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ロスト・ハート・マリオネット ~魔法学院の人形使い~  作者: 天空海濶
“魔専アステリア女学院”中等部三年生
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第三百六十三幕 新学期・新入生達

 ──“新学期・魔専アステリア女学院”。


 暖かな陽気が眠気を誘う時期から、日増しに熱を増していく太陽の下。正面玄関口には多くの学生で溢れかえっていた。

 同じ制服に身を包んだ彼女達の中には、これからの新生活を夢見る者も多く居る。

 そんな賑わいを見せる私達の通う“魔専アステリア女学院”。今日は普段よりも遥かにその割合が大きかった。


 そう、今日は新学期。

 すなわち、この学院に新入生が入ってくる日。付近に居るのはほとんどがそんな人達。

 初めて見る子達が続々と入って来ており、在校生である他のみんなは部活動やサークルへの勧誘で声を張り上げていた。


「魔導応援団! 魔導応援団! どうだいそこの君! ダイバースの世界大会常連“魔専アステリア女学院”!! 及び全国クラスの他の部活倶楽部サークルを応援してみるのは!!」

「魔球部で君も栄光を掴もう!!」

「魔剣愛好会でいにしえに沈んだ刀剣を発掘しよう!!」

「魔獣クラブでモンスター達のお世話を!!」

「魔法に溢れたこの世界だからこそ魔導に頼らず格闘技を楽しもう!!」

「お菓子作りで世界を取ろう!」


 本当に色々な活動があるね。今までの中だと魔導研究会とか私達のダイバース部とかポピュラーな物から男装ホストみたいな一風変わった物まで。今勧誘中の人達も含め、かなりの数部活動やサークルがある。

 そんな人達を余所に私は新しい三年生の教室に向かっていた。

 通り慣れた渡り廊下。しかし今回からは方向が変わり、一つ上の階層へと行く。

 そして今回のクラスとなる、Ⅲ-Ⅰ(3-1)の教室に入った。


「おはよー!」

「おはようございますわ!」

「おはよう」


 今回もルーチェちゃん、ウラノちゃんと一緒のクラス。ボルカちゃんもそうなんだけど、いつも通りギリギリまで登校して来ないね~。

 朝のホームルームまで少し雑談し、ボルカちゃんもやって来る。それから三年生になっても特に変わらない一日を過ごし、部活動の時間となった。


「今日は新入生が来るのか~。果たして何人が残るかだな」

「そうだね~。出来ればみんな残ってくれると良いんだけどね~」

「それも難しい事ですわ。練習量はルミエル先輩の時から受け継ぎ、変わらず多いままなのですもの」

「そうね。初等部の時にちょっとスポーツをしていたとかくらいでは付いて行けないレベルはあるわ」


 いつもの四人で部室へと向かう。

 今日は新入生達が来る日。今年は勧誘とかをしていないけど、果たしてどれくらい集まったのか。

 予想では多くて十人くらい。少ないと二、三人かな。

 私達は部室の前に辿り着いた。


「あ! ボルカ先輩方が来ました!」

「本物!」「ティーナ先輩も居ます!」

「ルーチェ先輩~!」

「ウラノ先輩……クールビューティー……」

「中等部ダイバースの世界レベル……!」

「こんな先輩方と一緒にやれるなら……!」

「自分の魔導レベルも一気に高まる……!」

「「「先輩~!」」」


「お、多い……!?」

「ほえー。こんなにも有名になったんだな。アタシ達」

「ファンクラブが出来てますわ……」

「人は多いけど……入部テストで残れるかしら」


 部室前には既に人だかりが出来ており、入部希望の子達が沢山集まっていた。

 今見える範囲だけでも20~30人は確認。奥の方まで考えると50~60人は居るんじゃないかな……。想定の倍以上どころではない大人数が入部希望だなんて驚きだよ。

 けど見た感じファンの延長みたいな子達が多く、本気で優勝を目指している子は想定した人数くらいしかいないかも。ウラノちゃんの言う通り入部テストでふるいに掛けられるね。

 ボルカちゃんは希望者達を集め、部室前で話した。


「そんじゃ、これから毎年恒例の入部テストを行う。今年は人数が多いから一次と二次に分けっぞ。あ、そうだ。アタシは中等部ダイバース部、部長のボルカ・フレムだ。よろしく」


