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ロスト・ハート・マリオネット ~魔法学院の人形使い~  作者: 天空海濶
“魔専アステリア女学院”中等部三年生
379/458

第三百七十七幕 ショッピングモールの戦い

「フム、私の相手は君達となるか。ルーチェ・ゴルド・シルヴィア殿にディーネ・スパシオ殿」

「あらあら……まずは仲間探しから始めましたのに、いきなりラスボスと遭遇してしまいましたわね」

「そうですね……結果的に私達は会えましたけど……!」


 今告げた通り、わたくしは一人では心細いので仲間を探しましたが、レモンさんと会ってしまいましたわ。

 ディーネさんを見つける事は出来ましたが、これでは本末転倒じゃないでしょうか。

 いえ、勝利すれば良いだけ。私達が勝てば向こうの一大戦力を削る結果に繋がりますわね。そうでなくとも、足止め出来れば相当助かる筈ですわ。


「やりますわよ。ディーネさん」

「はい。ルーチェ先輩!」

「意気込み良し。お相手致す」


 木刀をお構えになり、臨戦態勢に入る。

 レモンさんは武士道とやらを重んじており、堂々と正面から向かってくださる。一呼吸の間も預けてくれるので急に始まるよりは戦いやすいですわね。

 故に呼吸は整い、同時に動き出した。


「“光球”!」

「“水球”!」


 正面から迫り来るレモンさん。私とディーネさんは水と光の球を撃ち込み、着弾と同時に爆風が広がってお店のショーウィンドウや硝子ガラスなどが揺れる。

 当たっておらず、牽制にもなっていなさそうですわね。レモンさんの速度はそれ程のもの。想定内ですわ。


「“広域爆光”!」


 見失っては相手の思う壺が為、消えたと感じたら探す素振りを見せず、相手には一切の猶予も与えず周囲に広がるような爆発を巻き起こしましたわ。


「“空間掌握・台”!」


 その衝撃波で浮き上がり、ディーネさんの展開する空間に乗って高所から確認。周囲には隙間の無い光を展開し、何かが触れれば私が気付く仕組みとしておりますわ。

 距離は数メートル、数十メートル、数百メートルと間隔を空け、その周囲に隙間無し。流石に数百メートルも離れていれば反応出来る事でしょう。


「そこですわ!」

「おっと、気を付けたのだがな」

「……っ。一瞬前まで数百メートル先にられたのにもう此処まで……!」


 数百メートル先の光が反応を示し、その場所へ対処。事前に防ぎましたが木刀の切っ先が眼前まで迫っておりましたわ。

 かなりの俊足。それは分かり切っていた事ですが、身を以て実感すると凄まじいですわね。

 思えばレモンさんの相手は主にティーナさんやボルカさんが担ってくれました。このレベルの相手と戦う機会はそうそう無く、前にあったのはシュティルさんくらい。去年より一回り強くなったレモンさんとの戦いは、ディーネさんが居るとしても大変ですわね。


「けれど、これで動きは分かりましたわ!」

「ふむ……」


 光に反応があった瞬間にそちらへ光球は放っていた。なので木刀は眼前で止まり、光の爆発によってお互いの体は弾き飛ばされる。

 飛行能力を持たぬレモンさんが相手ならば空中で待機する今のやり方は良いですわね。レモンさんは飛べないのに空中でこれ程の速度。すなわち跳躍だけでこのレベルという事ですから、地上に居たのでは数百メートルで反応があっても対処が間に合わず吹き飛ばされてしまいますわ。

 空中で待機しつつ、臨機応変に対処していきましょう。


「何はともあれ此方からも仕掛けなければ意味がありませんわね! “光球連弾”!」

「空中からの一方的な投擲か。不足無し」


 光球を雨のように降り注がせ、辺り一面を光の爆発で埋め尽くす。

 狙いは定めておりますし、先読みもやれる範囲でおこなっていますけれど中々に当たりませんわね。

 それ故に球数が多くなってしまい、レモンさんの姿も見失い兼ねない。なれば此処は──


「はっ!」

「カウンター優先ですわね」

「ほう?」


 光の雨を避け、光のセンサーに反応。……した瞬間にはもう眼前まで来ておりましたが、そこ目掛けて光球を撃ち込み再び吹き飛ばした。

 当然の事ながら木刀で防がれましたが、その瞬間にもディーネさんが狙っておりますわ。


「“空間掌握・囲”!」

「……! フム……」


 着地ポイントを爆発の軌道から予測し、空間魔術で取り囲む。

 今回の空中移動は吹き飛ばされた衝撃からなるものであり、自分では操作不可。既に準備も終えていたのでレモンさんの反応は間に合わず、空間で覆う事に成功しましたわ。

 流石に空間切断クラスの斬撃を木刀で行うのは難しいでしょう。これで閉じ込める事には成功ですわね。


「後は……いささかズルいですけれど、放置が安定でしょうか。このまま置いておけば結果的に相手の最高戦力を無力化しておりますものね」

「そうですね。単純な実力で言えば向こうが上。足止めするだけでも十分な成果です」


 閉じ込めた空間を狭めて押し潰したりも可能とは思いますが、それでは空間同士が押し合い隙間から出てしまう可能性がある。

 レモンさんは空間を破壊出来ないと希望的観測風に仮定し、無理にトドメは刺さず、このまま彼女に勝った経験のあるティーナさんかボルカさんが来るまで待つのも手ですわね。


(フム、これ以上何かをするという訳でもないか。不完全燃焼感は否めないと思うが、それもまた立派な作戦よ)


