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ロスト・ハート・マリオネット ~魔法学院の人形使い~  作者: 天空海濶
“魔専アステリア女学院”中等部三年生
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第四百十七幕 中等部最後のダイバース大会・終幕

 “神魔物エマテュポヌス”との試合に勝利した私達は、そのまま勢いに乗って次の試合も勝利を収める。

 順調に勝ち進んだけど、まだ最終日の序盤戦が終わったばかりだから油断はしないよ。相手はそれくらい強いからね。


「やれやれ。第一試合で敗れてしまったか。最後のダイバース。呆気ない幕切れだ」

「シュティルさん」


 第二試合が終わった辺りで医務室の方からシュティルさんがやって来る。

 肉体的には終了直後で回復出来ると思うけど、中等部最後のダイバース代表戦。物思いにふけっていたんだと思う。私も負けたら多分そうなるから分かるよ。


「しかしまあ、最後に君達と戦えたのは良かった。私は来年も続けるが、他の者達はどうなんだろうな」

「私も続けるけど、メンバーは変わっちゃうかもしれないもんね。特に学園とかじゃなくてチーム括りでダイバースに出ている“神魔物エマテュポヌス”は……」

「ああ、今回のテュポンのように新たな人材が来る可能性はあるが、必ずしも同じ面子で行えるとは限らない。いつだって最初で最後の試合だな」


 世界的に人気だからと言って、必ずしもダイバースをやらなきゃいけない理由は無い。私達の方でも、メリア先輩みたいに夢を追って別の事にチャレンジする人も居る。それが在り方だからね。

 今年が終われば来年からは高等部だけど、大学には行くとしてその後の進路は全然決まってないや。ダイバースのプロになるべきなのかな……まだ深く考える必要は無いのかな。そのいずれも不明瞭。


「まあ、取り敢えず私達に勝利を収めたんだ。どこの馬の骨か分からない奴らに敗れたりせず、ダイバース連覇で最後を飾ってくれよ」

「アハハ……頑張ってみるよ」


 そうだね。今は優勝目指してその事だけを考えればいっか。来年の事は来年考える。今やれる事に集中しなきゃ、それが不測の事態を引き起こすかもしれないもんね。

 シュティルさんに励ましの言葉を貰い、私達は次の試合にも備える。そうだね。優勝しちゃおっか!


