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ロスト・ハート・マリオネット ~魔法学院の人形使い~  作者: 天空海濶
“魔専アステリア女学院”中等部一年生
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第四十二幕 大会

 ──二ヶ月後。


「……そろそろ大会が始まるわね。今日からそれに向けた特訓をして行きましょうか」

「大会?」


 学院生活が二ヶ月を経過したある日の部活動。ルミエル先輩が部員達を部室に集めてその様な事を話した。

 大会ってダイバースの大会って事かな?

 それについてルミエル先輩は更に綴る。


「そう。大会よ。と言ってもダイバースだけじゃなくて全部活動の大会。更に厳密に言えば全国の中等部の子達だけのね♪」


「中等部だけの大会……!」


 どうやら近々、全国の中等部を集めた大会が開かれるらしい。

 ダイバースのみならず、他の部活動を含めての催し。確かに競い合う相手が居なかったら趣味の延長になっちゃうもんね。

 人差し指を立て、ボードの前を歩いて言葉を続ける。


「今月に予選があって、勝ち残れば来月と再来月に世界中の種族と戦う事になるのよ♪」


「せ、世界中!?」


 思ったより規模がとんでもなかった。

 大会ってのは分かるけど、まさか世界規模だったなんて……。

 一体何千万人がライバルなの……。


「そうよ。世界中。まずは国内で競い合って、勝ち残ったチームで人間の国から十五チーム。魔族の国と幻獣の国から十一チームずつ。魔物の国から十チーム。それぞれの代表チームを選出するの」


 全ての国を合わせて計四十七チーム。それが選出される数らしいけど、なんか半端な感じがあるかも。

 それにまあまあまばらだね。


「その数って何か意味があるんですか? 人間チームの数が少し多いですけど」


「一説によると昔……英雄達の時代。それぞれの国を守っていた主力の数って言われているわ。人間の国が多いのは……単純に人数が多いのと、素の身体能力とかで魔族・幻獣・魔物に劣ってしまうからね。とは言え、私のように人間と魔族とか、他種族とのハーフは個人の意思で所属国を変えられるのよ♪ 私はこの国での生活も長いからずっと人間の国代表として立っているけれどね」


 数の意味は前時代の主力達に合わせたもの。

 そう言う謂れとか色々あるんだねぇ。

 あくまで今回は中等部の大会だけど、高等部とかプロとかも同じ感じなのかな?

 ルミエル先輩は更に言葉を続けて話す。


「そこで今回の活動は中等部の子達を徹底的に鍛え上げる事よ!」

「中等部……それって私達だけじゃないんですか?」

「あら、言ってなかったかしら? メリアは中等部の二年生。リタルは中等部の三年生なのよ!」

「そうだったんですか!?」

「ふふん、そうだったのだー!」

「私達、先輩なんだよぉ~」

「いえ、先輩方が先輩なのは知ってますけど……」


 メリア先輩とリタル先輩。この二人はまさかの中等部だった。

 そうなると中等部は私達四人と先輩二人って事になるんだ。つまり去年までは二人だけで中等部大会のダイバースをしていたって事!?

 それも異常だけど、高等部はルミエル先輩、イェラ先輩、レヴィア先輩の三人しか居ないんだ……。更に言えばそんな少人数チームでルミエル先輩はダイバースの最強って言われてる……。

 情報量が多過ぎるよぉ~!