 空間の中に閉じ込めているので声は聞き取り難く、そもそも今は何も発していない様子。空間を攻撃して足掻いたりもありませんわね。

 潔いのか何かを企んでいるのか。そのどちらにしても全方位を囲んだ空間の中なら動けない筈。

 しかしいずれ倒さなくては勝利にならない。暫しの辛抱ですわね。


(では、此方も集中力を高めておこう。今でも抜け出せぬ訳じゃないが、より万全の状態で戦いにさんじるとするか。そう言う能力がある訳でもないが、瞑想をすればより集中力を高められる。今は力を高めておく)


「……動きませんわね」

「はい……不気味な程に……」


 座り込み、胡座あぐらを掻いたレモンさん。果たして封じ込めておくのは得策か、それとも……。

 何はともあれ、最高戦力を足止めする事は叶いましたわ。



*****



「貴女とは初めましてかしら。えーと、スミさんだったわね」

「そう言う君はウラノ・ビブロスか。……ボルカ・フレムへのリベンジを果たしたかったが、まあいい。本魔法と私の妖術。シンパシーがある」

「妖怪の類いでは無さそうだけれど、それでも妖術と言うのね」

「そうだな。修行にて身に付けた力は法力とかあるけど、私の場合はあまりの絵の上手さに妖力が宿った物からなる──」

「そう。スゴいわね」

「まだ説明途中! 軽く流すな!」


 ショップ内を歩いていたら、大きな筆を持った女の子……いいえ、性別不詳の設定だったわね。筆を持った子が居た。

 こんな雰囲気だけれど油断は出来ない。手数の多さなら代表決定戦でもトップクラス。まだ経験は浅いけど、去年と全く同じという事は無さそうだし、どんな事をしてくるか分からないものね。慎重に攻めましょうか。


「あまり私を舐めるなよ!」

「別に舐めてないわ。私の態度についての言及なら誰に対してもこれだもの」

「フン、そのポーカーフェイスを崩してやる!」

「“日の下(ヒノモト)”には似付かない言葉を使うわね」

「絵師は常に最先端を行かねばならないからな。海外の文化もどんどん取り入れていく」

「文化とは違う気がするけれどね」

「ええーい! 五月蝿い! さっさと勝負だ!」


 筆を振るい、一瞬にして空中に描画。複数の兵士を生み出し、私に向けてけしかけた。

 兵力増加ならティーナさんもよくやっているけれど、彼女……あの子が描いた兵士では植物兵に遠く及ばない。簡単に蹴散らせるわね。


物語ストーリー──“ミノタウロス”」

『ブモオオオォォォォッ!!!』

「「「おおおぉぉぉ………!」」」


 手始めにいつも通りミノタウロスを“魔導書グリモワール”から召喚し、攻め入ってきた兵士達を戦斧で散らす。

 消し去り、もう一薙ぎと共に全滅させた。けれど流石にこの程度じゃ驚いていないわね。


「ふん、使ったな! ミノタウロスを! お前の手札では一番の最弱! その間にお前を倒すぞウラノ・ビブロス!」

「最弱なのに一番と言うのは変な言い回しだわ。既に“最”も“弱”いと言っているんだもの。一番一番弱いって言ってるのと同じニュアンスよ」

「黙れ黙れ! その余裕を消し去ってやるんだから!」


 また筆を綴り、空中に絵を描く。

 それは具現化し、金棒を担いだ鬼となった。


『ウオオオォォォォォッ!!!』

『ブモオオオォォォォッ!!!』


 金棒と戦斧がぶつかり合い、衝撃波で周りを揺らす。私は本の鳥達を展開し、向こうも鳥を描いていた。


「鳥には鳥で対抗だ!」

「そう、それは何より」


 鳥達がぶつかり合って消え去り、別の本を開く。そこから薙刀を取り出した。

 剣術に棒術にその他諸々の武術。知識では取り入れ、大会までにある程度練習もした。相手も動きはそこまで良くないし、ちょっとした経験者程度の実力でもやれるでしょう。


「それも予測済み!」

「そう、受けて立ってくれるのね」


 挑発には乗りやすい性格。ショッピングモールの一角でミノタウロスと鬼が殴り合い、本と鳥がぶつかり合い、人間が長物でせめぎ合う珍妙な光景が広がっていた。

 本当に似通った能力同士だけど、向こうは後手だし私に合わせているみたいね。絵師のプライドなのか同じジャンルで勝とうとしている様子。


「得物を扱って戦えるのね」

「当たり前!」


 薙刀と巨筆が衝突し、墨が辺りに飛び散る。そこから立て直し、今一度打ち合った。

 薙刀は重いわね。魔力で身体能力を強化しているからあまり苦じゃないけど、やっぱり剣術より難しく思えるわ。小回りが利かないから大振りになってしまうもの。

 だけど迫力はあるわね。お客さん達は楽しめるんじゃないかしら。


「まだまだァ!」

「元気な子ね」


 筆を振り回し、薙刀で逸らすように防御。一気に肉薄し、押し出すように弾き飛ばした。

 一方ではミノタウロスと鬼の立ち合いが続いており、戦斧と金棒がぶつかる度に空気が揺れて火花が散る。本と墨の鳥達もどんどん落ちているわね。


「はあ!」

「……」


 ガキィン! と金属音が響き、ジリジリと押し合う。私と同じやり方で上回ろうというスミさん。この勝負は拮抗するかしら。

 私達のダイバース代表決定戦。私的には興味深い子が相手ね。

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