《それでは次の試合を───》


 それからダイバース代表戦の最終日は更に盛り上がっていく。

 全てが優勝候補の中で、熾烈を極める試合から生き残った選りすぐりの強者ツワモノ達の集うこの大会。私達“魔専アステリア女学院”も油断せず臨んでいく。

 ボルカちゃんは“神魔物エマテュポヌス”との試合で結構大きなダメージを負ったから今は治療に専念。私達が引っ張っていかないとね。

 勝利を重ねて午前の部が終わり、お昼休憩の後で午後の部に差し掛かる。そこからはボルカちゃんも合流した。


「午前中は寝てばっかだったからな。此処から盛り上げていくぜ!」

「あまり頑張り過ぎないでよね~。治療魔法でも完治が難しいダメージだったんだから」

「応よ! てか、ティーナも人に言えねえだろ~」

「アハハ……それはそうだね。無茶のし過ぎは良くないや」


 ダメージは大きかったけど、復帰する事は可能な範疇。現代医療魔導の進歩を感じるね。

 そんな感じで午後の部も開始。残すは準決勝と決勝のみ。私達は準決勝も無事に突破し、決勝戦へと赴く。相手は幻獣の国となった。


《それでは決勝戦、スタートォォォ!!!》


 試合が始まり、私達はいつも通りの行動を起こす。まずは植物魔法で盤面を制圧。ゴーレムやビースト達で兵力を増やし、ボルカちゃんを中心に敵陣に切り込む。

 多様の戦術を扱う、ダイバースを体現したようなウラノちゃんの本魔法で作戦の穴を埋め、ルーチェちゃんが遠距離からのサポート。及び聖魔法で守護力を高める。

 後一人はディーネちゃん。これが私達のベストメンバーかな。相手によってはムツメちゃんに変えたり色々。

 そんな感じで決勝戦に相応しいメンバーで対応。今回のボルカちゃんは少し抑え気味で行くからルーチェちゃんと合流する。


「行きますわ!」

「頼りにしてるぜ! 聖魔法!」

「本領は此方ですものね。光魔法はあくまで派生。聖魔法を存分に使えるのは嬉しいですわ!」


 あの二人なら大丈夫そうだね。私達も各々(おのおの)で行動を起こし、敵陣営を各個で撃破。

 決勝戦だけあって相手も強いけど、単純な戦闘能力ならシュティルさんやレモンさん達の方が上。難なく打ち倒し、終盤へと差し掛かる。


「ボルカちゃん!」

「っしゃ! 一丁やるか!」

『くっ……!』


 植物を纏め、相手の幻獣さんにけしかける。ボルカちゃんは炎でその植物を強化し、燃え盛る植物の拳が幻獣さんを狙った。


『負けるかァァァ━━━ッ!!!』

「「はあああああ!」」


 炎の植物を押し込み、相手の破壊光線を打ち消す。そのまま押し切り、幻獣さんの顔を打ち抜いた。


「これで……!」

「終わりだ!」

『──!』


 地面に押し付け、大地が割れてクレーターが形成される。そこから圧力で陥没し、大きな砂塵が巻き上がって爆発のような衝撃波が響き渡った。

 その中から光が飛び去ったのを確認し、私達は会場の方へ戻っていた。

 それにより、大会の結果が発表される。


《勝者!! “魔専アステリア女学院”ンンン━━━ッ!!! これにより、“魔専アステリア女学院”はルミエル・セイブ・アステリア以来の連覇を達成しましたァァァ━━━ッッッ!!!》


「「「どわあああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっっっ!!!!!」」」

「「「ウオオオオオオオオォォォォォォォォォォォォォッッッッッ!!!!!」」」

『『『グギャアアアアアアァァァァァァァァァァァァァッッッッッ!!!!!』』』

『『『キュオオオオオオオォォォォォォンンンンンンンッッッッッ!!!!!』』』


 司会者さんの言葉が響き渡り、それに呼応するよう観客達も大きく盛り上がる。

 私達は顔を見合わせた。


「ボルカちゃん!」

「ああ、中等部最後のダイバース代表戦……優勝で飾れたな!」


 私達の、中等部最後のダイバース。それは優勝という華々しい結果で終える事が出来た。


《それでは! “魔専アステリア女学院”には優勝した証明の授与を──》


 そのまま閉会式からトロフィーの授与へ。

 これによって私達最後のダイバースは終わりを迎えるのだった。



*****



 ──“後日・魔専アステリア女学院”。


「それでは! 先輩方! 今までお世話になりました!!」

「「「お世話になりました!!」」」


「うぅ……みんなぁ……!」

「ありがとなー!」


 ダイバース最後の大会が終わり、私達は後輩達に送別会を開いて貰った。みんなからはそれぞれのメッセージを書かれた色紙を渡される。来年も続けるけど、一応中等部では引退の形だもんね。

 これで本当に中等部の部活動は終わり。後少しだけ通うけど、一週間後くらいにはこの部室からも一度離れる事になる。

 部活動が無い時にやる事は何だろう……進学については成績が足りていれば問題無いけど、それでも主に勉強に集中するとかそんな感じになるのかな。まだ決めていないや。

 一先ず私達からもみんなに言葉を掛けていく。特にボルカちゃんの話は重要だからね。


「よし、じゃあ次の中等部での部長を決めるぜ。アタシは高等部に行ってもダイバースは続けるけど、中等部の大会にはもう出られないからな」

「「「はい!」」」


 次の部長決め。

 人数が増えてきた今、リーダーの体制も変わっていくからね。今後も更に増えるだろうし、私達の世代より重要な物になってくると思う。

 ボルカちゃんは口を開いた。


「次の部長は──サラ・フォティ。お前だ!」

「え……ウチぃ!?」


 ボルカちゃんの指名した部長はサラちゃん。本人は意外そうに驚きを見せていた。

 ボルカちゃんは説明する。


「ああ。他者を引っ張るという分野ならサラが適任だ。ディーネは洞察力が高いけど、人前で堂々と意見を出したりするのは苦手傾向にある。リゼは分析力が高いけど、誰かを引っ張るような性格じゃない。令嬢であり、将来的には誰かの上に立つ事になるベルとも迷ったけど、チームに勢いを付けるという方向ならサラが良いと判断した。副部長を決めるならベルだな。他の二人、及び一年生達はサラのサポートに回ってくれ」


