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ロスト・ハート・マリオネット ~魔法学院の人形使い~  作者: 天空海濶
“魔専アステリア女学院”中等部三年生
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第四百八幕 心を失った操り人形 ~ロストハートマリオネット~

 ──声が聞こえる。聞き馴染みのある、友達の声が。

 何かを叫んでいる。私達の植物ベッドを大きく揺らす。何だろう? 遊びたいのかな? 今日は寒いからもう少しゆっくりしたかったけど、友達の誘いは断れないよね。


「──うん。一緒に遊ぼ♪」

「……!」


 起き、笑顔であるボルカちゃんの前に降り立つ。同時に植物を展開して薙ぎ払い、ボルカちゃん以外のみんなとも対面した。

 みんな、とっても楽しそうに笑ってるね。


「ティーナ殿……!」

「ティーナ・ロスト・ルミナス……!」

「ティーナ……!」

「ティーナさん……!」

「ティーナさん!」

「「「ティーナ先輩!」」」


 そう、誰がどこからどう見ても楽しそう。だってみんな、こっちをじっと見てくれてるから。顔に黒い靄が掛かっているように見えるけど、きっと全員笑ってる。笑ってない訳がない。ある訳無い。

 それじゃ、早速遊ぼっか!


「じゃあ、おままごとね! 私の役は──お人形さん!」

「「「…………!?」」」


 遊びの内容はおままごと。私はダンスが得意なお人形さん。

 クルクルターン、クルクルリ。ターンターン、クルリターン。リズムに合わせてママの植物が伸び、お人形さんの私を操る私が出来た。

 タンタンターン、タタタンターン、リズムを奏でて植物が蠢く。


「お料理しましょ。トントントン♪」

「切れ味の高い葉……!」

「避けろ! 切られるぞ!」


 包丁を降ろし、トンっと切断。まずはお野菜をカットしよう。


「“ファイア”!」

「ありがとう。ボルカちゃん。お料理に必要な炎を焚いてくれて」


 炎も出来た。次は切った野菜をお鍋に入れて焼き尽くそう。


「今日のご飯は焼いたお野菜とお肉♪」

「……っと……!」


 食べ物役は誰が良いかな。■んじゃったらダメだから、再生力が高いシュティルちゃんにしよっか。


「じゃあシュティルちゃんはお肉役ね!」

「私の呼び方まで……しかし肉役か。私ではこの大きさに対して肉の量がいささか少ないぞ」


 多分■んじゃう事はないシュティルちゃんが食材の役。でも本人は乗り気じゃないみたい。

 折角の晩餐会なのにメインが無いんじゃ物足りないや。


「捕まってよ~」

「本当に女児のような言動だな……」


 無数の植物を放ち、シュティルちゃんを捕らえに掛かる。

 彼女は操った天候で防御し、植物を弾き飛ばした。なんでなんで捕まってくれないんだろう。もうちょっとじっとしてくれたら良いのにぃ~。


「まずはティーナを操る植物から切り離す……!」

「そうだな……!」


 ボルカちゃんとレモンちゃん、ユピテルちゃんが飛び掛かる。

 炎を使ってくれたボルカちゃんと切る事が得意なレモンちゃんがコックさんで、電気ビリビリのユピテルちゃんが全体を照らす照明さんかな? それならルーチェちゃんも良いかも。

 候補を挙げないなら私が配役を決めて良いかな? だけどみんなの意見は大事だよね。ワガママばかりだと友達減っちゃうもん。


「みんなは何の役やりたいー?」

「「「…………!」」」


 飛び掛かってきたみんなに対し、植物を振り払って動きを止める。抱っこ遊びはまた別の日にだね。今日はみんなでおままごと! 絶対絶対おままごと!


「……そんじゃ、アタシはティーナと一緒にダンスしてやるぜ!」

「ボルカ殿。……ふむ、そうだな。今のティーナ殿への対応はこれが正解か。それなら私は騎士にでもなろう」

「ならば我は王となる!」

「なら私は女王にでもなろうか」


「わーい! じゃあボルカちゃんが私とダンスする王子様! レモンちゃんがお城の騎士さん! ユピテルちゃんが王様でシュティルちゃんが女王様だね!」


 配役が決まった! やったー!

 みんなピッタリな役~! 他の人達は何になるのかな!


「ねえねえねえ! ルーチェちゃん達は!?」

わたくし達ですの……? そうですわね……では御呼ばれしたご令嬢にでもなりましょうか」

「私は司書とかで良いわ」


 みんなの役も続々と決まっていく。楽しい~! これでみんなと一緒に遊べるね!

 後輩ちゃん達も流れに乗って役職を述べた。


「えーと、舞台はお城の舞踏会とかですかね。それなら私はメイドさん辺りで……」

「ウチも使用人かな~」


 ディーネちゃんやサラちゃん。他にもベルちゃん達、此処に居る全員の役職が決まった。

 それじゃあ次は舞台になるミニチュアが必要だよね!


「ママお願い! “フォレストキャッスル”!」

『ふふふ……任せて』

「……! 植物の巨人を……!」

「あの中に埋め込まれているのがティーナさんの持っていたお人形だったのね」

「本当に人形のアフレコも自分しているのか……!」


 ママに頼み、植物魔法でお城を作った。

 様々な色の植物を展開。テーブルに椅子に本棚にシャンデリア、レッドカーペット。舞踏会場から城内まで全部を作り、色とりどりでみんなで楽しく遊ぶの!


「お風呂にはお湯を張って~! 果実のご飯! 沢山沢山並べたよ!」

「ハッ、植物だけで此処までか。流石だな。ティーナ……!」

「世界中を覆ってなお精度が上がっているわね」

「末恐ろしい魔力よ……!」


 ボルカちゃん達も喜んでくれてる! 大きな大きな舞踏会場! 友達は沢山居るけど、お城にはちょっと少ないからもっともっと増やそう!


