第三百七十一幕 お土産・ダイバース・中等部最後の地区大会
──“数日後”。
修学旅行が終わって少し。部活動に戻り、ダイバース部では来月の大会に向けた練習が行われていた。
でもその前に、今日はやる事……というよりは渡す物がある。
「先輩方~! そして後輩諸君~! 修学旅行のお土産渡すぜー!」
「お土産ですかぁ~。良いですねぇ~」
「ふふ、有り難く頂くとしよう」
「あ、ありがとうございます!」
「あざまーす!」
「ありがとうございます」
「ありがとうございますわ~!」
「わ、私達にも……!?」
「有り難き幸せ」
「「「ありがとうございます!」」」
先輩方。そしてディーネちゃん達二年生とムツメちゃん達一年生へのお土産譲渡。
この場にメリア先輩が居ないのは寂しいけど、後で渡すよ!
そんな感じにみんなへ買ってきた物を明け渡した。
「まずはみんなで食べるようのお菓子や飲み物!」
「そして小物類!」
「お菓子は後でみんなと食べましょう!」
「“フラーゾ・テオス”のお菓子ですね!」
「限定の装飾だ!」
ズラッと部室のテーブルに並べ、他のみんなへお披露目。
此方も喜んでくれたけど、この辺はあくまでメジャーな代物。本題は外に並べてある。
「そしてこれが本題だぜ!」
「流石に気付いていたと思うけどね~」
「外にあった巨大な何か……」
「お土産でしたの……」
「てっきり部活動の練習で使うのかと」
「もうすぐダイバースの公式戦だもんね」
本題である外に置かれた彫刻。今は布を被せてあるけど、みんなからしたら部活動の一貫って方向性になっちゃうんだね。
実際に大会も近いからしょうがないけど、取り敢えず早く見せちゃおうか!
「これがアタシ達からの真のお土産だぜ!」
バッ! と布を捲り取り、先輩達と後輩達に見せる。そこには荘厳な面持ちの彫刻が二つ出てきた。
これらはボルカちゃんとウラノちゃんの作品。私とルーチェちゃんにカザミさんの物は自分で持ってるよ。
「こ、これが……」
「凄まじい迫力ですね……」
「一体何処で購入したのですか!?」
「へへーん! 実はこれ、アタシ達の手作りなんだぜ!」
「手作りですか!?」
手作りに対する返答は、まさしく理想的な物だった。
目を丸くして驚き、ボルカちゃんとウラノちゃんが造った作品を二度三度と見返す。
「これ、その手の職に就けば一つでお城くらいは買えるような財を築ける出来映えですわよ!? それを手作りで……!」
「マジかよ!? ヤベーな。アタシら!」
それは手作りの事ではなく、作品の完成度について。
どうやら本当に高い完成度らしく、売りに出せばかなりの高額になるとの事。
この作品を二人は決められた数時間でなんてねぇ。やっぱりボルカちゃんもウラノちゃんもスゴいや。
その流れで私の作品を出すのはちょっと恥ずかしいかも。
「これが私からの物だよ。ボルカちゃん達のよりは完成度低いかも」
「私からは此方のお花ですわ!」
「動物を少々」
「わあ、可愛いです!」
「ちょー可愛い!」
「綺麗ですわ!」
「ありがとうございます」
「可愛らしいじゃないですかぁ~」
「ああ、とても可愛いね」
「か、可愛らしいです……!」
「愛らしいです。ありがとうございます」
「「「ありがとうございます!」」」
ボルカちゃん達の後で少し気が引けたけど、みんなは喜んでくれたみたい。
感想は殆ど可愛い一色だったけど、お世辞って雰囲気でもないから心の底から嬉しそうだったのは私達にとっても嬉しいよ!
「これでお土産コーナーは終わりだな。アタシとビブリーの彫刻は持ち帰れ……無い事もないと思うけど、取り敢えず部室に飾っとくぞ~」
「それは良さそうですね」
「先輩達の痕跡ですね!」
「ハハ、そうなるな」
これでお土産の明け渡しは終了。みんなはちゃんと満足そうで良かった~。センス無いとか言われたらショック受けちゃいそうだから。
何はともあれ、それについては無事完了。もうすぐそこまで迫ったダイバースの公式戦に備えて練習あるのみ。勿論、適度な休憩を挟まなきゃ体の方を壊しちゃうから気を付けてね。
私達は練習を開始した。
*****
──“一ヶ月後・ダイバース公式戦・地区大会”。
《今年も始まりました! “多様の戦術による対抗戦”地区大会! この地区では“魔専アステリア女学院”が三連覇のち、人数不足での不参加を除いて更に連覇中! この進撃を止めるチームが果たして現れるのかァ!》
一ヶ月間練習をし、私達は中等部最後となるダイバース公式戦が始まった。
三年生に新人戦は無いから、正真正銘一度負けたら終わりのそんな大会。だけど私の心は自分でも驚くくらい穏やかだった。
「き、ききき今日ががが最後になるダイバースの大会……が、頑張ららななきゃ……!」
「オイオイ。緊張し過ぎだぜティーナ」
「最後と言っても、高等部でもダイバースをするなら関係無いじゃないの。メンバーは変わらないんだし」
そう、私は本当の本当に穏やかな心境だった!