「フフ、混乱しているわね。けど確かにこの二ヶ月で示唆した事は無かったわね。常に先輩後輩って感じだったし、メリア達も新入生のティーナさん達には分け隔て無く接してたわ」


「ま、今まで通りの対応で構わないよ! 後輩ちゃん達!」

「メリア先輩がやけに上機嫌なのって、一年前は一番後輩だったからなんですね!」

「ねえ! 君のその言葉に悪意は感じないけど、そんなにハッキリ言われたら傷付くよ!?」


「フフ、可愛い後輩が出来たんだもの。仕方無いわよね~」

「そう言うルミもレヴィア相手にはかなり先輩風吹かせてたぞ」

「ちょっとイェラ? 私、偉そうな態度とか取ってないわよ!」

「そうだな。先輩風と言うよりは頼られたいオーラが半端なかった……とでも言い直しておこうか」

「フォローになってないわ!」


 今は本当に頼れる先輩って感じのルミエル先輩だけど、昔はそんな事もあったんだね。

 ちょっと意外なルミエル先輩の一面を見た後、彼女はわざとらしく咳払いして言葉を続けた。


「とにかく本題ね。形式はチーム戦。開始時の登録人数は二人から五人まで。貴女達の場合、一人は余ってしまうけど、その時のルール上で離脱とかしていなければ控えのメンバーと入れ替える事も可能よ。だから控えになってもただ応援してるだけじゃ駄目だからね!」


「はい!」

「はーい!」

「はいですわ!」

「はい」


 基本的には二人チームから五人チームで行われる戦い。なので中等部だけで六人は居る私達は誰か一人が控えメンバーになるけど、入れ替える事は可能みたいだから気は抜けないね。

 戦略としては疲れたら交代して休憩&観察……とかそんな感じで回していくのかも。

 先輩は説明を続ける。


「貴女達は既に二人チームの場合と五人チームが相手の場合でダイバースの模擬戦はしているわ。だから既に基礎はクリア済み。そこから更に鍛え上げて行くのよ!」


「た、確かに……」


 思えば最初のかくれんぼは先輩達五人が相手になって、私達四人で二人チームずつに分かれて試合をした事もあった。

 他にも三人チームとか四人チームとか、一通りの形式は体験している。最初からこれを見越しての練習だったんだ。


「それで、鍛えると言うのはどの辺りですか?」


「戦略、判断、戦闘力、魔法・魔術、知能。その他様々。連携は本番に近い練習で二ヶ月間みっちりおこなっているから、此処からは“個”の能力値向上ね」


「成る程なー。一番の難題になりそうな連携は毎日試合をする事で自然と鍛え上げて、期間が短くなったら個々の鍛練に勤しみ、最終的な仕上げとする……って訳ですか!」


「そう言う事ね。個々の力は試合でも上昇するけど、どうしても意識が割かれて自分一人に集中出来ない。だからこそ今まで積み上げてきた能力を後半に、一気に向上させるのが狙い目って訳!」


 連携練習は毎日の試合で終わらせ、残りの期間は個人的な鍛練で進める。

 それによって連携に乱れが生じちゃうかもしれないけど、互いの事は知っているので本番でも微調整が可能になる。

 効率的で確実なやり方だね。


「それで特訓方法って言うのは……」


「私とイェラ、レヴィアで鍛え上げるわ! とは言え高等部の大会も近いから、しばらく経ったら中等部の子同士でお互いの鍛練になるけれどね! 覚悟はいいかしら?」


「……っ。はい……!」

「つまり今まで以上にスパルタって訳か……」

「不足無しですわ……!」

「足り過ぎてるもんね」


「やるぞー!」

「お手柔らかにねぇ~」


 改めて覚悟を問われ、私達は冷や汗を掻く。

 だけど覚悟は出来てるよ……!

 話し合いを終えて部室の外へ。大会近くの放課後。私達は今まで以上にこってり絞られた。



*****



 ──“アステリア女学院・大浴場”。


「つ……疲……れた……」

「わあ!? ティーナ!?」


 その日の夜、いつものように私はボルカちゃんと一緒にお風呂に入り、湯船に浸かった瞬間体の糸が切れたように沈み行く。夕飯までは耐えられたんだけど……限界が来ちゃったみたい。