「「「はい!」」」


 それがボルカちゃんの考え。

 ディーネちゃん達の事を二年間見ており、その上で性格や得意不得意を分析して結果を出した。

 その言葉に否定の意見は出ず、サラちゃんも周りを見て口を開く。


「えーと、そんじゃ来年……とゆーか今年の新人戦からはウチが指揮るんで、そこんとこよろしくー!」


 本人も驚きはしたけど、結構ノリノリみたい。これにより、私達の送別会は終わりを迎えた。

 そしてその後、私達は予約していた場所で二次会と打ち上げを兼ねた食事会を開く予定。もう日数も短いけど、まだ長期休暇の最中なのである程度は遅くまで居れるね。

 そこに向かおうとした時、一人が此処にやって来た。


「送別会は終わったみたいだな。何事も無く終えられて良かったよ。優勝祝いで私からも花束を贈呈しておこう」

「イェラ先輩!」

「もう先輩じゃない。けど、慣れた呼び方はそれだな」

「イェラ・ミールさんだ……!」

「本物の……!」

「ルミエルさんと唯一渡り合える対等な立場の……!」


 イェラ先輩。

 どうやら花束を持ってきてくれたみたい。わざわざ来てくれるなんて、良い先輩だねぇ~。


「あざーす。けど、今の口振りからしてティーナの監視的な役割も担ってますよね」

「……!」

「それも兼ねているが、今回は純粋に色々とお祝いをしただけさ。ルミはしばらく離れられないからな。私だけでもと思ったんだ」


 どうやら私の監視も兼ねてるみたい。それはそうだよね。あんな事したんだもん。

 だけど本心で優勝はお祝いしてくれている。本当に良い先輩だね。でもルミエル先輩はまだ色々と忙しいんだ……。


「忙しいのは私の壊した建物とかの修繕についてですか……?」

「そう思い詰めるな。それについてはもう終えている。が、君の為ではあるな。ティーナ」

「私の為?」

「ああ。もうすぐ何かが完成しそうとの事だ。それでティーナの因縁を終わらせられるかもしれない……と言っていた」

「…………」


 どうやらもう世界の修復は終わったらしく、また別の何か。私の為に何かを作ってくれているらしい。

 何だろう……因縁……ママ関連の事かな。確かに少しずつ現実は見つめ直しているけど、イマイチ分からない。モヤモヤは晴れない。


「とにかく、祝いに来たのは本当だ。優勝おめでとう。来年からは高等部で頑張れよ」

「はい、イェラ先輩」

「ありがとうございまーす!」


 花束以外にもプレゼント的な物を私達に色々くれた。

 その後、少しだけ言葉を交わしてこの場を立ち去る……けど、わざわざ来てくれたなら……!


「イェラ先輩もこれから打ち上げに行きませんかー! 時間があればで良いですけど、この後他のチームの人達とも一緒に過ごすんです!」

「……いや、それは魅力的だが、私よりかは中等部のメンバーだろう。空気を悪くするだけになる」

「そんな事無いッスよ! イェラ先輩も有名人なんスから!」

「私達も感激です!」


 私達と一緒に過ごす事に対して懐疑的なイェラ先輩。だけどそんな事は全く無く、むしろみんな来て欲しいと言った面持ちだった。

 イェラ先輩は頭を掻いて少し考える素振りをし、口を開いた。


「まあ、行ってやっても良いが……ならばルミも呼ぼう。最近は部屋に籠りっぱなしで一向に出てこないからな。本格的な食事も摂っていないだろうし、この機会にまともな食事をさせよう」


「それは良いですね! 形はどうあれ、私の所為でそんな風になっているなら是非とも一緒にご飯食べたいです!」

「ルミエルさんも来てくれるんですか!?」

「か、感激……!」


 物事に打ち込み続け、まともな食生活を送っていないであろうルミエル先輩。イェラ先輩はそれを懸念し、ルミエル先輩に連絡を取ってくれる事にした。

 来てくれない可能性もあるけど、多分イェラ先輩の言う事なら素直に聞くよね~。何となく、そんな気がする。

 何はともあれ、そんなこんなで新たに加わり、私達は打ち上げパーティへ赴くのだった。



*****



  ──“打ち上げ会場”。


「久し振りね。みんな。一週間くらいかしら?」

「ルミエル先輩!」

「お久し振りでーす!」

「ルミエル・セイブ・アステリアとイェラ・ミールが揃い踏み……!」

「私達は夢でも見ているのでしょうか……!」

『フム、この者達が噂の……手合わせ願いたいものだ』

「今回はそう言うパーティではない。店に迷惑掛けるなよ」

「イェラ殿。また剣の稽古を共にしたいな」

「レモン。主もか」


 イェラ先輩が呼び掛け、ルミエル先輩も来てくれた。

 他のチームのメンバーや後輩達は感動し、テュポンさんなどは戦いたがっている。色々と旺盛だねぇ。

 今回は本当に大所帯。中等部最後のダイバース打ち上げ会だもんね。取り敢えず集められるだけ集めたよ! 予定を合わせる為に大会終了一週間後とかそんな感じになっちゃったの。


「ふふ、楽しく過ごせそうね♪」

「はい! そうですね!」


 ルミエル先輩も楽しみにしてくれたみたい。それは良かった~。急に呼び出しちゃったから、迷惑じゃないか不安だったもんね。

 これにより、ダイバースに参加したチームメンバーが大勢集まり、ダイバース会場を貸し切った大規模パーティが開かれた。まだ大会を終えて一週間くらい。みんなが楽しんでくれたら良いね~。


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