表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ロスト・ハート・マリオネット ~魔法学院の人形使い~  作者: 天空海濶
“魔専アステリア女学院”中等部三年生
381/458

第三百七十九幕 高速移動

「そろそろ各所で試合が終わった頃合いでしょうか」

「そうですわね。このままレモンさんが動く気配もありませんし、ティーナさん達なら勝利していると考え、みんなで挑むvsレモンさんに備えた方が良さそうですわね」


 ショップ内の一角にて、ディーネさんの空間魔術によって捕らえたレモンさんを前に、わたくし達はそろそろ始まるかもしれないと魔力を高めていた。

 この間にも何もしていない訳ではなく、常に集中はしておりましたがもう再戦となります事でしょう。

 観客の皆様からすれば退屈な時間と思われますが、その間はティーナさん達の戦闘の様を見ておられる筈。出番は近いですわね。


「──“忍法・火遁の術”……!」

「「…………!?」」


 すると、何処からか私達を狙った炎が放たれた。

 気配などを追う事は出来ませんが、やれる範囲の警戒網は張っていた。それを抜けた何かが来たという事でしょうか。

 炎を扱える方。レモンさんとカッパさん以外の“神妖百鬼天照学園”。推定参加メンバーは皆様が使えそうなのでこれだけでは絞れませんわね。

 炎は光の壁にて防御。お相手は何処にられます事やら。


「ルーチェ先輩……!」

「ええ、心得ていますわ。ディーネさんは今レモンさんの拘束で手一杯。私が対処致しましょう」


 以上の通り、ディーネさんは手が離せない状態。なので私が警戒を高め、魔力を込め直した。

 次の攻撃はいつ来るか分かりませんし、今のうちに牽制くらいはしておいた方が良いでしょう。


「“八方光球”!」


 あらゆる方角に対し、光の球を放出。各所のお店や壁に衝突して爆発を起こし、辺りは目映い光に包まれた。

 視界が悪くなっても光の包囲網は健在。故に何かが動けばそこから居場所を特定する事も叶いますの。


「………」

「……! 光の隙間を抜けて鋭利な小物が……!」


 先程の光球は当たらなかった様子。その証拠に金属製の小さな刃が飛んできましたわ。

 確かこれは“クナイ”や“手裏剣”と言われる物の類い。この気配の消し方などを踏まえ、忍びとやらの仕業ですわね。ならば先程の炎は“忍術”と言われる魔法のような物でしょう。


「はあ!」

「現れましたわね!」


 突如として潜めていた姿を現し、私達の方へクナイを片手にけしかける。

 これらは刃物などの扱いとなる筈ですからおそらくレプリカ。魔力や妖力とも違う力で覆って攻撃力を高めているようですわ。


「しかしこれなら!」

「……!」


 光に触れ、先読みを可能とする。その地点を予測して光球を叩き付け、至近距離で爆発させた。


「これは確かなダメージとなった事でしょう!」

「……っ」


 吹き飛ぶ忍びの方。次の瞬間にまた投擲され、弾くと同時に彼女は消え去った。その際にまた投擲された様子。しかし避けるのは簡単ですわ。

 しかしながら不自然な消え方ですわね。転移した訳でもなく、瞬間移動とも違う。本当に煙のように消えましたわ。

 そして投げられたクナイは私の近くへ。簡単と申した通りそれを紙一重でかわす。


「……!」


 次の瞬間、そのクナイは近くで爆発を起こした。

 私の体は吹き飛ばされ、空間魔術を継続させているディーネさんにも影響が及ぶ。これは一体……。


「道具に何かしらの力を込めたようですわね……!」


 その様な戦い方をする人は多い。ダイバースに置いてはポピュラーな戦術の一つですもの。

 なのであの飛び道具にもそれが仕組まれていたと考え、ただ躱す以外の警戒もしておきますわ。


「はっ!」

「また来ましたわね!」


 そしてやはり消えておらず、相手は物陰から飛び出してきた。

 今度もまた光のセンサーを越えた時点で光球にてカウンターを仕掛け、光の爆発を引き起こす。けれどもまた消え去りましたわ。質量の無い何かが仕掛けているような感覚。それを考えるよりも前に今一度姿を現した。


「見極めますわ……!」

「……ふっ」

「……!」


 理解する為、光球のタイミングを少しズラす。すると相手は小さく笑い、まだ攻撃をしていないのに消え去った。

 その刹那、消えた際に出された相手の残煙が別の力を持ち、バリバリと一気に電流が迸る。

 電気は少し触れるだけで意識を奪われる要因。なので即座に片手に持っていた光球を押し付けて相殺し、その衝撃波でまた吹き飛ばされる。順調にディーネさんとレモンさんの位置から引き離されてますわね……。

 しかし消え去る正体は分かりましたわ。


「分身の類いですわね。魔力とは違いますが、それに近しい力で己の分身を生み出し、属性も変化させて生身と属性二つの性質を併せ持たせる力……!」


 お相手がお使いになったのは分身の類い。分身自体に武器を持たせ、分身を消せば電気などに変えて追撃する。かなり厄介な戦い方ですの。

 私の言葉に対する返答は無し。本体は遠くに居るのか、自分から話すような事はしないのか。両方ですわね。ウラノさんから忍びの在り方について聞いた事もありましたし、基本的には秘密主義なのでしょう。

 なので別の可能性は片隅に入れておき、推測通りのやり方と仮定して進めますわ。


「ともすれば……!」


 両手をバッ! と左右に置き、掌に光球を形成。瞬間的に周囲に放出した。

 身を潜めているのなれば、多少手荒なやり方でも切り開いた方が良いですものね。ディーネさんへの影響はしかと考慮し、私の位置が明確に分かっている事から目ぼしい場所を推察して狙い撃つ。

 気配を読む力があったとしても、分身を寄越す頻度をおもんみれば近場なのは間違いないでしょう。


「……!(そう言えば、先程炎が来た方角……!)」


 そして一つの事に気付く。

 そうですわ。武器や分身からの連続攻撃が来るよりも前に私達は炎で狙われましたの。つまりその方向に忍びの方が居るという事。

 流石にもう移動はしているでしょうけれど、今まで仕掛けているのが近接主体では無い事を思えばその付近に居るのは間違いありませんわ!

