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ロスト・ハート・マリオネット ~魔法学院の人形使い~  作者: 天空海濶
“魔専アステリア女学院”中等部三年生
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第四百二十二幕 二泊三日の旅行・続く二日目

 ──“数時間後”。


 お昼から二、三時間。まだ日は高いけどずっと此処に居る訳にもいかないので一通り見て帰る事にした。

 リルさん達の担当区画も見終えたから頃合いだね。


「次は何処行こっか」

「後数時間で飯時だしな~。ちょっと早いけど、キャンプ出来そうな山を探すか」

「オッケーイ」


 日は長いけど、探し回るには結構な時間が経過する。なので早めの対応として今の時間帯から今日の宿泊場所を探す事にした。

 山自体にはほうきで行けるけど、そこからなるべく安全な場所を探さなきゃだもんね。昨日が特例なのは分かるけど、何かしらの危険が潜んでいる可能性はあるから。


「そんじゃーな。リルさん」

「お元気で」

『うむ。また近いうちに会えるかもしれぬしな』

「そうなったら良いッスね~」


 私達はリルさんと挨拶を交わし、ほうきに乗って空につ。目指すは宿泊場所になる山。この辺は山岳地帯も多いから候補は多い方。一時間くらいで見つければ後はゆっくり出来るね。

 宿泊場所を探す為、私達は“幻魔園”を後にした。



 ──“三時間後”。


 “幻魔園”を後にしてから三時間。まだ明るくはありつつ、日が傾き始めた頃合い。

 私達は──


「見つからね~!」

「予想以上に混雑してるね……」


 未だに宿泊場所を探して飛行していた。

 ほうきのエネルギーは魔力やそれに準ずる力。なのでまだそんなに疲れてはいないけど、単純に場所が見つからなかった。

 予想よりも登山者やキャンプする人が多く、何処も混雑していて今に至る。

 これが幻獣の国や魔物の国ならその辺の山に降りれば良いんだけど、人間の国じゃ山にも持ち主が居て無断でテント張るのはダメだからね~。


 勿論誰の私有地でもない山はあるけど、そう言う場所は当然整備もされていないのでテントを張りにくかったり野生動物とかの被害も全て自己責任になるので問題がある。

 私達は野生動物には簡単に勝てると思うけど、勝手に棲み処に上がり込んでそんな事をするのは侵略行為以外の何者でもないもんね。ちょっと気が引ける。


「しゃーない。こうなったらキャンプには適さないけど最低限の設備がある場所にすっか」

「そんな所あるの?」

「ああ、まあな。けど本格的なキャンプを始めるよりも前にその場所の状況を説明する必要がある。良いか?」

「今更だよ~。どんな場所なの?」


 最低限の設備があるキャンプ場。

 この時期、最低限があれば十分人は集まると思うけど、それでも空いているような場所。

 ボルカちゃんは口を開き、私達はその場所に向かった。



 ──“キャンプ場”。


「……すげぇゴミの山なんだこれが」

「話で聞くよりよっぽどだった……」


 その場所は、放置されたゴミの山に覆われた所。確かにこれは最低限の設備があっても行きたくないね……。

 状況で言えば空き缶や紙くずなどは序の口。ソファーなどの粗大ゴミから仮設トイレに至るまで捨てられた所だった。長年放置されているからか悪臭も酷いや……。

 テントを張るにも肝心な地面が見えない状態。ボルカちゃんの言い分も納得だね。


「そんな訳で、まずは掃除開始だ!」

「おー!」


 今は日が暮れ始めた時間帯。まだ視界の確保は出来るけど、眼前に広がるゴミ山を前にしたら気が引ける。今日中に片付け終わるかも分からないや。

 それに、設備についてもこのまま使うのは不衛生だからある程度は綺麗にしておかなきゃならない。大変だこれ。でもやらなきゃね!


「一先ず始めっか」

「うん……!」


 ママ……のお人形に魔力を込め、ゴミの下から植物を生やす。

 ゴミ置き場自体はふもとの方にあったので、そのまま植物に乗せてそこまで持っていく。それでもこの量、今日中に全部運ぶのは無理だから私達の区画分しか広げられないね。

 ボルカちゃんは周りのゴミを炎で焼失させていた。その中には気化する際に有毒ガスが発生する物もあるけど、有毒物質を無害な物に変換させる植物をそこら中に生やしておいたから無問題。リサイクル出来そうな物を麓のゴミ置き場に集め、それ以外は蒸発させている。


「やっぱ植物魔法は良いな~。ドンドン運べちゃうぜ」

「でもゴミ置き場の方が満杯になっちゃいそうだから、ある程度しか出来ないかな」

「それだけでも十分だぜ!」

「ボルカちゃんの炎も相変わらずの火力でスゴいね。物質が気化していくよ」

「ダイバースで鍛えたからな。それに、ティーナの植物があるお陰で気にせず燃やせるんだ」


 私達の相性はバッチリ。少なくとも目に見える範囲、及びトイレや調理場をキレイにして整えた。

 洗剤の役割を担う植物も作り出したからちゃんとピカピカだよ。同時進行で出来るから植物魔法様々だね。

 一時間くらいで掃除を終え、私達は早速テントを張る。すっかり日は暮れちゃったし迅速にやらなきゃね。だけどボルカちゃんは手慣れたやり方で組み立てていき、物の数分で張り終えた。