穏やか過ぎて夏なのに震えが止まらないくらいに……! つまりこれはあれ、暑いんだけど、宇宙本来の寒さを実感して冷や汗と寒気が出るような……!
「落ち着け~」
「貴女がこんなに緊張するなんて珍しいわね」
「そうなんだ。オドオドしている様はよく見るけどね」
「そうですわ。しかし、そんなカザミさんは初めてですのに随分と落ち着いておりますわね」
「人前に出るのは嫌いじゃないからね。大会の方も初めてだからこそ楽しみが勝るの」
私は穏やかだけど、カザミさんも落ち着いている様子。これは心強いね。初めての試合は緊張するのが普通だけど、その辺の肝が座っているみたい。
そして開会式が終わり、私達は控え室へ。一回戦についての話し合いをする。
「今年も去年と同じように初戦は新入生達の実力確認を兼ねたメンバーで行くぞー」
一回戦の内容は、大抵は単純な戦闘。なので新入生達の実力を測るのにはもってこいな試合となる。
地区大会の一回戦だから余裕と高を括っている訳じゃないけど、本番だからこその緊張感に慣らすのが主な目的。
それにつき、今回の出場メンバーを発表する。
「そんじゃ、一回戦はアタシとカザミー、シルドにギフ。ムツメのパーティで行く。二回戦はディーネ、ベル、リゼにケイとルマの後輩メンバーズだ」
「「「はい!」」」
「ウチは全部控えですかー?」
「サラは三回戦だな。メンバーはまた新入生多めで考えとくぜ」
「分かりましたー!」
一回戦はボルカちゃんとカザミさんを加え、新入生達は防御のシルドちゃんに魔力操作のギフちゃん、魔導無効のムツメちゃんによるサポート中心メンバー。
二回戦はディーネちゃんとベルちゃんにリゼちゃん、新入生は武器使いのケイちゃんと武器魔術使いのルマちゃんによる攻撃力高めパーティで行くみたい。
攻撃力中心なら単純な戦闘の一回戦の方が良いと思うけど、サポートメンバーが代表戦まで勝ち上がった場合の経験を積ませるのが目的かな。
謎解きなら全員がそれなりに得意だし、一見すれば戦闘に向かないようなメンバーの立ち振舞いを見せるやり方みたい。
「じゃあ、勝つぞ!」
「「「おおー!」」」
ボルカちゃんが喝を入れ、みんなが合わせて声を出す。
私達のダイバース、中等部最後の地区大会が始まった。
《さあ! “魔専アステリア女学院”ですが、初戦は新メンバー中心で立ち向かうようです! 対する──》
「オイオイ、見てみろよ」
「新入生と、去年まで居なかった三年生……」
「完全に腕試しパーティーだ」
「ボルカ・フレムが居るとは言え、舐められたものだな……!」
そして去年も見た流れ。対戦相手は舐められていると考えて熱くなっていた。
舐めている訳じゃないんだけど、そう見られてもおかしくない。だからこのメンバーも全員が強いんだぞって所を見せちゃってね! ボルカちゃん!
《それでは試合、スタートォ!!》
「「「おおおぉぉぉっ!!」」」
司会者さんの言葉と同時にステージへ転移。ボルカちゃん達の戦いが始まった。
「そらよっと!」
「ぐはっ……!」
「“ウォーターカッター”!」
「ぐっ……!」
「くそっ! “ファイアショット”!」
「“シールド”!」
「防がれた……!?」
「食らいやがれ! “サウザンドアロー”!」
「これが魔法なら正面から……!」
「なにっ!?」
「“魔力付与”!」
「他のメンバーが更にパワーアップを……!」
そして、一回戦は圧勝した。
ボルカちゃんは一人を倒し、後は他のみんなに任せたけど、期待以上の活躍で勝利を収める。
体育祭で片鱗を見せているカザミさんはともかく、ダイバース部に入ってから三ヶ月しか経っていない新入生ちゃん達の成長は凄まじく、もう大会でも通用するレベルになっているね。
ルミエル先輩の時から受け継いだスパルタメニュー。それは本当に計算され尽くした完璧な練習みたい。
このままの調子で二回戦へと上がっていく。
「この場所が表す事は……!」
「分かりました。こうですね!」
「正解だね」
そして二回戦は謎解き。戦闘主体の一年生二人は苦手分野らしいけど、ディーネちゃん達が上手く指導して自力で解き相手チームより早くゴールした。
この辺の成長、思考の力も高まっているね。謎解きとかクイズやレースみたいなミニゲームは代表決定戦までだけど、来年は私達と別になるからね。今のうちに鍛えておいて損はないや。
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《──試合終了ォォォ!! 地区大会決勝戦! “魔専アステリア女学院”が見事連覇を達成しましたァァァ!!!》
「「「おおおおぉぉぉぉっ!!!」」」
そのままの調子で初日の三試合を終え、二日目、三日目も順調に勝ち進み、私達は都市大会への出場が決定した。
都市大会もすぐ。数日後には始まる。そしてまたすぐ、来週には代表決定戦。調子良く勝って行けば来月には代表戦となる。
気合いも入るってものだよね! よーし! 勝つぞー!