『『『…………』』』

『『『…………』』』

「木人……!」

「それも、見た目がより人間っぽくなってる……」


 みんなが遊んでくれるから嬉しくなり、より高クオリティのお人形さん達を沢山用意した。

 これも趣味の賜物だね! スゴく上手に作る事が出来たよ!


「それじゃあみんなでダンスしようよ!」

『『『…………』』』

『『『…………』』』


「ま、こう来るよな……!」

「理解していた事だ」


 みんなと踊りを踊る為、まずはみんなと手を繋ごう! 手始めに! 挨拶みたいな感じだね!


「ま、踊り狂っとくか。“フレイムレーザー”!」

『『『…………』』』


 王子様のボルカちゃんが炎でお人形さん達を貫いた。こう言うダンスもあるよね! みんなで一緒に繋がって踊るやつ!


「舞いを舞うか」

『『『…………』』』


 騎士のレモンちゃんは一人ずつと踊ってる。木刀を振るい、クルクル回ってザーンザン。突き刺し切り裂き吹き飛ばす。

 一部が壊れちゃっても大丈夫。だってすぐに直るから!


「周りの城もティーナ・ロスト・ルミナスの植物。いくら破壊しても即座に再生するみたいだな」


 お客さん達の前を王様のユピテルちゃんが通り抜け、同時にビカビカ目映く光る。

 煙を噴いちゃっているけど、これもすぐに直るから問題無いよ! 明るくしてくれた親切心からなる行動だもんね。全然怒ってないよ~。


「キリがありませんわ……!」

「そうね。捕まったら強制的に踊らされるのは見えているから大変よ」


 他のみんなのところにもお客さん達を寄越し、各々(おのおの)で踊っているね!

 クルクルクルリ、クル、クルリ。ターンターン、メラメラメラ。ザンザンズバッ、ビリビリバリリ。バサバサバサ、ピカピカピカッと、様々なリズムを奏でる。

 嗚呼、なんて楽しい舞踏会。このまま終わる事の無いパーティーが永遠に続けば良いのに。


「みんなとのパーティーは永遠に終わらないよ! ──“不滅のお茶会(エターナルカーニバル)”!」

「こりゃ派手な祭りだな」


 パーティー会場は華やかに。お花を沢山咲かせましょう!

 ヒラヒラヒラリ、ヒラ、ヒラリ。ひらりはらり、パラパララ。甘い香りで会場満たす。みんなうっとり、良い気分。


「この香り……!」

「神経麻痺……睡眠作用……あらゆるデバフを乗せている……」

「突如として咲いた花が原因か……!」

「此処はティーナの中も同然……術中にあったか……!」


 みんなが膝を着き、クラクラクラリ、フラ、フラり。回復するシュティルちゃんも関係無い。みんなに影響及んでく。

 動きを止めたら一緒に踊ろう! シュルシュル伸ばし、体を拘束。手足を縛って此処にはりつけ。あっという間に操り人形(マリオネット)の出来上がり!

 これで名実ともに私と同じ。私もきっと、操り人形(マリオネット)。この世界はおもちゃの世界。


「意識が……」

「この中に取り込まれた時点で……」

「我らに勝ち目は無かったのか……」

「くっ……私は脳が破壊されても問題無い筈なのだがな……」


 ここは私の会場。私の舞台。私達だけの領域。クルクル縛って、はい完成!


「アハハ! とても楽しいね! みんな! 一緒に遊ぼう!」


「目が笑ってない……いや、目にハイライトが無いかもな……」

「言葉は楽しそうなのに……発する音に生気が無い……。それにこの拘束……一緒に遊ぶと言っているのに行動が矛盾している……」

「心を失っているのか……ティーナ・ロスト・ルミナスよ……!」

「まるで──心を失った(ロストハート)操り人形(マリオネット)……」


 心が踊る。みんなも踊らせる。みんなみんな、ずっと一緒。永遠に踊り続ければ楽しいに決まっている。


「パーティーはまだまだ続くよ! みんなー!」

「「「…………」」」


 みんなから言葉も出なくなり、本当のお人形さんみたいになっちゃった。でも大丈夫。これから私達は一緒に楽しく踊るから。


「さあ、始めよう!」


 全身を植物で覆い、深淵へと沈める。これで私と同じ場所に来れたかな。やっぱりみんなはずっとずっと────


「──ティーナ先輩! 戻ってきてください!」

「……?」


 お城の入り口が消え去るように開き、そこから一人の姿。

 そう言えば、私が眠っている時から一度も見ていなかったね。その性質から植物にも捕まらず、一緒に居られなかったんだ。


「やっほ。ムツメちゃん!」

「貴女を止めます……!」


 粉も香りも植物も。その全てを無効化する彼女。これじゃあ一緒に遊べないや。残念だな~。


「ムツメちゃんも一緒に遊びたいのにね~」

「その姿でどこからその言葉が……!」


 植物を背後に、ムツメちゃんを囲う。

 無効化されちゃってお人形遊びが出来ないなら、やむを得ないよね。


「ムツメちゃんは一度完全に止めないといけないね~」

「……っ!? ティーナ……先輩……?」


 やる事は一つ。その無効化が無くなるまで動きを止めさせる。

 そうだね。魂はお人形の中に入れるから、ママ達みたいに治るまでお人形にしよっか。


「ムーツメちゃん。あーそーぼー!」

「止めます……ティーナ先輩……!」


 動くなら止めるだけ。ただそれだけ。決して■んじゃったりしないようにするよ。ただ心と体を別々にするだけ。



 私達の楽しいおままごとは続いていく。



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