 ボルカちゃんは慌てて引き上げ、私を浴槽の縁に寄り掛からせてくれた。

 本人も膝にタオルを置き、壁際の縁に座ってもたれ、伸びをした。


「確かに今まで以上のキツさだったなー……よく生き延びたよ。アタシ達」

「だよねぇ~」


 縁に座ったのはお風呂の中とは言え、床に座るのがツラいくらい疲れたからかな。

 ボルカちゃんは足を揉み、ブラブラとさせて寛ぐ。


「けどま、ストレッチが完璧だから後日に支障をきたす事は無いんだよなぁ。その辺のケアは流石だぜ。ルミエル先輩」


「そうだよねぇ。一日の終わりにはスゴく疲れた感じが残るけど、次の日は問題無く動けるんだもん」


 この疲れは翌日まで引き摺る事はないもの。体力だけじゃなくて魔力とかも結構使ってるけど、それでもなお大丈夫なんだもんね~。

 ルミエル先輩はスゴいな~。

 そこへまた浴場の扉が開いた。


「あら、貴女達も居たの」

「ごきげんようですわ!」


「ウラノちゃんとルーチェちゃん!」

「おー、二人も一緒に風呂かー!」


 やって来たのはルーチェちゃんとウラノちゃんの二人。

 ウラノちゃんはメガネを外しており、ルーチェちゃんも縦ロールを崩している普段は見られない珍しい姿だった。

 ウラノちゃんは隣のルーチェちゃんを見、ため息を吐くように口を開く。


「私は一人で入るつもりだったんだけど、ルーチェさんがくっ付いて来たのよ」

「つれないですわ。ウラノさん。女同士、裸の付き合いも大事ではなくて?」

「今日はスゴく疲れてるからのんびりしたいんだけど……」

「まあまあ。良いじゃないですの」


「アハハ……そんな感じなんだ」

「ハハ、みんな疲れてんだな~」


 軽口を叩き合いながら二人は体を洗い終えて湯船に入る。

 その間にルーチェちゃんがウラノちゃんを私達の近くに連れてやって来た。


「私、一人でのんびりしたいって言ったよね……」

「良いじゃないですの。案外否定しておりません事よ?」

「……はあ……」


 言いくるめ、私達は四人でゆっくりお風呂に浸かる。

 お湯の中に疲労が溶けていく実感があり、体が暖まって段々眠くもなってきた……って、寝ちゃダメだね。

 ゆったりとした空間。ボルカちゃんはふとルーチェちゃんに視線を向けた。


「にしても、ルーチェってデカいよなぁ。やっぱり良い物食ってるから発育が良くなるのか? 少なくとも去年はこんなんじゃなかったよな? 中等部の一年でこれって」


「いきなり何を申しますの……。けど、成る程。最近肩が妙に凝るのは成長期なのが原因でしたか……」


「それって金髪縦ロールが原因なんじゃねーの?」

「そんなに重くありません! 全く、失礼ですわね。人の体をジロジロと」

「ハハ、悪い悪い。確かにそんな大きかったら肩凝るよな」

「そうですわね。私のこの」

「金髪縦ロール」

「そう、金髪縦……って違いますの! と言うか貴女、先程から私の髪型にしか言及してませんの!?」

「ハッハッハ。何か話題が欲しくてな~」

「話題と言うなら大会の事とか色々とありますでしょうに……」


 雑談を混じえ、のんびりとした時間が過ぎて行く。

 平和だねぇ~。仲の良い友達と一緒にお風呂……なんだか心が軽くなる気分。体はスゴく疲れてるけど。


「ま、明日もまた練習な訳だからな。この一ヶ月は毎晩ぐっすり眠れそうだ」

「ボルカちゃんは毎晩ぐっすり寝てると思うけど……」

「そうですわ」

「右に同じ」

「手厳しーなー」


 そんな時間がゆっくりと流れる。

 明日もまた特訓。もう少し植物の本を借りて勉強しよっかな。

 大会を目前とし、また今日が幕を降ろすのだった。

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