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ロスト・ハート・マリオネット ~魔法学院の人形使い~  作者: 天空海濶
“魔専アステリア女学院”中等部三年生
376/459

第三百七十四幕 ダイバース・中等部最後の代表決定戦

 ──“代表決定戦・会場”。


《“多様の(ダイバース・)戦術による(タクティクス・)対抗戦(ゲーム)”!! いよいよ今日、人間の国の代表として世界で戦う方々が選ばれます!! 会場は沸き立ち、! 今か今かとその時を──》


 都市大会から少し経ち、代表決定戦の会場へと私達は乗り込んでいた。

 何度来ても盛り上がりは凄まじい。実質的な“人間の国”に置ける“最強”を決める大会だもんね。これを越えた先に世界が待っており、世界最強が決まる。国内最強を決めるこの大会は毎回代表戦にも負けず劣らずの盛り上がりを見せていた。


「これが代表決定戦の会場……」

「観客席で見るのとはまた……」


 一年生の子達はまた会場の雰囲気に気圧けおされている様子。

 都市大会も地区大会に比べたら倍以上の盛り上がりだったけど、その更に十倍以上の盛り上がりを見せる代表決定戦。初めての子達にとっては緊張がスゴいよね~。


「今回も大丈夫そうだな。ティーナ」

「うん。前や前々回と同じくね!」


 今大会でもずっと落ち着いている様子の私。会場の賑わいは凄まじいけど、全然平気な感じだった。

 代表決定戦では楽しみな事もあるもんね。


「今回も無事に勝ち上がってきたな。ティーナ殿」

「今年こそは完全優勝で勝ち上がりたいものだ」

「レモンさんとユピテルさん!」


 それは二人に会う事。

 “神妖百鬼天照学園”も“ゼウサロス学院”も都市大会を抜けて代表決定戦まで勝ち上がって来た。

 レモンさんとユピテルさんは毎年代表決定戦まで来ているね。それは初めての新人戦の時からずっと。強さは折り紙つき。油断は出来ないし、最初からするつもりもない。


「ルーナ=アマラール・麗衛門さんにジュピター・ユピテルさん……!」

「本物の……!」


「フフ、どうやら私達は人気があるようで何よりだ」

「二人とも有名人だもんね~」

「主も有名人であろうて」


 一年生の子達は二人に羨望の眼差しを向けている。入部当初は私達にも向けてくれたけど、最近はそれが無くなったからちょっとジェラシー。

 こうなったら当たった時に勝って先輩の威厳を見せ付けなくちゃね!


「試合で当たったらお手柔らかにね」

「フッ、互いにな」

「そう言いつつ、誰も手を抜くつもりは一切無かろうぞ」


 見合い、不敵に笑う。

 今までも何度か当たったけど、勝敗はまばら。いつもギリギリの戦いをしている。

 最後に二人と会ったのは新人代表戦だし、あれから数ヶ月。間違いなく強くなっているから今回も当たればギリギリの試合になりそうだね。

 それから開会式が終わり、代表決定戦が始まった。


「初戦の相手は……マジか。こりゃまた波乱だな」

「……! そうだね……」


 モニターに映し出されたトーナメント表。そこに書かれていたチーム。それは都市大会のエメちゃん達と同じように、初戦からやり難い相手だった。

 それについては司会者さんから告げられる。


《代表決定戦第一試合!! “魔専アステリア女学院”vs“神妖百鬼天照学園”ンンンッ!!》

「「「おおおおぉぉぉぉっっっ!!!」」」

《これは初戦から凄まじい試合となりそうでェェェすッ!!》


 本当にそう。

 まさか初戦からレモンさん達が相手なんてね。思えば初めての代表決定戦の時はユピテルさん達だったし、チーム決めはくじ引きだから有り得ない話じゃないんだよね。


「最初からか。単純な戦闘となる以上、形式で言えば一番やり易いが、初戦と言うのは少々な。どちらかは代表戦まで行けぬ」

「そうだね。それについては残念……だからこそ負けないよ……!」

「ああ。この年代で最後のダイバース大会。悔いを残さぬよう、華を咲かせたいな」


 レモンさんと会話し、互いに控え室へ。

 全チームが優勝候補の代表決定戦。その中でも“神妖百鬼天照学園”は初戦の相手としては強すぎると言っても過言じゃない……けど、負けられない戦いがある。

 単純な戦闘だからこそ力量の差がハッキリと出る今回。メンバー選出も慎重にしなきゃね。


「──それじゃあメンバーはこれで行こう。相手もベストメンバーで来るのは間違いないからな。アタシ達もそうするぜ」

「うん……!」


 出場メンバーは私とボルカちゃん主体に動く陣形。私達とルーチェちゃんにウラノちゃん。そしてディーネちゃんで挑むベストメンバー。

 チームによっては魔導の無効化が使えるムツメちゃんとも悩んだけど、レモンさん達は基本的に全員が素の武術も得意。単純な戦闘だからこそ意識を失ったら終わりなので、まだ成長途中の一年生達を入れる事は残念ながら出来ないかな。実力不足と言うよりは“神妖百鬼天照学園”との相性が悪過ぎるの。