「入部テスト……!?」

「名門チームだもんね。当たり前か」

「私、魔導は人並みだけど体術とかあったら……」

「私は頭脳面が少し……勉強と言うよりは謎解きとかそっち方面での……」

「私は逆~。謎解きは得意だけど単純な勉強は初等部の頃から低いや」

「きっと厳しいテストなんだろうなぁ……」


 ゴクリ……と息を飲む音が聞こえた。

 アハハ……やっぱり入部テストがある事を初等部から通ってる子でも知らないみたい。私はともかく、ボルカちゃんも知らなかったもんね。まあ、ルミエル先輩の時は厳密に言うと入部テストとも少し違う気がするけど。

 そんなテストの合格条件をボルカちゃんは話した。


「条件は一つ。入部テストの終了まで付いてくる事だ。成績とか活躍とかは二の次で、テストが終了したら自動的にお前達は“魔専アステリア女学院”ダイバース部の一員になる!」


「え? それだけ……?」

「テストの内容じゃなくて、テストを終えるだけでいいんだ……」

「これならやれるかも……!」


 その発表に新入生の子達は安堵したように胸を撫で下ろす。

 合格条件はテストを終える事。成績が残せなくても、ボロボロになったとしても、途中でリタイアせず終えれば入部は決定となる。

 聞くだけなら簡単な事だけど、その意図に気付いている人は僅かかな。


「という事は途中で脱落者が出るのが当たり前な程の難易度という事……」

「過酷な入部テストって事ね……」

「世界レベルの“魔専アステリア女学院”。それくらいは当たり前だね……!」

「私には何の取り柄も無いけど……絶対に入りたい……!」


 その子達を含めて数人は入部テストの過酷さに気付き、気合いを入れていた。

 全員じゃなくても、こんな風にやる気のある子達が居てくれるのはとても有り難いね。ちゃんと強豪校に入るって自覚がある。もちろん他のみんなも最後まで付いてきて欲しいんだけどね。


「んじゃ、入部テストは十分後に始める。準備体操とか魔力の調子を確認しておけよ~」


「「「はーい!」」」


 始めるのは十分後。その時間で私達はどんな入部テストにするかを話し合う。

 既に候補は決めてあるけど、この予想外の大人数に合わせて調整しなきゃいけないもんね。その為の十分間。

 暖かくなってきたけど、まだ少し肌寒さが残る季節。体を動かすとは言え外で待たせるのも酷だし、早いうちに決めてあげなきゃね。


「取り敢えず、当初の目的通り大人数に合わせた物にするか。希望者は想定の数倍だけど、やる事は変わらない。ディーネ達二年生が一次試験。二次試験はアタシ達中等部最年長が行う」


「はい」

「いよいよ後輩ちゃん達の腕試しかぁ。燃えるねー!」

「サラ。もっと先輩としての自覚を持ち、真面目にやれ。大体お前はいつも……」

「まあまあ、落ち着きましょう。私達の本領発揮ですわ!」


 ボルカちゃんの指示でディーネちゃん達新二年生も気合いを入れる。

 初等部の頃から下級生とかの概念はあったと思うけど、先輩としての感覚がより強くなる中等部では初めての後輩だもんね。その気合いが空回る事も彼女達に限って無いだろうし、私達も頑張らなきゃ!


「甘やかす必要は無いぜ。一気にやってけ、お前達! 去年のアタシ達みたいにな!」

「やりますよ!」

「へへん、後輩ちゃん達に好かれたい気もするけど、今じゃ世界クラスの実力チーム。示しを付けなきゃね~」

「そうだな。厳しさを教えてやろう」

「私達も今年こそ代表戦で活躍しなくてはなりませんわ!」


 私達が入部した時点でルミエル先輩の功績もあり、“魔専アステリア女学院”は世界最強を謳われてきた。

 先輩達が卒業してワンランクダウンしちゃった事もあるけど、去年の通常代表戦では見事に世界一位になった。新人代表戦における個人の部では惜しくも敗れちゃったけど、準優勝と三位なのでまだ格は保っていると思う。

 それも踏まえ、単なるファンクラブじゃ駄目って事を見せなくちゃね。ホントは即入部OKで一緒に楽しくやりたいけど、中々勝てず、レギュラーにもなれないとツラくなるのは希望に溢れた後輩達だもんね。みんなの為にも心を鬼にするよ!


「そろそろ十分が経つな。そいじゃ、入部テストは前述通り。頼んだぜ。頼れる後輩の先輩達」

「ふふん、先輩達の二次試験まで残る子達が少なくなっちゃうかもね~」

「それを乗り越えて初めて強豪の一員だ。慈悲はない」


 何のテストをするか決め、ボルカちゃん達は新入生達に話に行く。私達は二次試験の準備を兼ねて裏方で用意。何人が残るかな。

 “魔専アステリア女学院”ダイバース部。入部テストが始まった。

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