 ならば!


「“光球追尾弾”!」

「……!」


 何かの対処が居るのならば追尾する光球を投擲。確実に居なければ私の方へ帰って来てしまうので滅多に使えませんが、確信した今なら大丈夫な筈。

 光球はカーブを描いて物陰に行き、一際大きな爆発を起こした。


「バレたか……」

「そこですわ!」

「……!」


 炙り出せたのなら、行く方向に限りがあるショップ内では有効な左右からの光球連弾で追撃。逃げ場が限られ、確実に一撃は当たる筈ですの。


「“土遁・土壁”!」

さえぎられてしまえば当たりませんがね」


 流石に防御はしましたわね。

 しかし確実な方向は把握。今度は分身などではなく間違いなく本体。故に駆け出し、そちらへおもむく。

 わざわざ私が直々に乗り出すのはレモンさんへの空間魔術を解除させない為。ティーナさん達を待つのが今回の在り方ですもの。


「魔法使いがみずから……!」

「今時は肉体派魔法使いが主流ですわ!」


 最も、私自身はその様な事出来ませんがね。

 しかし何かあると思わせるだけで仲間の手助けになる。その思考が足止めに繋がる訳ですものね!


「“光蛇”!」

「“水遁・鏡水”!」


 光魔法を繋げ、光の蛇としてけしかけるも水からなる鏡で反射。爆発しなければ性質は本来の光と変わりませんものね。

 光の蛇は別地点で暴発し、私は次なる手の準備をしていた。


「“光球連弾”!」

「“反射鏡”!」

「道具……!」

「忍術だけが忍びではないので。忍具は大事です」


 光の球に対し、何処からか取り出した鏡で対処。その口振りから様々な忍具とやらを持ってそうですわね。これは早いうちに決着としなければ私が一方的に削られますわ。

 だったら、奥の手と言うものを使ってみましょうか……!


「“分身の術”──“五遁包囲網”!」

「……!」


 その前にやられない事が一番大事ですわね。負けてしまえば奥の手も何もありませんので。

 忍術は四大エレメントと少し違い、五つの属性からなる力らしいですわ。確か火、土、金、水、木。

 相手はそれらを各々(おのおの)の分身から私目掛けて放ち、同時に攻撃をけしかける。奥の手を今使わなければやられてしまいますわね。

 これが私の、他の方々から得た情報を独自に研究して開発した魔法!


「──“光身一体”!」

「「「「「……………!」」」」」


 全身を光が包み込み、体が一気に軽くなる。魔法を発動させた瞬間には忍術が到達しておりましたが、これでも遅過ぎるくらいですわ。

 そう、今の私は──


まさしく光その物ですの!」

「「「「「────」」」」」


 複数の分身を同時に消し去る。それから遅れて光の爆発が周囲を覆った。

 今の私は己の生み出す魔法よりも遥かに速い。速過ぎて移動する際には視界が真っ暗になってしまいますが、大凡おおよその位置を把握すれば補えますの。


「速い……なんて次元じゃない……!」

「アナタの見ている景色。その全ては今の私と同速で訪れる物……追い付けませんわよ」

「……!」


 問題点は、自分の魔法より速いので片手に宿した物を押し付ける形で放たざるを得ない事ですわね。非効率的ですわ。

 しかし今の速さには十分。お相手の通り過ぎ様に光を撃ち込み、完全に消し去りましたの。


「……え? ──消し去った(・・・・・)


 殺生はルール違反。しかし私は退場しておらず、お相手が転移した痕跡も無い。つまり、今消したのも分身の──


「はあっ!」

「……!」

「向こうで……!」


 声が届いたのは随分と後。音なんかより遥かに速いので気付けませんでした。相手はもう、分身した瞬間にはこの場から居なくなっていたのですわ!

 そして狙い目はもちろん──


かたじけない。助かったぞ。ノイチ」

「その名は内密に。忍び足る者、名を知られると色々不都合なので」

「既に名簿には書かれているだろう。相変わらずだな」


「しまった……!」

「くっ……!」


 光の速度ですのに、駆け付けた時には既に遅し。幸いディーネさんはまだやられておりませんが、肩にクナイが刺さった様子。単純に腕を攻撃して魔術を解いたようですわ。

 レモンさんが抜け出しておりますの!


「十分に瞑想もした。忍者と侍。タッグマッチと行こう。ノイチ」

「はい。レモン先輩」


「すみませんわ。ディーネさん」

「いえ、相手が一枚上手だっただけです」


 聖魔法にてディーネさんは治療。光の効果もまだ切れておりませんわ。今ならまだ、レモンさん達とも対等に渡り合える筈。

 私達のダイバース代表決定戦、初戦。それは佳境へと差し掛かりますの。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