「控えには勿論居るから、いつでも出れる準備をしておけよ。相性の良い相手と変えるのも戦法の一つだ」

「「「はい!」」」


 試合の頭から出ないだけで、途中交代して控えの選手が出る事もある。実は今までもそんな試合が何個かあったの。

 なので選手層の厚さは強み。交代が主戦法のチームもあるし、その名前通り“多種多様ダイバース”って事。

 選出選手も決め、“魔専アステリア女学院”は試合に乗り出した。



*****



 ──“超大型ショップステージ”。


「また一風変わった場所……」


 今回はショップステージ。大きなショップであり、衣服店。飲食店、アクセサリー店、本屋に宝石店など沢山のお店が並んでいた。転移先はバラバラで、私は三階に居る。柵? 格子? 的なのは硝子ガラスから作られているね。真ん中は抜けており、此処からでも一階を見る事が出来る。

 レモンさん達のメンバーを予想するならレモンさん、カッパさん、忍びの子とヨーコさんにスミちゃんの去年の新人戦と同じかな。

 負けられない戦いだから私達との戦いにノウハウがある面子が揃うと思う。


「……いくつかの気配……」


 始まるや否や既に動き出している気配があった。

 それは相手だけじゃなくて私達も。のんびりしていたら先手を打たれてやられちゃう可能性があるからね。後手に回ったらじわじわと削られる一方。攻めるに越した事はない。


「一番近くの場所は……」


 魔力……レモンさん達の場合は妖力かな。それを追い、現在地から飛び降りた。

 何故ならすぐ下に感じ取った気配があるから。


「妖力の持ち主となると……!」

「……! ティーナ・ロスト・ルミナス……!」

「貴女かカッパさんのどちらかだよね。ヨーコちゃん!」

「気安く呼ばないで!」


 私の姿を確認した瞬間に妖力の尾を顕現させ、妖力の塊を放出。さっきまで私が居た場所にぶつかって硝子ガラスが飛び散り、爆風に背を押されながらママに魔力を込めて植物を展開する。


「“樹木乱打”!」

「“妖尾連撃”!」


 展開した樹木を叩き付け、ヨーコちゃんは妖力からなる尾を放って迎撃。樹と尾がぶつかり合って衝撃波を散らし、先程砕けた硝子ガラス片が消え去った。


「去年よりずっと強くなってる……!」

「当たり前でしょう!」


 樹木と尾のぶつかり合いは互角。だったらと着地するよりも前に新たな植物を展開しておいた。

 それを一束に纏め、ヨーコちゃんへ狙いを定める。


「“樹拳”!」

「“狐火(フー・ホォ)”!」


 樹木の拳と妖力の火球が激突。また互いに打ち消し合って魔力と妖力の欠片が散り、私も一階に降り立った。

 それと同時に魔力を込め直す。


「“上昇樹林”!」

「“突上妖尾”!」


 ショップの床から樹と尾が生え、二つは再び衝突。妖術の一つなのかは分からないけど、妖力の使い方のバリエーションが増えたね。

 前は単純な妖力の放出が大半で、たまに火球を使うくらい。一年……ううん。半年もあればこのレベルになれるみたい。


「“狐風(フー・フェオン)”!」

「“防風林”!」


 火以外のエレメントも使いこなしているね。

 でもエレメントの対策なら植物で可能。破られずに此方から仕掛ける事が出来るよ!


「“リーフカッター”!」

「“狐火(フー・ホォ)”!」


 鋭利な葉からなる刃。それは狐火によって焼き消される。

 簡単な攻撃は炎の餌食。だったらもう少し段階が上の攻撃を仕掛けるべきかな。


「“夜薙樹”!」

「……!」


 魔力を天……このステージの場合は天井に放ち、そこから破裂して一つ一つに力の込められた樹を降下。

 ヨーコちゃんの火球は強力だけど、複数の攻撃に対して同時に対処は出来ないよね。このまま攻め切れば──


「私の成長を見せてあげる! ──“千本鳥居”!」

「……!?」


 妖力が込められ、“日の下(ヒノモト)”で見る赤い門のような物が顕現された。

 鳥居。レモンさんから聞いた話だとあれは──神様の通り道。


「神仏の行く道は、何者にもはばまれない。そう、何“物”にもね!」

「樹木の雨が吸い込まれるように……!」


 無数の植物に対する無数の鳥居。植物がその真ん中を通った瞬間、魔力の欠片となって消え去った。

 これは一体……神様の通り道だから……?


「ナニモノにも阻まれない……通った瞬間に消えちゃうって事かな……?」

「そんなところ。そしてこの技は無効化するだけじゃなく、別の用途もあるの。見せてあげる。──“神隠し”」

「……!」


 別の植物も鳥居の中に吸い込まれ、次の瞬間には私の近くにあった鳥居から飛び出した。

 慌てて別の植物で防ぎ、ヨーコちゃんの方を見やる。


「“神隠し”は存在を消し去った後、数年経ても変わらぬ姿で出てくる事象。貴女が放った植物はそのままの状態で、貴女に向かって返って来る……!」

「魔法の消去に魔法の反射……鳥居って色々出来るんだね」

「そうよ!」


 そんな物が、呪文通りなら千本。ヨーコちゃんへの成す術がこの時点で無くなってしまった。

 けど、必ず鳥居を“通る”と言う作法が行われているよね。それなら私の方からも別の角度から攻めてみれば打開策が見つかるかもしれない。

 私達とレモンさん達によるダイバース代表決定戦の初戦。まだ大将には会っていないけど、やっぱりみんなが強敵だね。

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