃんがモンスターを倒した事で後続の障害物は少なくなり、今現在として単純なレースとなっていた。

 風と炎。追って追われてどちらが勝つか。トップは……二人なのに独走している状態にあり、ゴールが目の前に迫ってきた。


『『『…………』』』

「最後の砦か……!」

「そうみたいだね!」


 ゴール前、最後の障害物。大地が起き上がり、二人の体を覆う。迂回するか飛び越えるか。それじゃ間に合わないと判断した二人は魔力を込め、大地に風穴を空けてそこから抜け出した。


「これで……!」

「終わり……!」


 ほぼ同時にゴール。魔道具による判定となり、結果が割り出された。


《勝者! 高等部Ⅰ-Ⅱ(1-2)!!》


「だあああ!」

「やったー!」


 勝ったのはメリア先輩。本当にギリギリだったんだけど、風で靡いた前髪の差で先輩が勝った。私達は二位となる。


「やっぱ本職は強いッスね~」

「なんかその言い方はやだな~。ま、強いって言われるのは好きだけどね!」


 試合後の雑談。此処で一位を取っていれば総合優勝も決定的だったけど、強い先輩が沢山居る“魔専アステリア女学院”じゃそれも難しいね。

 いよいよ次は午前の部最後の競技!



 ──“真・綱引き”。


 最後の競技は綱引き。勿論強化バージョンであり、今回の綱は意思を持っていた。


「綱……って言うより蛇だね」

「そうだな。しかも両方とも頭だ」

「片方が有利になってしまいますものね」

「綱を蛇にする魔法が使われているようだ」

「ま、本物を使えばちょっと面倒な事に巻き込まれたりするものね」


 私、ボルカちゃん、ルーチェちゃん、カザミさん、ウラノちゃんの順で話す。

 真綱引きは蛇のようになった綱を引く戦い。ルールは変わらないけど、それまでの過程が大変かな。


《それでは……スタート!》


「引きなさーい!」

「「「おー!」」」


「引くぜー!」

「「「おお!」」」


 掛け声と共に開始。蛇の牙には少し痺れさせる程度の毒があり、体も意思があるので綱の匙加減次第。

 此処は一気に行くよ!


「“樹引力”!」


 植物を巻き付け、一気に私達の陣地へ。

 さっきの障害物競争じゃ負けちゃったからね。今回は少し本気を出す。

 それによって第一グループを突破。そのままの勢いに乗り、次の試合もその次の試合も勝ち抜いた。

 先輩達やディーネちゃん達も順調に勝ち上がって対面するけど、私は勝利を掴んでいく。次の相手はリタル先輩のクラスチーム。


「“フォレストゴーレム”!」

『…………』

『『シャー!』』

「あらら~」


 綱蛇を一気に引き寄せ、私達の陣地へ。

 これでリタル先輩にも勝利を──


「“惹き付け香”~」

『『……!』』

「……!?」

「綱蛇が……!」


 確信しようとした瞬間、リタル先輩が香料魔法を使用。それによって蛇は同時に向こうの陣地へ行き、完全に入って私達は敗れた。


「そっか……蛇さん達には意思があるから魔法で引き寄せられるんだ……!」

「してやられたなー! 流石だぜ。リタル先輩」


 盲点を突かれた事による敗北……だけじゃないね。まだ終わってないのに勝ちを確信して緩めちゃったのが原因。慢心が一番の敗因だった。

 そのままの勢いに乗り、リタル先輩達が真・綱引きで勝利を掴んだ。

 結構な横並び。決着は午後の部の最終戦だね。

 その前にお昼休憩を挟み、午後の部が開始された。

 午後の部は恒例の学院対抗ダイバース!

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