「ボルカちゃんが張っている間に残臭を取っておいたから、山や森本来の香りになったと思うよ~」

「サンキュー! 流石ティーナ気が利くぜ~! 年月経ったゴミだったから微妙に臭いがこびりついて残ってたんだよな~。お陰で自然の香りになったぜ」

「えへへ。喜んでくれて嬉しいよ♪」


 良い香りの植物を生やす事も出来るけど、自然の形は崩したくないもんね。

 遠方のゴミ周りにも無臭にする植物を生やしておいたから風に乗って流れ来る事も無いよ。


「そんじゃ、早速夕飯作るか。許可は降りてるから何するにも自由だ」

「放置されてた場所だもんね~。私達以外にも綺麗にしてくれるような人達が来たら良いな~」


 何度も言うけど、もう既に日暮れ。場所を探し続けていたのもあってお腹もペコペコ。なので夕飯作りに取り掛かる。

 材料はよくある物で、凄まじい高級品とかじゃない。だけどこう言った場所で作る料理はどんな高級品よりも美味しく思えるよ。


「肉は任せろ。ティーナはスープ作るんだな?」

「うん。野菜スープ! 野菜も植物だからシンパシーあるんだ~」

「成る程な~。アタシも肉とはシンパシー感じるぜ。アタシの体は肉だからな!」

「それは全人類そうだよ……」


 ボルカちゃんはお肉を焼き、私はスープを作る。材料は昼間のうちに買っておいたんだ~。

 ナイフはボルカちゃんの自前。複数本持っているらしく、私にも貸してくれた。料理も勉強中だから、少しは自信が付いてきたよ。


「ほいっと」

「相変わらずの手際だね~」


 サッサッと手際良く肉を切り、塩コショウで味付け。自分の炎魔導で作り出した焚き火に掛ける。

 私も野菜を刻み、それらを鍋の中に入れていく。味付けは少々。野菜本来の旨味を溶け込ませて味わいを深めていく。

 味見もしつつ、私達は数十分で料理を作り上げた。

 最後にパンを切って分け、軽く焼き目を入れて完全に完成となる。

 パンに野菜スープにお肉。シンプルなメニューだけど、キャンプで食べると特別感が増すよね~。


「ボルカちゃんの作ったお肉美味しい~! 焼き加減も丁度良くて旨味が引き出されてるよ~!」

「ティーナの野菜スープも美味いぜ! 味付けほとんどしてないのにこんなに味が出るんだな」

「そうなるように工夫したんだ~」


 私も料理が上手くなってるんだね~。ボルカちゃんにはまだまだ及ばないけど、少しでも近付けると良いな~。

 そんな感じで楽しく美味しく過ごす。ご飯も瞬く間に無くなっていっちゃった。


「ごちそうさま~」

「美味かった~!」


 夕飯を食べ終え、食器を片付ける。この近くには川があり、ゴミで汚染されていたから植物で浄化しておいたよ。使用場所の範囲内には浄化の植物を張っており、分子レベルに濾過ろかしながら流れるから常に綺麗な水をお届け出来るの。

 綺麗な水は食器も洗える。そのままこれを汲めばお風呂にもなる。植物で浴槽を作り、水を入れてボルカちゃんが温める。十数分で熱くなり、私達は一緒に入った。


「ふぃ~。ゴミ掃除で疲れたから休まるぜ~。本当に植物魔法は万能だ……というよりはティーナの発想力と頭脳あっての事だもんな~。これらを思い付いてもどういう構造とか内部をイメージに組み込まなきゃならないからさ。知識が無けりゃ完成しないからな~」


「褒め過ぎだよ~」


 植物魔法の応用。それは植物についての勉強を沢山したから成せる技。

 毒素だけを吸って無害にするとか、汚染水を浄化させる方法はどういう内部構造を作る事でそうなるかとか……取り敢えず色々考えてるの。

 ボルカちゃんに褒められるのも嬉しいね~。


「色々あったけど、今日も良い一日を過ごせたな~」

「そうだね~」


 “幻魔園”に行ったりゴミ掃除をしたり、料理したりお風呂に入ったり。今日一日は楽しいけど大変な事もあったね~。

 そんな事を話ながら私達はくつろぎ、星空を眺めて余韻に浸りながら穏やかな夜が過ぎ──


「「………!」」


 ──ていくかと思ったら、茂みの方から物音が聞こえた。

 気配は読んでなかった。一体何が来たのか、お風呂上がりの私達は衣服を着用し、その場所に警戒を高めるのだった。


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